僕の「いい旅」
      
和歌山の加太にある休暇村で2泊してきました。
月曜日(6月11日)の朝には、先週末の天気予報とは違って、数日天気が続きそうな雲行きになりました。
当日の朝になって、
一度泊まりたかった「加太の休暇村、空いてないかな?」
ってことになり、例によって、出掛け好きの妻がホイホイと電話してくれました。
「予想どおり空室あり」
良かったら連泊しようとして、火曜日のつまり具合を訊くと、
「ガラガラ」との返事。
だったら、火曜日の分は行ってからにしようと相談が決まりました。
で、
行くことを決めたのは午前10時頃。
二人それぞれ昼の予定をこなして、午後2時出発となりました。
          
国民休暇村を利用なさったことのない方に説明しますと、
まず、ロケーションが抜群にいい。これは全国各地の休暇村共通ですね。
それと経営姿勢が積極的です。
やる気満々。
行くことに決めた動機が先日送られてきた会員向けのパンフレットに、「いらっしゃい、いらっしゃい」的な広告と1,000円の優待券が付いていたから。
           
地理は神戸から車で2時間ていどなんです。
車のトランクに、履き替え用の靴から、そこら辺にあるものをゴシゴシ詰め込んで出発となりました。
      
阪和自動車道の和歌山は通い慣れた道です。
カーナビの命ずるまま、和歌山インターまでまいりました。
ところが、和歌山市内は混雑していましたね。
「ひとつ手前の阪南で降りて、海岸沿いの道を走るべきだった」
なんてボヤキながら加太までまいりました。
      
カーナビの使い方ですが、長距離を検索するのは、あまり頼りにできませんね。
でも、まあ、和歌山で降りるのが常識的ですか。
いえ、別にカーナビに文句はありませんが。
             
実は加太の休暇村って初めてだったんです。
目指す休暇村は、例にもれず海岸から100メートルも屹立した岬の自然林の上にありました。
「ええ、やんか」
駐車場でもたもたしている私を置いて、チェックインに出掛けた妻が
「翌日連泊の火曜日は、(私らが)予約電話したあとでバタバタと詰まって、あと一部屋だけ残っていた」って、言ってくるんです。
「でも、1000円高い部屋よ」
          
料金のケチケチ話をしますが、基本料金8,000円で一泊目は部屋取りができていましたから、二泊目は9,000円ってことになります。
基本料金って書いたのは、旅館のようにこれにサービス料とかが加算されるのではなく、どんどん割引かれるんです。
まず、Qカードのポイント数による割引。いらっしゃい広告に付いていた1,000円割引券が二重利用できるんですね。
一泊6,000円近くにディスカウントされることになります。
ウチの女房の凄腕。
        
ケチ夫婦は、すぐ銭の話をしますね。
肝心の部屋。
全室西側の海向き。安い8,000円の方でも8畳のトイレ付き。(翌日の9,000円の方は余分なことに風呂場が付いていた)
踏み込みが3畳くらいかな。
文句ないでしょう?
それに清潔。
(ところで、余談ですが、休暇村で用意されている寝間着浴衣には襟のところに「大、中」って表示されています。あれがないと、泊まり客としては全部を開けてきてみることになります。宿舎の方では着てみられると全部クリーニングしなければなりませんでしょう。無駄。
随分前に、うちの女房が「お互いに無駄だ」と投書したんです。
あんまり、投書なんてのに熱心ではありませんが、これは休暇村も採用したみたい。)
         
着したのが4時半だったので、建物の裏手の短い遊歩道を歩きましたが、これが深山の雰囲気なんですね。
大満足。
夕食の前に風呂に入りましたが、下手な温泉より良いのは名物の備長炭の風呂。
近くに温泉もありますが、湯を運んできての温泉マガイより、すっきりしていますよね。
      
食事は、何時も特別注文しないで基本食でいきますが、まあ、内容は15,000円クラスの旅館並でしょうか。
でも、米飯は美味しかった。精白したてみたいでした。
旅館みたいに黴の匂いがしていなかった。
    
夜食後のんびりしていると、8時にアナウンスがあって「蛍見物」
もちろん無料。
直ぐ下のカーキャンプ場までミニバスで行くだけだもんね。でも、可愛いお嬢さんの案内付きですよ。
時期が遅いから10匹ぐらいしかいなかった。(蛍は5月下旬から6月上旬)
先週には、服にとまりにくるほどいたらしい。
それに岬の砲台跡へ行く山道には姫ホタルまで出ていたそうです。
かすかな光の姫ホタルは幻想的だそうだから、「来年はきっと来よう」。
          
食堂での周り人達も下品な人は少なかったけど、ホタル狩りの同行者はみんな上品な人達でした。
雰囲気 良かった。
梅雨の晴れ間をねらって「それぇ」ってやって来た人達だもんね。
旅のベテランぞろい。
       
翌朝は何時もどおり、5時に目覚めて5時半ごろから散歩。
神戸人の習慣なんですよ。
フロントで前夜もらった遊歩道案内地図に従って、長い方の1.2キロ・コースの砲台跡に出掛けました。
         
砲台跡への500メートルは整備された煉瓦敷きの道ですが、空も見えないほどに樹木がかぶさり、深山の趣のある森の中を辿っています。
森のチントレットは肺の中まで渦巻いて、すがすがしい道のりでした。
突然視界が開けて、友が島、その向こうに淡路島が遙かに連なっています。
友が島と淡路島の間が由良の戸ですね。
「由良の戸を渡る舟人 舵を絶え ゆくえも知らぬ 恋の道かな」
なんて歌を思い出しましたが、あれは実景描写ではなく、恋の思いがユラユラと彷徨う様を呼ぶ擬音効果なんでしょうね。
        
