My Weekly Journal第2編集室大川・平和戦略研究所核弾頭は更新せず

                                                                                   【大川・平和戦略研究所】

      核弾頭更新せず/廃棄  

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プロローグ       大川・平和戦略研究所】としての、初仕事... 2008. 1. 8
No.1 〔1〕世界の核兵器保有の現状・・・ 2008. 1. 8
No.2       <リトルボーイファットマン 2008. 1. 8
No.3       <アメリカ・・・及び、世界の核配備の概略> 2008. 1. 8
No.4       <ロシアの核配備の現状・・・> 2008. 1. 8
No.5 〔2〕覇権主義富の寡占持続可能な発展から・・・

           エコ/文明存続/極楽浄土のステージへ! 

2008. 1. 8
No.6       <神による示唆・・・?> 2008. 1. 9
No.7 〔3〕アメリカの核弾頭更新計画WRRへの変換とは・・・ 2008. 2. 9
No.8       <当面の核の脅威は・・・?> 2008. 2. 9
No.9       <WRRへの変換/W76・核弾頭 2008. 2. 9
No.10 〔4〕核弾頭の構造・・・水爆/核融合爆弾とは 2008. 3. 4
No.11       <核融合炉とは/・・・その実現の困難性と、安全性 2008. 3. 4
No.12       <核融合爆弾の、構造の概略・・・・・> 2008. 3. 4

                       

   参考文献:  日経サイエンス 2008/02

                スペシャルリポート・・・変貌する核の脅威

                   増える核保有国 M.フィシェッティ (SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

                   議論を呼ぶ核弾頭更新計画 D.ビエッロ (SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 

   プロローグ          

「ええ...」大川は、立ったまま、ポケットに片手を突っ込んだ。「軍事・担当大川慶

三郎です...

  今回は、大川・平和戦略研究所】を開設し、初仕事になるわけです。これから、いよ

いよ“世界軍縮”において、重要な局面が到来します。そこで、本格的な平和戦略研究

を立ち上げました。世界軍事バランスの面で、より充実した内容にしたいと思います

ので、ひとつ、よろしくお願いします...

 

  初仕事は、既存・核弾頭の更新問題です。アメリカが保有する、数千発W76・

弾頭が、製造からかなりの年月が経過し、劣化しつつあると言われています。これらの

老朽化核弾頭を、新設計RRW(Reliable Replacement Warhead)/高信頼性代替核弾頭

に総入れ替えするという、25カ年計画に着手しています。

  一体...アメリカは、25年後の未来社会においても、こうした核戦略体制を維持しよ

うと考えているのでしょうか...21世紀後半の未来社会においても、この種の地球生

態系絶滅恐怖を、王冠のように被せて置くつもりなのでしょうか。これでは、人類の未

来社会は、暗澹たるものです。

  さて...この25カ年計画推進・賛成派は、信頼できる核抑止力を裏付ける備蓄弾

として、RRWは欠かせないものと主張しています。一方、抑止・反対派は、RRW

数十億ドルの無駄遣いだと批判しています。また、他国を再び核開発競争に駆り立てる

と、強い懸念を表明しています。アメリカにおける、“良識派”の人たちです。

 

  ええ...日米共同開発“ミサイル防衛構想”の推進もそうですが...ここでも、い

まだに、“20世紀の遺物/覇権競争”の論理が健在です...軍事情報機関スジの話

では、中国が保有する核弾頭ミサイル標的は、アメリカへと変更しつつあるという事で

す...アメリカ中国との“覇権競争”が、いよいよ本格化して行くということでしょう。

  そこで、日本スタンスですが...唯一、アメリカ“ミサイル防衛構想”同調して

いる国であり、共同開発を進めています。日本の進路としては、非常に危険な雲行き

なって来ています。

  ここは日本は、“世界軍縮”の視点からも、そして国家予算膨大な無駄遣いという

視点からも、“ミサイル防衛構想”は見直していくべきでしょう。また、国民としても、大い

反対運動を強めて行くべきです。

  日本は、“絶対平和主義”スタンスで、“日本独自の国際平和戦略”を展開してい

くべきでしょう...これが2008年以降の、新しい世界標準であり、“世界軍縮”であり、

“エコ/文明の存続”ということになります...

 

  今回は、 My Weekly Journal》/第2編集室/国際部北原和也と共に、この

核兵器問題を検証してみたいと思います。分かっているようでいて、あまり知られていな

い問題ですので、基本的な問題もコメントして行きたいと思います。

  これを機会に、大いに関心を持っていただきたいと思います。日本は、まさに国民と

乖離した所で、【防衛庁】【防衛省】に昇格しています。また、“ミサイル防衛構想”

進められ、神奈川県/キャンプ座間には、米陸軍第1軍団/前方司令部が移転してき

ています。

  このキャンプ座間には、新たに陸上自衛隊・中央即応集団司令部が併設され、

米陸軍陸上自衛隊との連携強化が進行中です。“テロとの戦い”と言っていますが、

その実態は、“新たな覇権体制の確立”でしょう。日本は、まさにその要石/キイ・ストー

の位置にいます。

  ええ、そういうわけで...北原さん、よろしくお願いします」

「はい!よろしくお願いします!」北原和也が、立ったまま両手を腰に当てた。「いよい

よ、大川さんの本領発揮の場になりますね!」

「まあ、“世界軍縮”ということですな、」

「はい...」北原が、白い歯を見せた。

 

  〔1〕 世界の核兵器保有の現状・・・ 

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「まず、大川さん...」北原が、手を組み、スクリーン・ボードに目を投げた。「現在の、世

界における核兵器分布状況を、簡単に説明してもらえますか。

  広島長崎原子爆弾が投下されて、すでに60年以上がたちます。また、核戦略下

東西冷戦構造が終結して、15年以上が経過するわけです。ロシア核弾頭ミサイル

原子力潜水艦解体は、あまり進んでいないようですが...

  あ、その前に...広島長崎に投下された原子爆弾について、私の方から簡単に説

明しておきたいと思いますが、」

「そうですな...まず、それをお願いしますか、」

 

「はい!」北原が、頭を下げた。「ええと...

  広島原爆爆弾が投下されたのは、1945年8月6日...長崎に投下されたのは、

8月9日...そして、8月15日には、玉音放送(ぎょくおんほうそう/天皇陛下の肉声による放送)があ

り、日本条件降伏しました...これで第2次世界大戦は、事実上、終結しました。

  8月30日には、合軍最高司令官/マッカーサー元帥(げんすい)が神奈川県の厚木飛

行場に到着... 9月2日、東京湾の米戦艦・ミズーリの甲板上で、降伏文書に調印しま

した。

 

     **************************************************

リトルボーイファットマン  

 

  広島に投下された原子爆弾は、“リトルボーイ”というニックネームがあります。この

子爆弾は、全長3.12m/最大直径0.75m/総重量約5トン/ウラン型・ガンバレ

(砲身)方式/TNT火薬換算で約15キロトンの威力です。高度9600mから投下され、

空約600mで爆発しました。爆撃機はB-29/機名はエノラ・ゲイです。

  “リトルボーイ”について、もう少し詳しく言うと...高濃度ウラン235を、2分したパ

イプの両端において、1方の塊を火薬の爆発力で、もう一方の塊にぶつける方式のもの

です。これで、臨界を越え、起爆させました。これは、ガンバレル方式/砲身方式と言わ

れています。起爆装置は、コルダイト爆薬ということです...

  積載された高濃度ウラン・50キログラムのうち、1キログラム核分裂反応を起こし

たと推定されています...最近、北朝鮮の核実験でも、この方式で、1部だけしか核分

裂反応が起こらなかったようです。もし、全部が核分裂反応を起こしていたら、その被害

は桁違いのものになっていました。

  ええと...広島の被害状況については、すでに広く知られていますので、ここでは割

愛します。

 

  それから、長崎に投下された“ファットマン”は...全長3.66m/最大直径1.52m

/総重量約4.67トン/プルトニウム型・インプロージョン方式(爆縮レンズ)TNT火薬換

22キロトンの威力です...高度約9600mから投下され、上空約500±10mで爆

発しています。爆撃機はB-29/機名はボックスカーです...

  “ファットマン”について、もう少し詳しく説明すると...プルトニウム239を用いた、

ンプロージョン(implosion)方式で...これは、ジョン・フォン・ノイマン等によって完成した、

“爆縮レンズ”です。信管接地式と、対地距離レーダー式が搭載されていました。長崎

原爆資料館には、原寸大模型が展示してあります。

 

  ええ...“リトルボーイ”15キロトンの威力ですから、“ファットマン”22キロトン

威力の方が大きかったわけですね。しかし、広島長崎の地形の違いや、その他の要

因から、実際の被害は広島の方が大きなものとなっています。この2発原子爆弾で、

日本の2つの都市壊滅しました。放射線被曝・治療は、世代を超え60年たった現在

でも、続けられています...

