イソップの宙返り・66
        
恋するライオン
ランオンが農夫の娘に惚れて、結婚を申し込みました。
農夫は嫌でしたが、恐ろしいので断るわけにもいかず、こんなことを考えました。
「その牙と爪が恐ろしいので、牙と爪を切り捨てたら嫁にやる」と答えました。
ライオンが牙と爪を切り捨てると、恐ろしくなくなったので、棍棒で叩いて追い返してしまいましたとサ。
寓意・隣人をたやすく信じて、自分の弱みを捨ててしまったら、簡単にやられてしまう。
          ☆     ☆
この極東の島国には、竹取物語とか、かぐや姫の物語と言われる古典がございまして。
話の粗筋はこんなこと。
竹取の翁が、竹の中から小さい女の子をみつけて、たいせつに養育しました。
なんと不思議なことに、わずかの間に美しい女性に成長しました。
名付けて「かぐや姫」。
姫のうわさを聞いて多くの男たちが求婚しました。
なかでも石作皇子(いしづくりのみこ)、車持皇子(くらもちのみこ)、右大臣阿部御主人(あべのみうし)、大納言大伴御行(だいなごんおおとものみゆき)、中納言石上麻呂(いそのかみのまろ)の5人が熱心でした。
         
かぐや姫はこの5人の貴公子に対してそれぞれ、仏の御石の鉢、蓬莱(ほうらい)の玉の枝、火鼠(ひねずみ)の裘(かわぎぬ)、竜(たつ)の首の珠(たま)、燕(つばくらめ)の子安貝(こやすがい)を持ってくるようにとの難題をだしました。
ところが、車持皇子(くらもちのみこ)が、蓬莱(ほうらい)の玉の枝を得たと言って、やってきます。
これには、かぐや姫は進退窮まって、結婚しなければならなくなりました。
            
ところが、ところが、この車持皇子(くらもちのみこ)のために玉の枝の偽物を造った職人達が、かぐや姫の宅にやってきます。
車持皇子が代金を払ってくれないので、請求に。
これで、蓬莱(ほうらい)の玉の枝が偽物だったことがバレてしまいます。
              
この話は求婚する男の立場からすると、複雑な心境になる筋でしてね。
だってそうでしょう?
なんぼ、美人にしても無理難題でしょう?
かわいげのない女よね。
           
それにしても、車持皇子もイジマシイよね。
代金ぐらい、ちゃんと支払ったらいいのにねぇ。
             
今のボク達が、これを読むと、5人はただの架空の人物ですが、当時の人が読むと、ピーンとわかったはずなんですって。
この狡猾な車持皇子って藤原不比等って。
いまでも知る人ぞ知るほどに、不比等は狡猾で有名。
しかも、母親が車持。
だから、このお伽話は、当時権勢を誇った藤原フヒトを露骨に揶揄しているんだそうです。
ところで、不比等って、「比べる者なき男」って意味とか。
            
竹取物語とかの古典ってスゴイんですよね。
話としても面白いけど、ぞれだけではなくシッカリ風刺が効いている。
              
源氏物語も、スゴイいんですよ。
宇治十条「浮舟」には、水死した浮き舟の屍を「貝に交じりて」なんて表現している。
この表現は柿本人麻呂が死んだ時の妻の歌に「石川の貝に交じりて」があるのをふまえているんですよね。
これからして、当時の伝承では人麻呂は水死したことになっていたことをチャンと今に教えてくれている。
それに、光源氏に「正史を見ても、真実はわからない」なんて言わせています。
これは、今でも真理ですもんね。
              
やっぱり古典と言われるだけあって凄いですねぇ。
源氏とか、竹取物語が書かれた10世紀前後の西洋での物語は、荒唐無稽な冒険お伽話だったんですからねぇ。