クラブ・須弥山井戸端会議/エッ、神様は本当にいるの?

   井 戸 端 会 議    <第2回>  < エッ、神様は本当にいるの?・・・ No.1

         エッ、神様は本当にいるの?  

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No.1 〔1〕 うーん、本当かしら? = 高杉・塾長に電話  2006. 7.18
No.2 〔2〕 “アインシュタインの確信” = 神の痕跡を見る 2006. 7.18

  

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  うーん、本当かしら?・・・ 高杉・塾長に電話

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   <マチコ>     <弥生>        <ブラッキー>     <夏美>        <響子>   <支折>

「本当なのかしら?」弥生が顔をそらし、疑わしそうにタバコの煙を吐いた。「本当に、

高杉さんが、そう言いいましたの?」

「本当よ、」マチコが、口を尖らせた。カクテル・グラスを尖った口へ運んだ。「ねえ、支

折、」

「うん...」支折が、スプーンで、かき氷のてっぺんをつついた。「それは、本当よ...

“神様”は、本当にいるらしいの、」

「本当に?」弥生が、顔を突き出した。

「ええ...」支折は、弥生を眺め、スプーンを口に運んだ。「まず、“神様”以前の、

“八百万(やおよろず)の神々”が存在すると言うの...私たちには見えない、“精霊”

ようなものや、“霊魂”や...“種の意識の共同体”のようなものらしいわ...

  その上位システムの風景が、どのようなものになっているかは、“文明の第3ステ

ージ/情報革命”の中で見えてくるらしいの...」

「んー ...」弥生は、タバコを口に当てた。

「あらゆる生物種というものは...」支折が言った。「それぞれ、“種”を存続させるた

めに、“種としての戦略”を持っているでしょう...それは、納得するわね?」

「ええ...」弥生は、細い煙を吐いた。

「人間なら...男性女性がいて...女性の中には超個的(トランスパーソナル)女性と

しての体の構造があるわけよ...それは、1個の生物体といて生きていく上には、

必要のないシステムなの...

  “種”として、個体を越えた“種レベル”で、それが必要なのよ...そして、一方に、

男性がいる。そして、男女のペアで、“種”増殖していくわけなの...この“種”とし

ての戦略をデザインするのは、個々の“個体”にはできません。“種の共同意識体”

戦略ですわ...」

「ええ...」弥生は、ボンヤリと支折の顔を見つめた。

「つまり、人間は...私という“個体”の中には...超個的な部分/私を越えた性/

種としての戦略的な領域があるわけよ...それで、“両方の性”で、個体を増殖する

という生物体としての仕事を成し遂げるの...

  何故...かは、知らないけど、私たちはそう生まれてきたわけよ...つまり、人間

“種の共同意識体”が、そうした戦略をとっているわけね...そうしたヒエラルキー

(階層性)の、私たちには見えない超越的な上位システムに混じって、“八百万(やおよろず)

の神々”の、意志があるというわけよ...」

“種の共同意識体”は、何処にあるのかしら?」弥生が聞いた。

「うーん...」響子が、首をかしげた。「それは、人の“無意識の領域”に存在している

のも知れないし...個体の外側にも“共同意識体”として、特異な座標を占めている

のかも知れません...

  いずれにしても...それらも“個体”と同様に、“36億年の彼”リンクしているは

ずですわ...」

細胞は...」夏美が言った。「単細胞生物が見られるように...“生命体”最小単

です...

  ですが、多細胞生物ではその上位システムとして、各種の臓器としての働きがあ

ります...人体の場合、その最上位に巨大な脳があり、明らかに体全体に指令を出

しています...

  でも、1つ1つの細胞には、その全体が見えていないのです...上位システム

らは下位が見えますが、下位からは上位が見えないのです...それが、人間の“個

体を超えた領域/トランスパーソナル(超個的)な上位システム/種の領域”として...

何らかの作用性が存在するのだと思います...

  堀内さんが、よく言っていることですが、“恒常性(ホメオスタシス)もその1つだと思い

ます。“恒常性は、目には見えませんし、何処に存在するのかは分りません。です

が、生物体には、そうした全体の安定性を確保するシステムが、確かに存在します。

それが、私たちを、病気ケガからもとの健康な状態に復元する、不思議な力です。

  こうした“恒常性は、生態系でも観測されていますし、地球生命圏にも存在する

のだと思います。そうしたものが、つまり...上位システムとして、“神”の様に見え

たり...“36億年の彼”として...“超越的な人格”を持っているように...見えた

りするのではないかしら、...」

「そうですね...」響子は、夏美にうなづいた。「“個体”の上に、“種”があり、“種の

共同意識体”があり...“恒常性”そがあり...その“戦略”“意志”が明確に存在

するということでしょう...

  夏美さんの、言う通りだと思いますわ...」

「日本という、この島国にも...」支折が言った。「過去2000年来の、こうした諸々の

流れがあるのでしょうね...

