クラブ・須弥山井戸端会議神の座標

    井 戸 端 会 議   <第3回> ・・・・< エッ、神様は本当にいるの・・・ No.2

      wpe5.jpg (38338 バイト)    神 の 座 標      

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  トップページHot SpotMenu最新のアップロード                               担当  ママ/羽衣 弥生

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プロローグ   2006. 9. 1
No.1 〔1〕 言語的亜空間(文明)における“神の座標”とは 2006. 9. 1
No.2      <人間的な、強いバイアスのかかった世界> 2006. 9. 1

                

 

   プロローグ          house5.114.2.jpg (1340 バイト)

“クラブ須弥山”の、羽衣弥生でございます。

  このページは、前回の“井戸端会議”“エッ、神様は本当にいるの?”続編

になります。長くなりましたので、日を改めて開催いたしました。どうぞ、よろしく...

  そろそろ、皆さんが集まり始めています。マチコたちは、だいぶ前からきていて、ビ

ールが進んでいる様子です。マチコと、支折さんと、夏美さんですね...あ、ちょうど

高杉さんと、津田さんと...それに、響子さんも見えたようです...」

 

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  高杉たちが“クラブ須弥山”に入ると、今日は、常連とは別の音楽グループが入っ

ていた。それに、毎度のバイオリン女や、たまに見かけるクラリネット男が混じって、

一緒にジャスのような音楽を演奏している。いや、クラリネット男の方は、今日はオー

ボエを吹いているようだ...

  バイオリン女が、演奏を止め、響子に何か話しかけた。近くで、ブティックを開いて

いる女だ。高杉の方に笑顔を作って、小さく会釈した。それから、バイオリンの弓を立

て、響子と談笑を始めた。響子の方で、何かブティックの方に注文してあったらしい。

  高杉と津田は、弥生の待っている奥の方へ行き、ソファーに腰を落した。前とは違

うボックス席だ。そこには、移動式のモニタースクリーンも用意されてあった。支折が、

ビールのジョッキをサイドテーブルに置き、高杉の渡した画像データを整理している。

  マチコはすでに、ビールが残り少なくなっていた。高杉たちのビールと一緒に、自

分のジョッキを追加した。3人の中で夏美だけが、見事に小麦色に日焼けしていた。

“高杉・海洋研究所”“海洋の激変”“地球温暖化の考察”の仕事をしていた

からだ...

  海洋研究所で一緒にいる時は、さして気にもとめなかった。しかし、マチコや弥生と

一緒にいると、日焼けが際立っていた。むろん、高杉自身は、それ以上に日焼けして

いる。それに、支折は山へでも行っていたのか、彼女もだいぶ日焼けしていた...

 〔1〕 言語的・亜空間における    wpe4F.jpg (12230 バイト)<支折>

              “神の座標” とは

          index.1102.1.jpg (3137 バイト)  index292.jpg (1590 バイト)  index.1019.1.jpg (2310 バイト)  wpeB.jpg (27677 バイト)

    <マチコ>     <弥生>      <ブラッキー>   <夏美>      <響子>     <津田>    <高杉> 

 

「メンバーがそろったようですし...」弥生が、腹の上で両手を組み、全員を見回し

た。「始めたいと思います。響子さん...“神の座標”...という所からでしたわね、」

「うーん...そうだったかしら...」響子が、ビールに口をつけ、すぐにジョッキを置い

た。「それでは、塾長...」

「ああ、うむ...」高杉が、うなづいた。

「...ええ、“天地創造(旧約聖書)では...」響子が言った。「“神の座標”というもの

は、この世の外側にあったわけですね?」

「まあ...」高杉は、ビールのジョッキを持ったまま、ボンヤリと言った。「“神”は、“超

越の座標”におられる、ということでしょう...」

「ええと、さあ...」マチコが、泡の盛り上がった新しいビールのジョッキを、両手で抱

きながら言った。「“神”が、“光あれ!”と言った時...“この世”に光が出現したわけ

よね。“天”“地”...と言った時、この世が天と地が分かれたのよね...

