My Weekly Journal第2編集室文明をデザインして行く時代文明の折返し点/覇権主義の終焉
                                                         <文明の折返しへ突入>

             覇権主義の終焉   wpe6B.jpg (8881 バイト)


                                          

 トップページHot SpotMenu最新のアップロード                                 担当: 北原 和也

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プロローグ      文明をデザインして行く、新しいステージ 2006. 1. 1
No.1 〔1〕 冷戦構造の終結と、戦後民主主義の変質 2006. 1. 8
No.2 〔2〕 覇権主義拡張主義は、 20世紀の遺物! 2006. 1.18
No.3       ≪安保理常任理事国も“核爆弾”の廃棄を!≫ 2006. 1.18
No.4 〔3〕 覇権主義の時代を越えて 2006. 1.26
No.5         ≪覇権の風景・・・≫ 2006. 1.26
No.6       ≪アメリカの意見も2分している!≫ 2006. 1.26
No.7 〔4〕  新時代への扉/文明の折返しと、第3ステージへの移行  2006. 1.26

 

  ≪新春対談≫ 

   プロローグ                  

                        (文明をデザインして行く時代)              

「明けまして、おめでとうございます!2006年がスタートしました。

  “文明をデザインして行く時代”を担当している、北原和也です。21世紀も5年が

経過。いよいよ新世紀が本格的に始動し始めた観がありです。折しも、世界は、“新

型インフルエンザ”パンデミック(世界的大流行)に戦々恐々としています。

  こうした“感染症に対する人類的な危機”も、世界がグローバル化してしまった果

です。“インフルエンザ”“エイズ”“西ナイル熱”“エボラ出血熱”等々...これら

は全て、文明の一途な拡大の中で招いた、“文明”“生態系”との“ミスマッチ”と考

えられます。2つのベクトル(力と方向)の違いが、こうした“対・文明的ウイルス”を活性

化しているのではなでしょうか...

  文明のテクノロジーは、近々、インフルエンザのパンデミックを克服できるかも知れ

ません。しかし、生態系の片隅から、新たな驚異的なパンデミック・ウイルスが出現し

てくるのは必至です。これは、まさに生態系との“イタチゴッコ”であり、いずれ人類文

明は、この戦いに負けることになります...

  何故なら、人類もまた、まさに生態系の中で生きる存在だからです。逆に言えば、

生態系なくしては、人類文明も存在し得ないからです。我々は、生態系を“破壊”する

ことはできますが、“創出”することはできません。真の意味で、凌駕(りょうが)するほ

どの文明は持ち合わせていません。

  我々は、せいぜい、生態系の中からわずかな法則性を見出し、それを論理的に組

み上げ、科学文明としているのです。生態系の方こそ、まさに“神の領域”のテクノロ

ジーの塊です...

  我々には、構造的に、勝ち目はないのです。したがって、“生態系と同調”して行く

しか、生き残る道はないのです...それはつまり、“反・グローバル化”と、“人口の

調整”...そして、かってのように、“文明の多様性”を取り戻して行く方向です。

 

  さて、21世紀は、人類文明が、如何に地球全体を運営して行くかが、最大のテー

マとなります。“大きな危機/大艱難(だいかんなん)と、“大きな試練”が、人類文明の前

に立ちふさがっています。

  まず、なすべきことは...“欲望の減速/欲望という価値観の転換”です...“欲

望のままに”、拡大一途に来た文明の“折返し点(ターニングポイント)が見えてきたという

ことです。自然発生的に自由に拡大してきた文明社会が、有限な地球表面空間の中

で、明確な限界が見えたということです。文明の“折返し点”が、確実にやって来たの

です...

  文明は、大自然と対立する関係にありましたが、もはやその我侭(わがまま)は、有限

な地球生態系の中で、成立しなくなったということです。“反・グローバル化”への方向

転換...そして、生態系と同調する“多様性”...“複雑系”の深化...

  具体的には、“脱・車社会”“脱・航空機社会”...“豊かさ・便利さの、飽くなき

求という価値観からの脱出”です...そうする中で私たちは、再び大自然と同調し

た、“素朴な感動”や、“純粋な情熱”というものを取り戻すことができるでしょう...

 

  これからは、原初のように自由奔放に文明を拡大するのではなく、“文明をデザイ

して行く、新しいステージ”に入ります。30年後、50年後の未来に関しては、“グ

ランド・デザイン”で、現在、高杉・塾長たちが鋭意に考察を進めています。

  ここでは、それほど遠い先のことではなく...その大戦略の中で、“直近”現在

の舵取り”をどうしたらよいかを...津田・編集長、秋月茜・理論研究員、国際部の

大川慶三郎さんと共に考察して行きます。

  日本においては、“維新・戦略”を推進しているわけですが、世界はどうあるべき

なのでしょうか。その時代的な流れを考察します」

 

 〔1〕 冷戦構造の終結と、戦後・民主主義の変質

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「ええ、津田・編集長...」北原が、軽く津田に頭を下げた。「いよいよ2006年に入り

ました。世界情勢が、非常に混沌としてきましたが...」

「そうですねえ...

  明確な目標と、理想とする地図のない中で、世界が流動化し始めました。また、

戦構造のタガが外れ、小さな紛争が多発しています。加えて、“戦後・民主主義”も急

速に力を失いつつあります...

  いわゆる、民主主義社会において、代議員の“横暴”悪事”が、権力構造の中

で、堂々と行われるようになりました...これは、日本においても、非常に顕著で

す。結果、モラルハザード社会を招き、未曾有の大混乱に陥っています。

  “グローバル化”と共に、世界的に“地域社会の文化が衰退”しましたが、これと無

関係ではありません...」

「社会そのものに、“理想に向かう力強さ”がなくなっていますね、」北原が言った。

「まさに、その通りです...

  これは、明確な目標と、理想とする地図がないからです。あのフランス革命のエネ

ルギーが、ロシア革命長征キューバ革命のエネルギーが...そして、日本にお

いは、明治維新のエネルギーがありません...」

「はい...それは、“文化の力”だと、」

「そうですね...

