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「世界あやとり紀行―精霊の遊戯」シシドユキオ (著), 野口廣 (著), マーク・A・シャーマン (著), 建築・都市ワークショップ (編集), 七字由宇 (イラスト)(INAXo 2006年12月)

→目次など

■自然発生的に世界各地で生まれたあやとりは、西洋文明の発達と普及に伴い消えていったという。あやとりという行為に伴う精神活動に、人が人であるためのヒントがあるのかもしれない。■

表紙の写真はエチオピアのカロの少年が作る「魚を捕る網」です。

70ページほどのこの薄い本には、世界各地(アボリジニ、エスキモー、パプアニューギニアの人々、イースター島、インド、日本…)で収録されたあやとりの概ね完成形のみが収録されています。現地で撮影されたと思われる写真もあれば、資料を元に後で再現されたと思われる写真もあります。現地で撮影された写真の被写体は女性や子どもが多いものの、男性の姿も見られ、あやとりが子どもの遊びにとどまらないことがわかります。

中には、結び目ができた位置で勝敗を競うあやとりもあります。これを含め、少数ですが「やってみよう」としてあやとりの方法が図示されているものもあります。ただし、実用書としてはあまり利用できないでしょう。

「精霊の遊戯」という副題に違和感を覚えましたが、あやとりを伝えている人々の様子や解説を見ると、なるほどこれは精霊の遊戯と表現したくなるものであるとわかりました。たとえば、ナバホ族にとってあやとりは聖なる人々から与えられた大切なものであり、外部には秘密にしてきたものでした。

巻末の「あやとりとともに」と題された文章から、執筆者の一人である野口廣氏があやとりと関わるきっかけとなった『科学朝日』からの取材を通じてまとめた、あやとりに関する考察を引用しておきます。

一、あやとりの起源は分からないが、古くから(有史以前からという説もある)自然発生的に世界の各地で、独立に、それぞれの民族が考え出したものである。子どもとは限らず大人もともに楽しんだ遊びであり、親から子へと伝えられてきた。しかし、西洋文明の発達と普及に伴い、現代ではほとんどの文明国では子どもの遊びとして辛うじて数種類が残っているにすぎない。
二、各地のあやとりは、原住民たちを巡る自然、動植物、環境、風俗、習慣などを実に生き生きと表現し、彼らの喜び、悲しみ、信仰すらをも現代のわれわれに大きな感動をもって伝える卓越した原始芸術である。
三、また、それらのいくつかの作品を通してわれわれはどの民族でも現代数学の基本的概念である「0」を含む自然数の存在やリカーシバル・アルゴリズム、数学的帰納法などを自然に獲得していることを示している。すなわち各民族が備えた論理的思考能力はほとんど同じレベルであることを示している。
四、そして、「このあやとりが今や消滅の危機に立っている。私たちはこのあやとりを採集、保存して、先祖の遺産として後世に伝えようではないか

あやとりは文字のない世界で、知識の伝承を口伝に頼る人々の間で親しまれ、リズミカルな歌も伴って神話や伝説、文化的価値を伝えてきました。

主に先住民たちが維持してきたあやとり。それは文字の代わりにすぎないのでしょうか。それとも、別の意味を持つのでしょうか。

内容の紹介


オセアニア
南太平洋の国々はあやとりの宝庫です。二十世
紀を代表するあやとり研究者、H・C・モード
さんをはじめ、多くの研究者たちによって二千
種を超えるあやとりが採集されました。 - 12ページ


極北圏
アラスカ、カナダからグリーンランドまで、
あやとりは冬の長い夜の楽しみの一つとし
て継承されてきました。 - 34ページ


北アメリカ
ネイディブ・アメリカンの社会では、現在も
あやとりを外の世界の人に見せず、守り続け
ている人たちがいます。 - 40ページ


南アメリカ
二十世紀の初頭から、各地の先住民のあやとり
が数多く採集されてきました。今日でも同じあ
やとりが伝承されている地域があります。 - 48ページ


アフリカ
多種多様の文化社会が存在する広大なアフリカ
大陸には、子どもの遊びから呪術的なものまで、
あやとりと人びとのかかわりは一通りではなか
ったようです。 - 52ページ


アジア
地球をぐるっと回って、やってきたのは
アジアの国々 - 56ページ(インド、中国、日本)

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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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