定年コート
           
近頃の定年退職者が、よく着ている短いコートを揶揄して定年コートって失礼な呼び方がありますね。
でも、あれは便利。
長いコートは裾にまとわりつきますが、短いと軽快ですよ。
実はボクも愛用しています。
     
ところで、定年退職って、英語風に言うとリタイア。
欧米では、待ちこがれて、いざ退職ってことになると友人達が集まって盛大にお祝いをするそうですが、日本では、なんとも陰気な雰囲気がありますねぇ。
社会から、もう役に立たなくなったと宣言された風のね。
     
今風に言うリタイアは江戸時代から、大正のころまでは、隠居って呼ばれましたねぇ。
仕事を息子に譲って、のんびりと盆栽でもいじって気ままに暮らす。
いいですなぁ。晩年はあれでなくっちゃ。
         
隠居でも生臭いのは、根岸あたりに常磐津の師匠でも囲ってなんて人もあったようだけど。
もっと、凄いのになると院政をしいた後醍醐さんとか、ケ小平さんみたいに生臭い人もいたけど、毛沢東みたいに隠居も院政もしないで、出しゃばるのはよくないですねぇ。
秀吉も、先人の知恵にならって隠居しておけば権力亡者になって、老害をまき散らすこともなかったでしょうにね。
     
家康は賢いから、さっさと隠居しましたねぇ。しかも、江戸から離れて駿河に行きましたね。
江戸にいるとどうしても、日常のルーティンな用務に忙殺されますから、これから離れようとしたんでしょうね。
外にいて、たっぷり時間がある状態ですと、二代将軍秀忠にも冷静な、いいアドバイスができたんでしょうね。
年を取ると少々知恵も出来ますが、何時までも多忙のなかにいると、下手すると、世間から遅れたただの頑迷固陋になってしまいます。
江戸時代って、鎖国していたし、経済も社会も全く動かなかったように思えるけど、それはそれなりに変遷していたそうですしね。
           
だから、忙殺されている老人には世の中の変化が見えてきませんから、何時までも頑張っていると、よほど英知にあふれた人でも時代から取り残されてしまうことになったらしい。
少し離れて世の中を見る隠居って、知恵なんですね。
         
定年コートでも着て、桜見物、美術館めぐりもいいではないですか。
でも、金に飽かせて孫に玩具を買え与えすぎて、スポイルしないように気をつけましょう。エヘヘッ