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「お金がなくても田舎暮らしを成功させる100ヶ条」山本一典 (著)(洋泉社 2009年10月)

→目次など

■「田舎暮らしに甘い幻想をふりまかないライター」による格差社会からの逃亡者向け田舎生活成功のための100カ条■

『失敗しない田舎暮らし入門』で、「資金を含めて移住の条件が整わない都会人は田舎へいくな」「農林業を甘く見るな」「骨を埋めるくらいの覚悟を持て」などと綴った著者が「不景気を口実に田舎へいくな」と言いたい気持ちを抑えて、お金が少なくても田舎暮らしを成功させるための100カ条を綴りました。それは、格差社会の激化を受けてのことでした。

目次を見ると、節約術や収入につながる内容ばかりではなく、田舎暮らし一般に関する内容も多く含まれています。

第一章 田舎暮らしの資金不足を補うための二〇カ条
第二章 田舎へ飛び込むための二〇カ条
第三章 田舎物件を賢く入手するための二〇カ条
第四章 建物や工事で失敗しないための二〇カ条
第五章 健康的な田舎暮らしを実現するための二〇カ条

いくつか抜き出してみましょう。

車の必要性:たとえ60代でも田舎暮らしを考えるなら夫婦とも免許を取得することを考える
ネット環境:いまだにISDNしか使えない地域や、それさえできない地域もある
仕事:農業生産法人と林業が注目
自給自足:むやみに道具を揃えたり、大規模化したりしない、かえって割高になる
買い物:まとめ買いに慣れる
借りる:家も農地も借りることも検討
二重生活:田舎と都会の二重生活は不経済、都会の家は不要なら売る
野菜の保管法:数時間干してから室に保管、畑に保管など
陰口:ストレス発散の手段と割り切る
沢水の利用:井戸を掘るほうがよい。ただし、絶対ダメではない
人間関係の大切さ:お隣さんとは決してケンカするな、地域に役立つ人になれ
生活費の目安:健康保険料や税金を考慮すると年間180万円は必要

ただ、あこがれているだけでは見えなかったことも、こうした本を読むと見えてきます。たとえば、風光明美なロケーションは晴れた日には素敵でも、強風の吹く場所であったり、土地代が割高であったりします。定住を予定しているのであれば、そのような見晴らしのよい場所は避けたほうがよいそうです。

今では、1時間も運転すれば、大型ショッピングセンターまで行ける場所がほとんどです。田舎暮らしをしても、こうしたショッピングセンターに通って都会と同じ生活をしていたのでは、経費は余計にかかってしまいます。経費を抑えるなら田舎向きの生き方に変えるしかありません。

ただ、本書とは違う田舎暮らしもあります。

八ヶ岳山麓などは移住者コミュニティと地元のコミュニティが地理的に分かれており、移住者であれば移住者コミュニティの地区に移住しないと住みにくそうです。また、『ここで暮らす楽しみ』の山尾三省さんは、地元の人が捨てた山の北側に位置する廃村を選んで執筆活動によって家族の生計を立てておられました。『山暮らし始末記』では、以前からの住民が独り残るだけの集落での暮らしと、無法地帯ともなった廃村での暮らしを経て、山を降りた町の中に暮らす形に落ち着きました。

自分のあこがれている田舎暮らしと、自分にとって本当に快適な田舎暮らしは実は違っているのかもしれません。そうした意味で、具体的に田舎暮らしについて考える本として、参考になる一冊かと思います。

内容の紹介


  資金不足の人はどこに注意したらいいか、本章では収入と支出の両面から二〇のポイントを挙げてみた。家庭によっても事情は異なるので、自分にふさわしいやり方を見つけてほしい。ただ、重ねて強調したいのは、自給自足すればお金はかからない、田舎に住めば生活費が削減できる、という先入観を持たないこと。なかには交際費を惜しんで地域と距離を保ち、仙人のような生活をめざす人もいるが、愚の骨頂である。
  昔の農家が貧しいながらも子孫を残せたのは、お互いに助け合う大切さを知っていたから。その「結の精神」は、現代の農村にも残っている。見直すべきは交際費ではなく、都会で染み付いた消費生活、そして地域から隔絶した生活スタイルなのだ。本当にお金がなければ、いちばん大切なのは地域との係わり。次章では、その入り方について述べていく。 - 58ページ

このような総括が、各章の終わりにあります。



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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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