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「★貝げらのめがね―自然は子どもをどのように遊ばせるか」山口孝雄 (著)(光村教育図書 1986年2月)

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→目次など

■愛知教育大学の学生の頃から自然の中での子どもの遊びを調査しつづけた山口氏の定年退官を期して出版された写真を主とする本■
終戦直後の昭和21年、疎開先の厳しい生活の中で、子どもたちを救ったのは無償で提供される自然の恩恵であった。それから40年、手足の取れたカブトムシをおもちゃのように修理できると思い込んでいる子ども、オタマジャクシを1年生たちに1匹50円で売ろうとした2年生など、子どもと自然の距離は離れてしまった。自然の中で遊び子どもに魅せられた教師が定年退官を前に、この本を出した。

ジョウロで乾いた土の上に水を撒いて絵を描いたり、花弁などを砂と一緒に投げあげて打ち上げ花火のまねごとをしたりと、自分も経験があるけれど名前などついていない遊びや、子どもたちが工夫して考えだした遊びも収録されています。

同様な内容の論文が公開されています。「自然の遊びは子どもをどのように育てるか―美術教育への提言―

自然豊かな環境で遊ぶ子どもたちの姿はよいですね。

巻末に4種類の別表「子どもの遊び場所と人数による分類」「子どもの遊びの造形表現内容による分類」「子どもの遊びの造形表現素材による分類」「子どもの遊びの二つの要求による分類」が収録されています。

内容の紹介


1.風と子ども (7)氷ふき
雪が降った日、池はこおった。
池から氷を、引きずり出して、実験をした。

細竹で、氷に息を吹きつけると、
氷は、とけていく。

自分の息で、穴があいた氷。
氷の、
小さな穴からのぞくと、
向うの景色は、
穴の中で近づいてみえる。
(吹く場面とのぞく場面の写真を収録) - 24-25ページ

1966、1965 岡崎・附小とあります。


2.大地と子ども (24)泥まんじゅう
土をしめらせ、空かんの型に押しこむ。
杉の板きれで、底をポンポンたたく。
ぽこっと、小判型の泥まんじゅうが生まれる。

泥まんじゅうに、釘で字を書く。
力をいれすぎれば、くずれる。
心を込めて、ていねいに書く。 それで、まんじゅうはできあがり。


泥まんじゅうは、どんどんふえていく。
ふえることが、たのしいのだ。
(たくさんできた泥まんじゅうがたくさんできてまだまだ作っている子どもたちの写真と、まんじゅうに字をかく子どもたちの写真を収録) - 90-91ページ

1977 豊橋・前芝とあります。


3. 虫と子ども (6)魚の家
干潟のくぼみに、逃げそこなった小魚がいる
その小魚を逃がさないように、
砂を積み上げて、堤防を築いた。
小魚は、青さの下にひそんでいる。
きれいた水が入るように、
堤防を少し、こわした。
(説明どおりの写真を収録) - 118ページ

1965 幡豆・篠島とあります。


4. 草木と子ども (7)木を渡る
13号台風で、公園の大木が倒れた。
木の下は、お城の空堀である。

はじめは、誰だって勇気がいる。
"みんなで渡れば、こわくない"というわけにはいかない。
一人一人の勇気がためされる遊びである。

子ども達は、遊びの中で、スリルと冒険に挑戦する。

遊びの中で、子どもたちは自分自身をみつめ、
仲間の影響をうけて、成長する。
(倒れた大木の飢えを渡る子ども達の写真を収録) - 142ページ

1959 豊橋公園とあります。下は写っていませんが、空掘なので落ちればかなり高そうです。今ならすぐに立ち入り禁止になって無理でしょう。


5.自然は子どもをどのように遊ばせるか (8)原始の心を復活する
椿の木には、いくつかの巣がつくられている。
裸のまま木にかくれる子どもたち。 椿の花の蜜を吸い、木の実をかじる。

遊びは、原始の心を復活する。
(高い木の途中から張り出した枝に隠れた子どもの写真、椿の枝の間に隠れた子どもの写真が収録されています) - 238-239ページ

1953 豊橋・牟呂とあります。子どもたちが秘密基地を作りたがるのは、類人猿時代の巣の名残かもしれませんね。



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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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