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「★みんな輝ける子に」明橋大二 (著) 太田 知子 (イラスト)( 1万年堂出版 2015年10月)

→目次など

■長年の経験に裏打ちされた、本当の言葉を込めた本。本書のテーマである「自己肯定感」の大切さは万人に共通。2002年発行の『輝ける子』の増補版。■


最初に本書で紹介されていた悲惨な事例のあらましを紹介させていただきます。
「30 子どもに何らかのサインが出ている場合、
親も過敏になり、不安になっています。
絶対に親を責めてはいけません」からです。

「子どもが学校で他の子をいじめているということで先生から呼び出しを受けた母親が子をせっかんして死なせてしまいました。母親から子どもへの虐待がすでにあり、子どもがそのうっぷんを学校で晴らしていたという事情に配慮しなかったことが悲劇を生んでしまったのではないかと推測されます。」

これは、「悪い子は叱らなければ」「親のしつけがなっていないんだ」という見方を捨てなければいけないことを示した事例です。本書を読むと、この事例が自己肯定感とどうつながっているのかや、自己肯定感を持つこととはどういうことであり、それがいかに大切なことなのかを理解できます。そうすれば、このような悲惨な事件を減らせるかもしれません。

このように、本書は、今現在子育てに悩んでいる方にはもちろん、今すぐ読んでいただきたい本ですが、万人に関係のある本であることをまず、明記させていただきます。



本書では、暴力的な子、感受性の強い子、不登校、拒食症、ゲームの影響、親のケア、虐待、アスペルガーなど、多様なポイントから、子どもの自己肯定感を中心に子育てで大切にしたいことが説明されています。著者が理事長を務める富山県のNPO法人子どもの権利支援センターぱれっとでは、平成15年8月の開所から現在までに、のべ一万五千人ほどの子どもたちが利用し、それぞれに元気を回復して社会に巣立っていっているということです(215ページ)。

本文が143ページまで、その後によく受ける質問に回答するQAが付されており、これが60ページを越える分量になっています。「甘やかす」と「甘えさせる」の違い、三人兄弟への接し方、共働きや母子家庭のケース、アダルト・チルドレン、チック症などがとりあげられています。本文が32、QAが30の項目に分けられており、幅広い視点から把握されていることと、参照に便利であることがわかります。


さて、この「自己肯定感」ですが、私がテレフォン人生相談を聞き始めてつくづく知るようになったことが「根拠のない自己肯定感」を持つことの大切さでした。これを知ったのは加藤諦三さんの言葉からだったのですが、加藤さんには、残念ながら根拠のない自己肯定感を主題として著された本は見当たりませんでした。あきらめていたところ、まさに探していた内容の本に出会ったわけです。

お二人とも、多くの人の心と向き合う現場での長年の経験から同じ結論に至っている点が注目されます。「まえがき」にも、「今のこどもはわがままだから」などというお決まりの結論が誤りで、本当の根っこは自己肯定感であることは、子どもの心に関わる人なら分かりすぎるくらい分かっているとあります。

本書では、同じ「ほめる」という行為でも、子どもの自信が高まる場合と、逆にいつまでも自分で判断できない子どもにしてしまう場合がある理由など、自己肯定感をめぐって細かい点にまで踏み込んであります。その点で、実用的な内容といえます。

リンク先にも書きましたが、実は、子育ての方法については、霊長類の子育てから、西洋文明の影響をあまり受けていない多くの社会の子育てまである程度共通する普遍性がみられます。それが、子どもの自己肯定感を高める子育ての方法と似ているのです。次のような点です。
・出産間隔をあけて一人の子に多く接することができるようにしていること
・『逝きし世の面影』で「子どもの楽園」とする章をわざわざもうけてある子どもを溺愛する子育て
・『ピダハン』、『豚と精霊』『子どもの文化人類学』にあるような、あれこれ口出ししないで見守る態度
・『愛は化学物質だった!』にある愛情を受けることの大切さ

本書には、これらと整合する内容が多く記されており、本当の言葉が記されていると感じました。
お勧めの本です。

内容の紹介


不況(ふきょう)、リストラ、中高年の自殺の激増、大人社会の、この閉塞感(へいそくかん)は、確実に子ども社会にも(かげ)を落としています。 この先、生きていっても、果たしていいことがあるのか、大して特技も才能もない自分、自分一人いなくても何が変わるというのか、自分の存在価値は何か、と子どもが疑問に思ったとしても、不思議はありません。

大人社会が、まず自らの価値観を、再点検する時期に来ているのではないか、と私は思います。 - 104ページ

現代社会の実態を調べていくと、ほんの一部の人々が考え出した価値観によって制度が作られ、規則が作られており、彼らを除くすべての人々の人生を縛りつけています。 人類史や霊長類の生き方を知ると、彼らの考え出した価値観は何ら普遍性を持たない、机上の空論であることが見えてきます。その机上の空論が地球環境を破壊し、人の心を破壊しています。 私たちにとって、一番大切なことは、この実態に気づき、どうすれば彼らに誤りを認めさせて、北米のインディアンたちや、アジアのゾミアの人々、ピグミー・ブッシュマンなどアフリカの狩猟採集者たちが作ってきた、権力を生まない社会へ人類全体が移行できるのかを考えることなのではないでしょうか。

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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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