  それが、スッキリとした、まとまったものとは思いませんが、それらが“八百万(やおよ

ろず)の神々”というような上位システムであると言うなら、それはそうなのかも知れま

せん...むしろ、何も無いはずが無いのです。“情報革命”が始まった、21世紀にお

いて、本格的な解明が進むようですわ...

  弥生さんだって、“霊的なもの”を、全く信じていないわけではないでしょう?」

「はい...」弥生は、パラッ、とタバコの灰を灰皿に落した。「それは、そうですわ...

私たちのような“お客様商売”ですと、むしろ信じる方ですわ...」

「でも...」夏美が言った。「上位システムが、下位に対し、“神のように万能”である

ということは、あり得ないと思います...確かに、下位全体を見渡すことはできます

わ...でも、万能ではないと思います...

  それは、人体のヒエラルキー(階層性)を眺めても、類推できることだと思います...

は、体全体を動かす意志をもっていますが、人体・60兆個の細胞の、1つ1つをコ

ントロールしているわけではないのですから...」

「夏美もさあ...」マチコが、カクテル・グラスの首を、指でつまんだ。「けっこう難しい

ことを言うわよね」

「あ、これは、仕入れたばかりの知識なのよ...」夏美は、高校時代から親友のマチ

コに手を振った。「でもさあ...堀内さんと仕事をしていると、こういう話に詳しくなる

わけよね」

「ふーん...」マチコは、カクテル・グラスを傾けた。「私はさあ...塾長のアシスタン

を一番古くからやっているけど、詳しくはならないわよね、」

「でも...」夏美は、深い笑窪を作った。「塾長が話した事は、覚えてるわけでしょう」

「うーん...」

「森林でも...」支折が、スプーンで、カキ氷の山をサクサクと崩した。「生物は皆、そ

こで生き残るために...多様な戦略をとっています...

  花粉を、少しでも遠くまで運ぶ“ずるがしこい戦略”や...少しでも陽光を浴び

“せこい戦略”...熱帯雨林の林冠(りんかん/林のてっぺん部分)に見られるような、植物

と動物の1対1の危うい共生関係...まさに、喧騒の世界です...

  何故、こうした多様性が育まれるのか...多様性は拡大するのか...私には分

りません。ですが、“種の共同意識体”と言うのは、確かに観測されているようです。

  響子さん...そうしたものが、上位システムとして...“神々”のように振舞うこと

が、あるということでしょうか?」

  響子は、カクテル・グラスを、そっとテーブルに置いた。

「そうですね...」響子は、唇を結んだ。「例えば、人間の場合...“天の声を聞く”

いうようなことが...実際にあるようですわ、」

「ふーん...」

「民衆に、“正しい道”を示すというようなことは...はるかな昔に、人類はすでに経

験しています...

  およそ2000年前...あの大宗教時代において...パレスチナの地に、そして

ンドの地に、が降臨(こうりん)し、人類に“正しい道”を示しています...何故、

あのような大宗教が、ほぼ同じ時期に登場したのでしょうか...

  その頃に、“人類文明の原型”が形成されたわけですが、やがてそれも大きな歪

(ひずみ)が出てきました...つまり、“神による支配”も、外部からエネルギー

取り入れ、エントロピーを排泄するという...“システムの新陳代謝”が、うまく行われ

なかったからですわ...」

「うーん...」支折は、カキ氷のスプーンを動かすのを止めた。

「高杉・塾長がよく言っています...」響子が言った。「“形あるものは、必ず壊れる”

ということです...

  これは、“熱力学の第2法則/エントロピーの増大”によるものですが、これに拮抗

するのが、“生命潮流”であり...“新陳代謝/呼吸”なのです...文明を維持・発

するには、このことは“決定的に重要”なことですわ...

  今、支折さんたちは、“人間の巣”を創設する仕事をしていますが、そこでも決して

忘れてはならないのは...“人間の巣”も、“新陳代謝”しなければ...急速に崩壊

が進むということです...“新陳代謝”をシステムに組み込む必要がありますわ」

「はい!」支折が、コクリとうなづいた。「心に留めておきます!」

 

         

「でも...」弥生が、響子に言った。「はっきりと、現実に...“神様は存在する”と言

われると...衝撃ですわ...もう一度、聞きますけど...“神様”は、本当に、存在

するのかしら?」

「うーん...私たちには、難しいわねえ...」

「とにかく、」支折が言った。高杉さんが言っていたのは、そんなことでしたわ」

「うーん...」マチコが、カクテル・グラスの中のサクランボをつまみ上げ、口に入れた

た。「夏美は、“神様”はいると思うの?」

「はっきりとは、分らないけど...この世の中には、説明のつかないことが多いわね

え...“偶然の一致”とかも多いし...何か、変よね...この世界は、」

「確かに、そう...」支折が言った。「“意味のある偶然の一致”は、共時性”と言うら

しいんだけど...それは、“この世の構造”と関係すんだと、高杉・塾長が言ってたこ

とがあったわね」

「でも...」響子が、団扇(うちわ)を揺らした。「弥生さんの言うように...“神”は存在す

るのかどうかと、明確に答えを求められると、困るねえ...私たちは、日頃、“神”

ついて、真剣に考えたことがないし、」

「日本の現代文化はさあ、」マチコが言った。「“神”については、希薄よね」

“神を信じる”とは、言いますわ」弥生が言った。「でも、“存在する”と断定するという

のは、どうかしら?」

「そもそも...」響子が、胸の上で団扇を止めた。「リアリティー(実在)は...“絶対一人

称”の視界から見た“唯心”の風景です...

