季節と季節とのあひだには、きつぱりとした線分に依つて隔てられた特別な時が設けられてゐる。午過ぎ迄は晩夏の微温さ漂う気候であつたのが、唐突の曇低く地を覆ひ轟雷そして鍾雨。幾時かの後、からりと晴れ渡つた空はまるで何事も無かつたかのやうに冬の姿を顕す。気は涼と云ふより冷になつてゐて、其れは紛れもない冬のものとなつてゐるのだ。それは遥遠の太古より必法の理と規定されてゐたかの如く几帳面にそして厳粛な儀式のやうに執りおこなはれるエヴェントのやうなものと謂へる。是れはのちに人間が己の便宜の為に創作した暦等とはまつたく違つてゐて寧ろ科学の法に依るものであるから、呪術迷信の類とは異なる至極当然の自然摂理の業なのだ。然し其の現象たるや冷緻なる科学の眼を以つてしても畏怖の念抑へ難き神の業なりと思へるのは実にパラドクサルな皮肉ではある。　【今月の即ナル死スチック・テキスト】