R & B
其の八 狂愛


 シルビア・スカジィルとラーン・エギルセルはようやく、超巨大航空母艦『ガルム』の最深部に辿りついていた。
 目の前にある両開きの巨大な扉を押し開く。
 同時に、咽ぶようなにおいが、流れ出てきた。
 シルビアは思わず、顔を顰めた。
 ラーンも、シルビアほどあからさまではではないにしろ、不快感に耐えきれないように微かに眉を寄せる。
 二人とも、よく知っているにおいだった。
 鉄分の含まれた液体のにおい。
 そして、死を意識させるにおい、だ。
 二人が鋭い眼差しを扉の内部へと向けると、広間になっているのがわかった。
 そして、すぐに視界に入ってきたのは、床一面に広がる巨大な魔法陣だった。
 魔法陣は、広間に充満しているにおいのもととなっている真っ赤な色の液体――血液で描かれているようだ。
 そして、その中心には、血に塗れた一本の剣が突き刺さり、傍らには喪服のような黒いドレスを纏った長い黒髪の女性が、入口に背を向けて立っていた。
 シルビア・スカジィルもラーン・エギルセルも、その女性には見覚えがある。
「ブレイザブリク!」
「お久しぶりね、シルビア・スカジィルに、ラーン・エギルセル」
 ナンナ・フォン・ブレイザブリクが、闇色の髪と対照的な青白い顔だけでゆっくりと振り向いた。
 その声は、すべてを包み込む闇のような美しい響きを持っており、動作に流れた艶やかな烏色の髪の間から垣間見えた白いうなじは、ゾクリとするような色香を持っている。
 シルビアのこめかみを冷や汗が伝い、ラーンの背筋に悪寒が走る。
 目の前の闇を具現化したような女性に、威圧感はない。
 それでも、二人の本能は、ナンナの危険な雰囲気を感じ取っていた。
 まとわりついてくるドロリとした重い空気を振り払うように、シルビアは頭を振った。
「ブレイザブリク。コノ艦に乗り込んだ時は、降伏を勧めてやろうと思っていたけど、今はもう、テメーを許す気はナイぜ」
「……もしかして、ベオを捨て駒にしたことを怒っているのかしら?」
 未だ顔だけで振り向いたまま、ナンナは闇よりも深い漆黒の視線を二人に向けて問いかけてきた。
「よくわかってるではありませんか」
 水のように冷たい平板な声でラーンが応じる。
 そこに潜んでいる微かな怒気に、もちろんシルビアは気づいている。
「言い訳をするつもりはないし、悪いことだとも思っていないわ。それだけのことができる地位と権力が私にあっただけ。ヒルダ・エッシェンバッハだって同じようなものでしょう。『裏切り者』のあなたたちの命は軽いと考えて、激戦となる最前線に投入しているのだから」
 嘲弄と蔑みの色を黒い瞳に浮かべながら、ナンナ・フォン・ブレイザブリクは、権力とは目的を達するために行使するものだと、自身の正当性を主張する。
「それはまた、万が一、あなたたちが私を討つことができたとしても、あなたたちの手に入れる名声と功績が、あなたたちの寿命を縮めることになることも示しているわ。もちろん、凱旋した直後は、あなたたちは称賛されるでしょう。しかし、時間が立てば、エッシェンバッハにとって、あなたたちの存在は目障りになる。でも、それも、エッシェンバッハにとっては正当なことよ。自分の運命を切り開くということは、他者の運命を踏み躙るということであり、自分の理想を貫くとは、他人の理想を粉砕することですもの」
 一歩踏み出し、シルビアは逆にナンナを煽るような目つきで言った。
「テメーが言った通り、アタシたちは『裏切り者』だぜ」
「制裁を受ける覚悟で組織に舞い戻ったのです」
 ラーンも流れるように、相棒の言葉に続く。
「テメーの言葉なんて」
