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「虫はごちそう! (自然と生きる)」野中健一 (著)(小峰書店 2009年11月)

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■虫は高級品として扱われる「ごちそう」。ラオスで、カラハリで、虫を食べる人々の暮らしは温かい。■

小峰書店から出ているおそらくジュニア向けの本です。多めにルビがふってあります。

内容を確認しておらず、あまり期待していなかったので、しばらく前に入手しながら後回しにしていました。

読んでみると、著者は大学の文学部の教授で、地理学、生態人類学、民族生物学を専攻している方でした。内容も、日本国内だけでなく、ラオスや、私にとってなじみの深いカラハリ砂漠のブッシュマンについて多く記述されており、民族学的にも面白い本でした。

昆虫食は、採集に費やすエネルギーと食べて得られるエネルギーを比較するとまったく割にあわないそうです。それでも、昆虫を食べる理由はおいしいからにほかなりません。

ラオスの村では、子どもたちが10メートルも木登りをしてカメムシをとり、主婦たちもせっせとコオロギをとって市場に売りにいくそうです。コオロギは人気があり、牛肉や豚肉の10倍の値段がするのです。10数匹だけ串に刺して売っているような商いにも買い手が付くほどの人気です。ラオスにはカメムシを生のまま食べる人もあるのです。挑戦してみたくなりますね。

ラオスの農村の暮らしは、灌漑もせずに天水まかせで家族が食べるだけの米を作り(余計にとれれば販売)、その周囲でとれる自然のものを売って暮らす、お金に追われない暮らしです。

ラオスの都会の人口はどんどん増えている。工場も増えてきた。都市で暮らす人は、いそがしくなってきた。食材も自分で調達するのではなく、買い求めなければならない。それでも、ラオスの人たちが食材を買い求めるとき、大事なことがある。それは、「自然のもの」が好きだっていうことだ。健康に過ごせる、力がつくと考えられている。(94ページ)

ラオスの暮らしは、薪を使って暮らしていた頃の日本の農村に残っていた共有空間を思わせます。

カラハリのブッシュマンを中心とするアフリカの生活も、生き生きと描かれています。ものを分けあうのが当たり前だけれども、相手の気持ちに気付いてすっと一歩引くことができる人々。家を建てるときも、先に立っている家よりも水場に近いところには立てず、真後ろもよけて、水取りと採集の場を開けます。

周りの人や環境に敏感で、うまくつきあうための方策を細かに考えている。その敏感さは、料理にも、虫の味わい方にも出ているんだと思った。(中略)搗く料理は、搗く早さや搗き加減、混ぜ合わせる材料によって10通りもある。10通りの調理法といってもよい。タマムシやシロアリのコクのある味をゴーと呼んだり、アリの酸味をカウと呼んだり、イモムシの表面がかりっとして中がやわらかい食感をコムコムと呼んだり、味をわかって、それを生かしていることが、味を表す言葉の豊かさに表れている。それは虫だけに対してのものではない。風味や食感はいろんな動植物について言われる。生き物それぞれの味を理解しているのだ。(119-120ページ)

そうして、やはり、科学技術の発達していない世界のほうが、人間らしい暮らしができるのだと、私はまた確信を強めるのです。昆虫食は地域色の強い習慣のようで、習慣になければ抵抗感はあります。それでも、丸ごと食べることが多い昆虫は、微量栄養素を摂取できる点も優れていると感じます。

内容の紹介


フンコロガシ
フン虫は動物の糞をエサにしている。 ボールのように糞が丸められて、その中に卵が産み付けられて、ふ化した幼虫はボールの中で糞を食べて成長する。 ラオスには水牛のフンを転がす大きなフン虫がいる。 こお時期には地下に巣が作られ、糞玉の中で幼虫が成長している。 その幼虫を人は食べるのだ。 「糞を食べる幼虫を人が食べるなんて不潔だなぁ」と思うかもしれない。 この話をタイで初めて聞いたとき、ぼくもそう感じた。 でも、実際の様子をみると、そうじゃないことがわかった。 その話はもう少し先でしよう。 - 75ページ


サソリを作るのか?
(ブッシュマンが、イモムシがサソリになると信じ、セミがタマムシに、タマムシがコオロギに変わると考えているという話題を展開した後で)
実際の観察と経験が織りこまれた知識は、いろいろな現象に目を向け、いろんな結びつきを考えることに役立つ。 現に人々はふだんの暮らしの中で目にするさまざまな虫を食べたり、薬にしたり、おもちゃにしたりする。 それぞれの虫のもつ特性や成分を生かして利用しているのだ。 利用するためにはつかまえなければならない。 そして、つかまえるためには、相手の動きや習性をよく知っていてこそ、ちゃんとつかまえることができる。 いっけん、非科学的と思われる彼らの知識が、砂漠での暮らしの中では合理的な体系を形作って生きているのだ。 - 116ページ

私たちの聴覚や視覚、脳における情報処理も取捨選択や、パターン認識を利用しており、事実をそのまま処理しているわけではありません。 私たちにとって重要なことは事実であるかどうかよりも、生きていく上で不都合を生じないかどうかなのでしょう。

自然の中の創造力
アフリカは、訪れる前までとても遠い国だと思っていた。 暮らし方も、日本に暮らすぼくとは全然違うと思った。 けれども、料理のこだわり方やおいしさを楽しんだり、そしてモパニムシのダシを味わったりすることは、ぼくたちと同じようなんだなと思うようになった。 いや、彼らのほうがいろんな能力ではずっと優れていることが多い。 たとえば、野に出て火を起こす。 堅い木でやわらかい木を擦って、確実に火を起こすことができる。 言われてみれば、なんだそんなことって思うかもしれない。 あるいは、本当に原始人だって思うかもしれない。 けれども、どんな状況でもそこにあるもので工夫すること、その工夫に人間の創造力があふれている。 もっともっと自然に生きていくことを学んでいきたい。 - 133ページ


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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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