 

     犠牲となられた方々の、ご冥福を祈ります・・・ 

     ***************************************************

  ...以上です。詳しくは、その方面のホームページを見て下さい。

 

  ええと、大川さん...先ほどの話に戻りますが...ロシア核弾頭ミサイル原子

力潜水艦解体は、あまり進んでいないようですが...」

「そうですな...」大川が、首をかしげた。「それに関しては、アメリカ日本なども、

金援助をして進めているわけですが、はかばかしくはないようです。いずれにしても、非

常に微妙な問題です。ここでも、権謀術数が渦巻いていますな...」

「はい...」

<アメリカ・・・及び、世界の核配備の概略>  wpeC.jpg (50407 バイト)

 

さて...」大川が、スクリーン・ボードを振り返った。「世界の核兵器の現状ですが...

  この図によると...全世界を射程にする、核弾頭搭載・ICBM(大陸間弾道ミサイル/射程

6400km以上/SALT・戦略兵器制限交渉により射程5500km以上)を保有している国は...アメリカロシ

中国3カ国です...フランスイギリスICBMを保有していません...あと、

スラエルインドパキスタン核弾道ミサイルは、射程が短く、地域限定のものです。

  核弾頭保有数では...アメリカ・・・(9900発保有/5700発配備中)ロシア・・・(1

万5000発保有/5800発配備中)中国・・・(200発保有/配備中)ですな。

  それから、フランス・・・(350発保有)イギリス・・・(200発保有)ですが...これら

はいずれも、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)です...これらも、射程は短いのですが、潜水

艦が移動することにより、全世界を射程にすることは可能です...」

アメリカロシアは、ICBM(大陸間弾道ミサイル)と、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)が含まれる

わけですね?」

 

「そうですな...

  まず、アメリカの場合は...弾道ミサイル(放物線に近い経路を飛翔するミサイル)だけでなく、

航ミサイル(翼とジェットエンジン を装備し、自律的に飛行するミサイル)が含まれます。この巡航ミサイル

には、ALCM(空中発射巡航ミサイル)と、SLCM(潜水艦発射巡航ミサイル)があります。また、湾岸

戦争第2次イラク戦争でも見せつけましたが、通常弾頭水上艦船から発射すること

もできます。このトマホーク巡航ミサイルは、核弾頭も発射できるわけですな...」

「開戦の火蓋を切った、あのミサイル攻撃ですね?」

「そうです...

  しかし、あれは核弾頭ではありません。巡航ミサイルは、通常弾頭でも使える、非常

に便利な精密誘導兵器です。カーナビ携帯電話と同じ、GPSが使われていますな。

もっとも、GPSは、本来が米国によって軍事用に開発された、人工衛星測位システム

すから、こっちの方が本家です」

「はい。それが、民間用に開放されているわけですね」

「そういうことですな...

  さて...現在、アメリカで問題となっている...新設計RRW/高信頼性代替核弾

に総入れ替えするというW76・核弾頭ですが...これは、オハイオ級・戦略原潜

ライデントT型・SLBMに搭載されているようです...それから、トライデントU型・SL

BMには、W76核弾頭と、W88・核弾頭があるようです。

  アメリカの戦略原潜14隻ですが...イギリスの戦略原潜4隻にも、トライデント

U型・SLBMが配備されています...このW76・核弾頭は、100キロトン級の威力で

す。W88核弾頭475キロトン級と公表されています。ま、いずれにしても、高度な

軍事機密に属する領域の話です。公表されている概略だけを伝えておきます。

  ええ...話は前後しますが、巡航ミサイル・トマホークは、爆撃機からも、艦船から

も、戦略原潜からも発射可能です。それから、爆撃機発射型ですが、ACM/最新型巡

航ミサイルというのもありますな...これは、W80−1・核弾頭を搭載しています。

  まあ、詳しいことは軍事機密ですし、流動的で錯綜しています。これも、その方面のホ

ームページを参照してください。ここでは、全体の概略だけを話します」

「はい、」北原がうなづいた。

アメリカロシア中国フランスイギリス5カ国は...

  いわゆる、国連安全保障理事国です。第2次世界大戦での戦勝国です...国連・

安全保障会議では、“拒否権”を発動できる国ですな...先進国でも、イタリアドイツ

日本はいわゆる敗戦国なのです。核兵器は、一切、保有していません...

  国連憲章第53条第107条には、“敵国条項/旧・敵国条項”が、いまだに残って

います...これらの国は、何度も言いますが、核兵器は保有していません...技術的

には可能ですが、保有はしていないということです。

  実は、技術的に可能ということでは、そういう国は世界中に非常に多くあるわけです。

しかし、核兵器は持たないということですな...したがって、“核軍縮”には、積極的

国々です。また、皮肉なことですが、安全保障理事国核兵器を保有し、世界を不安定

にしています」

「はい!」北原がうなづいた。「そうですねえ...

  核保有国は、もっと“核軍縮”真剣に取り組むべきでしょうね。それが、おろそかに

なっているから、核拡散が進行してしまうわけでしょう...」

「その通りです」

アメリカの責任は、非常に重いですね、」

「まさに、その通りです」

 

「もう1つ資料を出しましょう...」大川が、立ったまま、自分のパソコン・モニターをのぞ

いた。「こういう問題は、多面的に検証する必要があります」

「はい、」

アメリカ“自然資源防護協議会/NRDC”によると...公式の核保有国/安全保障

理事国/5カ国だけで...現在約2万発核弾頭を保有しているとあります...

  内訳は、アメリカ(/1万800発保有)ロシア(/8600発保有)フランス(/350

発保有)イギリス(/200発保有)中国(/400発保有)となっています。中国は、こ

の資料では2倍になっていますな...

  ともかく...1986年のピーク時には、約6万5000発核弾頭があったと言われま

す。約2万発のと言うのは、3分の1ほどに減っているわけです...ただ、約2万発とい

う数字には、ロシア“無傷のままで保存”している核弾頭が含まれていません。NRDC

は、その数量を約1万発と推定しています。

  したがって...現在、世界には、約3万発核弾頭・核爆弾が存在していると考えら

れます。その内、約1万7500発が配備されているようです...

  これに、イスラエル(80発/NRDCの資料では、200発インド(50発/NRDCの

資料では、30〜35発パキスタン(60発/NRDCの資料では、24〜48発、が加わ

るわけです...さらに、北朝鮮(10発未満/NRDCの資料では、1〜2発、ということ

になりますか...ああ、それと、現在開発中のイランが、どうなりますかな...」

「はい...

  ミサイルに搭載する核弾頭とは別に、核爆弾もあるわけですね。これは、戦略爆撃機

に搭載されるわけですか?」

「そうです...アメリカの場合、戦略爆撃機は、B52B22機種です...

  B521961年配備の非常に古い爆撃機です。しかし、半世紀近い期間に装備や

システムが何度も更新されています。ベトナム戦争ハノイを爆撃していた当時とは、

るで別物の爆撃機と考えていいでしょう。搭載するのは、ALCMW80−1・核弾頭

/5〜150発か、あるいは、ACMW80−1・核弾頭/5〜150発ですな...

  B2の方は、配備されたのは、1994年ですから、比較的新しいものです。B2・スピ

リットとも言う、ステルス戦略爆撃機です。これは核爆弾のみの搭載になります。種類

は、B61−7・核爆弾B61−11・核爆弾B83−1・核爆弾3種類です...合計

800発が配備されています。

  B61−11は、B61−7核爆弾新しいケースを装着し、地中貫通型にしたもの

です。これは、1997年から約50発配備されていますな...

  ええと...この資料は...Bulletin of the Atomic Scientist, May/June 2003による

ものです」

巡航ミサイルは、搭載できないのですか?」

「そうですな...

  この資料ではそうなっていますが、もう少し詳しい資料では、巡航ミサイルも搭載され

ることが分かります。B2には通常は、16発2000lbs爆弾が搭載されいます。そし

て、他に、AGM158・巡航ミサイルや、5000lbs爆弾(約2.8トン)のEGBU−28

ンカーバスター最大8発...それから、B61−11・貫通型核爆弾なら最大16発搭

載可能とあります。

  まあ、運用に関しては、軍事機密に包まれている上に、技術開発もあり、流動的だと

考えるべきでしょう...それに、戦術的にも使われるということですな...ちなみにB2

は、1機20億ドル以上(1ドル120円として約2400億円)という、非常に高価な航空機/爆撃機

す。

  世界一値段が高い飛行機として、ギネスブックにも登録されているほどです...東西

冷戦時代が終結したということと、あまりにも高価なために、試作機を含めても、21機

か製作されていないようです。アメリカの、虎の子ステルス爆撃機ですな...