「『今さら何を』というところです」
 迷いも、淀みもない二人の反応に、ナンナもまた、特に驚いた様子は見せなかった。
「……さすがに覚悟は決めていましたか。この程度の揺さぶりでは動じない、と。もっとも、あなたたちが、私の命を断つということはできないわけですから、意味のない覚悟ですけれど」
「命を断つことができない?」
「アタシとラーンに勝てるって思ってるのか、ド素人が?」
 ふ、ふ、ふ……。
 ナンナが不気味に、しかし、美しく、嗤う。
「根本的に勘違いをなさっているようですね」
「勘違い?」
 不審がる二人の前で、美しい嗤いを形作っている唇の端から、ツッっと赤い筋が流れ落ちた。
 気づいたように、白い手でそれを拭う。
 しかし。
 ごふりっ。
 大量の血が、ナンナの美しい唇を割って出た。
「なっ?」
 さすがのシルビアも面食らい、ラーンも絶句する。
 だが、しかし、ナンナは落ち着いた声音で言った。
「驚きましたか。私の腕ではどう足掻いてもあなたたちには敵いません。私の目的はすぐに叶う。無駄に時間を浪費する必要をなくしただけのこと」
 そう言って、ナンナはようやく、全身で振り返った。
 そのドレスの胸部には、剣で切り裂いたような裂傷が深々と刻まれていた。
 真紅の血液が溢れ出し、胸もとを濃く染め上げている。
「何しろ、あなたたちの師匠がバカな考えさえ起こさなければ、このような遠回りをする必要もなかったのですから」
「何を言っている?」
 理解できないという顔をしているシルビアとラーンの様子を見て、ナンナは美しい顔から嗤いを消した。
 暗闇の色をした瞳に、暗闇よりも深い闇色が浮かぶ。
 それは、憎悪。
 圧倒的殺意に塗り固められた憎悪が、そこにあった。
「"獄炎の魔王"ランディ・ウェルザーズが、"白銀の魔女"シャロル・シャラレイが、そして、あなたたちの師シンマラが、自らの運命を切り開き、自らの理想を貫いたことが、私を狂わせた」
 そう言うと、ナンナは自分の漆黒のドレスの胸もとを引き裂いた。
 華奢な胸もとが露わとなるが、同時に刻まれている裂傷もその姿を現した。
 その裂傷は深く、体内の筋肉や骨はおろか、ドクッ、ドクッ、と、生々しく鼓動している心臓さえも、見えている。
「バ、バカな。……自分で胸を切り裂いたのか?」
 シルビアとラーンの両目はこれ以上ないほどに見開かれている。
 敵対する一派の領袖。
 そのナンナ・フォン・ブレイザブリクが、戦うことすらせずに自らの胸を切り裂いていた。
 自決?
 追い詰められたから?
 違う。
 彼女は言った。
 ――目的は叶う、と。
「この魔法陣を私の血で描くために。そこに突き刺さっている魔剣『ミスティルテイン』で、ね」
 ナンナは、魔法陣の中心に突き刺さっている漆黒の魔剣を、血に塗れた細く長い指で示した。
「そして、私の命こそ、最後の捧げものなのです」
 魔剣『ミスティルテイン』を指差した後、無造作に右手を、血の溢れ出る左胸の裂傷に突き入れた。
 ミチ、ミチ、と、傷の周りの肉の裂ける不気味な音が、響く。
 だが、ナンナは平然としていた。
「すべては、私の愛するバルドルさまを復活させるため」
「バルドルだって?」
 ――バルドル。
 その名に聞き覚えがある。
 だが、思い出せない。
 シルビアにとっては、重要な知識ではないのだろう。
 思い出せないでいる赤毛の相棒の代わりに、衝撃の光景に蒼ざめていたラーンの顔色が、さらに青白く変わった。
「バルドル……ナンナ・フォン・ブレイザブリク……、ナンナ……まさか……、ブレイザブリク、あなたは……!」
「そう、私は、『ナンナ』。光の神が伴侶。哀しみにて胸が張り裂けしもの」