  ホモサピエンスが文明の発祥を見て以来、その文明もまた年を重ねているというこ

とです。18世紀、19世紀、20世紀と、世界が拡大してきた力強い文化・文明が、

球の飽和状態を見たということです。ホモサピエンスは“文明の折返し点”に突入した

のです。

  人類は今、明確な目標と、理想とする地図のないままに、経済原理の中でさらな

“グローバル化”に突き進んでいます。むろん、それらの目標地図を獲得したから

といって、昔の純朴な人間性が、そっくり戻ってくることはありません。私たちは、その

理想とする地図の中で、“文明の第3の波/情報革命のステージ”を迎えているわけ

です...新しい文明のステージが始まるのです...」

「はい...具体的に、どう行動して行けばいいのでしょうか、」

「まず、“反・グローバル化”と、“人口の減少”...そして“文明の多様性”の獲得

す。全ては、そこからでしょう...」

「...」

「社会は“どのぐらいの人口”が理想なのか...そうした社会単位が、“どのように連

結”されているのが理想なのか...“洗練された文化”が育つには、どのような調整

が必要なのか...

  ともかく、多様な民族多様な宗教多様な社会形態を許容していかなければなり

ません。それには、“地球政府”による管理が不可欠です。

  また、新しい形態と、新技術をともなうものもあります。例えば、“文明をコンパクト

な地下都市へシフト”する問題です。また、輸送交通手段を、航空機から“クリーン・エ

ネルギーの船舶”へシフトして行く問題があります。

  今までのように、“速くて便利”という価値観から、“スローを楽しむ”価値観へシフト

して行く必要があります。何故、それが必要なのかと言えば、地球生態系と同調して

行くことが絶対条件になるからです...」

「スローになれば、それだけ地球も広くなりますね」

「そうです...時間感覚空間感覚に変化が起こってきます...

  現在主流の経済至上主義は、とにかく馬車馬のように走りつづけることです。ま

た、子供は塾に通い、受験競争をし、いい会社に入り、とにかく全力で走り続けま

す。リタイアしたら、エリート・コースから外れてしまいます...まあ、実は、その方

が、より人間的なわけですがね...」

“人は何のために生まれてきたのか”ということですね」

「その通りです。

  これは、社会工学の問題であり、“文明のデザイン”の問題です。すでに私たちは、

文明の折返し点”に突入しています。これからは、まさに“文明をデザインして行く時

代”です...社会と文化の流れもまた、“プロデュースして行く時代”なのです...」

“デザイン”し、“プロデュース”して行く時代ということは...当然、“覇権主義”

“拡張主義”は、終息するということでしょうか?」

「そうですね...

  文明をデザインして行く過程で、そうしたものは振り落としていきます。“覇権主義”

“拡張主義”は、いわば20世紀の遺物です。冷戦構造を1人勝ちしたアメリカの覇

も、富の吸収も、もはや過去の枠組みです...巨大資本による世界支配も、20

世紀の遺物だということです...」

    wpe6B.jpg (8881 バイト)   wpe6A.jpg (14118 バイト)  index.1019.1.jpg (2310 バイト)

「はい...欧州では、“アリカの軍事的プレゼンス”は、もはや不要になりましたね」

「そうです。

  そこでアメリカは、膨大な世界戦略軍の使い道を、アジアの“不安定な弧”に振り

向け、緊急展開軍として再編成しているわけです。その地域では、まだ軍事力を背

景とした“覇権主義”で、商売が成り立つということです...」

「今、行われている米軍の“トランスフォーメーション”ですね、」

「そうです。

  “不安定な弧”は、極東アジアから、中央アジア、東南アジア、南アジア、中東アジ

アを描く巨大な弧です。そこに、“アメリカの軍事的プレゼンス”の使い道があると言う

わけです...

  まあ、そうかも知れません。この地域には、石油の利権があり、様々な紛争が多

し、新興経済圏のアジアがあります。そして、中国の軍備増強インドとパキスタン

の核保有もあります...しかし、欧州のように、“アメリカの覇権は必要ない”という

のであれば、そうした道もあるということです...」

「相対的に、中国インドの台頭...日本の地盤沈下が起こっていますね」

そうです。

  そうした状況の中で、“夢よもう1度”と、アメリカと日本が手を組み、再び“世界に

覇を唱えよう”というのが、小泉・政権の一連の右傾化政策です。しかも、憲法9条

改正し、自衛隊の海外派兵を含めた形を、想定しています」

「日本は、アメリカの世界戦略の中に組み込まれていくわけですね」

「そうです。

  しかし、これこそまさに、“戦争放棄”“平和憲法の精神”をないがしろにするもの

でしょう...文明はすでに、新しい局面/文明の折返し点に突入しています。“グロ

ーバル化”から“反・グローバル化”への逆流も必至です。日本の“覇権主義の復活”

は、まさに時代錯誤なのです。

  今、日本が為すべき事は、“憲法改正”ではなく、透明な“新・民主主義社会”を建

設することです。“富の寡占化”“勝ち組と負け組の2極化”“労働の2重構造”を正

し、子孫のために“夢の持てる日本の形/世界の形”を創出していくことです」

「そうですね...」北原が、両手を組んだ。「アメリカにベッタリというのは、非常に危

険だと思います。しかし、中国の軍備増強というのも、すさまじいものがありますね」

ハイテク兵器は、主にロシアから買い付けているわけです。ロケット技術もそうです

がね...中国は、何処へ行こうとしているのか...それが、まさに、焦点になりま

す」

「それを、これから考察していきます...しかし、中国に関しては、ここ数年のうち

に、1つの方向性が出てくると思います」

「うーん...北京オリンピック以後、でしょうか?」

「まあ、そうですかね...」

   wpeC.jpg (50407 バイト) 〔2〕 覇権主義拡張主義は、   

                  20世紀の遺物!

       wpe6C.jpg (13931 バイト)   wpeD.jpg (8229 バイト)wpe12.jpg (16005 バイト)      index.1019.1.jpg (2310 バイト)