  B2は、F−117/ステルス戦闘機の後に、スーパーコンピューターを導入して機体

設計をしています。スーパーコンピューターが使われるようになったのも、この頃からとい

うことでしょう」

「うーむ...これらの爆撃機は、臨戦態勢にあるわけですか?」

「いや...B52も、B2も、緊急発進できる、警戒態勢にはありません。東西冷戦構造

が終結した、その成果ということでしょう。まあ、ICBMと同様に、無用の長物です。

持費も莫大なものになるようです」

「うーむ...そういう状況なんですか...」

  大川がうなづいた。

 

「ちなみに...」大川が言った。「現在、アメリカが配備しているICBM(大陸間弾道ミサイル)

は、ミニットマンIII(/500基)と、ピースキーパー(MXミサイル/40基)2種類で、

合計540基です。

  ミニットマンIIIは、1基のミサイル1発の核弾頭を搭載するものと、3発の核弾頭

搭載するものとがあります。3発搭載のものは、MIRV(マーブ: 複数個別誘導再突入体/多弾頭独立

目標再突入ミサイル)の機能が残されています。ピースキーパーMIRVで、1基のミサイル

10発の核弾頭を搭載できます。“核軍縮”は、このあたりで足踏みをしているようです

な。

  MIRV/複数目標多弾頭になっているのは、相互確証破壊からきたものです。また、

複数に分裂することにより、迎撃しにくくもしているわけです...これは、現在、日米で

共同開発している、“ミサイル防衛構想”とも関係して来るものです。

  したがって...日米共同開発“ミサイル防衛構想”というものは、現在のものよりも

格段に改良されていく必要があるのです。少なくとも、MIRV/複数目標多弾頭に対応

していなければ、ほとんど無意味のなのです。

  北朝鮮ノドンテポドンのような、ロウ・テクノロジー弾道ミサイルを相手にしてい

るわけではありません。実際に対応しようとしているのは、ロシア中国MIRV/複

数目標多弾頭ミサイルでしょう...こうしたハイ・レベル“覇権競争”でなければ、空中

で相殺する意味が無いのです」

「うーむ...だから、ロシア中国が、“ミサイル防衛構想”には神経をとがらせているわ

けですね、」

「そういうことです...

  日本としても...完全に、アメリカの世界戦略/アメリカの核戦略体系に組み込まれ

て行く上に...これから、何十兆円かかるか分からないといった代物です...ともかく、

“止めるなら、今のうち!”ということですなあ...

  世界中で日本だけが、“新しい覇権体制”を作る、共同開発をやっています...これ

を、座視することはできないでしょう...“新しい覇権体制”の方向は、日本非常に大

きな責任があるということです...

  ただ、優柔不断に、アメリカに引っ張られて行くわけにはいきません。キャンプ座間

米陸軍・軍司令部の移転もそうですが、どうするかは国民が判断するべきです。いっ

たい、そんなことで、いいのかということですな、」

「しかも...時代は“テロとの戦い”に、シフトしつつあるということですね。その意味で

も、“ミサイル防衛構想”無用の長物ということですか、」

「そういうことです...

  また、“テロとの戦い”も、非常に問題のあるものです...こうした、“戦争の文明ステ

ージ/覇権主義”というものを、超越して行く必要があります...そこに、新しい世界標

準・・・“エコ/文明の存続”があります」

「そうですねえ...

  アメリカの世界戦略/核戦略体系に組み込まれてしまえば、やがて抜け出せなくなり

ますね。アメリカはそれを狙っているのでしょうね。アメリカも変わってきたと言われます

が、まだまだ分かりませんねえ。老朽化核弾頭を、RRW/高信頼性代替核弾頭に総

入れ替えするという計画も、あるわけですから、」

「そういうことです...

  まあ、アメリカの核兵器の状況はこのぐらいにして...次に、大量の核兵器温存

ている、ロシアの状況を見ておきましょうか、」

「はい...」北原が、大川の方に歩み寄り、一緒にモニターをのぞきこんだ。

 

「ま...」大川が、ポケットに手を入れながら言った。「いずれにしても...

  アメリカ戦略原潜の数も減少しています...この2008年にも、大きな動きがある

でしょう...全体の大きな流れとしては、“軍縮”は進んでいます。そして同時に、核兵

器拡散の流れも進行しているのです...管理が難しくなって行くということですな...

  こうした状況の中で、こうしたデータも、かなり流動的なわけです。ともかく、現状の概

というものを、把握しておいて欲しいと思います...」

「はい...」北原が、うなづいた。「ロシア核配備の状況というのは、知っているようで

いて、なかなか知る機会がないのですが...」

「そうですな...

  それでは...同じ、Bulletin of the Atomic Scientist, May/June 2003考文献

して、ロシアの状況を説明しましょう...資料は多少古いのですが、全般的状況はさほ

ど変わっていないでしょう...

 

    *******************************************************

   <ロシアの核配備の現状・・・>          wpeC.jpg (50407 バイト)

 

     ロシアの ICBM (大陸間弾道ミサイル)   

SS−18 ・・・138発保有 MIRV/10発×550〜750キロトン (1979年配備)

SS−19 ・・・134発保有 MIRV/6発×550〜750キロトン  (1980年配備)

SS−24 M1 ・・・36発保有 MIRV/10発×550キロトン (1987年配備)

SS−25 ・・・342発保有  1発×550キロトン (1985年配備) *

SS−27 ・・・30発保有   1発×550キロトン (1997年配備) *

      ...MIRV化していないものは、ABM条約(弾道弾・迎撃ミサイル制限条約)による成果と思われれます。

            (合計・・・ICBM=680基/核弾頭2916発)

 

     ロシアの SLBM (潜水艦発射弾道ミサイル)  

SS−N−18 M1 ・・・96発保有 MIRV/3発×200キロトン (1978年配備)

SS−N−20 ・・・40発保有 MIRV/10発×100キロトン (1983年配備)

SS−N−23 ・・・96発保有 MIRV/4発×100キロトン (1986年配備)

             (合計・・・ミサイル232発/核弾頭1072発)

 

     ロシアの ALCM (空中発射巡航ミサイル)    

            SRAM(短射程攻撃ミサイル)      

<戦略爆撃機>

   Tu−95 MS6(ベア H6) ・・・34機保有 6発×ALCM(核搭載可能) (1984年配備)

   Tu−95 MS16(ベア H16) ・・・30機保有 16発×ALCM(核搭載可能) (1984年配備)

   Tu−160(ブラック ジャック) ・・・15機 12発×ALCM、またはSRAM(いずれも、核搭載可能)

                                                             (1987年配備)

                        (合計・・・79機/核弾頭864発)

                    (総計・・・運搬手段991/核弾頭4850発)

    *******************************************************

 

  ...と、まあ、おおよそ、こんな状況ですな...依然として人類文明は、核兵器の戦

略下におかれているわけです」

「うーむ...」北原が、腕を組んだ。「まだまだ、大量に残っているわけですね、」

「そういうことです...

  実質的には、そっくり残っているのと同じです...全地球生態系を、数十回絶滅させ

る量核兵器が、半分に減ったということです。1回絶滅すれば、それで十分ですから

ねえ...しかも、核兵器拡散し、管理が難しくなって来ていますな...

  核兵器がこの調子で拡散し、富の寡占化格差社会がますます進行して行けば、

は必ず使用されます。あるいは、その他の大量破壊兵器は、必ず使用されるでしょ

うな。こうした“戦争の文明ステージ”は、終わりにしなければなりません」

「はい!」北原が、両手を握りしめた。

 

  〔2〕 覇権主義富の寡占持続可能な開発から 

      エコ/文明存続/極楽浄土のステージへ! 

        house5.114.2.jpg (1340 バイト)

「さて...」大川が、スクリーン・ボードを振り返った。「こうした状況下で...

  核保有国/安全保障理事国/第2次世界大戦・戦勝国は、特権の座に居座り続けて

いるわけです。しかし、核兵器は、事実上、使えない兵器です。“核軍縮”を、より一層、

推進する必要があります。

  いや、“全・軍産複合体の消滅・・・世界軍縮”こそ、完璧に進めるべきでしょう。

類の文明形態を、“文明の第2ステージ/エネルギー・産業革命/覇権主義”から...

“文明の第3ステージ/意識・情報革命/極楽浄土”へ...ステージ・アップして行く時

です...今が、その絶好の好機です!」

「もし...」北原が言った。「核兵器を使ったら、それこそ“温暖化対策”どころではなくな

るわけですね...現在は、非常に矛盾した世界構造になっています。“温暖化対策”

真剣に取り組むなら、“世界軍縮”こそ急務ですね。

  防衛庁防衛省への昇格も、中国軍備増強も、アメリカ新しい覇権構造の確立

も、明確に間違った方向ですねえ...“温暖化対策”とは、明確に矛盾しています」

「そうですな...

  アメリカ老朽化核弾頭を、新設計RRWに総入れ替えするという25カ年計画は、

はるかな未来まで、覇権主義”/チキン・ゲームを続けようと意図するものです。そこ

に、〔極楽浄土〕はありません。

  それこそ、無益で悲惨な戦争の世界です...誰が、そんな世界を望んでいるのでしょ

うか?誰が、一体、そこで得をするのでしょうか?誰が、そんな世界を画策しているので

しょうか?」

「おそらく...軍需産業ですね...?」

「その通りでしょう...

  新たな弾圧/新たな恐怖支配画策しているのは...それにつながる、一握り

“軍産複合体の中核の人々”でしょう...そして、戦争闘争社会支配ロマンを思

い描く人々です...そうした野生の闘争本能を残している人々ですな...」

「そして...それに抵抗する側は、“大量破壊兵器によるテロ”ですか...」

「いずれにしても...〔無防備な世界市民〕が、その被害を受けることになりますな、」

「うーむ...

  被害を回避するには、やはり〔人間の巣〕が必要ですね...まあ、そういう〔人間の

巣のパラダイム〕になれば、“新しい文明ステージ”が展開して行くのでしょうが...」

「そうですな...そうなって欲しいものですな...

  イスラエルインドパキスタン、それに北朝鮮などは...核兵器使えない兵器

は言わないわけですねえ...“自分からは使わない”と断言はしていますが、“使えな

兵器”と言ってしまえば、自国核兵器は無力になってしまうわけです...

