イソップの宙返り・52
        
ドロボウと雄鳥
ドロボウが盗みにはいったが、何もなくオンドリ1羽だけを盗みました。
オンドリは殺されそうになって、逃がしてくれと頼みました。
「私は暗いうちから人を仕事へと起こす、役に立つ鳥なのだ」
と言いましたが、ドロボウはこう言いましたとサ。
「それだから、なおのこと殺してやる。ヤツらを起こすから、盗みの邪魔になるからだ」
寓意・正しい人に役にたつものは、悪人には都合が悪い。
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極東の凡俗といたしましては・・・
盗みの邪魔になる時を告げる声って言うと「内部告発」を連想しますね。
内部告発は新聞用語でしょうが、牛肉の産地をゴマかしたことが明るみに出ると、社内では「内部告発をしたヤツは誰だ?」って大騒ぎになりますよね。
だから、企業人にとっては「内部告発」はタレコミとかのマイナスイメージの言葉でしょうね。
そのセイか、ボクらにとっても「内部告発」は暗いイメージの言葉。
とても、正義の告発って感じの明るい言葉ではないですね。
       
ところで、産地をゴマかしたり、賞味期限の打ち直したりを防ぐ政策は無いのか、って思案すると、直ぐ罰則を強化する、って短絡的に考えてしまう。
でも、刑事罰を強化して、産地のゴマカシが防止出来るようには思えないんですがね。
        
例えば、輸入肉を国産牛肉に入れ替えたのがありましたよね。
狂牛病騒動で、牛肉は滞貨になっていて、その滞貨も結果的には仕入れの見込み間違い、ってことになっている時に。
役員から「赤字を、何とかならんのか?」
と迫られるし、このまま無策でいけば会社の存亡に関わってくる。
こんな時、ミート部門の責任者であったら、ボクは絶対にやらない、との自信はないなぁ。
やってしまうような気がする。
          
自分だけのことなら、産地入れ替えまでやって会社に留まりたいとは思わなくっても、家族の生活のかかっている部下や、住宅ローンに苦しんでいる同僚の悲しい顔を毎日みていると、「オレが犠牲になっても、何とかしよう」と思うだろうなぁ。
          
やっても、納入先は商品知識のない連中だから、商品を見てもバレないだろうし、消費者は味オンチとなると、内部告発がないかぎり明るみにでることはないしね。
それにバレても、今のところは罰則はないし、今後できても軽い行政罰ていどでしょうからね。
「自分が勝手にやった」と言えば会社に罰金がかかることは無いと思えるし・・
なんてことになると、ボクがミートセンター長だと、絶対に正直を押し通すとの自信はないなぁ。
          
こんな苦境から脱するために、ゴマカシをやったのは、今明らかになっている数社だけだったとは思えないんですがね。
           
これを防止するのに、不正をした担当者だけを厳罰に処す法律を作っても、不運な担当者が、たまに出てくるだけのような気がする。
これの防止には、ダマシをやると内部告発がどんどん出て、曝れてしまうし、消費者に膨大な損害賠償を払うはめになり、会社自体が滅亡してしまう制度がないと、だめだと思う。
会社が潰れるような、会社の皆の迷惑になる制度を作らないと、やまないよ。
         
この法制度にはクラスアクションって訴訟制度があります。
クラスアクションって、集合訴訟とか集合代表訴訟とか訳されていますが、まあ、誰かが代表して訴訟で勝つと、その肉を買わされた消費者全員が損害賠償金を簡単に弁償してもらえる制度です。
(クラスアクションって訴訟制度の複雑な説明をするには、ここでは長くなりすぎますから、メールマガジンで書くことにします)
           
今の制度では、ゴマカシは「浜の真砂の種は尽きまじ」でしょうねぇ。
ずっと昔になりますが、石油業者が灯油の闇カルテルをして値をつり上げたことがありましたが、消費者団体からの損害賠償訴訟では、「闇カルテルで受けた損害の額が具体的に立証できない」で、敗退してしまいました。
値をつり上げたことは証明出来ても、損した額までは厳密には証明出来ませんものね。
これは、今の訴訟法では絶対に証明できない。
ホント! 悪魔の証明、って言う。
この証明の困難を助けてくれる訴訟法が必要なんです。
この立証責任を助ける訴訟法がクラスアクション制度では必要です。