「ええ...」北原和也が、壁面スクリーンの、“不安定の弧”を示すアジアの地図を眺

めた。「“覇権主義/拡張主義”“20世紀の遺物”ということですが...それにして

も、このアジア地域にはまだ、紛争の火種が無数に残っています。欧州のように、うま

く行くのでしょうか...」

「欧州でも、」津田が言った。「第2次世界大戦以前は、それこそ戦争に明け暮れてい

ました。また、それ以後も、イギリスのアイルランドスペインのバスク地方、そして

リシャなどでも、ゲリラが活発な武装闘争を展開しています。

  しかし、欧州のNATO軍(北大西洋条約軍/西欧諸国軍、アメリカ軍、カナダ軍からなる)は、もはや

大なアメリカ軍プレゼンス(軍事的駐留)は必要としなくなったということです。最大の理

由はソビエト連邦を中核としたワルシャワ条約軍が解体したことにあります。ソビエト

連邦が分裂し、核戦略体系下の冷戦構造が終結したためです...」

「そこで、用済みとなった巨大なアメリカ軍は、アジアへとスウィングしたわけですね」

「うーむ...

  単にスウィングしたわけではないでしょう。戦略の大転換でしょうねえ。もはや、欧

州には、NBC(核、生物、化学)防御の機甲師団戦車師団は、必要としなくなったので

す。中距離核ミサイルも、核地雷も、核砲弾も必要としないのです。

  むろん、膨大な戦略空軍も、戦術空軍も必要なくなった...核搭載の巡航ミサイ

も、またアメリカ本土のICBM(大陸間弾道ミサイル)もそうです。単なるスウィングとは違

います。その一方で、個人装備の武装がハイテク化され、格段に進化しています。

  そのあたりのことは、軍事・担当の大川に伺いましょうか...」

「そうですね、」北原が言った。「ええ、大川さん...軍事的状況は、どうなのでしょう

か?」

             wpe6B.jpg (8881 バイト)   wpe69.jpg (70430 バイト)

≪安保理常任理事国も“核爆弾”の廃棄を!≫

 

「はい...」第2編集室/国際部/軍事・担当の大川慶三郎は、ポケットに片手を

突っ込み、天井を眺めながら言った。「“9.11同時テロ”以降、アメリカは大きく変わ

りました...

  アメリカは、初めて国家の中枢部に、大規模なテロ攻撃を仕掛けられました。以

来、テロ対策で、アフガン戦争イラク戦争を遂行し、その世界的混乱は、現在でも

続いています...

 

      何故、テロが起こったのか?

 

  そこが非常に重要です...つまり、それは、“アメリカの覇権主義”があったからで

はないでしょうか...軍事力を背景とした、“アメリカの世界戦略”が、そこにあった

からです。それが、世界の富を吸収し続けて来ました。この構造が改まらない...貧

しいものは、ますます貧しくなる...

 

      だから、アメリカの中枢部でテロが起こった

 

  むろん、“9.11同時テロ”が、“絶対に許されないこと”は、言うまでもないことで

す。しかし、その上で、何故テロが起こったかを考えなければ、根本的解決にはなり

ません。

  アフガニスタンのバーミヤンで、大石仏が爆破されました...これもまた、行き場

のない貧しさの叫びだったのです。グローバル経済の中で、まさに忘れ去られた地

域の1つだったのです...」

「はい、」北原が、うなづいた。「“富の配分”の問題ですね...“富は誰のものか”

いうことですね。世界の中で、非常にバランスが崩れてきています」

  津田がうなづいた。

「さて...」大川が言った。「巨大な米軍事機構/産軍複合体は、自らの存在維持も

含めて...軍事力の活用の場を、“関が原の合戦型”の欧州のフィールドから、“世

界的なテロ対策・地域紛争型”のフィールドにシフトしたのです。それはまた、重装備

の機甲師団から、軽装備の緊急展開軍への衣替えでもあります...」

「はい、」北原が、うなづいた。

「一言付け加えておきますが...今の世界構造は、確かにアメリカの1人勝ちと言え

る状況です。しかし、西欧諸国日本なども、資本主義体制を貫いてきたのであり、

いわゆる勝ち組です。この体制下で、それなりの構造的利益を得てきたのです...」

「そうですね、」

「また、日本は、一貫して“平和主義”を貫いてきたわけですが...今回、イラクに自

衛隊を派遣したことで、世界に対する印象を非常に悪くしました。また、さらなる日本

の右傾化を警戒しているのは、中国と韓国だけではないということです」

「そうですね...」北原が、体を大きく傾げ、腕組みをした。「民主党・党首が、“集団

的自衛権”容認する発言をしているわけですが、そうした“覇権主義/戦争ごっこ

時代”は、終ったということですね。まさに、時代錯誤ということでしょうか」

「そうです...

  安保理・常任理事国が核爆弾を保持していて...特にアメリカは、新たな“深・地

下施設攻撃型の核爆弾”の開発を行いながら...イラクや北朝鮮の核開発は危険

だと主張しているのは、まさに矛盾です...これでは、核拡散防止条約の推進も、

全く説得力をもちません」

「今度は、イランの核開発が問題になっていますね。核が拡散して行くのも困るわけ

です」

「そうです...リビアのカダフィ大佐のように、きわめて強硬ですねえ...

  ともかく、アメリカをはじめ、安保理・常任理事国は、自国の核爆弾を削減して行く

べきなのです。それで、ようやく第3国にも、“核兵器は持つべきではない”と主張でき

るのです。

  イスラエル、インド、パキスタンと...しだいに核兵器が拡散して行く現状は、そも

そも安保理・常任理事国の身勝手な主張に、説得力がないからなのです」

「こんな、インチキな世界構造の中で、アメリカの世界支配が続いているわけですね」

「そうですね...

  そして、今度は日本が右傾化し、アメリカの子分になりたがっています。アメリカも、

仲間がいた方がいいわけですしね...しかし、これは、我々日本国民が、“平和憲

法”のもとで、断乎阻止しなければなりません」

「時代は、大きく動いています...」津田が言った。「もはや、人類文明の中で、もめ

ている時代ではないのです。人類どうしのことは、話せば分る間柄です...