  また...核兵器という戦略兵器は、それを持っていれば強大な威力があるわけです

が、使ったら終わりという、非常に奇妙な戦略的位置にあります...北朝鮮の核保有

6カ国協議米朝交渉は、その実態を如実に示していますな、」

「うーむ...

  しかし、大川さん...それは、安全保障理事国核兵器も、同じなのではないでしょ

うか、」

「まあ...」大川が、笑った。「その通りでしょう...意味は、全く同じです...

  壮大なスケールインチキですなあ...そのインチキな中で、構造的な搾取が行わ

れています。日本の社会も、壮大なインチキが露呈して来ていますが...世界構造レベ

でも、そうしたインチキが露呈して来ています。

  インチキな文明構造が露呈して来ています...その上に、インチキ“新たな覇権構

造”を確立しようと画策しています...日米の、“ミサイル防衛構想”の推進が、まさにそ

れに当たりますな...今は、そんな事をしている状況ではないのですがね、」

「うーむ...」北原が、肩をかしげた。「そうした中で...

  経済原理/市場主義バーチャルになり...それが、インチキ化/劣化し...世界

金融システムが、まさにクラッシュするかも知れません...そんな兆候が、しだいに見

えて来ました...

  アメリカ発サブプライムローン(信用力の低い人向けの住宅ローン)問題は、その1つの予兆

もしれませんね。世界金融システムの中の、バーチャル資産などというものは、現在の

世界構造が安定している上での、一種のバーチャル・ゲームです...

  ところが...世界構造は、予想以上に不安定です。激動期/流動期に入って来まし

た。バーチャル資産が、チャラ(差し引きゼロ)になってしまう可能性が、非常に高まっていま

すね。現在の人類文明の脆(もろ)が、まさに露呈して来ています...」

「まあ...」大川が、顎に手を当てた。「私は、経済のことは分かりませんがね、」

「私も、深い所は知りません...

  しかし、その危険性を感じています...飢餓感染症が地球規模で広がった時、

ーチャル資産が何の役に立つでしょうか...世界金融システムは、世界の信用のシス

テムが安定している上に立脚しているバーチャルな世界です。

  しかし、そのインチキ化/劣が進んでいます。実体経済とは、かけ離れた所で破壊

的な投機マネー・ゲームが行われています。いずれ、クラッシュするでしょう...」

「うーむ...」

「その時、実際に役立つのは...

  〔人間の巣〕のような、“万能型・防護力”です。〔世界市民〕は、そうした状況に備え

ておくことが必要ですね。高杉・塾長が言っておられましたが、世界金融システム

に対しても、〔人間の巣〕は、その“万能型・防護力”を発揮します」

「そうですな...」大川がうなづき、顔を引きしめた。「確かに、そうでしょう...

  さて、話を戻しますが... 今後は、局地的な核兵器使用の可能性が高くなります。し

かし、それ以上に、“温暖化対策”が、人類文明急務となって来ました。どの方向へ動

くか、2008年はその重要な分岐点の年となるでしょう。

  世界標準は、“経済発展/市場主義/持続可能な発展”から、“エコ/文明の存続”

へシフトして行くでしょうな...それが、大きな飛躍のステージとなり、本格化するかどう

かです...ま、本格化してもらわなくては、困るわけですがねえ...」

 

<神による示唆(しさ)・・・?>                   

「大川さん...」北原が言った。「戦略的な見地から見て...現在、広く言われている、

持続可能な発展/持続可能な開発”も、ダメなのでしょうか?現在、産業界は、省エネ

や、COの排出権取引で努力していますが...?」

「うーむ...

  もちろん、それは必要なことでしょう。過渡期としては、必要なことです。しかし、それ

だけでは、【京都議定書】目標値さえクリアできないでしょうな。ポスト・【京都議定書】

では、それよりもはるかに厳しい目標値が設定されるわけです」

「このパラダイムは、破綻するのでしょうか?]

「うーむ...

  現在、世界の潮流は...まだ、“持続可能な発展/持続可能な開発”と言っています

が、やがてそのセオリー(理論)は崩れますなあ...その程度で、人類文明を維持するこ

とは、およそ絶望的でしょう...

  理論研究員秋月茜さんも言っていますが...今の生活レベルを維持しながら、

源を有効利用し、技術開発で乗り切るという中途半端は...まず不可能でしょうな。

絶対的・総量規制をかけなければ、“地球温暖化”は止まりません。それも、相当に強い

総量規制が必要でしょう。

  それでも、“気候変動の慣性”で、“地球温暖化”は当分はブレーキがかかりません。

地球の平均気温は、確実に、今後も上昇し続けるという事です。海水面上昇や、気候変

による自然災害大規模飢餓水不足は、必ずやって来ます。

  そのために、“万能型・防護力”/〔人間の巣〕は、必ず必要になって来ます。早い段

階での対応が必要でしょう」

「やはり、そういうことになりますか...」

「いずれにしても...世界標準が...“市場主義/持続可能な発展”から、“エコ/文

明の存続”シフトして行く必要があるのです...まあ、早晩、そういうことになるでしょ

う...」

ライフスタイルを変えても、無理ですか?」

そんな程度では、無理でしょうな...

  “地球温暖化”と...さらに、“人口爆発/飢餓”...“機械文明の暴走”...を乗り

切るには、“文明のステージ”を変えることが、構造的に不可避なのです...

  “持続可能な開発”というのは、現在の産業構造/世界構造/社会的パラダイムとし

ては、ギリギリの妥協点なのでしょうが、このセオリー(理論)では、“地球温暖化”は乗り切

れないでしょう...早い段階で、抜本対策に着手すべきですな...」

「つまり...“文明の折り返し/反・グローバル化”...文明の分散化という方向です

ね...?」

「そうです...まあ、これは私の専門外のことですが...

  無限の太陽系空間へ...人類文明を解放して行けないとなると...地球表層

明の版図は、縮小の方向へ持って行かざるを得ないでしょう...これは、非常に明白な

ことです。議論の余地はありません。“少子化対策”などは、論外です。

  高杉・塾長が言っていましたが...ボス(岡田)も最初は、宇宙植民を構想していたそう

です。その方向を模索したのが、小説・人間原理空間であり、小説・超越の領域

です。しかし、人類救済史ストーリイバイアス(偏向)なのかどうか、科学技術文明はそ

の方向へは伸びませんでしたなあ...

  “文明の第2ステージ/エネルギー・産業革命”の方向へは、科学技術は伸びなかっ

たのです。核分裂・核融合エネルギーの方向は、頭打ちになりましたな。原子力発電の

技術も、いまだに不安定です。同じ意味で、宇宙空間における技術革新も、一頓挫して

います...まあ、こんな言い方はなんですが、神様が止めたのかも知れませんな...

  そして、代わりに...コンピューター技術と、ゲノム解読コラボレーション(共同製作)

の方向に、爆発的な技術革新が起こりました。それが、“文明の第3ステージ/意識・情

報革命”という、“新しい文明ステージ”を示唆しているわけです。神様が、そのように示

(しさ)したのかも知れません...」

「はい...」北原が、口元に微笑を作った。「神様が...核兵器で、戦争ゴッコをするの

はやめて...〔極楽浄土/パラダイス〕を作れと示唆したのでしょうか?」

「そうかも知れない、ということです」

「はい...」北原が、うなづいた。

「確かに、考えてみれば...

  車社会や、ロボット社会...あるいは、単なるリサイクル社会パラダイムでは...

世界における富の寡占化格差社会貧困は、さらに深刻化して行くでしょう...その

先にあるのは、テロ社会であり、“大量破壊テロ”につながって行きますな...

  それに対して、“テロとの戦い”が、さらに本格化して行くわけです。それが今、まさに

現在進行中のパラダイムです。このままでは、人類の未来社会は、暗澹たるものになり

ます。アメリカ25カ年計画で、核弾頭を更新して行くと言いますし、レーザー砲の実用

化も間近だと聞きます、」

「はい、」

「こういう...

  “エネルギー・産業革命型・文明”は、ここまでとし...次のステージシフト・アップ

て行けというのが...神様の示唆なのでしょう...あるいは、生命潮流の方向性なの

か...あるいは、塾長の言われるように、人間ストーリイのバイアス(偏向)なのか...

  ともかく、そうした何らかの“意識/意思”のようなものが、作用しているのかも知れま

せんなあ...上位レベルにおいてですがね...」

「はい...深遠な話ですね...

  地球生態系ホメオスタシス(恒常性)による洗礼も、必至という状況ですね...そう言

えば、確かに、感染症圧力も増大して来ています...これは、核弾頭レーザー砲

は対処できないものですね...飢餓気候変動もそうですが...」

「うーむ...」

「ともかく、“人口爆発/飢餓”を乗り越えなければいけませんね...“少子化対策”など

はせずに...」

「そうですな...」大川が、ポケットに手を突っ込み、ブラリと歩いた。「軟着陸するには、

現在文明形態を、ガラリと変える必要があるでしょう...それも、緊急にです...

  我々は、〔人間の巣のパラダイム〕を提唱しているわけですが...その方向に、確

かに、軟着陸の可能性があります...他にも可能性はあるかも知れませんが、現在我

々に分かっているのは、〔人間の巣〕の展開という方法です...