 その身を襲っているだろう激痛をおくびにも出さず、淡々とナンナが答える。
 光の神という言葉を聞いて、シルビアもようやく思い出した。
「思い出したぜ。"光神"バルドル。北欧神話の主神オーディンの息子か」
 主神の長男にして光を司る存在といわれるが、神殿も信仰の形も残らぬ謎多き神――バルドル。
「盲目の弟神ヘズに『ミスティルテイン』で殺され、"神々の黄昏(ラグナロク)"後の新世界において復活するといわれている神だな」
 ラーンが、シルビアに頷く。
「そうよ、お嬢。バルドルの死は神々を大いなる悲哀に陥らせた。万物が彼の死に涙を流せば、冥界から現世へと戻るはずだったのだけど、ロキの策略のせいで、甦ることができなかった。でも、"神々の黄昏"によって一度滅んだ後の新しい世界でバルドルは復活し、再び世界を照らすこととなるといわれているわ」
 バルドルの死後、"大いなる冬(フィンブルヴェト)"がやってくる。
 雪が降りしきり、霜がすべてを凍らせる厳しい冬が三度も続くが、夏は一度も訪れない。
 人々の倫理観は崩れ、太陽と月が魔狼に飲み込まれ、天から星が落ち、地は震え、あらゆる生命が滅びる。
 そして、"神々の黄昏"と呼ばれる神々と巨人の最終決戦が起こり、"獄炎の魔王"スルトの放った炎によって世界は焼き尽くされて終焉を迎えるのだ。
 しかし、戦いの後に緑なす大地が現れ、冥界から戻ったバルドルが、新世界に光をもたらすという。
「バルドルには妻がいて、夫が埋葬される姿を見て、悲しみのあまり胸が張り裂け、死んでしまったとされているわ。その妻の名が、――『ナンナ』」
「それが正しい運命の潮流でした。"獄炎の魔王"スルトの手による『世界浄化』が完了した時こそ、バルドルさまは復活するはずだった。世界が崩壊した後、『レーヴァテイン』の魔力によって『新世界構築プログラム』が作動し、復活するはずだった」
 ――そのはずだった。
「でも、あの魔王、そして、運命神(ノルン)の操り人形だったシャロル・シャラレイが反旗を翻したせいで、世界は生き残った。生き残ってしまった」
 ――生き残ってしまった。
 そう言ったナンナの声は、わずかに震えていた。
 痛みのためではない。
 憎悪だ。
 憎悪で震えているのだ。
「そして、あなたたちの師が『ヴィーグリーズ』を裏切ったために、『レーヴァテイン』さえも失われた。『新世界構築プログラム』が作動しなくなってしまったのよ」
 ナンナの瞳の闇が濃くなる。
 その視線だけで、すべてを闇に吸い込んでしまいそうな、濃い暗黒が、シルビアとラーンに向けられる。
「バルドルさまが! バルドルさまが生き返れなくなってしまったのよッ!」
 闇色の長い髪を振り乱し、闇色の情念を吐き出すように、甲高い声で叫ぶ。
「ですが、私は、この『ミスティルテイン』を手に入れた。世界を綻ばせるチカラを」
 そして、すぐに落ち着いた声に戻った。
「『世界樹(ユグドラシル)』の発生、『終焉の魔龍(ニーズホッグ)』の現出、『魔界(ムスペルヘイム)』の浮上等が短期間に勃発し、この世界にはまだ可能性があった」
 ごふりと、血を吐くが、まるで気にも留めていない。
 双眸の奥の闇だけが変わらずに、呪いの視線を送ってくる。
「ブレイザブリク、あなたは……世界の変革を求めていたのではなく……」
「私の目的は、初めからただ一つ。バルドルさまの復活だけ。そのために、混沌の瘴気が残るこの世界で、無数の生命をすり潰し、"神々の黄昏"を疑似的に起こさねばならなかった」
「そのために、この動乱を……!」
