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「山と河が僕の仕事場 頼りない職業猟師+西洋毛鉤釣り職人ができるまでとこれから」牧 浩之(著)(フライの雑誌社 2015年12月)

→目次など

■インターネット時代に山と河の恵みに生きる方法■

山の仕事、山の暮らし』を読んで、もう山菜採りやサンショウウオ獲り、炭焼きなどで暮らすことは難しくなっているのだと知りました。そんな折り、どうやら猟師と釣り、そしてフライフィッシング用の毛鉤の材料や毛鈎そのものを作って生計を立てている人がいるようでしたので読んでみました。

この本には、1977年川崎生まれの牧さんが、釣りに夢中になり、毛鈎を売り、宮崎県の高原町(今、新燃岳の噴火で降灰のニュースが流れている町)に移り住んで、猟師もすることになった経緯がまとめられています。

とても釣りなどできそうにない排水の流れ込む小さな水面に向かって毛鈎を投げていた子ども時代。留学先のニュージーランドで毛鈎作りを学び、釣りを通じて日常会話ができるようになっていったこと。日本に戻りバーテンダーをしながら余った毛鈎をインターネットで売ったところ思わぬ高値で売れたことをきっかけに自作の毛鈎を売るようになったこと。恋人の出身地、高原町を訪問して、理想の場所だと惚れこみ、なかば強引に東京から引っ越したこと。九州に住むニホンジカのメスの毛(毛鈎の材料に利用)に出会って猟師への道が開けていったこと。

こうして、牧さんが釣りに魅せられて熱中し、そこから得た経験を基に生業ができていくという人生の経緯を知ることができます。牧さんのサイトを見ると出猟日数は皆勤賞、年間釣行数300日以上のヘンタイ。と書かれていました。

まだめずらしかった海でのフライフィッシング用の毛鈎を売るにあたって、その使い方を紹介することで売り上げを伸ばしたり、釣り船の経営者と組んで普及を図ったりと工夫があります。また、本人が釣り好きであるだけに、牧さんの作る毛鈎はよく釣れるそうです。少し売れるようになると、牧さんのサイトをそっくりまねたサイトが登場するなど苦労もあったようですが、やはり、作り手の熱意と経験がものをいいます。

高原町出身で東京で金融機関に勤めていた、その頃まだ恋人だった奥さんが、実家の町に戻る決心をした点もうらやましく感じます。もっとも、牧さんが田舎出身で牧さんの地元に帰るとなったらうまくいかなかったかもしれません。

自然の豊かな環境で、自然の恵みを生かしながら、人に使われることなく生きる。レジャー時代にインターネットを活かすことで生まれた、山と川に頼った新しい生き方は、釣りに熱中することから始まりました。

牧さんは、鹿の革を大量に欲しいという人に革を売るようになれば、そのために鹿を殺すようになってしまうという理由で断ったそうです。猟師を始めたことで、毛鈎の材料も命を奪ったうえで獲られるということを思い出したとも記しています。

すでに続編が出ています。

内容の紹介


キノコと山菜
ありがたい山の恵みは獣ばかりではない。自然薯(ヤマイモ)は地元で人気が高く、罠を仕掛けながら採取する猟師も多い。というのもイノシシは好んで自然薯を掘って食べることから、罠猟師の多くは、自然薯の群生地を知っているのだ。 - 180ページ

イノシシ(豚)と人間の食べ物はかなりにています。だから、田畑を荒らすことになります。本書には、小学校で話をしたり、竹竿を作ったりといった活動についても記されています。写真も多数あり、自然と向き合い、命と向き合う暮らしを知ることができます。



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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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