F U C K ' I N - M U S H R O O M - S T O R Y - 1



【第1回】キノコとの出会い


 キノコというと私たちはつい、ワライタケ(マジックマッシュルーム)や、中毒死、椎茸や松茸等を思い浮かべてしまいがちです。サイケやロックとマジックマッシュルームは切っても切れない仲ですし、毎年必ずどこかで中毒事件が起こっています。それ故、キノコには必然的に妖しげな雰囲気がつきまとい、その辺に生えているキノコは全て毒キノコであるかのような錯覚を私たちに与えてしまうのではないでしょうか。

 私がキノコに興味を持ったきっかけは、父のキノコ好きによるものです。当時小学生であった私や家族を連れて、よく近所の自然公園や寺社の境内、雑木林などに通ったものでした。そこには毎年決まった時期になるとある種類のキノコたちが必ず現れる父の秘密の猟場があって、秘密基地遊びに興じていたその頃の私にも、何か胸ときめくものがありました。当時の私にとっても、キノコとは食用というだけではない「不思議な魅力を持ったちいさな生命体」であったわけです。

 それからたくさんの年月が経ち、今では父の秘密の猟場には新しく住宅地が造成され、道路が通り、遊歩道という名のナイフが雑木林を縦横に切り刻んで当時の面影は無くなる一方です。(ただ、彼はそんなこととはお構いなく、新しい猟場を見付けてきては家族に嬉しそうに報告したりしていますが。) そして私のキノコに対する興味も当時の猟場とともに段々と薄れかけていました。

 そんなある日、私は会社の上司の手伝いで、東京のある場所から彼の別荘への薪運び作戦に駆り出されました。彼の別荘は、湖に向かった斜面に広がる白樺林の中にひっそりと建っていて、静かではあるが生き物たちの生命感が濃密に満ちた幸せが感じられました。薪の運び込み作業に入る前に、私達は休憩がてら別荘のまわりを散策することになりました。下草の生い茂る林は、ホトトギスの美しい歌声や蛙の騒々しいがなり声、小さな虫たちの声、そして葉と葉の風にすれる囁き声によって、まるで音のドームに包まれているかのように響きあっていて、それは都会の音の洪水によって麻痺していた身体の感覚をじんわりと取り戻してくれる様でした。林には泉が湧き、山葵が生え、小川が流れていました。私がその間を縫うように散策をしていた時、ふと足元を見ると数本のキノコが生えていました。『ヒトヨタケ』という白いキノコ。それは昔、父に連れられて行ったキノコ狩りで初めて名前を覚えたキノコだったのです。昔の親友にばったり会った感激に似た感情が沸き起こりました。その日は一日中そのことが頭から離れなかったので、すこし興奮していたようです。

 私とキノコの付き合いは、少々運命的というか感傷的というか自己陶酔的というか(笑)…再開したのですが、どうも週末に休みが取れず、梅雨時という絶好のキノコ日和の中、悶々と過ごしているわけです。

−つづく−




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