「ベオをはじめとする私の部下やあなたたちのような有数のチカラの持ち主が集まり、この『ガルム』での戦いは精神と生命を散らせる場として最高の舞台になりました」
 ナンナ・フォン・ブレイザブリクは、運命神の呪縛からこの世界を解き放つための闘争の継続という急進派の思想から、動乱を引き起こしたのではなかった。
 まったく個人的な理由から、急進派を扇動し、穏健派と対立し、両派を戦わせ、多くの犠牲を生み出したのだ。
 しかし、彼女に悪びれた様子は欠片も見えなかった。
「どうせ、バルドルさまが復活すれば、この世界は新たなものへと造り変えられるのです。それもまた変革といえるのですから、死んだ部下たちも報われることでしょう」
「……世界を滅ぼす気なのか」
「バルドルさまの復活のためなら」
 高低の定まらぬ声で、ナンナが答える。
 シルビアとラーンは、気づいた。
 ナンナ・フォン・ブレイザブリクは、壊れている。
 壊れてしまっている。
 彼女はもう、かつて、総帥ランディ・ウェルザーズに見出され、第一秘書ミリア・レインバック、第二秘書ヒルダ・エッシェンバッハと並び称された才女ではない。
「讃えなさいッ! 光の降臨をッ! 祝福しなさいッ! 光と闇の邂逅をッ!」
 ナンナが裂傷に突き入れていた右手を引き抜く。
 その手に、心臓が握られていた。
 ナンナの、心臓が。
 ドクッ、ドクッ、と、鼓動している心臓が。
 ナンナは自分の心臓を天へと捧げるように、頭上へと掲げた。
 心臓の無くなった彼女は、しかし、倒れず、亡くならず、意識を失うことさえなかった。
 シルビアとラーンが、その姿に、総毛立つ。
 グレンデルを屍人と化した死霊魔術(ネクロマンシー)ではない。
 不死者の王(ノーライフキング)への転生術でもない。
 不死身の体質でもない。
 ナンナ・フォン・ブレイザブリクの死なない理由は。
 執念。
 執念だ。
 執念なのだ。
 執念が、彼女を死なせない。
 執念が、彼女を立たせている。
 その執念の怪物が、超巨大航空母艦の天井のさらに上にある天へと祈る。
「さあ、私が心の底から望んだ(とき)です」
 そして、毒々しいまでの歓喜の口調で、発する。
 儀式を完了させる最後の言葉を。
巨人の知恵者(ヴァフスルーズニル)も知らぬ『オーディンの囁き』の内容を知る者は、大神だけに非ず。秘密の囁きを知るもう一柱の神よ、今こそ復活を!」 
 魔法陣が脈動し始める。
 何本もの光の柱が魔法陣から、立ち昇っていく。
「まずい……!」
「儀式が……!」
 シルビアの赤髪とラーンの蒼髪が同時に揺れる。
 血も凍るような悪寒を抑え込み、駆け出す。
 だが、彼女たちの動きは、ナンナには届かない。
 暴風が巻き起こり、二人を魔法陣へと近づけさせない。
「ふっ……ははっ、あははははははははははは!」
 何本もの光の柱に囲まれたナンナ・フォン・ブレイザブリクの狂った笑い声だけが聞こえてきた。
「バルドルさまバルドルさまバルドルさまバルドルさまバルドルさまぁっ! あははははははっ、バルドルさまの復活ですわぁッ! あははっ、あははははははははははッ!」
 光は勢力を増し、魔法陣の全体から伸びる巨大な一本の柱と化す。
 そして、轟音。
 激震。
 広間の天井を、否、航空母艦『ガルム』の上層部をも吹き飛ばし、巨大な光の柱は天空へと伸びて行った。

 ――すべての音が消える。

 ――訪れる、静寂。

 ――そして、天空より、舞い降りる。

「我は光」
 眩いばかりの光の柱の中に、人影が動いだ。
「我は万色の神。大神オーディンが長子にして、至高の座に昇るもの」
 光の中から歩み出たのは、すべての美を凝縮したような存在。
 世界さえもたじろぐほどの神々しい美男子。