  その時、“神様”は、何処にいたかということが、問題なわけね?“神様”は、本当

に、何処にいたのかしら?」

「つまり、」弥生が、うすい唇をかるく開いた。「“超越の座標”...に、おられたのかし

ら?」

「そうですわ...」響子が、弥生にうなづいた。

「それは、やはり...“この世”内側、ではないということですの?」

「問題は...」高杉は、よく冷えたビールを喉に流し込んだ。「...今、我々がそれを

話している時、その情景は、“客体化”されていると言うことです...そこが、難しい

のです...

  “神”“客体化”し、“言語空間”の中で取り扱っていると言うことです。すると、

“神”“名詞”を与えられた、対象物でしかなくなると言うことです...そうなると、

の世”内側の座標系に入り、真の意味での“超越の座標”ではなくなります」

「うーん...」マチコが、ジョッキを傾けて、ビールを飲んだ。

リアリティー(実在)は...」と、響子が言った。「“絶対一人称の風景”...“私だけが

目撃している、この世の風景”...と、いうことですが...この、“唯心(華厳経の中心思

想/唯一の巨大な全体世界/そこには部分や局所性は存在しない)の中にも... “神”はいるのでしょ

うか...

  いえ...理屈の上では、局所性は否定されますから、存在しないのはわかりま

す。そうなれば、“神”も存在しないし、“私”も存在しないし、あらゆる“名詞”というも

のも、意味を失います...ただ、混沌とした“唯心/唯一の巨大な全体世界のみ

がある...そういうわけですね...

  でも...“神”“極楽浄土”は...それから、“私”というものは、本当に何処にも

存在しないのでしょうか?」

「では、響子さん...」高杉が、ジョッキを置いて、隣の響子の方を向いた。「...ひと

つ、聞きます」

「はい」

「響子さんの見ているリアリティーの中に...私は存在するのでしょうか?」

「うーん...存在しますわ」響子は、微笑した。

「その通りです...」高杉も、微笑した。「響子さんの言うように...“天と地”分断

される以前の世界なら、“神”も存在しないし、“高杉光一”も存在しないでしょう...

  しかし、それ以後、人類文明は言語を獲得し、“言語空間”という“バーチャル空間

(仮想空間)を獲得したわけです。その中で...“言語”によって、リアリティーを無限に

分割し、それに“名詞”“意味”を与え、“動詞”で動かし始めました...

  その“バーチャル空間”の中で、“世界の混沌”...“唯一絶対の巨大な全体世

界”...そして“神”をも、“客体化”して、理解しようとし始めたのです...

  そこに形成されたのが...つまり、“主体性”という“認識空間”で、リアリティー

重ねられた、“言語的・亜空間世界”なのでしょう...

  例えば今、私たちには、“肉眼(5感による直接的知識)では...アメリカの大地は見えま

せん。また、自民党・総裁選挙で騒いでいる、日本という“ふやけてしまった構造”も、

“肉眼で見えるものではありません。しかし、アメリカは確かにあります。そして、日

本という構造も存在し、“おかしな総理大臣選び”が進行しているのを、私たちは確か

に、知っています。しかしそれは、“言語空間”の中に構成された、“バーチャルな幻

想世界”でのことなのです。

  その証拠に、犬や猫には、日本自民党などという“象徴”は、いかようにしても感

知できないでしょう。それは、リアリティーではないからです。人間が、独自に形成した

“言語的・亜空間世界”における、“象徴”だからです...

  この、“言語的・亜空間世界”は、“人間原理”にもとづいて、“人間的に構成され

たバーチャル世界”なのです...」

「はい...」支折が、確信したように、かすかにうなづいた。

「この、私たちの日常生活の光景を、どう分析するか...」高杉は、ビールをゴクリと

一杯やった。「まず...私たちの“5感(眼・聴・臭・味・触)で感じ取る、“直接的知識”だけ

が、眼前するアリティーと判断していいでしょう...

  それと...いわゆる“第6感”と呼ばれる、“意識レベルの直感”...これを加えて

もいいでしょう。こうした“直接的知識”として、ダイレクトに感知される光景が、リア

ティーと言っていいわけです...

