やっぱり、狼は出た
       
「沈黙の春」って20年前に出た、環境問題の古典があります。
これを非難して、「狼少年物語」だとする本を見かけましたので、一言。
沈黙の春をよく読むと、狼少年の「狼が出た」なんてほど、嘘が書いてあったようにも思えませんし、その後の情報から、最近翻訳された「奪われた未来」って本も、「沈黙の春」とは観点が違いますが、狼少年の嘘とは言い切れないところがあるように思えますが。
それにしても、狼少年が「狼が出た」と言っているかぎり、狼は出ない、とは言い切れない。
あの寓話でも、最後には本当に狼が出てきたんですからね。
            
何の話かといいますと、ここ30年ほどで細菌とかウイルスとかの微生物の様子が、過激になってきました。デボラ熱から始まって、エイズですねえ。
エイズなんて、何処から出てきたのか全く不明。
3大陸で同時に出現した。同時に出現したと言うのは正確ではなく、3大陸で平行して突然変異を起こして、猛烈な状況になったというべきでしょうか?
              
本論から横道にそれるようですが、血友病の人達に気の毒なことになった、血清のことですが、阿部医師の酷い仕打ちがありましたね。
別に阿部先生、元センセイですか、の肩を持つわけではありませんが、医師とか医学者って意外に公衆衛生のことに無知ですね。
阿部元センセイは、公衆衛生の無知に加えて、1950年代の医学生ですね。50年代の医学者には抗生物質とかの薬剤万能信仰がありました。
正確には、この頃の医師にはありました、ではなく今でもありますかね。
       
昔から「弁護士は老人に、医師は若者に」って諺がありますが、医師は老化すると新しい情報にうとくなりますね。
阿部元センセイは、薬剤でどんな病気でも、問題がない、近代医学は万能であるとの信仰に凝り固まっておられたようですね。だから、エイズ問題が出てきたときにも敏感ではなかったように思えるんです。
そこへ、血清業者とつながりがあれば利益誘導的に「たいしたことない」って考えたんでしょうねえ。
と言っても、こんな考えを擁護するつもりはありませんが。
狼少年が「狼が出た」と言っているかぎり、狼は出ない、との考えも擁護するつもりもありませんが。
        
まあ、話の前置きとして、日本だけに限らず、頼りにしているアメリカの公衆衛生も、お寒いかぎりだそうですねえ。
だいたい、学生は公衆衛生専攻を選んでも、生活できないし、将来も望めない、というんです。
同じ医師の資格なら、若い人が、将来を約束された臨床とか、基礎医学を選びますわなア。
僕だって、医師になるんなら、将来が不安な公衆衛生学を選ぶなんて、立派なことは、ヨウ言わんなア。
僕は自信ない。ほんとうのところ、貴方、どう?