 虹色の髪、角度によって無限の色を発する瞳、白磁の肌に黄金の衣を纏っている。
「すなわち、我は……」
 謳うように言葉を紡ぐ声音さえも美しい。
「バルドルである」
 スッと音もなく光の柱は消えた。
 だが、眩い。
 バルドル――彼そのものが輝いているのだ。
「光の神」
「バルドル」
 思わずシルビアとラーンが呟くと、神の名に反応したかのように大気が震えた。
 光神の万色の瞳が、見つめてくる。
 美しい。
 しかし、その完全なる美しさが――神威となり、シルビアたちを圧迫する。
 再び、航空母艦が震える。
 空間が震える。
 次元そのものが震える。
 神の美しさに鳴動する。
 慄き、畏れる。
 脅迫的な美しさに竦まされる。
 ――刹那の後。
 バルドルの全身から閃光が迸り、莫大な光の奔流となって、心身の凍りついているシルビアたちを撃った。
 咄嗟に、シルビアはフランベルジュで防御の構えを取り、ラーンは正面に水の盾を展開した。
 だが、神の光は桁外れのチカラを持っていた。
 信じられないほど強烈な衝撃に襲われ、防御を粉砕される。
「くあああああっ!」
「うあああああっ!」
 二人は吹き飛ばされ、『ガルム』の壁に叩きつけられ、がくりと項垂れる。
 だが、崩れ落ちることはなかった。
 全身が航空母艦の固い壁にめり込まされていたからだ。
 そう、まるで、磔にされ、処断を待つ罪人のように。

「我が妻ナンナよ」
「バルドルさま」
 バルドルは最愛を込めて、悠然とナンナに口づけをする。
「私の闇をお受け取りください。これであなたさまは完全にして唯一絶対の『新世界(ユミル)』へと昇華なさいます」
 心臓を、バルドルへと差し出す。
「ナンナ……」
「よろしいのです。私はこの一瞬、あなたさまと顔を合わせる瞬間のためにだけ、すべてを捧げると決めていたのです」
 ただ一瞬。
 ただ一目。
 もっとも愛するものと再会を果たす。
 世界が崩壊しようと、数多の生命が失われようと、愛おしい存在と肌を合わせる。
 そのためだけに生き、そのためだけに死ぬ。
「私の胸が張り裂けねば、バルドルさまは復活できず。バルドルさまが降臨なされば、私の胸は張り裂ける。私とあなたさまはいったいであるがゆえに」
「愛している」
 光の神は短い言葉で最愛の妻へ想いを伝える。
 それは言葉にせずとも伝わっているものだったが、あえて口にした。
「愛しています。この世界を滅ぼし、新たな世界を創造してください。その……世界で、……またお会いできる……日を、……お待ちして……おりま……す……」
 ナンナもまた、最後の気力で想いを言葉とした。
 バルドルが心臓を受け取ると、ナンナはゆっくりと夫へと崩れ落ちた。
 そして、光の中へと溶けていった。
 心臓だけが、光の神の左手の上で鼓動を続けている。
 万色の瞳はそれをしばらく見つめていたが、やがて、床に描かれた魔法陣の中心に突き刺さっている『ミスティルテイン』の柄を右手で握った。
 そして、一気に引き抜く。
 同時に、ナンナの心臓から、鼓動に合わせて闇が吹き出し始める。
 それは深淵の闇。
 まったき暗黒。
 奈落の漆黒。
 その闇が歓喜するように、光の神へと纏わりつく。
 眩いばかりの光と、黄昏よりも暗い闇が融合する。
 万色の双眸それぞれへ一点の闇が落とされ、虹色の髪の一筋が暗黒に染まった。
「『(バルドル)』と『(ナンナ)』が邂逅し、完全なる『新世界(ユミル)』へと昇華する」
 神の宣言が響き渡った。
 


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