  人類にとっての“真の危機/大艱難”は、人類文明の外側から押し寄せて来てい

ます...人口と飢餓の問題感染症気候変動地殻変動地球近傍天体の衝

、それから、科学技術の暴走というのも、危機につながる可能性があります...」

「はい、」北原がうなづいた。「ともかく、人類文明全体が、“大きな折返し点”に突入し

始めているということですね」

「そうです。何度も言うことですが、文明が“第3ステージ”へ移行し始めているのです」

「はい...」

  〔3〕 覇権主義の時代を越えて  wpeC.jpg (50407 バイト)

           wpe6C.jpg (13931 バイト)               

「今回の“トランスフォーメーション”では...」大川が、片手をポケットに突っ込みなが

ら、壁面スクリーンを眺めた。「アメリカは極東アジアから、大陸中東アジアに到る地

域を、“不安定の弧”と戦略的に位置付けています...

  その地域へ、緊急展開軍を投入できる編成を整えるのが、目的と思われます。新型

長距離輸送機・C−17が、ベースになるでしょう...ま、実態は、徐々に明らかに

なってくると思います...

  問題は、“不安定の弧”の極東の要の位置に、日本列島があるということです。

は、まさに絶好の戦略的位置にあるわけです...朝鮮半島情勢...そして、

湾海峡情勢(/中国と台湾の緊張関係)...そこに、沖縄に展開する在日米軍基地が、まさ

に、にらみを効かせています。

  アメリカの世界戦略にとっては、まさに絶好の位置に、先進国・日本の沖縄米軍基

地群があるわけです。それに加え、右傾化しつつある日本の自衛隊が、指揮系統で米

軍と一体化しつつあります...

  まさに絶好の組み合わせなのですが...残念ながら、この“覇権主義による世界

戦略”は、すでに“20世紀の遺物”です。この極東で...そして、東シナ海、南シナ

海、太平洋で...再び中国アメリカが、軍事力を背景とした覇権競争をして、それ

でどうなるというのでしょうか?

  それは、20世紀において...あるいはそれ以前に、さんざんくり返してきたことで

はないでしょうか。編集長の言うように、すでに人類文明は、“新しい局面”に突入して

います。ーバル社会の限界が、いよいよ明らかになってきました。

  人口爆発も、すでに地球生態系の中で限界に達し、“巨大な飢餓”が起こることは、

火を見るよりも明らかです。人類は、こうした“新しい局面”に立ち向かって行かなけれ

ばなりません。のんびりと、覇権競争をしている時代ではないのです...」

「その通りです...」津田が、椅子の背に肩を伸ばした。「まさに、“文明のターニング

ポイント”が近づいています...文明のグローバル化が、いよいよ限界に来たので

す。そして、それと同時に、人類文明が“情報革命”という、第3のステージに入りつつ

ありますね」

「うーむ...そのようですねえ...」大川が言った。「私は...中国は、“話せば分

る、常識的な国家”だと見ています...

  日本とは、歴史的な経緯から、様々な問題はありますが...本質的には、“常識”

のある国家であり、私はそれは、信じるに足るものだと思っています」

「大事な視点ですね」北原が、大川を見つめた。

「それは、韓国も同じです...

  むしろ、問題なのは、右傾化しつつある日本でしょう。日本の国民は、今こそ、このこ

とを第3者の目で、しっかりと考えてみるべきです。そして、政府は韓国や中国に対

し、“誠意をもって謝罪”すべきです。また、同時に政府は、国民に対しても、しっかりと

謝罪すべきです」

「そうですねえ...」北原が、難しい顔をした。

「私は、極軌道を周回する“軍事衛星1号”にいることが多いわけですが...宇宙空

間から見下ろしていると、そうした事がよく分るものです」

「なるほど、」津田が顔を崩した。

「それぞれの言い分も、分リます...

  ともかく、大陸の侵略朝鮮半島の植民地政策では、日本はしっかりと、“誠意を込

めて謝罪”すべきです。“1億総懺悔(ざんげ)というような発想で、ともかく国民に対して

明確な“謝罪”がない。それが、中国や韓国に対する態度にも出てくるわけです...」

「うーむ...」津田が、腕組みをした。「バブルが崩壊 し、金融政策が破綻 し、未曾有

のモラルハザード社会に陥りましたが...この事態に対しても、政府の国民に対す

る、明確な謝罪という事をしていません...だから、大混乱が、何時までも続く...」

「そうですね、」大川が言った。「日本の大混乱は、一向に治まる気配がないですね

え...」

「いったい“誰が悪かったのか”も、“何が悪かったのか”も...ともかく、はっきりとは

誰も言わないわけです。結局は、政治家や、官僚や、マスコミ自身が悪かったわけです

がね...ともかく、しらばっくれている...笑える話ですが、とても笑えないわけです。

  こうした中で、“勝ち組”“負け組”が出現し、“モラルハザード”は放置され、国家の

財政赤字が、みるみる膨らんで行ったわけです...」

「では、編集長」北原が言った。「政府はまず、何をすべきなのでしょうか?」

「...まず、政府は、国民に対し、“率直に謝罪すべき”です。何でこんな夢のもてない

社会になってしまったのか、このことに対し、“率直に謝罪すべき”です...そこから、

誠意のある対策が生まれて来ます...少し、脱線しましたかね、」

「いえ、肝心なことです...

  さて、混迷する日本は...アメリカの世界戦略の中に、急速に組み込まれつつあ

るわけですね。日米安保体制が、実質的に変貌してきています。ここは国民的な大

議論が不可欠ではないでしょうか?」

「まさに、その通りです!」大川が言った。「小泉・政権が、勝手に進めていいことでは

ないでしょう!まさに、日本の“ポスト・戦後”を決める、歴史的な大議論が必要でしょ

う!」

                                            wpeC.jpg (50407 バイト)

 

2006年の初頭...」と、津田が、大川に言った。「アメリカのカリフォルニア州で、

米海兵隊と陸上自衛隊との、初めての合同訓練があったようですね」

「そうです」大川が、うなづいた。「陸上自衛隊とは、初めてのようですね」

島にゲリラが上陸してきた時、それに対処する訓練...