  したがって...すぐに、“文明の折り返し”大きく舵を切り...〔人間の巣〕を展開

して行けば...高杉・塾長の言われるような、〔極楽浄土〕の実現も、可能かも知れま

せん」

〔極楽浄土〕ですかあ...」北原が、宙を仰いだ。「しかし...それでも、“人口爆発/

飢餓”を乗り越えて安定するのは...容易ではありませんね...」

「まさに、その通りでしょう...

  いずれにしても、“大艱難の時代”がやって来ます。そうした中で、〔人間の巣〕が生

き残って行くのかも知れませんなあ...飢餓ともなれば、暴動紛争が頻発します。ま

た、疫病文明社会を襲うでしょう...文明の防波堤が崩れれば、悲惨な状況になりま

す...

  大量破壊兵器で、人間どうしが“覇権”を争っている時ではありません。〔人間の巣〕

を、早急に展開し、“地球温暖化”“人口爆発/飢餓”に備えて行くべきでしょう」

「はい!」北原が顎に手を当て、強くうなづいた。

 

  〔3〕 アメリカの核弾頭更新計画         

             / WRRへの変換とは・・・

      house5.114.2.jpg (1340 バイト)                         

<当面の、核の脅威は・・・?>        house5.114.2.jpg (1340 バイト) 

 

「さて、大川さん...」北原が、腰に手を当て、スクリーン・ボードを眺めた。「核問題での

さしあたっての脅威は何でしょうか?」

「そうですなあ...

  依然として、核弾頭を大量に保有しているのは、アメリカロシアです。しかし、安全保

障理事国/アメリカ・ロシア・中国・フランス・イギリス核弾頭については、政治的に安

しています。これは、東西の冷戦構造時代を経てきているからでしょう。イスラエル

核弾頭についても、それなりの自重はあるでしょう...

  問題は...ソ連が解体した際...、核管理のタガが緩み...核物質や、核技術

かなり流失したという事です。

  それから...パキスタンの持つ核弾頭が、今後、大問題になって来るでしょう。国内

情勢非常に不安定化しています。その上に、イスラム教文化圏が持つ、唯一の核弾

という、特殊事情もあります...」

「現在、パキスタンでは...」北原が言った。「核弾頭・管理に関して、アメリカサポー

しているようですね...詳しい状況は分らないのですが...」

「そのようですな、」

現・ムシャラフ大統領も...誰が何時裏切って“テロ組織/アルカイダ”に通じてしま

か、予断を許さないようですね...もちろん、絶対的に信頼できる部隊が、核弾頭・管

に配備されているのでしょうが...相当に、強引巧妙な、切り崩しも考えられるわ

けですね...」

「うーむ...アメリカとしても、心配の種でしょう...

  ともかく、非常に不安定です。また、イスラム教文化圏という事も、問題を複雑化して

いますなあ...つまり、キリスト教文化圏の、アメリカの介入には宗教的・拒絶反応があ

りますな...そこで、仏教文化圏である日本の支援が欲しい所です...

  ところが...日本の態度は、相変わらず煮え切らない始末ですねえ...大人の外交

成りきれていないし...まあ、政治的にも未成熟ですな...いつまでたっても、“あお

くて固いアケビ”のようです...アケビは知ってますか?」

「ええ、知ってます...白馬村で、藪の中にあるアケビを見つけたことがあります」

               (アケビ/・・・熟している)

「まあ...」大川が、笑った。「我々としても...“日本独自の国際平和戦略”を提唱し

ているわけですがね...他国の、核弾頭・管理などに関与するべきではないし、論外で

しょう」

「はい...」北原が、腕組みをし、肩をかしげた。

「そもそも...アメリカダブルスタンダード問題があるわけです...

  しかし、現実問として、パキスタンは、核弾頭を持ってしまっているわけです...こ

核保有国が、政変でどう変わるか分らないわけです。安定化の切り札の、ブット元首

も暗殺されてしまいました...一方、核弾頭が、アルカイダのようなテロ組織に渡って

も、非常に困るわけです...」

「そうですね...

  日本としても、何とかしなくてはならないでしょうね...IAEA(国際原子力機関)を通してで

も、日本の支援が必要なのかも知れません。ただ、武装警備となると、憲法上の制約

ありますし、そもそも不可能でしょう...」

「その通りです...インドとの対立もあります...」

「その、インドの核弾頭に関しては、どうでしょうか?」

インドの核弾頭は、パキスタンが動かない限りは、安定しているでしょう...

  インド中国“覇権競争”は...もし、あるとすればですが...それはだいぶ先の

ことでしょう...まあ、そんな世界構造にはならないことを、期待しましょう...“地球温

化”が差し迫っています」

「後は...喫緊の課題としては、北朝鮮の核と、イランの核ですか?」

「そうですな...

  まあ、これらは、今の所、それほどの大きな脅威となるものではありません。むろん、

北朝鮮に隣接している日本としては危険な花火です。しかし、北朝鮮は国家体制として

瓦解しています。リビアの例もあるように、何時までもこの状況は続けられないでしょ

う...

  その、北朝鮮虎の子のミサイルを...空中で相殺するという日本“ミサイル防衛

構想”というのも、同等にバカげたものですな...ノドン日本に向けられていると言い

ますが、それを日本に射込むという理由がありません...そんなことをしたら、植民地

時代相応の保証というものも、全て消えて無くなってしまうわけですからねえ...」

重油食料を、少し回して寄こせというような話とは、桁が違いますね。何が、北朝鮮

にとって、得かという事です...日本としては、その方の門戸は、開いているわけです

から...」

「まあ...

  我々としては、北朝鮮の人々に、平和で豊かになって欲しいわけです...その支援

は、約束しているわけです。何が、その邪魔をしているかという事です。ともかく、この問

題は、同胞である韓国の、国家統一の意向を、尊重するという事でしょうな、」

「はい...」北原が、口を引き結んだ。「ええと、大川さん...

  “最も差し迫った核の脅威”と言えば...やはり、“汚い爆弾(ダーティーボム)ですね。

放射性物質を組み合わせたもので、いわゆる、放射性物質の飛散を目的とした

ですが...

  それに...テロに用いられる、小型核爆弾ですね...これは、生物化学大量破

壊兵器も含めてですが...ほとんど抑止力が効きません...この方面の問題点は?」

「それこそが...喫緊の、最大の問題でしょう...

  しかも、抑止力が効きません。経済的な締め付けも効きません。大量破壊兵器の存

在そのものも、確認非常に難しくなります...現在の世界構造が継続すれば、限定

大量破壊兵器の使用は、必ず起こるでしょう。多くの無辜(むこ)の民が、巻き込まれ

ることになるでしょう...

  アメリカにおける、“2001.9.11/同時多発テロ”は、そもそも、大量破壊兵器に

よるテロではありません。しかし、それでも、それに相当する犠牲者を出しました。無防

備の都市テロ攻撃を仕掛けるというのは、いとも簡単に、それほどの犠牲者を出して

しまうということです。

  しかし、こんなことは、人間として許される事ではありません...ところが、テロによる

攻撃は、犯人を追及しにくいのです...アメリカは、“同時多発テロ”の反動として、

フガン戦争ラク戦争を起こしました。

  戦争は、ここでも、多くの無辜(むこ)の民が犠牲になっています。しかも、“同時多発テ

ロ”中枢は、いまだに潰せないわけですな...最新兵器システムを投入しても、難し

いわけですねえ...ベトナム戦争とはまた別の、ゲリラ戦/・・・テロ戦争が拡大してい

ます...」

「はい...」

「1つ...私たちに言えることは...

  こうした、あらゆる大量破壊兵器から、〔世界市民〕を守るのも...“万能型・防護力”

〔人間の巣〕の展開だという事ですな...また〔人間の巣のパラダイム〕が、こうし

た時代をも克服して行くことができます...そして、“地球温暖化”も、克服していくこと

ができます...」

「はい...そういう事ですね...」

 

WRR高信頼性代替核弾頭への変換/・・・ W76・核弾頭

                  house5.114.2.jpg (1340 バイト)

「ええ...」北原が、前髪をかき上げた。「寄り道してしまいました...本題に入りましょ

うか...」

「うむ...そうですな、」

「ええ...」北原が、モニターをのぞいた。「アメリカでは...

  戦略攻撃能力・削減を取り決めた、【モスクワ条約】に沿って...使用可能な核兵器

の総数を、1700〜2200発まで削減する計画を立てているわけですね...その一方

で、老朽化した核弾頭は、適切に作動しない恐れがあるとして、新しいものに更新した

いと考えています。

  その更新リストトップに上がっているのが、W76・核弾頭です...これは、現時点

使用可能な核弾頭の、およそ3分の1を占めています。そして、W76・核弾頭の中で

最も古いものは、2008年にも、その寿命とされている30年になるという事です...

  ええ...先ほど、大川さんも触れましたが、W76・核弾頭の威力は、TNT火薬換算

で100キロトンです。つまり、TNT火薬にして、10万トンの爆発量です。広島に投下さ

れた“リトルボーイ”は、TNT火薬換算15キロトンの威力ですから、その6.6倍ほどに

相当する核弾頭ですね...」

「そうですな...

