変身願望
           
また、バイ菌の話をしてごめんなさい。
騒いで、狼少年になるつもりはないんですが、バイ菌って身近な生きる智恵にかかわりますので、また喋ります。
               
たとえば、O157ーHR。もとをたどれば只の大腸菌。
「料理の中から大腸菌が発見された」って云うと、これだけで、今にも死にそうになりますが、人間の腸の中には1キロを越える大腸菌が住んでいて、これがないと、人間は生きていけないらしい。
                
大腸菌が発見されるというのは、その他の菌に汚染されているメルクマールに過ぎないそうですが、大腸菌を検査するのが簡単だから、汚染を調べるのに大腸菌検査をするらしい。
でも、大腸菌でも、O157は別格。
無害、時として有益な大腸菌の中で、なぜ悪魔のO157が出来てしまったかと云うと、抗生物質の過剰投与がもとらしい。
           
一昔前には、お医者さんは、何かというと、ワンサカと抗生物質を帰りに持たせてくれました。
それも、薬の包装には何故か何にも書いてない薬。そのうち、皆が不安になって、薬の暗号解読本まで出ました。
お医者さんにもらったワンサカ薬を飲むと、なんやらお腹が膨れてきた経験、貴方ない?
あれが、ワンサカ抗生物質の最も単純な副作用。
腸内細菌が死滅してしまって、消化不良になる。
死滅してしまうのは、何故か善玉細菌だけ。悪玉は死なない。
悪玉が死なないのは、抗生物質にやられないように変身するらしい。
              
だいたい、抗生物質って、土中に住む酵母菌が、自分のテリトリーを守るために、周りに吐き出す毒だそうですね。寄ってきたほかの細菌をやっつける為に。
ほかの細菌にやられないようにする自衛的毒を、人間が病原菌をやっつける為に探し出して、抗菌剤として使っているらしい。
            
何億年の昔から、自衛する奴をやっつけて来ての、せめぎあいが細菌の淘汰の歴史でしょうねえ。
これは素人でも判る。
土中でのせめぎあいでは、周りにはたいした道具がないから、変身するのはゆっくりとしか出来なかったけど、人間の腸のなかには、遺伝子の断片がうようよしているそうで…
悪知恵に長けたすぐれものは、この断片遺伝子のカケラを選んで、自分の遺伝子に組み込むらしい。
薬剤耐性ってのはこのようにして獲得するらしい。
僕たちは、別に大腸菌をやっつける為に、抗生物質を飲んだつもりはないのに、大腸菌にすれば、仲間がやっつけられるから、変身しますよね。
              
中には、変身しすぎて、赤痢菌同様の毒素をだしてしまう、悪魔に変身したやつがいた。
これがベロ毒素を出す悪魔のO157の誕生物語らしい。
大腸菌はどこにでもあるってことは、生存力だけは、優れものだから。
         
大腸菌はこの生存力の才能だけで、ほかに大した能力がなくても何億年も繁盛してきたと言います。
O157は、この生存力に優れた先祖の遺伝子はしっかり残して、それに悪魔のパワーを身につけたから、これは凄いことになった。
                 
それに、癌パニックで、食品に保存料を使わなくなった。保存料に慣れてしまっている、調理場は油断になれてしまっている。
塩素化合物に発ガン性があるとなると、水道消毒の塩素まで目の敵にしてしまった。
この悪循環を断ち切る方法は、すぐには見つけられないみたい。
自衛としては、弁当持参をするしかないのかなア。