  だとか...参加した陸上自衛隊員が話していました...しかし、私は時代錯誤

ものを感じがしました。それは20世紀型の戦争...20世紀型の人類社会の中で

の揉め事です...」

“覇権主義”による“富の収奪”があるから...それに反発してテロ組織ゲリラ組

が生まれてくる...というわけですね。“パックス・アメリカーナ(米国支配による平和)

対し、構造的にイスラム世界が反発している...それが、“西欧文明とイスラム文明

の衝突”という側面を持っているわけですね...」

「その通りです...

  そのアメリカの世界戦略に、これから日本の自衛隊が参加して行くというのも、ま

さに茶番劇です...それが、非常に、違和感となって映ります...」

「違和感ですか、」北原が言った。

「そうです...

  公明党が、いつの間にか、与党の自民党に擦り寄って行ったような感じですね。

“戦争放棄”/“世界に誇る平和憲法”を持つ日本国民としては、そんな感じです。ま

さに、“寝耳に水の話”です。何故、どうして、そんなことになるのか、サッパリ分けが分

らない...」

「怖いものです」大川は、両手をポケットに入れ、壁面スクリーンに目を投げた。「ま、日

本の国民は、それに騙(だま)されるという事はないでしょう...ただ、そんな戦前のよ

うなことを考えている人が、政治の世界には、いまだにいるということですね...」

「21世紀の“真の危機”は、文明の外側から、すでに大挙して押し寄せて来ていま

す...今年の冬にも予想される新型インフルエンによる犠牲者は、数百万人とも、

数千万人とも予想されます。

  また、日本で初めての“西ナイル熱”の患者が、昨年の秋(2005年10月3日)に確認さ

れています。2006年は、日本列島でも、“西ナイル熱”が拡大するおそれがありま

す。阻止は、難しいように思われます。“西ナイル・ウイルス”ワクチン開発も進んで

いるようですが...どうなのでしょうか。

  “危機管理センター”の里中響子が言っていました...現在の人類文明の基盤

は、グローバル化や科学技術文明の拡大で、逆に非常に脆弱(ぜいじゃく)になって

いる...と。たがが、インフルエンザや、エイズなどの感染症すら、人類にとっては

非常に脅威になっているわけです。これは、異常な事態といえます」

「それは、当っているでしょう...」大川は、眼鏡に手をかけた。「こうした時代の中

で、“右傾化”だの、“憲法改正”だの“安全保障”だのと言っている日本の政治は、ま

さに時代錯誤に陥っているようです」

「しかし、」北原が言った。「“覇権主義”は、今も続いています...それを、どう終らせ

るかでしょう」

 

≪覇権の風景・・・≫

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「うーむ...その通りです」」大川が、うなった。「まず、血気盛んなのは...アメリ

...アメリカは、第2次世界大戦に続き、東西対立の冷戦構造にも勝ち抜いたわけ

です...ベトナムイラクでは泥沼化していますが...その、軍事力/産軍複合体

の総合力は、絶大です。いや、むしろ、それそのものが、無用の長物と化しているわ

けです...

  そして、遅れてやって来た、中国が元気です...中国の、季節はずれの軍備増

が、台風の目になって来るでしょう。海軍力では、日本の海上自衛隊の方が、機動

力、火力、電子戦能力において、はるかに大きな戦力を持っていますが、時の勢い

中国の方があります...」

「はい、」北原が、うなづいた。

「中国は、本来が大陸型の国家です。アメリカのように、昔から外洋艦隊を持ち、鯨を

求めて世界の海を行き...鎖国で惰眠を貪る日本に開国を迫ったような...いわゆ

海洋型の国家ではありません」

「そういう意味では、アメリカは大陸国家でありながら、海洋型国家という、きわめて特

殊な二面性をもった国家ですね、」

「そうです...

  だから、世界の覇権国家になりえたのです。日本イギリスのように、大陸から戦略

的な距離をおいて発達した島国が、非常に有利な時代もありました。しかし、グローバ

ル化し、地球が狭くなり、太平洋と大西洋に挟まれたアメリカという大陸国家が、“覇

権”を握ることになったわけです...」

「しかし...その“覇権主義”も、20世紀の遺物というわけですね...それで、注目

すべき、中国はどうですか?」

「中国が、海を渡って軍を動かしたというのは...おそらく元寇(げんこう/蒙古襲来/鎌倉時

代)の時が、最大の作戦だったでしょう...しかし、それは結局、“神風(かみかぜ/台風)

によって、海中に没しました...それで、ますます海が嫌いになった...

  ともかく、あまり得意ではなかつたし、内陸部のことが忙しく、その必要性もなかっ

たわけです。ともかく、中国は、万里の長城に象徴される国家です。最近の中国は

型艦隊を整備しつつありますが、アメリカの空母機動部隊はおろか、日本の海上自

衛隊よりもはるかに小さな勢力です...ただ、くり返しますが、時の勢いというもの

あります。それは、いざ実戦となると、実に怖いものです...」

“ソブレメンヌイ級”が配備されたと聞きますが...」北原が、その映像を、壁面スク

リーンに映し出しながら言った。「...これは、どのような艦船なのでしょうか?」

「うーむ...

  この艦は...1997年に、中国がロシアに建造を発注していた、2隻の7000トン

級の駆逐艦のうちの1隻です...7000トン級ですから、駆逐艦としては非常に大型

であり、外洋型のパワフルなものです。そして、見ての通り、武器を満載しています。こ

れは、東シナ海を南下中のものを、航空自衛隊が撮影したものです...

  “ソブレメンヌイ級”の最大の特徴は、超音速の艦対艦ミサイル“SS−N−22”シ

ステムを搭載していることです。ロシア(/旧・ソ連邦)の艦船は、昔から言われていたこと

ですが、攻撃力の塊のような、ゴツいものです。しかし、単独では防御能力に欠ける

ところがあります。

  まあ、空からのガードがなければ、かなり脆いという側面を持ちますねえ...もっと

も、大陸の近くにいる限りは、本土の航空戦力がカバーするでしょう...