  それでは...それ以外で、私たちの感知する...アメリカ日本自民党などと

言う“名詞”界の版図は、何なのでしょうか...これは、リアリティーではありま

せん。

  つまり、これは、“言語的・亜空間世界”という、“バーチャル空間における名詞”

です。“バーチャル空間”は、“直接的知識”ではなく、このような“象徴的知識”で、今

も凄まじい勢いで構造化が進んでいます...

  この“バーチャル空間”が...“主体”という“認識空間”の中で、リアリティーと折り

合い、一種独特“人間的な世界”を形成しているようです...犬や猫は、人間と一

緒に生活していても、これほど広大な“バーチャル空間”は持っていません。いや、ほ

とんどが、“5感”による“直接的知識”の中で生活しています...文明を持つと持た

ないとでは、これほど違うと言うことです。

  人間以外の生物は...はるかな上位システム“生体情報系”を別にすれば、文

明種族の特有の、高度な“言語的・バーチャル空間”は持っていません。彼等は、

するアリティーの中で、ナマのまま生きています...

  人間と、犬や猫との間には、ダイレクトコミュニケーションはありますが、“暗くて

深い河”があるのです...歌の文句のように...」

「うーん、分るわよね...」マチコが、夏美の方に寄りかかった。「〜男と女の間には

“暗くて深い河”がある〜...というのね...」

「そうです」高杉は、体を揺らしているマチコに言った。「私たちは今、こうした“言語

的・空間世界”の中で...“神”“存在するのか/存在しないのか”と議論してい

るわけです...

  したがって...“言語的・亜空間世界”の中で、“神”は存在するのかと聞かれれ

ば...ここは二元論的世界であり、“名詞”“意味”が与えられている以上、“神”

存在するのです...」

「でも、いないということも、ありうるわよね、」マチコが、アッサリと否定した。

「いや...“神”という“名詞”が発せられた以上...この“バーチャル空間”では、そ

のこと事態が、存在することになるのです...“神”という“名詞”に、“意味”が与え

られ、それゆえに“神”は存在するのです...」

「うーん...」

“神”は...この“言語的・亜空間世界”の中に、確かに存在します。意味として存

在するのです。ここが肝心な所ですが、意味として存在するということは...この“言

語的・幻想世界”では...実に精妙な意味を持ちます...」

精妙な意味とは...」支折が、首をかしげた。「どういうことかしら?」

「うん、」マチコが、不満そうに同意した。

 

   <人間的な、強いバイアスのかかった世界>

 

「つまり...この“言語的・亜空間世界”は、“人間的な強いバイアス(偏向)のかかって

いる世界”だからです。ここで展開される“言語的・幻想世界”ストーリイは、人間的

に再構成され、それが反響し、浸透しているように見えます...だから、“歴史は繰

り返すと言うように...ストーリイ性が、スパイラルに進むように感じます...

  あれは、“ユング(カール・グスタフ・ユング)心理学”でしたか...“同時性(シンクロニシティ)

いう言葉で表現されますが...この世界では“意味のある偶然の一致”が、多発す

るわけです...これが、“霊的な世界”と、“物質世界”をつなぐ、1つのカギになって

います。つまり、“心の領域”“物の領域”をつなぐ方程式の1つかも知れません。

  “心”と...“物質”における“非因果的秩序”を示す、格好のサンプルというわけで

すが...非常に難しい推理になります...リアリティー人間原理空間・ストーリイ

の整合性が、“認識空間”という“主体性”の中で、実現しているのかも知れません」

「ボス(岡田)はそれを、」津田が言った。「“共時性”と言っていたと思いますねえ...」

「そうだったかも取れません...ボスの小説の中では、そう表現していたと思いま

す。まあ、“シンクロニシティ”を、“同時性”と訳したか、“共時性”訳したかの違いだ

と思いますが...確認しておきましょう」

「私は、“共時性”という言葉の方が好きなのですが...それは、“時間の回帰性”

どとは違うものでしょうか?」

「うーむ...分りません...

  “時間の回帰性”が、どういう構造を持つのかは知りませんが...ともかく、ユング

心理学は、パラダイムシフトフロンティア(科学・学問などの最前線)ですからねえ...

