土地柄、或いは人国記
          
東京人の個人預金額って全国一なんですってね。
「宵越しの銭は持たない」ってのが江戸っ子じぁなかった?
            
3代続いて東京に住んでいないと江戸っ子ではない、なんて言うけど、3代では明治になってからの住人ですから「江戸」つ子ではないのでしょうね。
まあ、江戸っ子って言うのは江戸時代の庶民の気っ風のことでしょうから、10代前から住んでいないと「宵越しのゼニは持たない」なんて粋な先祖はなかったことになるんでしょうね。
         
それに、落語に出てくる江戸っ子なんて架空の人達で、ホントの江戸の庶民は出稼ぎ人ですから勤勉で、蓄えに励む人達だったらしい。
今の東京人は地方から、立身出世を願って集まった人達でしょうから、向学心に燃えて勤勉な人達が多い。だから預金額も多いのかなあ。
         
こんな言い方がありますね。
「東京人は現在に生きる。京都人は過去に生きる、大阪人は今日の夕方まで生きる」なんて聞いたことない?
大阪人のがんばりを言ったものでしょうが、「大坂の食い倒れ」をヤジっての諺ともとれる。
            
大阪人って全国的に見ると、変わったところがあるんでしょうね。
あの、タイガース気違い、何にぃ?
負けるのわかっているのに応援するバカ騒ぎ。
ボクも阪神間の住人なので、まあ、恥ずかしながら阪神びいき。
        
そこで、あほらしい弁解を聞いてくれます?
      
タイガース・フアンって必ずアンチ・ジャイアンツなんですね。
巨人の金に飽かして選手を集めるのが気に入らない。
変ないちゃもんつけ。
プロ野球でしょう? だったら、金に飽かして何で悪い?
ごもっとも。理屈はわかるけど、何しろ気にいらんのよ。
           
大阪の悪口を言ったら、次は京都になりますが、これは言い古されてきたので簡単にいこう。
「大阪の食い倒れ」に続いて「京の着倒れ」。
世間体を大事にしますね。
で、世間体となれば、言葉遣いってことになると思うけど、下町の人達って綺麗な言葉は使わない。
料理屋とか旅館で「おいでやす」なんて言葉が出るけど、あれ近江弁。
京都の古いみやび言葉を話す人は、今や希になって、谷崎潤一郎の細雪のセリフにしか残っていない。
細雪に出て来る言葉は、芦屋に伝わった船場言葉ですね。そのもとは京言葉。
     
「食い倒れ」と言った限り、奈良の「寝倒れ」となります。
奈良人の進取性のなさ、働かないことの悪口。
今は大阪のベッド・タウンになって、寝倒れではなく「寝もうけ」ですか。
   
ここまで言うと近世に畿内(うちつくに)に入った和歌山の話。
関西では和泉(いずみ)ナンパーの車が来ると道を避けるんですよ。
だから、紀北(紀州の北地域)への評価は「あつかましい」。
よく言うと強気で積極的。紀伊国屋文左衛門をみんなが連想する。
        
悪口冗談が通じるのは畿内だけらしいから、後はまともな評判にします。
           
隣の岡山には「すらっこう」って言うことばがあります。そつがなく、きびきびしていることです。
ところが、あの岡山弁が、のんびりとしているので「すらっこう」が目立たず、人情に厚いって評判になっています。
岡山弁って、そら、長門勇が時代劇で使っていたでしょう。あれ。でも、これは瀬戸内の吉備地方のこと。
      
近隣で有名なのは土佐の「いごっそう」頑固、気骨(きこつ)のこと。
ところが、この頑固、陽気で酒好き。
いごっそうだけでは家が潰れますが、女性の「はちきん」で保っている。はちきんって、はきはきと活動的な女性のこと。
「ベンチがアホやから」と言って馘になったエモヤン(江本猛紀)みたいな、みんなが好きな気骨のいごっそうって多い。
江上波夫説によると、畿内の短頭人間は躁鬱性、高知とかの南国の長頭族は分裂性だそうで、情熱的な詩人が多いそうです。
いごっそうは分裂性なのかなぁ。
      
讃岐(香川)は「へらこい」って言います。へらこいは小ずるく要領のいいこと。
でも、讃岐は弘法大師なんて不世出の天才を生んでいる。平賀源内も。
小ずるいことないよ。賢いのよ。
だけど、ウドンは麺に凝りすぎて、出汁(だし)は旨いとは言えないけど。
       
阿波(徳島)は藍商売の伝統からか、商業人が沢山でていることは皆さんご存じのとおり。
    
西に飛んで、山口は「かぼちたれ」ですか。大口をたたくことだそうですが、大口を実行するところが凄い。自己顕示欲の強い努力家が多い、との評判。
    
博多っ子は見栄っ張りで、目立ちたがり。博多ドンタクを見れば、なっとく。
でも、目立ちたがりは反面好奇心と進取の気性。それに、ボクの経験では人情に厚いよ。
      
最後にしとくけど、富山人。日本海側だけあって、無口で努力家。ただ、大きな家を建てないと気がすまないのが玉に疵。
これは疵ではなく、美徳かなぁ?
        
自分達のことは棚に上げては申し訳ないから、神戸っ子のことを言いますと、おっちょこちょいで、見栄坊。
港町の博多、横浜とかと共通性のある土地柄なんですね。
(中部、東日本のことは、そのうち研究して書きます。無視したんではなく、無知なんです。すみません。)