 

< 艦対艦ミサイル:SS−N−22/サンバーン/ロシア名: モスキット  

     マッハ: 2    射程 : 120km

     誘導 : アクティブ・レーダー/パッシブ・レーダー

             遠方の敵は、レーダー搭載ヘリが、上空から補足

                   ( 同駆逐艦は、上記ヘリを2機搭載 )

 

  ...将来、中国海軍が空母を持てば、強力な外洋型機動部隊になります。中国

に、その意志があれば...ですが...

  ともかく、“覇権主義”そのものが、“20世紀の遺物”になりつつありますす。人類文

明は、すでに新しいステージに突入しています...」

「はい...しかし、その経過...その移行の過程が問題でしょう?」

  大川は、タバコをくわえ、カチ、とライターで火をつけた。

「...東西冷戦後...米軍は、アジア大陸の中央部にまで、基地を展開して来まし

た...かっては、ソ連邦に属していた、キルギスなどの地域です...冷戦時代に

は、いわば絶対防衛圏とも言える内陸部です...」

「そうですね...ロシアとしては、穏やかではないでしょう...」

「むろんです...」大川は、タバコを吹かした。

「これは、アフガン戦争の遂行上必要だったわけですね」

「そうです...

  すでに、東側のワルシャワ条約軍は存在しないわけですが、いぜんNATO軍は存

在します...しかし、そのNATO軍も確実に変質しているのです...仮想敵が解体

した状態では、変質せざるを得ない...」

「はい...しかし、“平和の配当”はなかった、ですね?」

「そう...冷戦構造のタガが外れると、各地で小さな紛争が無数に勃発し始めまし

た。そして、冷戦後、NATO軍旧・ユーゴスラビア紛争を経験して行くことになりま

す。あの、クロアチアルビア...そしてボスニアの大混乱です。

  民族間の修復には、“長い時の流れ”が必要と言われます。戦争というものは、始

めるのは簡単です。しかし、その後の処理が大変なのです...アメリカは、まさにイラ

ク戦争で、それを味わっているわけですがね。アメリカは、ベトナム戦争の轍を、再び踏

んでいるようです」

「そうですね」北原は、緊張した顔で、大川を眺めた。

「さて...

  米軍は、確かに、欧州では“無用の長物”になったわけです。そこで、抜本的な再

編成をせざるを得なくなった...戦争の形態そのものが、世界を二分したイデオロギ

ーの対立構造から、国際テロ地域紛争に変質しました」

「はい」

「ともかく...軍事組織という暴力装置は、膨大な金食い虫なのです。その上、物を

生産するわけではない。逆に、物や社会を破壊する...それでも、何らかの“利”

生み出さなければならない...

  そんなものが、巨大な軍需産業とリンクし、産軍複合体を形成しているわけです。

アメリカの世界戦略の中で、この産軍複合体の存在を無視するわけにはいきませ

ん...それは、政治権力と密接に結びついているからです...

  しかし、津田・編集長の言うように、人類文明全体に、もっと巨大な流れが起こって

います。文明が、“折返し点/ターニングポイント”に突入しつつあると言うことです。そ

れは、“反・グローバル化”の流れでもあり、また必然的に“巨大資本の解体”をも意

味するのです...」

            wpe69.jpg (27792 バイト)wpeD.jpg (8229 バイト)   wpe12.jpg (16005 バイト) 

  大川は、ゆっくりとタバコを吹かした。

「...そもそも、軍隊の存在価値は“自国の防衛”と...もう1つは“他国の侵略”

あるいは“覇権の確立”にあります...

  “覇権”というのは...いまさら説明するまでもないことですが...砕いて言えば、

ヤクザマフィアチンピラが、暴力をちらつかせ、“脅し”不当利益を獲得している

のと同じです。ただ、それを、国家レベルで、軍隊経済力を活用し、合法的にやっ

ているわけです。

  かっては軍事的駐留によって、侵略し、植民地とし、不平等条約をもって、そこから

“富の収奪”を行っていました。いわゆる、かって植民地主義とか帝国主義とか呼ば

れていたものです。黒船でペリー提督がやって来て、日米間での不平等条約を結んだ

のも、“覇権”と言うものが背景にあるわけです...」

「そうですね、」

日露戦争以後日本帝国は世界の列強に加わり、朝鮮半島を植民地とし、中国大

に進駐し、満州国という傀儡(かいらい/操り人形)国家を作りました...そんなこともあ

り、日中戦争に突入し、第2次世界大戦の版図が中国大陸に拡大していくわけです。

  大陸に進駐していた日本軍は、蒋介石の率いる国民党軍と、そして毛沢東の率い

中国共産党軍と闘ったわけです。後に、蒋介石と毛沢東による“国共合作”が成

し、共同戦線ができます。

  その時、中国共産党軍は“国民革命軍第八路軍(八路軍)と改称されています。ま

た、1947年には、さらに“人民解放軍”と改称されています。そして、現在にいたっ

ているわけですね...

  さて、やがて...ベルリンが陥落...ソ連軍がドイツから、シベリア鉄道で極東の

満州へ振り向けられることになります。ヤルタ会談(1945年2月/米国、英国、ソ連邦のヤルタでの

首脳会談)での合意でしょう...

  そして、ついに、ソ連軍が極東アジアで参戦...日本軍は中国大陸から一掃され

ます。その後、蒋介石の率いる国民党軍は、毛沢東の率いる八路軍に敗れ、台湾に

逃れます...

  1945年8月6日...原子爆弾広島に落されます(ウラン型核爆弾/リトルボーイ)。続い

て、8月9日には長崎にが投下されます(プルトニウム型核爆弾/ファットマン)。6日後の、8月

15“玉音放送”が流れ、第2次世界大戦は全て終結します...日本の降伏文書

調印は、翌9月、戦艦ミズーリの艦上で行われます...」

「そうですね...」

「さて...