  この“唯心”とは、『華厳経(けごんきょう)の中心思想ですが、私も高杉・塾長の影響を

受け、この風景が気に入っています。便利なので、説明する時に、リアリティー“唯

心”を混同することもありますが、本来は同じものではありません。私たちの“心の中”

で、同じものになっているのです...

  さて、その“唯心”ですが、この世界には“局所性”は存在しません...“唯心”

は、“天地創造(旧約聖書・創世記)の前の、巨大な全体であり、部分局所性の原理

いうものが存在しないのです。

  それが、存在するように変貌したのは、私たちが、名詞を与えて無限に分割し、そ

こに“言語的亜空間の世界”を成長させてきたからです。それをリアリティーの上に、

重ねてきたからです...それは非常に便利で、まさに人類は、そこに“人類文明”

築き上げてきたのです...その“人類文明”が今、ターニング・ポイント(折返し点)を迎え

ています...」

「響子はさあ...」マチコが言った。「塾長の、“禅修行の一番弟子”だから、詳しいわ

よね...」

「ともかく、“唯心”の中に...」響子が言った。「“神”は存在しませんわ...それは

確かだし、存在しようがないのです...」

“天地創造”では、」マチコが言った。「“神様”が、この世界を創ったのよね。そうする

と、その場に、“神様”はいたんじゃないかしら?」

アダムイブの話ね」夏美が、頬に笑窪(えくぼ)を作った。

“ノアの箱舟”の話もそうよね!」マチコが言った。

“神”がいたとすれば、」支折が言った。「この世界の、外側にいたわけよ。そして、

世界の混沌から、“天と地”を創造したわけでしょう...」

「ふーん...」弥生が、ため息をついた。「話が、最初に戻ってしまいましたわ...」

 

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フッフッフッ...面白いぜ...」ブラッキーが、太い声で言った。ウィスキーのオンザ

ロックを飲みながら、タバコわ吹かした。「じゃあ、塾長に聞いてみたらどうだい。ポン

のビヤガーデンにいるはずだぜ、」

「そうね!」支折が言った。「聞いてみましょうか?」

「うん!」マチコが、強くうなづいた。「はっきりした方がいいわよね!」

「オウ、電話してやるぜ...」ブラッキーが、タバコを灰皿の上に置いた。

 

   ブラッキーは、携帯電話を開き、片手で操作し、天井を見上げた。プルルルルー、

プルルルルー、と手の中の携帯電話が鳴った...

「おう、」ポン助の声が出た。「“ポン助のビヤガーデン”だよな、」

「オレだ。塾長はいるかい?」

「おう、いるぞ」

「何をしてる?」

「まあ、ビールを飲んでるよな、」

「何か、うまいものはあるのかい?」

「塾長は、アユの塩焼きで飲んでるよな、」

「アユの塩焼きか、」

「ドジョウもはいってるぞ」

「オウ、ドジョウか!」

「小さいけどよ、串を刺して、蒲焼にするぞ。今、編集長と、大川さん(第2編集室/国際部)

が食べてるよな」

「ウーム...うまそうじゃねえか。まだ、あるのかい?」

「2、3人前はあるぞ」

「そうかい。オウ、とにかく塾長に代わってくれ」

「おう、」

「ウム...何か用か、ブラッキー?」

「オレは用はねえが...“井戸端会議”で、女連中が、来てくれとよ。何でも...神

様がいるとか、いねえとか...そいつを聞きたいそうだぜ」

「聞いてどうする?」

「さあ...オレは知らねえぜ」

「フーム...分かった。そうだな、10分ぐらいしたら、行くと伝えてくれ」

「オウ」

 

“アインシュタインの確信” = 神の痕跡を見る

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  高杉は、津田と一緒に、“ポン助のビヤガーデン”を出た。クラブ“須弥山”へ出