  また、認識プロセス性の話になっていくと、非常に難しいことになります。ヘーゲ

“唯心論弁証法”や、西田幾多郎“絶対矛盾の自己同一・弁証法”などの、

念論哲学の領域に踏み込んでしまいます...」

「うーん...」マチコが、ジョッキを眺めた。「私たちの分るレベルで、話して欲しいわよ

ね」

「うーむ...そうしましょう...

  もちろん、自分で理解のできないことを、話すつもりはありません...そもそも、

“時間”というものを、どう定義するか...その最も基本的なものさえ、非常に曖昧な

のです...

  例えば、“時間”とは単なるパラメーター(媒介変数)なのか...“今”どのように定義

するべきなのか...この“今”というのも、まさに非常に観念的な言葉でり、“主体

性”が非常に強く作用しています...

  私たちは、“永遠の今”を生きているわけですが...“相互主体性・世界”の中で、

“今”をどのように共有し、速度空間“壁”を越えているのでしょうか...“今”

“主体”に属するものですし、いずれにしても、膨大な矛盾の壁を越えています。そし

て、ともかく、今まさに...ここに“人間原理が発現”しているわけです...」

「うーん...」支折が、髪を揺らして、ゆっくりと首をかしげた。

「デカルトの言葉を借りれば...」高杉が、続けた。「“吾思う、ゆえに吾あり”であ

り...ゆえに、“吾思う、ゆえに人間原理あり”、と言うことです...

  知的生命体の存在する宇宙、そして地球生命圏が生まれる確率は、確率論的に

はほぼゼロだと言われています。そして、いわゆる“神”が創ったにせよ、確率論的

生まれたにせよ、ともかく今ここに、“私”が存在しています...この迫真性/リアリ

ティーこそが、“唯一確かなものの証明”なのです...

  これが...“人間原理”立場なのです。この考えは、宇宙論にも導入されていま

す。ダイナミック過酷物理的・宇宙空間の中で、人間のいる場所などは、本来は

皆無かも知れません。しかし、その中に、まさに“私”が、“今ここに”、存在している

わけです。これは、仮に全ての物理法則が間違いであっても、信じることのできる唯

一のものです。

  これが“人間原理”立場です。このホームページの名前の“人間原理空間”は、

その“人間原理が発現している場”、というほどの意味です。ここでもう一度説明して

おきます...

  まあ...このあたりが、現在の私のいるレベルですかね...」

 

「高杉さん...」響子が言った。「“時間”が、単なるパラメーターということは、物理的

変数という意味ですね?そうではない、とすると、どういうことになるのでしょうか?」

「うーむ...

  例えば...“時間”“主体性”という問題が、出て来るかも知れません...つま

り、“時間”と、量子力学で言うところの、“参与者”の関係です...それは、“時間の

人間的側面”と言うこともできます...

  そもそも物理学は、リアリティー“時間”“空間”に分断し...様々な“名詞”

その時間・空間の座標系に置くことから始まります。

  しかし、その最初の分断において...その“刃物”“言語”であり、“主体性”

強くからんでいて、それゆえに、人間的な臭いがすると言うことでしょう...当然、分

断された“時間”“空間”も、“主体性/参与者”を受け入れなければ、うまく説明が

つかないものになるのでは、ないでしょうか...」

「だから...」津田が、首をかしげ、ビールのジョッキの汗を見つめた。「“参与者”

導入した量子力学は、斬新であり、相対性理論は、古典的なわけですか...」

「まあ、私は、その方面の専門家ではないので、詳しい経緯はわかりません...」

「そのあたりを、」津田が言った。「もう少し詳しく説明してもらえませんか...いえ、何

故、“言語的・亜空間世界”は、人間的な強いバイアスがかかるのでしょうか...そ

っちの方の説明を、」 

「つまり...

  それは最初から、“人間の言語”によって、分割が開始されているからでしょう...

量子力学に、“参与者”という“主体性”を導入せざるを得なかったのも...“言語的・

亜空間世界”はもともと、“人間の言語”という人間的要素で、無数に“卵割(初期の、胚

の細胞分裂)されてきたからでしょう...そのように、空間が構造化され、成長してきた

からでしょう...