  毛沢東“長征”が終わるのは1950年...そして、同じ年、アメリカとソ連のイデ

オロギー対立を背景として、朝鮮戦争が勃発します。アメリカを主体とする国連軍と、

スターリンのソ連・東欧の赤軍、毛沢東の率いる人民解放軍の...いわゆる“共

主義・世界同時革命”を賭けた、全面的な軍事衝突です。

  そして、そこに投入されたのが、まさに“長征”を終えた人民解放軍であり、中国義

勇軍です。これは、“人海戦術”として、今も伝えられています...国連軍がいくら爆

撃をくり返しても、義勇軍はまるで津波のように鴨緑江を越え、朝鮮半島に押し寄せ

てきたと言います。

  これに手を焼いた、国連軍司令官のマッカーサー元帥は、トルーマン米大統領

原子爆弾の使用を申請...トルーマン米大統領はこれを却下...国境沿いに放射

物質をばら撒き、これを阻止しようという案もありましたが、これも不可...マッカ

ーサーは、解任されることになります...

  朝鮮半島は、以後、凄まじい戦線の波に幾度も洗われて行くことになります。この

朝鮮半島の戦禍も、日本の植民地政策が遠因であり、それが無かったならば、南北

分断の悲劇も無かった言われます...日本は、大陸及び朝鮮半島に、凄まじい歴史

の爪痕を残しました...

  “平和憲法”は、まさにこの反省から生まれた、“日本国民の魂の結晶”です...

国民は、真に戦争を放棄し、平和を求めています。現在、小泉・政権の右傾化政策

には、国民も厳しく反発しています。前の戦争では、日本国民もまた被害者という側面

もあるのです。

  ともかく、実際に被害を受けた中国や韓国が、日本が再び“覇権国家”になることを

警戒するのは、ごく当然のことではないでしょうか...日本にその動きがあるなら、そ

れに備えるのも、当り前ではないでしょうか...」

「国民としても、」津田が、口を開いた。「まさにそこが、気がかりな所です...国家の

右傾化、そして右傾化路線の継承は、断乎阻止しなれればなりません。日本の国民

は、しっかりと“時代の舵”を切る、“大きな国際的な責任”を負っています!」

 

                          wpeD.jpg (8229 バイト)        wpe6A.jpg (14118 バイト)

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“覇権主義”は、かっての植民地主義とは、少し様相が違います...」大川が、言っ

た。しかし、権益を確保し、富を収奪するという本質は変わりません...

  アメリカの世界戦略では、少し前の石油の利権が分りやすいのですが、経済がグ

ローバル化した現在では、それはかなり精妙で複雑なものになっています...

  例えば、BSEの危険性のある“米国産牛肉の問題”でも、在日米軍基地の“日米

地位協定の問題”でも、アメリカは日本に対し、かなり高圧的です。つまり、“覇”を唱

えているわけです...それに対し、日本外交は“NO”と言えず、“覇”に対して渋々従

っていました...今までは、です...」

米軍の駐留は、」北原が、頭をかしげた。「そもそも必要なものなのでしょうか?」

「さて...まさに、そこが問題です。アメリカは多様性のある国であり...また、世界

は非常に流動化しています...

  極東アジアから、突然米軍が消えるというのも、パワーバランスが崩れます。しか

し、“反・グローバル化”を推進するには、少しづつその準備をして行かなければなり

ません」

「はい、」

「どのようになるかは分りません...

  まあ、私も、日本は“独自の世界平和戦略”を持つべきだということでは、基本的

に編集長と同意見です。文明の新たな急展開の中で、“覇権主義”が過去のものに

なったということも、まさにそのとおりでしょう。時代は、急速に流れ出しています」

「はい」

≪アメリカの意見も、二分している...≫   

 

「さて、ともかく...」北原が言った。「米軍の“トランスフォーメーション”が進んでいま

す。これは、米軍の世界的再編成です。覇権国家・アメリカの、軍事戦略の大転換

す。問題は、小泉・政権の下で、これに“日本も大きく巻き込まれて来た”ということで

す...しかも、国民との十分な対話のないままに、なし崩し的に進行していますね、」

「そうです...」大川が、深くうなづいた。「国民の気持ちとは裏腹に、小泉・政権はこ

れに強引に踏み込んで行きました。

  “一連の右傾化政策”は、極東アジア・東南アジアのみならず、世界が懸念を持っ

て眺めています。非常に危険な兆候と言えるでしょう」

小泉・政権の右傾化路線が、」津田が、言った。「次の政権でも継承されたら、極め

て危険なことになりますねえ。世界中が、日本の右傾化を警戒しています」

「ここは国民が、しっかりと覚醒し、バランス感覚を発揮するしかないでしょう。アメリカ

の世界戦略に、主体性のない日本外交は、一方的に組み込まれつつあります。ここ

は、国民が、平和憲法のもとに、しっかりと阻止すべきです!

  アメリカの子分になって、“覇権国家”になろうというのは、“武士道精神”ではあり

ません...“暴力団”“ヤクザ”の論理です...

“子分になる”とこ自体が、“ヤクザの論理”です」津田が言った。「そう言えば、今の

国内の統治も、まさに“ヤクザの統治”です。モラルハザード、犯罪の多発、経済的混

乱、文化の衰退...まさに、ヤクザが治めている、荒れた宿場町のようです。

  ここは、まず、立ち止まって、しっかりと考えることです...流されないことです。

“武士道の精神”で、しっかりと、時代を見つめて欲しいですね

「くり返しますが、」津田が、片手を上げて言った。「小泉・政権は、“国民の了解”を得

ないままに、1歩も2歩も右傾化に踏み込んでいます。こんなことが、本当に許される

のでしょうか...

  何故、小泉・首相は、それほどアメリカの子分になりたがるのか...何故、アメリ

カと組んで、軍事力で“覇を唱える道”を推進するのか...これはまるで、戦前の亡

を見ているようです...」

「小泉・政権の治世は...」大川は、灰皿の上あったタバコを取り上げ、真中を潰し

た。「いわゆる、“覇道(儒教: 武力・権謀を用いての治世)でしょう...民主主義の“王道(儒教:

 理想の政治思想で、仁徳を主体とする政道)ではありません...