向いた。ほろ酔いかげんで、クラブの入口に立つと、バイオリンの音色が聞こえて来

た。  ドアを押して中に入ると、サーッとクーラーの冷たい風が流れてきた。バイオリン

に合わせて、ダンスを踊っているカップルがある。弥生が、奥の方の衝立の横に立っ

ていた。高杉たちに手を上げた。どうやら、そこで“井戸端会議”をやっているらしかっ

た。

  弥生が、まわりを見回しながら、ツカツカと歩いて来た。高杉は、バイオリンを引い

ている女を眺めた。何度か見たことがあった。弥生の友人で、小さなブティックをやって

いるとかという女だ。

「すみません、高杉さん、津田さん...何を、お飲みになります?」

「うーむ...ビールをたのむ」

「私も、ビールで、」津田が言った。

「はい!」弥生が、ウエイターの方へサインを送り、うなずいた。

  二人は、弥生と一緒に奥のテーブルへ行き、衝立を回った。マチコが、声をはり上

げていた。ブラッキーが、それに言い返していた。高杉は、近くのソファーに腰を沈め

た。津田も、横にドッカリと腰を落した。

「で...」高杉は、あらためて、まわりを見回した。「何だって?」

「ええと...」マチコが言った。「“神様”はさあ...存在するのかしら?」

「うーむ...」高杉は、あごに手をやった。「なんとも...単刀直入な質問だな、」

「大変な難問だ!」津田が、手を組み合わせた。

「はい、」マチコが、口を尖らせた。 

「ともかく...」高杉は、みんなの顔を見回した。「高名な科学者というものは、たいが

“神の存在を信じている”ものらしい...」

「その、理由が知りたいのよね、」マチコが、鋭く言った。

  高杉は、つるりと顔を撫でた。

「私が...最も印象に残っているのは...」高杉は、天井を見上げた。「“相対性理

論”を提唱した、“アインシュタインの確信”です...

  探求が深くなり、自然の奥深い真理が見えてくるほどに...その、底知れない風

景の、“畏敬の念”に打たれるのだそうです...これはまさに、“神のなせる業”

と...“神以外になしえない業”だと...

  アインシュタインは、そこに、まぎれもない“神の痕跡/神業の底知れない秩序”

を、見たのでしょう...」

「...」

アインシュタイン“相対性理論”を提唱し、ニュートン力学で統一されていた近代

物理化学の、パラダイムを変えたほどの人です。その人が、まさに、“大自然に神業

序”を見たのです...私たちも、真剣に検討してみる価値はあるでしょう...」

「そうね、」マチコが、コクリとうなづいた。

「次に印象的なのは...デカルトかな...

  “ニュートン力学”“絶対主義のパラダイム”は、デカルトのものだし...彼の“機

械論的世界観/要素還元主義”は、現代科学にもはかり知れないな影響を与えてい

ますからねえ...」

“相対性理論”の、“相対主義のパラダイム”になってもですか?」夏美が聞いた。

「そうです...現に、“機械論的世界観/要素還元主義”は、現代科学に脈々と生き

ているでしょう...実際には、科学者はその古いパラダイムを使っているのです」

「はい、」

デカルトは、“解析幾何学”を創始した人ですよね?」支折が言った。

「そうです...ともかく、現代科学の“機械論的世界観”のルーツは、デカルトの科学

哲学にあります...

  私は、よく引用するのですが...彼は世界を、“思惟するもの/精神”“延長さ

たもの/物質”に二分しました。つまり、世界を、“心の領域”“物の領域”を分離し

てしまったのは、デカルトなのです。そうやって、デカルト“二元論”を展開していっ

たわけです...

  ところが...科学的方法論において、“物質”の方...つまり、“自然科学”の方

だけが、極端に発達してしまいました。これが、現代・科学技術文明を創り出し、

質主義/資本主義/経済万能主義が極端に進み、文明を非常に歪(いびつ)にしてし

まったのです」

デカルトが...」マチコが言った。「“機械論的世界観”をつくったわけね、」

「いや...少し違いますねえ...

  デカルト自身は、“神の存在を確信”していたのです。彼の“機械論的世界観/要

素還元主義”も...“吾思う、ゆえに吾あり”という...彼の根本原理に示されるよう

に...彼自身は、“思惟するもの/精神”の方に、むしろ比重を置いていたのです」

「それが、どうして...」マチコが、首をかしげた。「“物質”の方の...自然科学だけ

が、発達したわけよ?」

「まあ...中世ヨーロッパにおける、神中心の世界に対する反動もあったのしょう。ま

た、科学的方法論/科学的手法で、“思惟するもの/精神”を解明するのは、非常に

難しかったということです。

  それは、19世紀から20世紀にかけて活躍した、“フロイト”精神分析学の確立

まで、待たなければならなかったわけです...それと、“ユング”ですね。“フロイト”

“ユング”の出会いは、有名な話ですが...この二人の心理学の決定的な違いは、

“無意識”に対する見解の相違と言われます...

  まあ、話がややこしくなるので、心理学の話は、また別の機会にしましょう...」

「うん...」マチコがうなづいた。「つまり...“精神”の方は、難しいわけね、」

「そうです。非常に難しい...

  それは、“文明の第3ステージ”である、21世紀の“情報革命”の中で、本格化して

行くでしょう...」

「つまり、これからですね、」

「そうです...

  それから、科学文明が非常に(いびつ)に発展してしまったのは、フランシス・ベーコ

の影響が大きかったと言われています。彼は近代科学の祖の1人で、“帰納法(因

果関係を確定するのに用いる方法)を発展させた人です...