  その、“言語空間”発生過程における、後成学的風景(エピジェネティック・ランドスケープ)

言うべきものが、人間的な臭いがするのは当然です...その行為に、人間の“主体

性”が介入し...そのプロセス性“認識”するの鏡の方も、“認識空間”という“主

体的な要素”を抜きには、成立しません...」

「うーむ...」津田が、腕組みをした。

「まあ、“人間原理”で言う所の、結果ありきの話ですが...私はそう見ているという

ことです...学問的な裏付のある意見ではありません...」

「それは、」津田が言った。「物理空間的・宇宙をも含めた、“この世”ということでしょう

か?」

「うーむ...そうです...

  この世とは、“主体の認識に属するもの”という側面を持ちます...物理空間は、

この世”“ものの領域”表現空間です...当然含まれます...

  つまり、量子力学に、“参与者”という“主体性”が導入されているということは...

“標準理論”にも“超ひも理論”にも、宇宙を解明する“大統一理論”にも、人間的なバ

イアスがかかっていると言うことです...

  まあ、唯物論物理学においても、きわめて“人間的なバイアス”がかかっている

ということです。それは、物理学数学も、“認識空間”という、“主体性の鏡”に映し

出されるわけですから...“主体”と不可分なのは当然です。

  ここを、どう処理するかです...“物の領域”“心の領域”統合にかかってくる

わけです...前回話しましたが、デカルトはその統合の要“神”を置いていまし

た...一理ありますし、うまく説明されています...」

「うーむ...それも、厄介なことですねえ...」

「少し話を戻しますが...

  先ほどの、“言語空間”“言語的バーチャル世界”に...“情革命”よって“電

子的バーチャル空間”が加わり、それがインターネットで一体化しつつあります...

さあ、その先が問題ですねえ、」

「うーん...その先は、どうなるのでしょうか?」響子が聞いた。

「現在でも、“電子的・バーチャル空間”で、膨大の数量のコンピューターが連結され

ています。それが、それがきわめて有機的に動き出し、何らかの飛躍があることも、

一応視野に入れておくべきでしょうね...

  こうしたことでは、想像どうりに行くことなど、まず絶対にあり得ませんが...“ガイ

ア・フィールド”と言ったようなものが、太陽系空間へ拡大していくかも知れません。ま

あ、それは、ボス(岡田)小説・人間原理空間の世界です...

  生命進化のベクトルというものは、どこから生まれてくるのかは知りませんが、きわ

めて強力なものです...」

「すると...つまり、どうなるのでしょうか?」響子が聞いた。

「うーむ...

  人間が幸福になるのには...あるいは“極楽浄土”を建設するには、開発・発展

型社会である必要はありません。“極楽浄土”は、“物質的豊かさ”“便利・快適さ”

からは実現しないことが、このいびつなグローバル社会を見れば明らかです。だから

人類が、そうした方向へ歩みだすかどうかは、まだ分りません...

  しかし、とりあえず、“情報革命”は爆発的に進むでしょう。そして、真の意味で“情

革命”の時代に入れば、“地球規模の電子脳”が、“36億年の彼”とリンクし、文

明のステージを、別次元へ飛躍させるかも知れません。それが、真の“情報革命”

時代なのかも知れません...

  それとも...人類文明は、“進化の袋小路”に入り、滅亡への道を歩むということ

、十分あり得ます...戦略核戦争の時代も、そうした危機の1つでした...」

「うーん...」響子が、顎に手を当てた。「果たして、どれが、人間の幸福につながる

のでしょうか?」

「分りませんね...」津田が、首をひねった。「それは、人類がどういう選択肢を、選択

して行くかということでしょう...」

「でも...その時は、必ずやって来ますわ...300年後、3000年後、それから1億

年後の世界も、必ずこの地球上の風景の上に、訪れるはずですわ...」

「確かに...」津田が、うなづいた。

 

  高杉と津田に、2杯目のビールがやってきた。それと、江戸前寿司と、アユの塩焼

きも届いた。弥生は、ブラッキーのグラスに氷を入れ、新しいオンザロックを作った。

「お寿司とアユは、」弥生が言った。「ポンちゃんからの差し入れですの」

「うーん...」支折が、ニッコリした。「こういう事は、よく気が利くわね、」

「ポンちゃんがさあ、」マチコが言った。「一番、商売がうまいわよね」

               

 

「ここで...」高杉が、新しいジョッキに口をつけてから言った。「最初の話に戻ります

が...アインシュタインは、“神”を信じていました...“神による大自然の秩序”、と

いうものを、信じていました...

