女は死なない忠臣蔵
          
忠臣蔵って、男はみんな死ぬのに、女は誰も死なない、って云う不思議な物語ですよねえ。
忠臣蔵が、師走の風物詩になって、久しい。
男は死ぬ、女は死なない、男女不平等ばなしなのにフアンは別に男女に偏っているわけではなさそう。
          
忠臣蔵事件って言うか、赤穂事件って言うかが起こったのは1701年。
最初の劇化が、1748年の大阪竹本座での人形浄瑠璃・仮名手本忠臣蔵。
ロングランって言ってもいいぐらいのロング人気劇。
             
まあ、ハムレットは毎日、世界中どこかの劇場で上演されているそうだから、「ハムレットには及びもないが、せめてなりたや忠臣蔵」ってのが、シナリオライターの夢でしょうねえ。
            
勘平なんて、おかるとイチャイチャやっていて、主君の大事に間に合わないワ、討ち入りにも入れてもらえないワ、で、女と仲良くしているのは、男にあるまじき軟弱さ、ということになっているらしい。
              
でも、今の若い人達は、「今日は、結婚記念日ですから」って残業を断るのがいるそうだから、勘平のザンキ(慙愧)なんてわからんでしょうね。
山場の一つに、「南部坂、雪の別れ」がありますが、浅野匠守の奥方「瑤泉院が、大石が討ち入りの血判状を持って別れにきているのに、ナーンもわかっていない、イライラ話。
現実の世界では「ナーンもわかっていない」のは男ですのにね。
          
男は死ぬ、女は死なない、男女差別ばなしで、連想するのは、団体旅行に出会うと、男ばっかりの団体か、女ばっかりの団体になりますね。
                   
男女別行動をホモ・ソウシャルと文化人類学では呼ぶらしい。
ホモ・ソウシャルって云うと、アラブの世界ですか?
男どうしで手をつないで歩いているのは、異様に感じますねえ。
日本のはホモ・ソウシャルって言っても、男どうしで手をつなぐことはありませんが、女性の団体では、女どうしで手をつないでいる人が時々ありますね。
               
僕たち夫婦は、旅行するのは夫婦で行きますが、女房の友達は、えらく同情して「亭主と旅行しても、面白くないでしょう?」って訊いてくれるらしい。
            
又、よく聞くのは「うちの亭主は、会社人間です」とか「会社が恋人ですねン」って云う話。
もっと酷いのになると「亭主、元気で留守がいい」なんて、端唄みたいなのがある。
           
男が、会社への滅私奉公で生きてきた時代が永かったが、女性の社会進出が多くなった現在では、女性もけっこう会社人間の人が多いみたい。
役所のキャリアの女性が課長になられたので、お祝いに絵を送ったら
「部屋にこの絵を掛けるに相応しいように、部長に、キットなってみせます」
なんて言われて、面食らったことがあります。
なるほど、役所に絵を掛けるには、個室に座れる部長でないと様にならないんですワなあ。
            
組織への帰属意識に生きてきた人達が、忠臣蔵フアンなのはわかるけど、家庭の主婦にも、忠臣蔵に人気があるのが、もう一つわからない。
それに、会社への滅私奉公思想がなくなっても、暮れには忠臣蔵が掛かるのは続くのかなア。