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「住んでびっくり!西表島」山下 智菜美(著)(双葉社 2006年10月)

→目次など

■実用性と娯楽性を兼ね備えた西表島長期居住記■

西表島は、沖縄県で2番目に大きく、八重山列島の中でも石垣島より大きい島ですが、2005年国勢調査による人口は2347人であり、市制施行している石垣島とはずいぶん様相が異なります。以前はマラリアの発生地でしたが、今は撲滅されたそうです。

そんな西表島に2003年から2006年11月まで滞在されていたフリーライター山下智菜美さんが、連載コラムに加筆修正を加えて単行本化されたのがこの本です。現在は残念ながら当時のサイトはリンク切れになっています。

この本は「生活編」「生きもの・自然編」「ご近所編」「イベント」の4章で構成されています。

「生活編」では、部屋探し、荷物の輸送、ネット環境の整備など移住の際の工夫から、湿気の多さ、台風、買い物、日焼け対策などが扱われています。

「生きもの・自然編」では、南の島で盛んに活動する昆虫たちや、部屋にまで入り込んでくるネズミ、ハブなどが登場します。生きものが苦手な人なら、ここで移住を諦めることでしょう。

「ご近所編」では、移住後のご近所さんたちとの付き合いを想像できる情報が提供されています。また、ふろしきが日常的に利用されていること、島酒が好まれること、三線教室が子どもから大人まで人気であることなど、離島ならではともいえる、画一化されていない部分の残る生活を知ることもできます。

「イベント」では、やまねこマラソン、学校の運動会、西表島横断ハイキングなどが紹介されています。西表島横断は大変そうですが面白そうです。


離島での暮らしとはいえ、正装をすべきイベントも多く、ご祝儀のやりとりや、ちょっとしたイベントのたびに新調するTシャツ(普段着として便利)など、普通に暮らすにはある程度の現金収入や地域活動に参加する時間的余裕も必要なようです。

私としては、湿度の高さ、ヤギとイノシシの刺身、体育会系の生活あたりが印象に残りました。西表島横断は大変そうですが面白そうです。現在では、大型冷蔵庫・冷凍庫の欠かせない生活になっているようですが、それらの電気製品のないころ、人はどのように工夫してこの湿気の多い島に住んでいたのか、気になりました。

内容の紹介


島には、薪でお風呂をわかし、五右衛門風呂を楽しむおじいたちがいまだにいます。 エネルギー資源をあまり使わないジンブン(P100参照)には頭が下がりますが、そんな彼らは、夏はさらに省エネで、なんと水風呂。
「子供のときから、いつもそう。暑くてかなわないよ」
  ちなみに普通の家の風呂は、灯油を使ったボイラーか電気湯沸かしがほとんどです。 - 56ページ


  西表では1年中、海の幸、山の幸をいただくことができます。 海では2月のアーサ(緑藻の一種、ヒトエグサのこと)にはじまり、モズク、カーナ(海藻の一種)、ミジュン(小魚)など。 大潮のときには貝やタコを捕ることもできます。 山に入れば山菜、タケノコ、キノコが採れ、冬には大物、イノシシです。 いつ、どこに行けば、なにがとれるか、どうとるとか、どう食べるか、ということを地元のおじい、おばあは知り尽くしています。 そうした、"生活の知恵"を沖縄では"ジンブン"といいますが、モズク採りは経験のない人でも子供でもできる、初級のジンブンといえるでしょう。 - 100-101ページ


島のイノシシは本土のイノシシに比べて小型の琉球イノシシ。 地元ではカマイと呼ばれいます。 奄美諸島や沖縄本島、石垣島にも生息していますが、西表のカマイは山のエサしか食べておらずお腹に虫がわいていないため、刺身で食べられます。 そしてこのカマイの刺身こそが、西表いちばんのご馳走なのです。- 133ページ


「南の島でのんびり暮らしたい」と考えてみても、人との付き合い(ご祝儀、服装など)や、一律に課される規則(ゴミだし、年金、健康保険など)、ライフサイクル(出産、教育、加齢など)、さまざまな縛りがあることがわかります。 そのようなしばりについてまで具体的にイメージできたとき、実現可能で持続可能であり、支配者や影の支配者を生むこともない、人類にとって唯一可能な暮らし方が見えてくるように思います。

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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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