精神鑑定
       
池田市の小学校で痛ましい事件がおこりました。
この犯人は3年前に伊丹市の学校で用務員をしていた当時、飲み物に精神安定剤を混入した犯罪歴があるんですってね。傷害罪の前歴。
           
で、この事件を処理した伊丹の検察庁(神戸地検伊丹支部)は精神鑑定を尊重して処置入院とした時に、もっと何とかならなかったのか?って悔やまれますね。
         
でも、精神異常でなく刑事責任能力があるとして処分していたら、どうなったかと言うと、薬の混入程度では、ほとんどイタズラ犯ですから、うんと軽い処罰だったでしょうね。
現在の裁判の量刑では「懲役6月、執行猶予1年」くらいでしょう。
前科のないケースですから、或いはもっと軽かったかもしれない。
となると、ほとんど野放し。
         
だから、検察官としては、精神鑑定の結果を尊重して措置入院にした方がまだしも犯罪再発を防げると思ったんでしょうか。
           
問題の根本は精神病院の治療処置になりますね。
この男は入退院を繰り返して、今年の5月に退院をしていたようですね。
退院後1ヶ月もしないうちに、こんな大それた凶行におよぶキチガイを何で退院させたか、腹が立ちますね。
ボクの周りの町の人達の中には「自分の子供が、こんな目に遭わされて、犯人が無罪になったら、絶対殺しに行く」なんて言う人まであります。
ほんと、そんな気持ちになります。
        
ボクら素人は精神病院の医者は何で、大量殺人を起こす狂人を野放しにしたかって思いますが、精神異常の診断とか鑑定は難しいものらしい。
河合隼雄って精神分析の専門家がエッセイを書いておられます。
これを読むと「人の心は判らない、ってことが判っているのが専門家である」って書いてある。
となると、精神衛生学って何にも判っていない、ってのが真相らしい。
じゃあ、精神分析の専門家って何なの?って思えます。
そう、精神衛生学って「学」とは言えないなんて話までありますね。
           
精神衛生学の難しさは追跡的な分析が出来ないことだといいます。
他の医学分野では解剖とかの分析方法が可能ですがね。
            
科学の進歩は観測とか実験で正しいかどうかが裏付けられ作業仮説が確かめられ、さらに確かめられて、来たんですよね。
ところが、精神衛生って最も単純な薬の効果でも、その薬の薬効で治ったのか、たまたま時期が来て、自然に治癒したのか確認の方法がない、って言います。そう言われると、そうかもしれない。
          
先年、立花隆さんの「脳の話」って大部の本が出ました。
ベストセラーでしたから、お読みになった方も多いと思います。
      
ですが、あの本を読んで脳のメカニックについて、今の科学がこんなところまで行っていることは判りましたが、それだからと言って人間の心が判るようになったわけではありませんよね。
            
ボクたちが高校生の頃にフロイドの精神分析の本が出ましてね。もう、半世紀も前の話になりますが。
たしか、セックス衝動のリビドーで人間の行動とか心を解析する話でした。
まあ、高校生が読んだんですから、入門書だったんでしょうが、それにしても、高校生でも「人間の心ってこんな単純なものではない」ってみんなで思いましたね。
今から想い出しますと、当時はまだ「我思う故に我あり」のデカルト哲学の全盛時代でしたから意識で自覚できる以上の無意識の世界なんて、考えのそとだったのでしょうね。
その後西洋哲学とか精神衛生学とかで、やっと無意識の世界が問題になってきたのですか?
    
フロイドの本を読んだ高校生だった連中が当時、「人間の心ってこんな単純なものではない」って思ったのは東洋的な常識からだったんですね。
東洋的な常識から高校生でも、心には無意識の世界がある,って知っていたんですよ。しかも、セックス一元論ではかたがつかない世界がね。
            
その後、この無意識の世界のことは1000年も前に作られたお経に「阿羅耶識(あらやしき)」って書いてあるものだと知りましたが、これ、東洋では昔からの常識なんですよね。
        
話が唐突に飛ぶようですが、遺伝子の話。
遺伝子の中で意味があると思われているのは3パーセントだけで、後の97パーセントは意味のないジャンク(屑)ってことになっていますよね。
で、この97パーセンドの中身には、人間がアミーバみたいだった昔の遺伝子がいっぱいあるらしい。
          
とすると、お猿の仲間だったとかの時代の遺伝子もいっぱい詰まっていて、この意味のない屑遺伝子ってのが、無意識と関係しているのではないか、と思える。
このお猿の仲間だった時代の無意識が心に作用しているとなると、意識レベルでの診断で狂気を知るのは難しいでしょうね。
      
これで、犯人宅間を退院させて凶行に走らせた西宮の精神病院の無能さを弁護するつもりはないけれど、人間の心を知るのは容易なことではない。
精神衛生法は先年改正したばかりだけど、こんなケースをどうする?