イソップの宙返り・55
         
カラスと犬
カラスがアテナの女神に生贄を捧げ、犬を宴会に呼びました。
犬は「どうして生贄に無駄なお金を使うの? あのアテナ女神は君を憎んでいるのに」って言いました。
「アテナ女神が憎んでいらっしゃるからこそ、仲直りに生贄を捧げるんだ」
寓意・恐怖心から生贄を捧げる人は多い。
       
フクロウがアテナ女神の聖鳥で、フクロウは夜カラスの卵を取り、昼間にはカラスが仕返しをするので、仲が悪いことになっているらしい。
それで、カラスはアテナ女神に憎くまれていることになっているとか。
          
日本でも、祟りが怖い神さんってありますね。
むかしは疫病が、よく猛威をふるったといいますが、これは荒ぶる神の祟りだと考えられていたらしい。
  
天神さんは菅原道真を祭る神社ですが、あの神さんは、元は恐ろしいタタリの神さんだったようです。
菅原道真は死後、藤原時平一族を殺し、怨霊は天満自在天、青龍になったとされたんですね。
青龍は雷の神ですが、これが雨を支配する神になり、農事の神になったとされます。
全国に1万を越える天満宮の全部が、怨霊払えで建立されたものではないようですが、ソマツにすると罰が当たるってのも、日本の神信仰にはありますよね。
ボクらの信仰は多分に、気休めの仕来りのようですから、非宗教的な社会だとか、日本人は宗教オンチだとか言われますが、ボクは、これにはいささか異論があるんですがね。
           
まあ、イソップ童話で宗教論を論じるのは場違いかもしれませんが、日本って非宗教的な社会ですかねぇ?
開き直るようですが、仏教の釈迦の教えの第一は、平らに言うと人間平等主義ですよね。
          
日本の社会は、人類が初めて作った無階級社会、モノクラス・ソサイティでしょう?
少なくとも、社会制度としての階級はないですよね。
まあ、階級制度はなくても、社会階層ってのはありましょうがね。
法律上の差別を受ける社会制度としての階級はないですよ。
           
別に、仏教の人間平等主義を実現しようとしての宗教改革ではなかったとしても、宗教の根本原理を、この世に実現した社会ってある?
       
ボクがこんなところで、麗々しく日本賛歌を始めたのは、由縁があるんです。
ある、辛気くさい会の後の宴会で、隣りに座ったヨーロッパ人に、
「日本は大国になったというけど、精神的な裏付けがない。宗教の裏付けがない」って、絡まれたことがあるんです。
その時に、咄嗟に思いついて、「宗教の根本原理の一つでも、現世に実現した社会があったか? 仏教の根本原理は人間平等主義なんだ。日本の社会は、人類が初めて作ったモノクラス・ソサイティだぞ!」ってやったら、相手のは黙り込んだものね。
       
あの時の咄嗟の反論が、あまりにも痛快だったので、又しても喋ってしまう。
          
ところで、同じ昔話を繰り返すのを、ボケ老人というんでしたね。