  このW76・核弾頭というのは...ソフトターゲットを攻撃することを目的に、開発され

たものです。ソフトターゲットというのは、軍の駐屯地工場などの、一般的な施設

がそれに当たります。ヒロシマナガサキのような都市もそうですね。

  これに対し、ハードターゲットというのは...ICBM(大陸間弾道ミサイル)を格納する核弾

頭・地下サイロや、耐核シェルター米航空宇宙防衛司令部(norad)などがそうでしょう。

アメリカの場合は、 ピースキーパー(MXミサイル/40基)ミサイル・サイロが...廃止にな

ったなったものも含めて50箇所...ミニットマンIII(/500基)ミニットマン・サイロが、廃

止になったものも含めて、950箇所ほどあるようです...

  そして...大破壊力の核弾頭や、複数弾頭によるハードターゲットの被害を避けるた

めに...車載型移動式・核弾道ミサイルや...隠密行動ができる、原潜搭載型

弾道ミサイルがあるわけです...

  こうした、東西冷戦構造時代戦略兵器システムの遺物は、現在も生きているわけで

す...今回、アメリカは、こうした核弾頭を、新型・核弾頭更新しようとしているわけで

す...また、果たして、それが必要なのかという事ですねえ...」

W76・核弾頭は...」北原が言った。「その...オハイオ級・戦略原潜の、トライデン

トT型・SLBMと、トライデントU型・SLBMに搭載されているわけですね?」

「そうですな...トライデントU型には、W76核弾頭と、W88・核弾頭とがあるようで

す。W88475キロトン級という最大クラスのものです。これは、更新リストのどのあた

りにあるのかは、分りませんが...」

「そういう大威力のものは、ハードターゲットを想定しているわけですか?」

「おそらく、そうでしょう...それ以外に、あまり使い道は無いでしょう...」

「はい...

  この核弾頭・更新計画を進めているのは、アメリカ政府エネルギー省と、国防総省

ですね?」

「そうです...

  エネルギー省でも、核兵器の製造・管理所管する、国家・核安全保障局/NNSA

す。NNSAが、その必要性を主張して来たようです。実際に、老朽化核弾頭を、新設計

RRW(Reliable Replacement Warhead)高信頼性代替核弾頭に入れ替えるのも、NNS

の仕事でしょう...

  ええ...2007年3月に、RRW計画設計コンペ(設計競技)があったようです...こ

の、20年ぶりとなる新型・核弾頭の設計は...米国立ローレンス・リバモア研究所

設計プランが採用されたようです。ローレンス・リバモア研究所は、マンハッタン計画で、

長崎に投下された“ファットマン”を製造した所です...」

「はい...」

 

「さて...」大川が、パソコンモニターをのぞいた。「RRW1(/1というナンバーは、今後、シリーズと

なると考えられる)と呼ばれる新型・核弾は...W76匹敵する威力を持つ、代替核弾頭

として設計されています...

  したがって...そもそも、冷戦後の世界に求められる戦略的役割を、十分に果たせる

とは言い難い、との批判もあるようです...もう、大量の核弾頭による、相互・確証破壊

の時代ではないですからねえ...この点で、多くの批評家が、その必要性に疑問を投

げかけているようです...今後は、“テロとの戦い”になるわけですからな...」

「そうですね...」

「ええ...現在、W76・核弾頭については...

  2000発が、改修/寿命延長計画進行中です...そもそも、これらの核弾頭に組

み込まれているプルトニウムも、劣化の心配がないことも分かっているようですねえ、」

「その...改修/寿命延長計画進行中というのは...RRW計画とは別に、進行中

なわけですね?」

「そうです...

  そもそも...RRW計画が浮上したのは、老朽化核弾頭信頼性に対する懸念が発

端です。プルトニウム・コア劣化し、設計どおりの熱核反応爆発が起こらないのではな

いかとの声が、1部で上がり始めたからです。しかし、臨界前・核実験や、コンピュータ

ー・シミュレーションなどの解析から、その懸念は、ひとまず払拭されたと言います...

  また...“ジェイソン(/科学専門委員会の名前)が、米政府の委託で実施した独立評価

も...W76・核弾頭で使用されている、プルトニウム・ピット耐久年数は、少なくとも

100年はあると判断されたという事です...

  “ジェイソン”は...現在の、改修/寿命延長計画で定めている定期メンテナンス(/必

要に応じての、周辺回路や部品交換)を続ける以外に、“特別な措置をする必要はない”としている

ようですねえ...」

「うーむ...そうですか...

  それでは、何故、RRW計画が必要なのでしょうか?更新する必要は、ないのではな

いでしょうか?」

「ところが...

  RRW計画を主張する、急先鋒の科学者/リチャード・モース(/ロスアラモス研究所の兵器設

計・レーザー核融合グループのリーダー)は...W76・核弾頭設計自体に欠陥がある、と言って

いるようですな...

  コアを取り囲むウラン製容器が薄く...初期爆発を容器内に閉じ込めておく時間が短

すぎるために...セカンダリー水素核融合反応着火できないのではないか...と

懸念しているようです...

  しかし、多くの科学者公的機関は...1980年代兵器実験が、いくつも成功して

いることを根拠として...それを否定しているようです...」

「うーむ...」北原が、首をひねった。「専門領域の話ですね...」

「そうですな...」大川がうなづいた。「ただ...

  老朽化した部品を交換するたびに...核弾頭は徐々に、“元の姿から遠ざかって行

く”と言います...このことが、そもそも、核弾頭信頼性問題を生み出す要因になって

いるとも言いますなあ...」

「つまり...継ぎ足すのではなく、そろそろ、新型・核弾更新した方がいいと?」

「そうです...

  しかも、国際情勢として、“核実験はできない状況”ですから...核実験をやらない

で、新型・核弾頭を作ろうというわけです。次に話しますが...本当に、実験による実

なしに、信頼性の高い、新型・核弾ができるのかどうかです」

「つまり...本末転倒になってしまうと...?」

「そういうことです...

  まあ、“最良の方策”は...そんな苦労はせずに...核弾頭廃棄した方がいいの

でしょう...どうせ、使わずに、備蓄しておくものです...もし、そんなものを大量に使っ

たら、それこそ地球生態系人類文明も終わりです...

  “地球温暖化対策”どころではなくなります...そこを、もっと議論して欲しいですな、」

「そういうことですねえ...」北原が肩をかしげ、白い歯を見せた。

                                 

  〔4〕 核弾頭の構造・・・水爆/核融合爆弾とは  

                             house5.114.2.jpg (1340 バイト)

「ええ...」北原が、手を組んで言った。「大川さん...

  そもそも、RRW(Reliable Replacement Warhead)高信頼性・代替・核弾頭とは、どのよ

うな核弾頭なのですか...簡単に、説明してもらえないでしょうか、」

「そうですな...」大川が、天井を見上げた。「RRWについては...正直なところ、

高軍事機密なので、詳しいことは分かりません...

  ええ...プライマリーについては...後で説明しますが...実験済みのプライマリー

の種類は、ごく限られていると言われます。今回、RRWで採用されたプライマリーは、

KUA9だという事です。しかし、このSKUA9は、核実験には使われていますが、実際

の核兵器に組み込んだ例はないようです...ここが、1つの難点になっているようです」

「うーむ...

  実験ナシで、戦略・核兵器として、実戦配備ですか...過去の実績と、コンピュータ

ー・シミュレーションだけで、新設計の大砲実戦配備するようなものですねえ...それ

を、実際に撃ってみなくて大丈夫なのですか?」

「そういうことですなあ...

  科学者の立場で、理論的に大丈夫だと保証しても...軍人の立場では、それで納得

できるものなのでしょうか...軍人と、国家の存亡をかけていますからなあ...」

使う予定のない戦略兵器です...  どうでもいいのではないですかね、」

「ま...」大川が、口に手を当てた。「そうも言っていられないでしょう...

  そもそも...RRW1は、核実験コンピューター・シミュレーションの結果から...

たな爆発実験の必要性は無いとされているのです...RRW1は、設計改良で、W76

よりも“マージン”が高まるだろうということです。“マージン”というのは、第1段階のプラ

イマリー核爆発力が維持されている、時間の長さを指します...この核分裂エネルギ

が、核融合に火をつけるわけです...」

「はい...」北原が、両手を組み、頭をかしげた.

「つまり...

  “水爆一式”を収納している...ウラン製容器肉厚が薄くて...十分な爆発時間

保持できないと、不発という非常事態を招きます...しかし、RRW計画に反対する人

たちは、ブーストガス(爆発力を高めるために、ピットの周囲に充填されている、3重水素と重水素の混合ガス)の組

成や、そのメカニズムを改良することで、“マージン”を伸ばすことは可能、と主張してい

るようですなあ...」

「うーん...専門的な、難しい話になりますね、」

「ま、ともかく...この新しい核弾頭/RRW1については、水爆/水素爆弾とほぼ同じ

仕組みで作動すると言われます。その水素爆弾の構造については、後で説明します」

「はい...」

    house5.114.2.jpg (1340 バイト)         house5.114.2.jpg (1340 バイト)house5.114.2.jpg (1340 バイト)

「まず...」大川が、モニターを眺めて言った。「一般的に...