  “帰納法”そのものは、ソクラテスが発見し、アリストテレスが方法的に整え、スコラ

哲学を経て、ベーコンに至っています。それから、“帰納法”を完成させたのは、19世

紀のジョン・スチュアート・ミルと言われています...」

「他に、どんな方法があるのかしら?」夏美が言った。

「まあ...“演繹法”“弁証法”があるわけですね...このフランシス・ベーコンは、

デカルトよりは...ほんの少し、前に生まれた人ですね...」

ベーコンはさあ...」マチコが、わざと皿の中にある“ベーコン”を、楊枝(ようじ)で突き

刺した。「ブタのばら肉の燻製よね...その名前を聞くとさあ、私は混同しちゃうわけ

よね。何か、関係があるのかしら?」

「うーむ...深遠なる質問だが、関係があるのかも知れない。あ、ありがとう...」

  高杉は、肩を回し、自分のビールのジョッキを受け取った。さっそく、一口喉に流し

込んだ。ビールは、よく冷えていた。深く、透明で、善良な味がした。高杉は、ベーコン

のカケラを楊枝で刺し、口に運んだ。ベーコンを噛み砕き、それを冷えたビールで胃に

流し込んだ。

Mr.ベーコンが...」高杉は、ビールのジョッキをかざして眺めた。「ベーコンを食べ

ていても...私は何も異存(反対意見)はない...」

「どういう意味かしら?」

「意味はない...しかし、“ポン助のビヤガーデン”のビールもいいが...ここのビ

ールも、悪くはないな...」

「言ってることが、分らないわねえ...」マチコが言った。

「ビールには、」弥生が言った。「こだわっておりますわ...特に、夏は、」

「ポンちゃんも、」支折が言った。「そう言えば、色んな地ビールを集めてたわね、」

「うむ...

  さて、フランシス・ベーコンの話に戻るが...彼は、“自然を支配するための知識”

を、科学という方法論を使って取得することに、専念したと言われます...“人間と

利害関係”においてのみ、“帰納法”を駆使し、自然を扱ってきたということです。

  まあ、もうヒトコト言えば...彼は、“自然を拷問にかけ、その秘密を吐かせる”

まで言い切り...あえてこの有名な言葉を残しています。まさに、“近代科学の創

始”において、“自然は科学によって征服されるもの”という考えの、“すり込み”が行

われていたのです...」

「それが、どうしたのよ?」マチコが言った。「何処が、変なのかしら?」

「つまり、アインシュタインのような、“大自然に対する畏敬の念”がまるで無い...そ

ういう方法で、科学というものが創始され、それが当り前の手法になった...今でも

それが、科学の手法だと思っている人は多いと思います...」

「うーん...」

“自然を拷問にかけ、その秘密を吐かせる”というようなやり方が...今日の文明

の危機を作り出しているのです。“機械論的世界観/要素還元主義”の行過ぎが、こ

こまで地球環境を破壊してしまったのです...

  そして今、ようやく遺伝子工学“ES細胞”などのレベルで...“生命倫理”“神

の領域へ踏み込むことの是非”、が議論され始めています。農作物畜産にしても、

“人間の浅知恵の遺伝子操作”で、生態系を汚染てもいいものでしょうか...

 

  私は、大自然に対して、文明はもっと謙虚であるべきだと考えています。遺伝

子操作の、必要性も感じません。むしろ、人口の増加と、人間の欲望の方を、抑

制すべきです。

  また、最先端科学が、経済原理に流されていくことに、強く警告します。文明

の折り返しは、間もなく、奔流となって流れ始めるものと思われます...

 

  まあ...当時のフランシス・ベーコンには、もちろん罪はありません...その当時

は、“魔女狩り裁判”が、頻繁に行われていた時代です。そうした中で、彼は“帰納

法”という、科学的手法の確立に努力していたわけです。

  ただ...“自然を征服する”という科学の姿勢が、今日の地球環境の破壊につな

がって来ているということです...そして、当時は、地球がパンクしてしまうような事

態は、想像すらできなかったろうと思うということです...」

「うーん...」マチコが言った。「ベーコンさんの言ったことは、いけないことかしら?」

「うむ!」高杉が、強くうなづいた。「マチコの言うことは、もっともだと思います...

“それが、科学というものだ!”ということでしょう...しかし、その“すり込み”をやっ

たのは、ベーコンだと言うことです...

  自然を、“征服する/支配する/拷問にかける”...というような考え方が、今日

“科学哲学”になってしまっていたということです...

  くり返しますが、これはベーコンが悪いのでもなく、ソーセイジやハムが悪いのでも

なく...それぞれの時代の、科学者の自覚の問題なのです...

  そして、高名な科学者は、大自然の秩序の中に、“神を確信”してきたということで

す...アインシュタインのように...」

「...」

「このベーコンという人は...」津田が、ビールのジョッキを持って、高杉の方を向い

た。「イギリス人ですね...近代科学の父と呼ばれている、ガリレオ・ガリレイと同時

代の人でしょうか?」

「そうです...」高杉が答えた。「ガリレオは、イタリア人ですね」

ガリレオは...」マチコが言った。「“それでも地球は回っている”と、言った人よね」

「そうです...

