隠居のちえ
       
私達夫婦は旅行するには国民休暇村を利用します。
この話題はしばしば繰り返していますので、聞き飽かれたかもしれませんが、始めての方もあろうかと思い、もう一度書かしてもらいます。
まず、休暇村はどこともロケーションがいい。
その土地の最高の場所に立地しています。
設備がいい。それに施設がそろっています。
テニスコートとか、海岸だと専用のピーチまでついています。
我々年寄りにありがたいのは、遊歩道が完備されていることですね。
それと、インターネットに堪能なあなただと予約が簡単。
「休暇村」で検索して空室状況を調べます。
この空室状況から、続いて宿泊申し込みをインターネットでするのは食事内容とかがうまく出来ません。そこで、休暇村から問い合わせの電話があるようですので、二重手間。
申し込みは電話でしたほうが便利のように思います。
空室状況で,お調べになればわかることですが、土曜日以外はあいています。
ですが、夏休中は大学のゼミ旅行とか、常連の家族が3ヶ月前の予約で押さえていますから宿泊するのはむつかしいかもしれません。
一番うれしいことは、料金が安い。
高いところでは8000円ですが、旅館ではこれにサービス料とかが加算されますが、休暇村ではQカードの会員割引優待があります。
Qカードの会員は入会金無料、会費無料です。
このQカードでの会員優待は利用した時に「ポイント」をくれてのことですから、一回目には割引効果はありませんが、次回他の休暇村を利用しても、このポイントが使えますから、実質値引きです。
それに梅雨とかの閑散期には1000円程度のサービス券を送ってきてくれます。
それに連泊割引まであります。
ですから8000円のところでも6500円くらいになりますし、6500円のところだと5000円になります。
で、
いらぬことを申しますが、私達隠居が土曜日とか夏休みとかの混雑時にでかけて混雑を倍加するのは遠慮しましょう。
ね、そうでしょう?いつでも暇なんですから。
    
従業員のトレーニングも一流ホテルなみにできていますから、いままで20回ちかく泊まった私達はいつも満足してきました。
ところが、これによく似た名前に国民宿舎ってのがあります。
これに泊って失望したことがあるかもしれませんが、休暇村と混同しないで・・
休暇村案内はこれで終わり。
          
次は、先日泊まった四国の休暇村で見聞したこと・・
朝食に食堂にまいりますと、案内された席のお隣に僕たちと同じ年格好のご夫婦連れがいらっしゃいました。
僕はひとのことが気にならない鈍感なんですが、ご主人のほうが朝から5合ビンをひきよせての朝食ですので、「アレアレ」って感じで、すこし気になりました。
アルコール依存症特有の陰気な感じで、小声でぶつぶつ何事かつぶやいておられます。
これも、気になったもとかもしれません。
          
僕たちが食事を始めて、しばらくしますと、その奥さんが待ちかねて、ご飯をつがれたようです。
ご主人の方が、「(酒をのんでいるのに、メシを)つぐのが、早い」って小言をおっしゃった。
奥さん、ドバーッと、ついだご飯をお櫃に投げもどされたんです。
「こらあ、はでな喧嘩になるワ」ってんで、僕たちは逃げ腰になりましたねぇ。
ところが、そのあと、双方しらん顔。何事もなし。
あれ、慣れているんですね。あのご夫婦の日常らしい。
        
なんの話かと言いますと、定年退職するとアルコール依存症になるひとって、時々あるらしい。
会社とかの団体旅行で温泉に行くと、朝メシにお酒がでます。
日常には、ないことでもあり、ことのほか旨いですねぇ。
あなたも経験あるでしょう?
         
毎日が日曜日になると、あの旨い朝酒がやみつきになるのわかりますね。
私は母に「日が暮れたらなんぼ飲んでもいい。お日さんが照っているうちはお酒はのむもんではない。」って言われてきました。
ですから、ゴルフの昼食時にもビールはのまなかったですね。
いえ、時々は「お袋申し訳ない」なんてホザキながら飲んだことも何度かはありましたが。でも、一応は親の言いつけですから守りましたヨ。
他の言いつけは一切守れなかったけど・・
開き直って教訓を一席。
定年退職したら、「お日さんが照っているうちは」お酒はぜったい飲んだらダメ。
飲みはじめたら止まらなくなる。
         
世のお母様方よ、子供に教訓をインプットするのって効果があるもんですよ。
僕なんか、この歳になっても「歩きながら、たべるんではない」なんて、いまだにインプットされていますもんねぇ。
カクテル・パーティで「歩きながら食べる」のは何か後ろめたいものがあります。
         
先に引退した先輩が教えてくれた「隠居の知恵」に、「一日のうちに、何か一つきまった日課をつくったほうがいい」ってのがあります。
その先輩がすすめてくれたのが座禅。
「べつに禅寺へわざわざ行くこともない」って座り方をおしえてくれたけど、棒と喝がないと、何ともしまらないんですよね。
でも、禅寺にまで通って苦行するのって、苦手。
そのうち達磨大師の書いたといわれる絶観論っていう本で「禅の本来は『高臥放任』である」って書いてあるのにであいました。
高臥放任って「なにも考えないで、寝ころんでいる」ことだそうです。
「ああ、これならできる」ってやってみたところ、できるんですねぇ。
あたりまえの話。自慢するほどのものではない。
ね、貴方もできるでしょう?
ところが、この高臥放任なんて、あほらしくて日課にはなりませんでした。
      
次にやりはじめたのは人まねの朝の散歩。
神戸って、はんぶん西洋人がつくった街ですから西洋の習慣が町の人達に伝わっているんです。それが朝の散歩。
この人まねは続いております。朝5時ごろから散歩を始めます。
散歩と謙遜しますが、4キロを4、50分ぐらいで歩きますから、いちおう早あしウオーキング。
で、知ったことは夏の早朝って、すがすがしくて快適。
それに曙の空って、すごいんですよ。
刻々かわる大スペクタクル。
いっちゃあわるいけど、ユニパーサル・スタジオのアトラクションなんてのとレベルが違う。
毎日催されているこの大自然の大エギジビションを見損なっている人って、気の毒。
これぞ、隠居の特権。
隠居なんて朝早く目が覚めてしまう老年性時差ぼけ病でしょう?
それに早起きして寝不足になっても、昼寝が自由にできる。
これ、隠居の特権。
で、この一日の始まりの日課だけは、妻もひっぱりこんで続いています。
最近は癖になって雨模様の日には傘をもってでかけています。
リタイア3年前から続いてますから、足が萎えるまでは続きそう。
        
「隠居のちえ」なんておおげさな題のわりに大した話ではありませんでした。
           
でもね、家族や社会に対する責任から自由になり、物欲からも、名誉欲からも解放され、、人生至福の時に退屈地獄なんてあまりにも残念すぎる。
そう思いません?