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「マタギに育てられたクマ―白神山地のいのちを守って (感動ノンフィクションシリーズ) 」金治 直美 (著)(佼成出版社 2008年12月)

■クマを仕留めたマタギたちは重々しい表情を浮かべた■

「マタギ」という言葉は知っていましたが、一般に猟師のことを指すのかなぐらいの認識しかありませんでした。WikiPediaによれば、猟師一般ではなく、独特な宗教観や生命倫理を持つ専業猟師のようなので、引用しておきます。
WikiPediaから「マタギ」の項を引用してみよう。

マタギは、東北地方・北海道で古い方法を用いて集団で狩猟を行う者を指す。「狩猟を専業とする」ことがその定義とされる。獲物は主に熊の他に、アオシシカモシカ(後述)、ニホンザル、ウサギなども獲物とした。古くは山立(やまだち)と呼ばれており、特に秋田県の阿仁マタギが有名である。その歴史は平安時代にまで遡るが、他の猟師には類を見ない独特の宗教観や生命倫理を尊んだという点において、近代的な装備の狩猟者(ハンター)とは異なることに注意する必要がある。森林の減少やカモシカの禁猟化により、本来的なマタギ猟を行う者は減少している。近世に入ってからは、狩猟を専業とするもの、つまりマタギはごく一部の人間に限られている。


この本は、小学校中学年からが対象ということで読みやすく、しかもマタギの宗教観や生命倫理が伝わってくる本でした。

タイトルだけ見ると、コグマの頃から育てたクマとマタギの交流の物語を想像する方が多いのではないでしょうか。しかし、実際の内容は、むしろ伝統的な価値観を残すマタギの世界や、狩猟の様子をわかりやすく紹介したものになっています。

本書の前半部分で、時代をさかのぼり、昭和の初めに行われていた猟に初めて参加する15歳の少年の話が語られています。このときのマタギの様子は、命を奪うことに対する疑問と、しかし命を奪うことで生きていく人間という、アフリカの狩猟採集民ピグミーと同じ苦悩を反映していました。

手負いのクマが15歳の少年の前に現れる場面では、『となりのツキノワグマ』に掲載されている大きなツキノワグマの姿を思い浮かべてみました。クマと対面したときの少年の恐怖が一層感じられました。

本書は、子ども向けであるからと敬遠しておくには惜しい、良い内容の本でした。

内容の紹介


竹の子ほりの途中に出会ったクマの話です。

吉川さんは、竹の子ほりに山に入り、クマと出会ったことがある。もちろん銃は持っていない。
  クマはおどろき、後ろ足で立ち上がった。前足ではたかれたらおしましだ。後ずさりしようとしたが、竹の子のつまったリュックが重すぎて、思うように動けない。
  吉川さんはとっさにしゃがみこんだ。
  クマの前足が空を切った。はずみでクマはくるっと前にひっくり返り、ころころところげ落ちてから、ようやく止まり、吉川さんをふり返った。
  もっこりと大きくふくれた背中(リュック)、思いもよらない動き。こいつはなんの動物だろうといった顔つきで、クマはとっとこにげていったそうだ。 - 83ページ

やはり表現や漢字の使用方法は子ども向けになっています。


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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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