男子、厨房を覗く。
      
ええー、恥ずかしながら、私は厨房に遠慮しながら、出入りしております。
まず、干物の講釈。
           
電気乾燥の椎茸も袋ごと日の当たる縁側に、数時間放り出しておくだけで、味が格段によくなる話を前にしました。
       
で、次は魚の干物の話。
ゲス魚のアジ、イワシって豊漁の時のが一番美味い。
野菜でも、豊作の時のが美味い。
だから、豊作不況の時のを買えばいいようなものの、野菜は価格維持の為に現地で廃棄処分されてしまいますので、豊作廉価とはならないのは残念ですね。
ところが、魚は当日市場に出荷して初めて、各地とも豊漁だったことが判るのか、豊漁の日には安く店頭に並びます。
それに豊漁になるぐらい魚が豊かに育っているから、こんな時の魚は美味い。
           
で、これを干物にします。
道具は、「食器乾燥籠」って名前で売られている乾燥籠。
網製で1メートル立方ぐらいの大きさですが、蝿が入らないようになっています。価格は1000円位。
これを使うコツ。直に魚を網の上に乗せると、後を洗うのが大変。で、百円ショップで巻き簾を求めて、下に敷く。巻き簾だと取り出して簡単に洗えます。
         
イワシもアジも腑を取るだけです。まあ、ついでに頭も取ることがありますが。
アジは尾の近くにあるセイゴも取りません。食べる時に各人がとればいい。
さばく道具のことですが、刃渡り10センチぐらいで、「小魚用出刃」って名前で売っています。
価格は1500円でした。
        
この小魚用出刃は便利なんですよ。街で暮らしていると、魚を捌くと言っても、大きな魚を解体することはなく、せいぜい、鯵、鰯レベルの小魚。
少し大きな鯖だと切り身ですし、丸ごとの場合も「調理します」のサービスをしていますからね。
無理して、大きな出刃包丁を使うのは、慣れていないから危険。
だから、大きな出刃は不要ですが、出刃が一つないと不便ですから、小魚用だけは置いといた方が便利。それに、肉を小口切りするときも便利。
       
ところで、干す話に戻りますが、夕方から干せば、一夜干し。でも、日に当てると旨いですね。天日乾燥がお奨め。
      
ところが、上等の天日干しを食べると、旨いことはうまいけど、しっぽとかの身の薄いところはカチカチになっています。これが苦手な家では、夜間の一夜干しがいいですね。
もちろん、買ってきて夜間干して、そのまま翌日も忘れていて、結果的に、天日干しになっていたなんてことになってもかまわない。
それもまた良し。
          
包丁の話のついでに、菜切り包丁。これは合わせ包丁が最高ってことになっています。
「合わせ」って言うのはステンレスの間に鋼が挟み込んであります。刃の部分が鋼ですから、これはよく切れる。ですが、錆びます。錆びるってことは、それだけで刃が鈍るってこと。
ですから、週に1回は研がなければなりません。刃が鋼ですから、研ぐには力と根気がいります。それに砥石が。
    
今はステンレスの材質が良くなりましたので、5000円もする合わせ包丁にこだわることもないように思えます。
その代わり、ステンレス包丁は毎日研ぎたいですね。
セラミック製の2,3百円の簡単な研ぎ器がありますから、前に置いといて、使う前に1度引くだけでいいんじゃあない?
        
職人さんの仕事を見ていると、しょっちゅう研ぎます。あれ、作業を軽やかにするコツらしい。大工仕事でもね。
        
刺身は切って売ってますが、あれだけは柵の塊を買ってきて、食べる直前に切りたいですね。
全然味がちがいますよ。
       
ところで、刺身包丁。
あれ決してプロ用の長い、全部鋼のを買ってはなりません。
僕は失敗したことがあります。長いから、家庭の台所では向こうにつかえて使いにくい。
もっと短い、家庭用の刺身包丁を作ってくれないかなぁ。
      
でも、菜切り包丁とか、小魚用出刃で切っても、お店で切り分けてあって、風にあたった、一夜干し風の盛り合わせの刺身よりは、ハッキリ旨い。ホント。
        
ボクが愛用する簡単料理を紹介します。
二つとも、ソバの話。
卵のテンプラ。汁ソバの具に卵のテンプラを使います。
目玉焼きを、油を多くして揚げるだけ。油は5ミリの深さにします。
これは、目玉焼きとは違ってヒックリ返した方が美味しい。
端になる白身の部分がカリカリになるようにするのがコツ。
葱を乗せるのが正統でしょうが、ボクは下ろし大根が好きです。
      
次は鰻ソバ。いわゆるブッカケ。
ブッカケる具に鰻の蒲焼きを短冊に切って乗せるだけ。
これの正統は長芋を千切り状にして加えますが、下ろし大根でも旨いですよ。
(ブッカケなんて下品なソバの食べ方を、ご存じない人のために念のため説明しますと、ざるソバの上に汁をブッカケます。ダシ汁はザル用を倍にのばしたのが良いみたい。)
           
実は、これは京都のブライトン・ホテルの裏のソバ屋で知りました。
ホテルに泊まっても、高いレストランで食事しないで、近くの食べ物屋ですますのがホテル利用のコツじぁない? 或いは、ただのケチかなぁ。
      
で、考えてみると、麗々しく包丁の話から始めた割に、インスタントお総菜に終わりました。で、後かたづけは女房に頼みましょう。
竜頭蛇尾的料理番組。題して、厨房を「覗く」。