がんもどき
  
マドリッドの街角で、メリケン粉をボールにしたものを揚げて、砂糖をまぶして売っています。
あれ、確かヒロウスか、それに似た名前でした。
ロシアでピロキシって言う揚げ菓子がありますね。
あれとは関係がないのかしら?
         
ロシアのエカテリーナ女王は、もとはプロシャ貴族の娘さんですよね。
だから、食べ物にもヨーロッパから行ったものが多いって聞きますから、ひょっとしてヨーロッパ全体に、揚げ菓子があって、ピロキシも、その一つかもしれない。
         
揚げ菓子って言うと、お総菜のコロッケに似たものがフランスにもありますね。
確か、クロッシェって言ったと思うけど、ジャガイモのマッシュしたものをボール状にして揚げただけで、中に挽肉とかが、入ってなくってガッカリしたことがあります。
       
もどってまで、横道にそれますけど、ここまで来てエカテリーナから思い出したんだけど、「エカテリーナの別荘」って言葉がありますね。
あれ、女王が別荘に舟で出かける途中に、貧しい農奴小屋があったんですって。
大臣達にしたら、農民が貧しい暮らしをしている失政をとがめられるのを恐れて、小屋の水路側を大きな看板で覆い、これに邸宅の絵をかいたらしい。
「民は、あんなに立派な家に住んで、豊かに暮らしています」って、表面をとりつくろったとか言います。
         
いまでも、シモタ屋の表に看板状の板をかぶせて、洋館ふうに取り繕っている喫茶店なんかがあるでしょう。あれ。
          
これ正確に言うと「エカテリーナの別荘」って言わないで、「エカテリーナが別荘に行く途中の農奴のまがい物の小屋」とでも言うべきなんだけど、日本人は勘がいいから、省略して使っていますよね。
今日はとりわけ取り留めのない話になってしまっていますが、ゴメンなさい。
          
又、遙かにもとに戻って、ヒロウスの話ですが、雁もどきのことを飛竜頭って言うでしょう?
あれポルトガル語のヒロウスが語源だと言いますねぇ。
多分、ヒロウスとガンモドキの形が似ていることからの転用が、語源とかいいますね。
        
ところで、「雁擬き」って書くけど、あれ、鴨肉とは味も形状も、似てないでしょう?
何で、もど(擬)きって言うんかなぁ?
あなた、おかしいって思ったことない?
あれの当て字は今は「擬き」って書くけど、もとは「挑き」って書いていたらしい。
鴨って美味の代表。意地の悪い言葉に、「ひとの不幸は鴨の味」って言いますよね。
「がんもどき」って、鴨の味に負けないほど旨いってことから「雁挑き」って命名されたものらしい。
これの語源詮索は柳田国男がやっているから、まず信用していい。
            
もどきの語源詮索に出てくるのに「梅もどき」があります。あの花って梅とまぎれるほどは似てないですよね? 早春の庭で、咲く梅擬きは、梅に似ているから擬きではなく、負けないくらい綺麗だって言う表現だといいます。
       
役者もどきとか芸者もどきって言葉まであるらしい。
素人芝居では「いょお、大統領」なんて、大向こうから声がかかるけど、あれも擬きって意味かも知れない。大向こうの声でポビュラーなのは音羽屋ですが、あれ、「ンわやぁ」って発声するものらしい。
この脱線、どこまで行くことやら。
          
鴨って言うと「鴨なんば」。あれ、もとは鴨肉と青ネギのこと。青ネギは大阪の難波の名物だったらしい。
しゃれて青葱のことを「難波」っていったとか。
これのもどきが、「かしわ南蛮」。青ネギの代わりに白ネギ。これは表面を焼い使いますねぇ。
これも旨い。
で、鴨難波が「鴨なんばん」になって、更に「かしわ南蛮」になったなんて、モドキも、ここまで行くと、無責任でおもろい。