  核爆弾とひとくくりで呼称されていますが...核分裂・爆弾/ウラン爆弾、プルトニウ

ム爆弾と、核融合・爆弾/水素爆弾とは、そもそも別の種類の爆弾ですな...

  核分裂・爆弾は...それを巨大化して、燃焼速度を制御している構造物が...いわ

ゆる、“原発/原子力発電所”原子炉です。それでお湯を沸かし、後は火力発電所と

同じで、発電タービンを回し、発電しています...現段階では、それ以上のものではあ

りません」

「はい...

  “原発”というのは、よく“巨大な核分裂爆弾”だと言われますね...ただ、それを、

“非常にゆっくりと爆発”させているだけだと...」

「その通りです...ええ、余談になりますが、ここは【大川・平和戦略研究所】なので、

一応、“原発”というものにも触れておきましょう...

  そもそも...“原発”暴走した場合は...“非常に危険だ”と言われるのは、それ

“巨大な核分裂・爆弾”だという事なのですな。しかも、その上に、放射能で汚染され

ています...要するに実態は、“巨大なウラン爆弾”なのです。この二重に危険な代物

の制御に、四苦八苦しています。

  ええ...この“巨大なウラン爆弾”に...制御棒を挿入し...非常にゆっくりと核爆

させているわけです...それで、その熱を沸騰水に転換して取り出しているのです。

それで、発電タービンを回しているわけです。

  原子炉を収納しているのが、頑丈なな原子炉建屋(たてや)...発電タービンを収納して

いるのが、タービン建屋になります。様々なタイプがありますが、基本的には、こういう事

ですな...もちろん、幾重もの安全装置が施されています...ただ、こわいのは、人間

的なミス/ヒューマン・エラーなのです...」

「はい...それでも、大事故は起こるという事ですね...小さな事故エラーは、数知

れずですね...」

「そうですな...

  これまでの“最大の原発事故”は...旧・ソ連で起こった“チェルノブイリ原発事故

(1986年/事故の国際評価尺度・レベル7)です...しかしこれは、研究/作業員の、規則違反

ら起こっています。システムそのものに、欠陥があった事故ではありませんな...

  次に大きな事故は...アメリカ“スリーマイル島原発事故(1979年/レベル 5)ですか

な...これは、“メルト・ダウン(炉心溶融)事故”になっています。この重大事故は、いわゆ

る、人間的ミス/勘違い/ヒューマン・エラーから起こっています。この、ヒューマン・エラ

ーによる重大事故は、アメリカ新規・原発建設を、30年間も凍結させる結果となりまし

た...

  それから...日本でも、“東海村臨界事故(1999年/レベル4)が起こっています。これ

は、“原発”そのものの事故ではなく、例の、バケツ柄杓濃縮ウランを扱っていたと

か言われているヤツですな...いわゆる、ロウテク(ロウ・テクノロジー)の事故あり、(な)

による違反行為で起こっています。しかし、ピカッと光り、“臨界”に達していますから、

ベル4になり、放射線被曝による犠牲者も出ています」    .....<詳しくは、こちらへどうぞ>

「うーむ...」北原が、腕組みをした。「そんな事故がありました...いずれも、原子炉

システムそのものよりも、人間の側で、重大事故が起こっていますね...それに、放射

線量は少ないのですが、2次冷却水系での事故も多いですね...こんなものを、これか

ら世界中で建設するのでしょうか...」

「ま...“脱・原発”へ舵を切るべきでしょう...

  〔人間の巣/未来型都市〕へ転換していけば、“地球温暖化対策”が飛躍的に向上

し、気候変動にも、食料問題にも対処できます。そうすれば、70億の人類文明が、軟着

が可能かもしれません。巨大な悲劇を最小限にとどめ、人口半減軟着陸できるかも

知れませんな...」

「その前に、核拡散が心配ですね」

「そうです...

  世界の核戦略体系においても、ヒューマン・エラーが心配な所です...このまま進め

ば、核兵器の拡散も、必至な状況です...」

「はい...そうですね...」

 

核融合炉とは/・・・その実現の困難性と、安全性

               house5.114.2.jpg (1340 バイト)

「ええ...」大川が、モニターをのぞいた。「さて...

  この種の、一連の核分裂・爆弾/ウラン爆弾、プルトニウム爆弾シリーズに対して、

核融合・爆弾/水素爆弾核融合というのは...本質的には核分裂放射能とは全く

関係のないものです。

  核融合炉とは...重くて分裂しやすいウランなどとは逆に...非常に軽い水素

リウムへの、核融合変換による熱量放出です。ですから、もともと、クリーンなものなの

です。よく、太陽の核融合がその典型として挙げられていますな。

  太陽は、無重力の宇宙空間で、巨大な質量による重力収縮により...恒星という

融合炉を作り出しているのです...これは私の専門外のことですが...知っている範

囲のことを、少し説明しましょう」

「あ...」北原が、頭を下げた。「お願いします」

「はい...」大川が、うなづいた。「ビッグバン宇宙が開闢(かいびゃく)した直後...

  宇宙には...最も軽い水素/H(/原子番号:1)から、ヘリウム/He(/原子番号:2)リチウ

ム/Li(/原子番号:3)の、3種類の元素しか存在しなかったようです...そして、大半の元

は...その後にできた恒星において、核融合反応によって作られたと考えられてい

ます。

  しかし、原子番号(/原子核をつくる陽子の数)が大きくなるにつれて、原子核同士のクーロン

斥力(/同じ電荷を持つ粒子同士の反発力)が大きくなります...そのために、恒星という核融合炉

で生成できる元素は、鉄/Fe(/原子番号:26)限界になるようです...」

「それよりも重い元素は、どのようにできたのでしょうか?」

「はは...それは、小さな宿題としておきましょう...自分で考え、調べるのもいいこと

です」

「そうですね、」北原も笑った。

「さて...

  この核融合を、人為的に作り出すことは大変な事です。まず、1億℃以上プラズマ

が必要になりますな...それほどの、高温・高速・高圧プラズマを維持しなければ、

核融合は継続しないのです」

「現在、核融合・発電のための、核融合炉の開発が進んでいますね...ところが、宇宙

開発“原発”と同様に、この方面の大エネルギー開発も、遅れているようですが...」

「そうですな...

  しかし、この核融合困難さそのものが...不安定核分裂とは違い...非常に

全な核エネルギーであるということの証明でもあるのです」

「はい...」

核融合でも中性子が作られますが...この中性子というのは、ウラン核分裂とは異

なり、核融合の連鎖反応は起こしません...」

「うーん...」北原が、頭をかしげた。

核融合炉では...

  炉の燃料は、ガスコンロガスのように、僅かづつ供給されます。したがって、燃料の

補給さえ止めれば、核融合反応も停止します...つまり、核融合炉は、温度・密度・放

熱阻止3つ条件の全てを満たしていなければ、すぐに火はすぐに消えてしまいます。1

つでも欠ければ、核融合による燃焼は、停止してしまいます...

  この点で、核分裂反応のような暴走は、原理的に起こり得ないのです。つまり“原発”

では、核分裂の暴走を抑えようと必死なのに対し、核融合炉では、反応の継続に苦心し

ているのです...まあ、恒星というのは、実によくできた核融合炉ですな...」

「はい...

  恒星の質量が、太陽質量よりもはるかに巨大なものになると...重力収縮重力崩

になり、時空構造ブラックホールの方に推移するわけですね...その中間の質量

だと、超新星爆発/スーパーノヴァを起こし...後に、中性子星(パルサー)ブラックホー

が残る場合もあるわけですね...」

「そうですな...

  ともかく、人類文明はまだ、この核融合による商業レベルの発電には成功していませ

ん。ようやく、小さな燃料ペレット(/球殻部分は重水素と三重水素の固体。球内部はそれらの気体で満たされて

いる)に、レーザーで火をつけることには成功しているようですが...」

「はい、」

「このレーザー核融合は...

  燃料の圧縮と加熱のために、大出力レーザーを使って研究が進められています。しか

し、これはまだ、しばらく時間がかかるようです。実用化は、21世紀の半ば頃とも言わ

れます。核融合・発電ができれば、人類文明莫大なクリーン・エネルギーを手に入れ

ることができるのです...そうすれば、“原発”放射能に悩まされる心配もなくなるわ

けですな、」

「しかし...」北原が、首をかしげた。「“文明の第2ステージ/エネルギー・産業革命”

パラダイムに、一様に急激なブレーキがかかって来ています...という事は、これは

必要な技術なのでしょうか?」

「まあ...

  “文明の第3ステージ/意識・情報革命”パラダイムでは...あるいは、なくてもい

い技術かも知れません。しかし、ここ100年200年は、数十億という人口を支えるに

は、やはりあった方がいいのでしょう。また、本格的な宇宙開発時代となると、やはり

要な技術になって来るでしょう...」

「はい、」

「おそらく...高杉・塾長に言わせれば...

  存在しなくてもいい技術などというものは無いのです。核爆弾のような大量殺人兵器

にしてもです。それが、この世に、真実として結晶化し...その上に、ストーリイが流れ

ていくのでしょうな...

  この世に、必要でない人間などは、1人もいないのと同じ意味です...この真実の結

晶世界では、そもそも存在することに、無上の意味があるのです...また、そうしたスト

ーリイには、そもそも間違いというものは存在しないのです...局所的に見れば、そうし

マイナスもあるでしょうが、全てが連続している世界では、それがないのです...」

リアリティーというのは、過不足のない全体風景なのですね、」

「そうですな...