  もっと砕いて言えば、スタイルとしては“ヤクザの統治”でしょう...法治システム

が機能せず、悪事のやりたい放題の世の中になってしまってしまっています。そし

て、担当の法務省は何をしているのかと言えば、この状態を放置し、“裁判員制度”

を創る方に熱中しています...

  それが必要なのは理解しますが...“国家の一大事”に、いったい何をやってい

るのかということです。しかし、これも法務大臣の責任であり、小泉・政権の責任なので

す。だから、“ヤクザ統治の治世”だと言うのです!」

「うーむ、大川の言うとおりだと思う...ところで、アメリカは、日本の右傾化を、どう

見ているのかな?」

「はい、」北原が、待っていたように言った。「大川さんの言うように、アメリカは多様性

のある国家です。そうした意味で、“小泉・政権の一連の右傾化”については...ア

メリカには、2つの意見があるようです」

「ふむ、」津田が、うなづいた。

「1つは、ブッシュ政権寄りの意見です...日本が“普通の国”に成長し、彼等の言う

所の、非現実的な平和主義から脱皮することを歓迎しています...これは、アメリカ

と歩調を合わせ、世界戦略で一体化していく道です...いわゆる、小泉・政権の路

ですね、」

「もう1つは...」

「もう1方は、日本の右傾化を懸念する意見です...これは、大多数の日本国民と

同じように、良識派の意見です...まさに、アメリカは、多様性のある国家といえま

す。

  そもそも日本の右傾化は、東アジア地域での軍拡競争覇権競争を招き、アメリ

カの外交戦略をも、非常に複雑化させてしまうという考えですね...」

「ふむ...その2つに分かれていると...」津田がうなづいた。「ええと、最後に、茜

さん...まとめていただけますか、」

「はい!」茜がうなづいた。

  〔4〕  新時代への扉・・・   

      文明の折返し第3ステージへの移行  

                   

「ええ...秋月茜です...

 

     “覇権主義による富の収奪”...それは、20世紀の遺物!

     “21世紀の真の危機”...それは、文明の外側から押し寄せて来る!

 

  ...ということですね...

  “ミサイルを空中で補足/撃破する”...こんなことの研究に、何千億円もの税金

が投入される!最新鋭戦闘機...最新鋭のイージス艦...これらも、非常に高価

な兵器システムです。はたして、こんな最新鋭のシステム兵器は、必要なものなので

しょうか...

  肝心の“敵”は、何処にいるのでしょうか...実は、そんな“敵”は、何処にもいな

いのではないでしょうか...しからばそれは、“世界支配”のために行使される、“最

新鋭の暴力装置”ということでしょう。

  20世紀型の“富の収奪”に、21世紀型の“最新鋭の暴力装置”が構築されると言

うわけです。人が生態系で生きて行くには、基本的には丈夫な手足と、最低限の道具

があれば十分なはずです。このような、粗く粗野な“暴力装置”は、生態系には本来

必要のないものです。

  さて、その一方...

  そうした弾圧に対抗するために、被抑圧者の側は、何とか大量破壊兵器を持ち

“覇権国家”と対抗しようと思うわけです...アメリカをはじめ、安保理・常任理事国

は、自分自身が核兵器を持ちながら、他の国々がそれ持つのは非常に危険だと騒

ぎたてます...

  こんな論理が、まかり通るものなのでしょうか...そして、現在の世界体制の枠組

みを維持し、“覇”を唱え、“富の収奪/富の寡占化”を謀る...そもそも、このような

世界構造そのものに問題があるのです。

  為すべき事は...まず、“核兵器を持っている安保理・常任理事国”が、率先して

“核兵器を捨てるべき”なのです!そこに、“人類の叡智”が示されれば、人類文明

“戦争の時代”のを克服できます...それもまた、新しい第3のステージには、是非

とも必要な要素です...」

                  house5.114.2.jpg (1340 バイト)   

「ええ...

  “21世紀の大艱難(かんなん)/巨大な人類的危機”は、文明の枠の外側からやって

来ます...まず、“人口問題”“飢餓”...この生態系の冷徹なツケ必ず来ま

す。人類文明は、グローバル化と、風船のように膨れ上がった人口で、その文明の基

は非常に脆(もろ)くなっている事を知るべきです。

  また、グローバル化による“感染症の危機”も深刻です。これは、これは生態系に

おける、“宿命的な危機”と言えます。人類文明は、地球の生態系から離れては、生き

ていけません。そうであるならば、この生態系のシステムと同調して行くしか、生きる

道はないのです...

  それは、つまり...“文明の適正な規模への縮小”“地球環境の復元”が、急

務だと言うことです。とりあえず、私たちは、人類文明全体を、“コンパクトな地下都

市空間へシフト”していくことを提案しています...

 

  ええ...21世紀に突入した今、“文明の折返し点/ターニングポイント”が到来

し...“覇権主義”はまさに“20世紀の遺物”になったということです...

  むろん、日本の右傾化も、それに沿った“憲法改正”なども、全て“時代錯誤”だと

いうことです...“覇権主義”“拡張主義”“戦争ごっこ”は、20世紀以前までの遺

物です。

  人類文明は、第1ステージ/文明の曙第2ステージ/産業革命・エネルギー革

命...と歩んできました。そして今、第3ステージ/情報革命が、インターネットの普

ヒトゲノム解読等で、すでにスタートを切っています。しかし、このステージの真の

姿は、まだ現れてはいないでしょう...

  第1ステージからは、第2ステージの車社会航空機輸送網核爆弾が想像を絶

していたように、第3ステージの実態もまた、第2ステージからは想像を絶したものに

なると考えられます。

  “神への帰依(きえ)でもなく...“経済の原理/欲望の原理”でもなく...それら

に代わるどのような価値観が出現してくるのでしょうか...私も、楽しみにしていま

す...」

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