花の話題
        
花の名前って大事ですね。
数年前に輸入された花にシネラリアって、美しい花があります。
でも、まったくハヤリませんでした。
これをサイネリアって名前で売り出したら、昨年からハヤリはじめましたね。
シネラリアって語呂が「死ね」になるでしょう。
これは進物にふむき、名を呼ぶ度に不吉ですね。
これの反対は南天。
ナンテンって、「難を転ずる」に通じるから、昔から好まれますね。
         
僕らは、この手の語呂合わせって好きですね。
例えば、柿ノ本人丸神社。
ヒトマルから「火止まる」で火災防止の神さん、更にエスカレートして、ヒト(ぅ)マルを「人生まる」になって安産の御利益があることにまでなっていますね。
        
次は語呂合わせではないんでしょうが、花は改良改名が盛ん。
花苗売り場に行くと毎シーズン見たこともない新種がでています。
          
花の品種改良は日本人の得意とするところでしたが、100年間ほど戦争と金儲けに明け暮れているうちに、ヨーロッパ、特にイギリスに大きな差をつけられました。
椿なんかその例ですか。
八重のや、美しい色のイギリスで改良されたカメリアが溢れています。ボクは昔の名前の椿で呼んでいますが、ずいぶん変わって里帰りしてきました。
でも、イギリスに行く前の一重の紅色の昔からの椿もいいですね。
そら、筒咲きの赤い藪椿も鄙びた風情があって。
       
ひなびた風情って言うと百合。あれ、名前が変わったのですか?
カサブランカって名前の花、あれユリでしょう?
ところが、カサブランカの雄しべについてる花粉は赤くないんですね。
そう言えば、ユリの花に触れて、赤い花粉が白いブラウスに付くと、汚れが目立って困りましたね。お客さんのシャツに付いて、慌てて拭くとますます赤い色が広がって恐縮したことってありません?
しかし、カサブランカは椿ですから香りはきついですね。
匂いの強い百合を狭い部屋に活けると、むせかえって、よわった経験ありません?
          
狭い部屋って言うと病室。入院している友人にお見舞って花がいいと思いつきますが、狭い病室に花を置くと匂いがすごい。きつい匂いの中で一日中寝ていると喘息みたいになるんだそうですね。
病気見舞いには細やかな配慮がいりますね。
ボクは、たいした知恵がないから入院見舞いには週刊誌を山ほど持っていきます。
貰った方は、「俺をこんなに知性のない人間だと、あいつは思っているのか?」って怒りながら、退屈しのぎに結構読んでいたりしてね。
         
そうそう、花粉で思いだしたのですが。
いつも散歩をする道筋は、どこの家もそれぞれに花を植えておられます。季節の草花だったり、花木だったり。
ところが、花の姿が年中まったくない家があるんです。それも永年。
この家の前を通るたびに「花ひとつないのは、何やら異様な感じがするなぁ」なんて悪口を言ってきました。
            
昨日、この家の前を通ると、バケツにアジサイの切り花を3本水浸けにして、表に出してありました。「当家は家族全部が花粉症ですので、どなたが下さったものか存じませんが、お持ち帰りください」って札を付けて。
多分、近所の方が紫陽花が満開になる季節に、黙って隣り近所に配られたんでしょうね。
この好意が、仇になったみたい。
      
花好きは、頭から「人間みーんな花好き」、「花きらいなんてこの世の中にいない」なんて決めてかかっています。
    
「人は皆、自分と同じ」だとか、「同じでないとけしからん」なんて思いこむのは無粋を通り越して、ごうまんなんですね。
こんなのを難しい言葉で言うと「多様性の許容がない」って言うらしい。
事情も知らないで、「花ひとつない家なんて」ときめてかかってきたことを、昨日から反省しています。