  望遠鏡を発明し、“実験科学”を始めた人です...ベーコンガリレオが、“帰納

法”“実験科学”という新しい手法で、自然科学を大いに発展させるわけです...

デカルトは、それより少し後に生まれた人で、フランス人です...

  もっとも、彼等の前に、コペルニクス(ポーランド人)が、“地動説”を発表しているわけで

す。近代科学は、その“地動説”から始まったとされています」

コペルニクスはさあ、ガリレオのようにキリスト教の教会からは、迫害されなかった

のかしら?」

ガリレオ宗教裁判は、歴史的にも有名な話です。コペルニクスは、それよりも100

年程前の人ですから、当然凄まじい迫害が予想されました。ところが、それを予期し

た彼は、著書の『天球の回転について』は、死の寸前に発刊したのです...

  それによって、彼が天国へ召されたか、地獄へ突き落とされたかは、定かではあ

りませんがね...しかし、ともかく彼は、“コペルニクス的転回(/カントの言葉)を、全人

格をなげうって、敢行したのです...

  別に、“神”を信じていなかったわけではないでしょうが、彼は“自らが確信”したこ

とを発表したのです。しかしそれは、神中心“ヨーロッパ中世のパラダイム”を...

そして、“人間のアイデンティティー”をも、グラリとひっくり返してしまうほどのものだっ

たのです...」

「それでさあ、“神様”は、どうしたわけよ...」マチコが言った。

「そう...その話に戻ろう...」高杉は、ビールのジョッキをあおり、それをテーブル

の上に戻した。「“神様”は、『天球の回転について』の刊行には、神罰を与えることは

なかったようです...」

「うーん...」

               

「さて、デカルトの話に戻るが...」高杉は言った。「 彼は“神を確信”していた...

  いや、もっと深く、彼の哲学の中に、構造的に組み込まれていたと言った方がい

い。彼にとって、まさに、“神は存在していた”のです...」

“神様”が...」支折が、体を乗り出した。「存在していると彼の理論/哲学は、ど

うなるのかしら?」

完璧になります...この世界が全て、デカルト流に、説明されることになります...

  デカルトが分割した“精神”“物質”が、これほど乖離した現代文明の状況は、

もともと“デカルトの意図したもの”ではなかったということです...デカルトにとって

は、“神の存在”こそ、二分した2つの領域“統合する要”だったのです。私たちのよ

うに、“神”は存在するか、しないかではなく、デカルトにとってはまさに、“絶対の存

在”だったのでしょう...」

「うーん、」

「結局、現在でも...“精神/心の領域”“物質/物の領域”は、統合されていない

わけです。そのメドすらつかないわけです。そうするとデカルトは、はるかに先を行っ

ているとも言えます...

  私たちも、デカルトの言う“統合の要”を否定してしまうのではなく...まず、十分

“吟味”してみるべきです...そして、現代文明に即した、“2つの領域の統合”

を、推進しなければならないと言うことです」

“心”“物”を...」支折が言った。「統合するのが“神様”とは...実際に、どうい

うことになるのかしら?」

「それなら、」マチコが言った。「デカルトはさあ...最初から、“思惟するもの”“延長

されたもの”を、“分割”しなければ良かったんじゃないかしら...そんなに、“統合”

するのが、難しいのなら...」

「いや...」高杉は、笑った。「それでは、“理解”が進まないでしょう...

  デカルト要素還元主義二元論西洋科学の方法は、まず“2つに分割”するこ

とから始まります...“理解”とは、そういうものなのです。があって、がある。

があって、西がある。しかし、リアリティーそのものには、実はそんなものは無いので

す...全ては、“分割”することから始まるのです...」

「...」

リアリティーには...実は“境界”西“境界”が存在しないのです。

その“境界”が無ければ...が存在しようがないし、西が存在しようがない...」

「それはそうよね...なら、何故、とか、西とかと言うのかしら...」

「ここが、肝心な所です...

  実は、そこに自己という“主体”を置くからです...全ては、そこから始まります。そ

して、“境界”とは“主体”のことなのです。しかし、“主体”“客体”が一体なのが、

アリティーであり、“唯心”なのです...

  禅の修行において、“無心/無我”になり、“主体を消去”せとは、そういうことを言

うのです...」

「うん、」

リアリティーは、私だけが見ている、眼前するこの世の姿です...私だけが目撃す

この世の形です...“絶対一人称”“唯心の世界”です...部分が無く局所性

の原理が存在しない、永遠の今です...

  そこが、禅的“悟りの風景”と重なります...現代物理学が、仏教思想/東洋

思想と相している...と言われるゆえんでもあリますね」

「はい」響子が言った。

「この点は...響子さんが、一番良く理解しているわけだ、」

「でも...」響子が、ゆっくりと首をかしげた。「デカルトの言う“統合の要”を...直感

に理解するのは、難しいですわね...そもそも、“神の定義”が、どうなるのかし

ら...」

“直感”でないと、」支折が、言った。「分らないことも、あるんじゃないかしら...

