イソップの宙返り・8
     
狐とイバラ
キツネが追われてイバラの中に逃げ込みました。
棘に引っ掻かれて、血だらけになりました。
「味方だと、思って逃げ込んだものを酷い目にあわすのか」
ってナジると、
イバラが答えて言いました。
「おまえこそ、とんだ見当ちがいだ。絡みつく習性のあるイバラにしがみつこうとするなんて」
寓意・根っからの悪人を味方と思って身を寄せるのは痴れ者である。
          
こればかりは、極東の凡俗も、そのとおりだと思います。
庶民はささやかな収入から、一所懸命に貯えをしております。
おカネは、歴史始まって以来、決して値上がりしたことのない交換財だと知っていても、貯金をするしか能がありません。
           
政府は、日銀券を大発行してインフレ政策をとりはじめていることも感じています。
インフレ政策って、交換価値の下落分だけ、国民の貯金を取り上げることですもんね。
それに、このデフレ状態で紙幣の発行高だけを増やすインフレ政策は悪政インフレを惹起する危険までありますわなぁ。
金貸し、いや失礼しました銀行でした、から逃れようとして、株屋、いや失礼しました証券会社でした、の言うように株式へ逃れるのは、イバラに逃げ込んだ狐になるような気がするんですがね。
          
イソップさんは「根っからの悪人を味方と思って身を寄せるのは痴れ者である」って、言うけど、庶民はどうすりゃあいいのぅ。
               
漁師とマグロ
漁師達が悪戦苦闘しましたが、何も獲れませんでした。
船上に座り込んでいますと、何かに追われたマグロが舟に飛び込んできました。
寓意・技術(テクネー)が与えないものを偶然(テュケー)がかなえてくれることがある。
       
モンスーン地帯の水田耕作民であります、極東の凡俗は、狩猟民をただただ羨ましいと思います。
極東では「偶然(テュケー)がかなえてくれることをあてにするのは、愚者である」って諺を子供にまで教えています。
         
「待ちぼうけ」って歌まであります。
せっせと野良稼ぎをしていましたのに、「そこへ兎が跳んできて、ころり転げた木の根っこ」って童謡。
テュケーがかなえてくれるものを「待ちぼうけ」た愚か者の話。
         
農耕民にとっては、努力と勤勉だけが、富を恵んでくれるのです。
テュケーは災害を与えてくれるだけです。ハイ。