1時間の散歩のあとの朝食は旨いですね。
朝食をいただいて少し休むと、案内書の「木漏れ日の道」緩やかな下り坂1キロを渚まで行ってみました。
この道は「木漏れ日」もまれな、鬱蒼とした大樹海の細道でした。
渚に降りて小さな水彩を描いて、磯風を楽しみましたので、表紙にアップロードしています。
見てやってください。
   
ところで、散歩時の道具の話ですが、最近トレッキングをなさる方がストックを使っておられます。
僕たちも使ってみましたところ、これが意外に便利なんですよ。
坂道ではたいへん効果があります。
楽ですね。
まあ、私が使うと、スポーティなストックではなく老人用ステッキ風になっていますが。
どうも、使いこなすコツは手になじませる為に日常の散歩でも使うことのようですね。
街中のタウン・ウオッチングに持って歩くのは、やや間抜けていますが。
        
昼食を加太の港にある町で取ることにして、淡島神社に参りました。
3月3日の雛祭りに舟に乗せての流し雛行事がありますね。
毎年、テレビでやりますので関西の人にはお馴染みです。
        
どういう謂われか、この神社は婦人病の神さんってことになっています。
昔、大阪ではお祈りを願う人の着物を集めての代参商売があったそうですね。
代参には着物を持っていくのではなく、着ていったそうですね。
重ね着のことを「淡島さんや」って言う大阪人がありましたが、道中も何枚も重ねて着たまま行ったよう。
        
その先の岬に菖蒲園がありましたので訪ねてみました。
6月ですから花菖蒲は満開でした。
300万本の花の中にあるあずまやで座っていますと、磯風が菖蒲の精気を運んでくるんですわ。
今は「菖蒲の節句」を5月にしますが、旧暦5月5日の節句ですから新暦では6月中旬の行事ですね。
ものみな腐る梅雨での殺菌効果が菖蒲にはあるんですね。
この菖蒲の精気を含んだ、しかも、磯風。
美味しかった。
口を開けて頬張っていましたね。
バカ面だったでしょうね。
  
宿に帰って、まどろんだら夕方。又、「木漏れ日の道」を海岸まで歩きました。
梅雨の合間の「さつき晴れ」のなかを。
    
夜には、する事がないので、またまたホタル見物。
今日のお客さんは旅慣れていらっしゃらないお婆さん連中が多かったので、蛍狩の参加者は数人でした。
何故、旅慣れていないとわかるかと言いますと、夕食時に備え付けの浴衣寝間着で食堂にこられてましたね。
寝間着用の浴衣でもいいんですが、帯ではなく紐でしょう。
これ「帯しろハダカ」って言って、上方では嫌いますね。
ね、盆踊りの時に浴衣を着ても帯は半幅帯を締めるでょしう。
          
これの弁解をしますと、70歳代のお婆さんは娘時代、戦時中でしょう。
だから、お母さんに躾を教えてもらえる機会がなかったんですわ。
まあ、大目に見てあげることにしてぇ。
         
次は車の珍騒動。
夕方、散歩にでようとすると玄関の向かいに停めてある軽自動車のバンにスモールランプが点きっぱなしになっているんですわ。
フロントに言って、何度も館内アナウンスをしてもらいましたが、持ち主現れず。
夜の9時ころになると灯は弱ってきてスターターも利かないと思われる状態になってしまいました。
それからでも、見る人ごとに大騒ぎ。
みんな心配しましてね。
            
翌朝、4,5人が乗り込むところに行き会いました。
バッテリー・アウトでは、充電の方法がわからないで苦労なさると心配して、飛んで寄っていきましたね。
「バッテリー・アウトしていますよ」
って言って、事務所から充電コードでも引き回してこようとすると、
何と、運転なさっている方は車のうしろから、サッと充電コードを出してくるんですわ。
「心配かけて、すみませんでした」
って挨拶はなさったのですが、これが実感の伴わない社交儀礼。
ほとんど、「いらんお世話」って感じ。
少し離れたところに連れがいらっしゃったようで、
「おおーい、車持ってきてくれ」
と言うまもなく、慣れた風で、サーっと車首を寄せてくるんですね。
なんや、バッテリー・アウトの大ベテランなんですね。
失礼しました。
みんなの大騒ぎは、何だったのオ。
         
旅をすると、色んな人に出会いますね。
      
最後の朝、往復2キロの「木漏れ日プロムナード」を5度目の散歩をして、お腹をすかして朝食会場にまいりました。
よくある、バイキングですか、ビュッフェって言うんですかの「取りほうだい」食。
          
品の良さそうな夫婦連れの横の空席を選んで座りました。
別に品の悪い人を蔑視するわけではありませんが、和歌山って「敬語のないところ」っていうでしょう?
やっぱり、敬語のない会話が聞こえてくると、気になるんですわ。
         
この品のいいご夫婦の会話。
夫の方は
「何にも、ないところやなぁ。もう帰ろう」
なんですね。
奥さんの方は、小声で
「散歩する処もあるように(案内書に)書いてあるけどぅ」
っておっしゃっていましたが、聞こえなかったのか、聴く耳持たなかったのか、で会話は終わり。
       
旅をすると、色んな人に出会いますね。