イソップの宙返り・18
       
ナイチンゲールと蝙蝠
夜になるとナイチンゲールが窓辺の鳥籠のなかで、鳴いていました。
コウモリがやってきて、「昼間、静かにしているのに、なぜ夜鳴くのか?」とききました。
「昼間に歌っていて、捕まったので、夜なくことにした」って答えました。
コウモリは「捕まってから、用心してもはじまらない、捕まるまえに用心すべきだ」って。
        
寓意・不運に遭ってからの後悔は、何の役にもたたない。
       
ナイチンゲールは夜鳴き鳥ですね。
夜鳴くことの縁起話らしい。これ以上、何もコメントすることはありません。話を紹介するのみにとどめます。
      
子牛を盗まれた牛飼とライオン
牛を放牧していた牛飼いが、子牛がいなくなったので、ゼウスの神に祈って、「盗人が見つかったら、子羊を捧げます」と誓いました。
茂みに入っていくとライオンが子牛を食べていました。
牛飼いは肝をつぶして、両手を天に差し上げていいました。
「主ゼウスよ。盗人が見つかったら、子羊を捧げますと、言いましたが、盗人のライオンから逃げおおせたら、牛を捧げます」と誓いましたとサ。
        
寓意・ないときには、見つけたいと思い、見つければ、それから逃げたいと思うような、ついてないことがある。
        
いやあ、ついてないことって、ありますよね。
それも、一日中なにをやっても、ついてない日って。
関西では、こんな日のことを三隣亡(さんりんぼう)っていうことがありますが、これは三隣亡の誤用のようです。
字引を索くと、「その日に建築をすれば、近隣三軒まで災いがおよぶとされる日」と書いてあります。まあ、良くない日ってんですから、関西の使い方も誤用とまでではないらしい。
お宅のあたりでは、一日中なにをやっても、ついてない日をなんて言いますか?
教えて下さい。
       
農夫と蛇
蛇が農夫の子供を噛み殺しました。
怒った農夫は蛇穴に待ちかまえて、首を出した途端に斧を振り下ろしましたが、傍の岩を割っただけでした。
考えなおした農夫が、蛇に仲直りを申し出たところ、蛇はこう答えました。
「壊れた岩を見れば、あんたと仲直りするなんて出来っこない。あんただって、息子の墓を見れば、そうだろう」
   
寓意・不倶戴天の敵は容易に和解できない。
     
シシリア島では、復讐の連鎖が続いて、男が死に絶えるところまで、いったんだそうですね。
シシリア島は次から次に外国の支配を受けて、これのレジスタント組織がマフィア組織に発展していったんだそうですね。
今度のアメリカが受けたテロ攻撃をみると、復讐しないと収まらないのでしょうが、復讐の連鎖は、いつか、どこかで断ち切らないと、際限のないことになりますね。
今は、正義と不正なテロとの戦いの構図になっていますが、そんな単純で、一時的なものではないような気がします。
ハッチントンが1993年に、ホーリンアフェアーに書いた「文明の衝突」の日本語訳が、最近第4版で出ています。
ボクは98年に読んだので、うろ覚えなんですが、「文明の衝突」とまで、言ってしまうと、もう絶望しかありませんね。
文化が一つに収斂するはずがないことはわかりますが、何とか、戦いだけはしないで、共存する方法がないのかなぁ。