  “アインシュタインの確信”も、“直感”ではなかったかしら...理屈で分っていたの

なら、彼は

             “E=mcの2乗”(/ワープロでうまく書けません...

                       ...のように、数式で書いていたはずですよね」

「うーん...それは、そうねえ...」響子が言った。「すると、“神様”“直感”によっ

て、直接的に、“確信”するしかないのかしら...」

“知識”には、」津田が、肩を引き、脚を組み上げた。「“2種類”あるといいます...

対象を直接つかみ、認識する“直接的知識”と、いわゆる推論形式の認識である“象

徴的知識”です。

  このことを、私の方から、少し説明しておきましょう...」

「お願いします」高杉が言った。

「津田さん、」マチコが言った。「認識と、知識は、どう違うんですか?」

「ああ...ほぼ同じ意味です。が...認識の方はやや動的ですね。知識は、その

の集積を指すことが多いですかね、」

「うーん...はい、」

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「さて、いいですか...」津田が言った。「“直感”とは、“直接的知識”のことです。

  これは、人間の五感や、第六感という感性が相当するのでしょう...リアリティー

に、直接接触する能力ですね。そこから得た、“直接的知識”そのものです。そもそも、

“この能力”と、“この人間的バックグラウンド”がなければ、認識による推論も、“象徴

的知識”も成立しないのでしょう...」

「ふーん...」マチコが、納得したように、コクリとうなづいた。

「この“直感”は、体系化分析というものを、一切受け付けません。ゆえに、“この

の最大の謎”である、“意識”に属しているものと思われます...そうではないでしょ

うか、高杉さん?」

「ウーム...そうだと思います...

  “直感”は...“意識”とは不可分のものでしょう。そして、“意識”とは、“この世の

全てに触れる”ことのできる、“この世の最も基本的な何か”です...」

「と、言うことです...」津田は、笑みを作った。「その“直感/直接的知識”分析

しようとすれば直接性そのものが崩れ、推論形式“象徴的知識”に陥ってしまうわ

けです」

「津田さん...」響子が言った。「“直接的知識”と、“象徴的知識”があると言いまし

たが...では、“象徴的知識”というのは、どのような定義になるのでしょうか?」

“象徴的知識”とは...つまり、“推論形式の認識”による知識です。いわゆる、“二

元論的な知識”でもあります...人類文明の膨大な知識の集積は、ほとんどがこの

“象徴的知識”で表現されます」

「はい」響子がうなづいた。

「この“象徴的知識”に対して、“直接的知識”とは...人間の“感性による認識”と言

えるのではないでしょうか...私は、こうした方面の研究者ではないので、専門的な

ことは知りませんが...」

「あの...」夏美が、手を上げた。「バーチャル・リアリティー(仮想現実)は、どうなるのか

しら?“直接的知識”でしょうか?」

「うーむ...

  バーチャル・リアリティーが拡大して行くと、影響力も果てしなく拡大していきます。

しかし、結局それは、バーチャル(仮想)だということでしょう...人の手によって操作さ

れる、バーチャルだということです」

「そうですねえ...」高杉が、顎に手をやった。「将来的に、非常に微妙な存在になる

かも知れませんが、とりあえずはバーチャルの世界ということでしょう...

  ただ、人類文明が形成する“言語的亜空間の世界”も...元々は人類文明の手

によって拡張されてきた、バーチャルの世界なのです。“人間的なバイアス”のかかっ

“ストーリイ”が、“永遠の現在”に反響しているようです...つまり、まだ全体の構

造が分らないがゆえに...何が、“結晶世界でない”とは、断言できないわけです」

「時間とは...」津田が言った。「単なる、パラメーター(媒介変数)ではないと言うことで

すか、」

「そうであるならば...」高杉は言った。「この世界は、よほど単純なものになります。

時間軸を1本引けばいいわけです...

  しかし、それでは、時間軸上に記述はではますが...“生命体”“意識”プロ

セス(過程)が...死んでしまうのではないでしょうか...」

「...」津田が、腕組みをした。

 

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「あの、高杉さん...」弥生が、両手を握りしめて言った。「それで、“神様”は、本当

に存在するのでしょうか?」

「この問題を...」高杉は言った。「編集長の言うように...“二元論的な知識/象徴

的知識”推論的に説明するとなると、論理的な矛盾を犯すことになります...」

「はい...」弥生が、首をかしげ、肩を落して見せた。

「いや、ガッカリしないで下さい」高杉は、表面的に、包むように微笑した。「これから

説明しましょう」

「はい...」弥生は、まばたきした。

「物理学の“不確定性原理”とよく似たものに、数学の“不完全性定理”というのがあ

ります...この数学的な定理は、1931年数学者/クルト・ゲーデルが発表したも

のです...」

「また、そんなことを言うわけよね!」マチコが、オンザロックを飲んでいる、ブラッキー

の頭を掴んだ。

「まあ、聞きなさい、マチコ...」高杉は、ビールのジョッキを大きく傾けた。空になった

ジョッキをテーブルに置いた。「この“不完全性定理”によると...