  アインシュタインは、“神”サイコロを振らないと信じていましたが、しかし“神”

は、ギャンブルを楽しんでいたのかも知れません...あるいは、その“不確定性原

理”確率論的な事象の流れの中から...もう一段深いステージが始まるのかも知

れません...」

  高杉は、ゆっくりとビールを喉に流し込んだ...うーむ...ビールがうまい...

「それにしても、です...」津田も、ビールのジョッキを口へ運んだ...「...」

“神”を、否定するのなら...」高杉が言った。「では、一体...この底知れない“生

命現象”“生態系の秩序”エントロピー増大(熱力学の第2法則)に拮抗する“進化のベ

クトル”というものを、誰が作り上げたのです?

  その奥深い真理を知れば知るほど、人は“大自然という秩序の偉大さ”に対し、

“畏敬の念”に打たれるわけです...そこに、“神”のみの為せる、深遠なる“神の御

業”を見るのです...」

「ふーむ...」

「ええと、塾長、」響子が言った。「私も、話を戻しますが...

  あらためて聞きます...“神”実在するのでしょうか?」

リアリティーは...」高杉は、宙を見つめた。「響子さんも承知しているように、我々

の目の前に眼前している...“この世”の、“切れ目のない実相”です...何度も言

いますが、そこには部分局所性というものがありません...局所性がないというこ

とは、“神”という局所性も存在しません...」

「はい...」

“波動関数(量子力学で、物質粒子の運動状態を記述する関数を発見したシュレーディンガー(ノーベ

ル賞受賞者)は...主体(観測する者)客体(観測される側)とを分ける“柵”は、そもそも初め

から存在していないのだから...あえてその“柵”を、壊すこともできはしないと、言

っています...」

「...」

「つまり...アインシュタイン“確信”していた...その“直感/直接的知識”の他

には、いわゆる“神の存在”を、証明するものはないのでしょう...

  それは、“言語的・亜空間世界”で処理できるものではなく、“それを超えたもの”

私たちが本来備えている、“36億年の彼”にリンクしている、“命の本質に関わる能

力”でしか、感知できないものでしょう...」

“直感”する“主体”...」津田が、言った。「この“絶対主体”こそが、“神”なのでしょ

うか?」

「うーむ...」高杉は、唇を引き結んだ。「そうかも知れません...“神”は、まさに、

“我”という“主体”そのものが宿しているのかも知れません...“主体”そのものが

存在することが...まさに“神”なのかも知れません...」

「理解を超えているからこそ、」支折が言った。“神”と、祭り上げてしまうことも、でき

ますよね、」

「まあ、その“神”という巨大な胃袋は...そのために、“認識の鏡”の中に、発現し

て来たのかも知れません...全ての矛盾を処理するために...

  しかし、それでは、神による救済を求めるだけで、“この世”の探求にはなりませ

ん」

  響子がうなづいた。

                index292.jpg (1590 バイト)house5.114.2.jpg (1340 バイト)

「うーん...」マチコが、ビールをあおった。「...分らないことを言うわよね。響子が、

何で、そこでうなづくわけよ」

「でもさあ、」支折が笑った。「本当のところ、私たちのリクエストに答えてくれるような

“神様”は、存在するのかしら?」

「うむ!」高杉は、強くうなづいた。江戸前寿司を1個、手を添えて取り、口に入れた。

それをゆっくりと噛み、ジョッキを傾けた。それから、支折に言った...

「それは...もちろん、存在する!」

「はい!」支折が、悪戯っぽく笑って、うなづいた。

「それは、“神以前の神々”...ということでしょうか?」日焼けした夏美が、マチコの

方に肩を揺らせて聞いた。

「そうです!」高杉が、強くうなづいた。

「うーん...」マチコが、夏美に寄りかかった。彼女は、もうだいぶ酔っ払っていた。

 

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                                              《神以前の神々》へ続く

 

  

 

   MoMA(ニューヨーク近代美術館)コレクション  

       <ホビー>

                  

 

               

 

            

                                                    

       <玩具>