  それが、命の風景であり...やがて、全ての魂は、太極(宇宙の本体)へ帰っていくので

しょう...塾長に言わせれば...それは、“36億年の彼”とかいう、もっと具体的な、

《新しい生命観》になるのでしょう...」

「うーむ...私たちは、死ねば...その“36億年の彼”に帰って行くのでしょうか?」

「さあ...」大川が、顎に手を当てた。「それは、高杉・塾長に聞いてもらいましょう」

「そうですね...」北原が、顔を和ませた。「ともかく...核融合・発電は、もう少し先の

ことになりますね、」

 

「そうですな...」大川が言った。「話を戻しますが... 

  人類文明は、別の形で...すでに核融合には成功しているのです。つまり、核融合・

爆弾を作ることには、成功しているのです...核分裂・爆弾莫大なエネルギーを利用

し、核融合を作り出すことには成功しているわけですな、」

「それが、核弾頭...水爆/水素爆弾ですね、」

「そうです...したがって水素爆弾は、ウラン爆弾プルトニウム爆弾とは、本質的に違

うものだという事です。ただし、起爆剤として、核分裂・爆弾が使用されているという事で

すね、」

「はい...」

アメリカ旧ソ連/ロシアの持つ核弾頭というのは、この水素爆弾/核融合・爆弾

す...

  インドパキスタンの持つ核弾頭ミサイルは、ここまでは進化していません。むろん、

その必要もないでしょう...もちろん、アメリカロシアの持つ核兵器が、全て水素爆弾

というわけではありません...」

「大川さん...」北原が、自嘲気味に首を傾けた。「何故...アメリカソ連は、核融

合・爆弾/水爆の開発をしたのでしょうか?」

「まず、その威力が違うからでしょう...

  核分裂・爆弾には、核出力限界があります...しかし核融合・爆弾には、分かって

いる範囲では、核出力の限界というものが無いのです。原理的には、数千メガトン/ギ

ガトン級核出力が出せるのです...

  旧ソ連では、“ツァーリ・ボンバ”という水爆で、TNT火薬換算・5000万トン/50メガ

トンという最高記録があります...100メガトン水爆を、人為的に50メガトンに落とし

たと言われています」

「はい、」

“ツァーリ・ボンバ”とは、“爆弾の皇帝”という意味だそうです...

  ええと...1961年10月30日...北極圏のノバヤゼムリャという島で、この核実験

をしていますな...爆発は、1000キロメートルも離れた所から確認できたそうです。そ

の衝撃波は、地球を3周したとも言われています...私も、子供のころの記憶として、

かすかに残っています...」

「うーん...限界がないのですか...」

「そうです...

  危険な火遊びをしていた時代ですな...広島に、ウラン爆弾“リトルボーイ”が投下

されたのは、1945年8月6日ですから...16年後ほどにはもう、“ツァーリ・ボンバ”

が爆撃機に搭載され、共産主義社会資本主義社会が、覇権を競っていたわけです」

「現在もそうですね、」北原が、白い歯を見せた。

「ま、その通りです...」大川も、笑ってうなづいた。

 

核融合爆弾の、構造の概略・・・・・>  

              house5.114.2.jpg (1340 バイト)

「ともかく...」大川が言った。「核弾頭などは無用の長物ですが、人類文明にとっては

脅威の最終兵器という現実です...そうした意味から、説明を続けましょう」

「はい!」北原が、うなづいた。「将来、この爆弾が役立つとすれば...地球近傍天体

が、衝突コースに入った時、それを排除するのに役立ちますね?」

「うーむ...そうですなあ...

  現在の宇宙技術では、まだまだ無理でしょう。しかし、将来的には可能になるでしょ

うな。そうした真の危機というものも、現実に存在するわけです。しかし、今はまだ、そん

大事態が訪れないことを祈るのみです」

「はい...」

 

「さて、話を進めましょう...

  核融合・爆弾というのは...まず最初に、プライマリー/核分裂ピット核爆発を起こ

し、セカンダリー/核融合を起こす元素が充填(じゅうてん)された部分に、放射線を浴びせ

ます。その結果、水素の同位体/重水素と3重水素の間で、核融合反応が引き起こさ

れ...さらに、熱核爆発へと進むわけですな、」

「ええと...」北原が、スクリーン・ボードの方を振り返って言った。「この、図の方で説明

していただけますか...

  この図の...弾道ミサイル頭部に搭載されている、細長い円錐形のコーンが、

弾頭になるわけですね...この図では、3個のコーンがありますが、これがMIRV(マー

ブ: 複数個別誘導再突入体/多弾頭独立目標再突入ミサイル)になっているわけですね...」

「うーむ...この図では、MIRVになっているようですな...」

  北原が、スクリーンを切り替えた。核弾頭コーンの部分が拡大された。細かな説明

が記載されている。

「ええと...これが、SLBM(潜水艦発射・弾道ミサイル)の、W76・核弾頭になりますね...」

「うーむ...」大川が、両手をポケットに突っ込み、スクリーンを眺めた。「そうですな...

  この核融合・爆弾というのは...条件が整った時に...核融合を起こす特定の元素

によって、核分裂・爆弾を包んだ構造になっています...

  先ほども言ったように...まず、プライマリー(/核分裂ピット)を包む、成型爆薬が爆発し、

中性子が供給される中で、プルトニウムを加圧します...そして、プルトニウム核分

を起こし、第1段階莫大な核エネルギーを放出するわけです...」

「この、プルトニウムを包む成型爆薬は、通常爆薬ですね?」

「そうです...

  核分裂・爆弾に火をつけるための、通常爆薬です...その核エネルギーが、セカンダ

リーと呼ばれる、核融合を起こす元素が充填された部分に...放射線の形で浴びせか

けられるのです...

  ええ...そこにも書いてあるように...放射は...それが引き起こす、別の核分

反応の助けを借りて...重水素化リチウム(/核融合燃料)の中で、水素の同位体/重水

素と3重水素核融合反応を引き起こします...

  したがって...この核融合反応は、連鎖的に広がり...熱核爆発火の玉になりま

す。全ては、非常に圧縮された時間の中で起こるわけですな...ともかく、一瞬の出来

です...」

「はい...」

「さて...

  RRW計画を主張する、急先鋒・科学者/リチャード・モース(/ロスアラモス研究所/兵器設計・

レーザー核融合グループのリーダー)...W76・核弾頭設計自体に欠陥があると言っている

のは、この部分でしょう...コアを取り囲むウラン製容器が薄く...初期爆発容器内

に閉じ込めておく“時間が短すぎる”ため...セカンダリー水素の核融合反応を、着火

できないのではないか、と懸念しているわけです...」

「うーむ...」北原が、顎にコブシを当てた。「そうですか...

  ええと、この図では...細長い円錐形のコーン内部にある容器が、一式が詰まっ

ている、問題のウラン製容器ですね...その容器の下部にある球体プライマリーです

ね...そして、上部にある少し小さめの球体セカンダリーですか...このセカンダリ

に、重水素リチウムが詰まっているわけですね...

  下部のライマリーの構造は...通常爆薬の内側に、ベリリウム/Be(原子番号:4)

層があり、さらにプルトニウムの厚い層があって、その内側に重水素・3重水素ガスが詰

まっているわけですか...

  かなり複雑な構造ですね...“ガンバレル(砲身)式”“リトルボーイ”や、“爆縮レン

ズ”“ファットマン”と比べると...」

「ま...この図は、公開されている、単純化したスケッチのようなものでしょう。実際に

は、さらに相当に複雑なはずです。何と言っても、最高レベルの軍事機密です...」

「はい...しかし、まるで地球の内部構造のようですね...

  そして、セカンダリーの方の球体は...ほう、ウランですか...ウランの層の内側に

は...重水素化リチウムの層があり...その内部もウランがつまっていますね...」

核融合・爆弾というのは...

  ライマリーからセカンダリーへの、ワンツー・パンチとなっているわけですな...プラ

イマリー核分裂・爆弾であり...セカンダリー核融合・爆弾という、巨大な火の玉

なるわけです...」

「それに...弾道ミサイル慣性エネルギーが加わり、目標を破壊するわけですね、」

「そうです...

  まあ、一般人の私たちは...実際には、こうした核弾頭や、弾道ミサイルに接するこ

とはないわけです。しかし、この本体のウラン容器というのは、意外なほど小さなものの

ようですな...それがミサイルの弾頭として、弾道ミサイルに装着されるわけです...

  その...“ひとすくいの重水素と3重水素”が...太陽と同じ核融合反応を起こすと、

広島に投下された“リトルボーイ”の、数倍核出力/核威力となるわけです...」

「ええと...

  W76・核弾頭の場合は、100キロトンですから...“リトルボーイ”6・6倍ほどの

核出力ですね、」

「そうですな...」大川がうなづいた。

 

             house5.114.2.jpg (1340 バイト)      

「ええ、北原和也です...

  ご静聴、ありがとうございました。ページが長くなりましたので、《核弾頭の

安全性/核ジャック対策は》以降は、新しいページを立ち上げました。引き

続き、そちらのページもよろしくお願いします」

 

              

  

 

 

 

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