  いかなる包括的な理論体系でも、自己矛盾せずには証明できない前提を、必ず1

つ以上は持っている

  ...ということです。まあ、私は数学者ではないので、この定理について、詳しいこ

とは知りません。しかし、“推論形式/二元論的な知識”で、“神”を認識することの

を突いています」

「うーん、」響子が、先を促すようにうなづいた。

「この定理は...相対性理論量子力学の確立された20世紀初頭の頃、1931年

に発表されています。時代はまさに、数学的にも、“相対主義”の時代になって来た

わけです。それまでは、デカルト“絶対主義”が、近代科学ニュートン力学の基盤

になっていたのです。

  それから、1964年...核戦争の最大の危機といわれた、1962年“キューバ

危機”の2年後ですが...J.S.ベルによって、“ベルの定理”が提唱されました。こ

れも数学的な証明ですが...物理空間における“部分”“局所原因”を、数学的に

否定してしまったのです。

  アインシュタインが唯一こだわっていた、局所的“隠された変数”の存在は、量子

力学確率論的予測と、数学的に“両立しない”ことが証明されたのです。

  アインシュタインは、1955年に亡くなっていますから...神はサイコロを振りた

まわと言って...“彼が長年の主張した事柄”が、ついに数学的に完全に否定

てしまった“ベルの定理”に...出会うことはなかったわけです...

  しかし、“ベルの定理”も、“局所原因の原理”が、どのように間違っているのかを示

していません。したがって、科学者のほとんどは、いまだに還元主義的な手法で研究

を続けているわけです。つまり、“ベルの定理”が正しいと分かっていても、他に方法

が示されていない状態なのです...

  “相補性(素粒子の持つ、波動性と粒子性の二面性)や、“参与者(量子論に導入された主体性/〜素粒子

は、観測主体によって、粒子にも波にもなってしまう)といった“斬新な量子力学のパラダイム”は、

21世紀に突入した現在も、量子情報科学として拡大しています。

  この“科学の大黒柱の1つ”(現在は、相対性理論と量子力学のダブルスタンダード)の、“量子力学

パラダイム”は...相対性理論古典的として退け...私たちに、常識を捨てる

ことを迫っています。

  しかし、現代文明は、いまだに“古い常識/古い柵(しがらみ)に、しがみついていま

す。そうした中で、“文明のターニングポイント”は急接近し、いよいよ急激な大ターン

を求めて来ています...」

「塾長はさあ、」マチコが口を尖らせた。「すぐに、難しいことを言い出すわよね」

「うーむ...それは、私のクセかも知れない...勘弁して欲しいですね」

「簡単に、説明して欲しいものよね!」

  弥生が下を向いて、マチコにうなづいた。

「しかし、ねえ...そちらで、難しいことを質問してくるからだ。そもそも、“神”などと

いうものは、簡単に証明できるものではないのです」

「それで...どうなのかしら?」支折が聞いた。「“神様”は、存在するのかしら?」

「つまりだ...論理的に、“神”を証明するのは...非常に難しいということです...

  そういうことを専門にやっている、“神学”という学問があるようですから、その方面

の学者に聞くと、いいかも知れません」

「そんな“神学の話”なんて、」マチコが、あごでしゃくった。「聞く人はいるのかしら。

リスト教の、牧師さんが勉強する学問でしょう?」

「マチコは、厳しいねえ...」高杉は、両手を上げた。

「で、どういうことなのかしら?」弥生が、畳みかけて聞いた。「“神様”はいるんです

の、高杉さん?」

「うーむ...つまりだ...

  “神を知る”ということは...まさに“アインシュタインの確信”のように、“直感”によ

“直接的知識”の問題なのだと思う...おそらくは、それに尽きるのではないだろう

か...

  そこに、説明論理をさしはさむと、その“確信”はたちまち壊れてしまう...それ

は、例えば、“アインシュタインだけが確信”した“神の痕跡”であり、外部からは見るこ

とができないものです...」

「つまり...」響子が、サッと首を振った。「そういうことね、」

「でも、」支折が言った。「生態系には、無数の上位システムが存在するわけでしょう。

そうしたものが、人類のレベルに、様々な奇跡を出現させてくるわけよね。そうしたも

のは、どうなるのかしら?」

「うむ...

  ここは、“井戸端会議”だから、そうした“八百万(やおよろず)の神々”奇跡につい

て、みんなで話し合ってみることにしよう

「はい!」支折が言った。「そのことを、塾長に聞きたかったんですよね!」

 

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                         <神の座標へ続く>

 

 

 

 

 MoMA(ニューヨーク近代美術館)コレクション

   <ポスター/(絵画・映画)>