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「★粋に暮らす言葉」杉浦日向子 (著)(イースト・プレス 2011年5月)

→目次など

■永遠に生きるかのように生きる私たちとは違う、限られた生を踏まえて生きていた私たち。■

惜しまれながら46歳でこの世を去ってしまった江戸風俗研究家、杉浦日向子さん。
生前の32作品から言葉の断片が切りだされ、「粋に暮らす」「楽に生きる」「江戸の魅力」の三章にまとめて紹介されています。それぞれ 1ページの中に、短い見出しを付けたあと、大きな活字を使って杉浦さんの言葉が記され、ページの末尾に出典となった作品の名前が小さく付されています。

2点だけ紹介してみましょう。

「いつまでも若々しく健康で、より良い人生を長く
生きよう」という思想は、少なくとも、放蕩の人、
風流の人にはなかった筈です。「年相応に老け衰え
つつ、それなりの人生を死ぬまで生きる」という当
たり前の事が、遠くなりました。 -64ページ

今ですと、知識を身につけるとか、何かを纏う、つ
まり何かを抱え込むことによって、悩みから抜け出
たり、外的から身を守ったりするのが普通ですが、
困ったときは裸になれ、ほっぽりだせっていうのが、
江戸人の方法です。 - 122ページ

文章量は少ないですが、科学技術によって生物としての宿命まで変えることができかのように思い込んでいる現代文明の価値観を疑問視するようになった私にとって、大いに共感できる言葉が多く抜粋されており、人間としての健全な価値観を感じます。この価値観は、定住しないことであらゆる悪しきものを捨て去って生きるとされる狩猟採集者たちと共通していると感じます。

もちろん、抜粋ですからどのような文脈で語られた言葉であるのか、どのような事実を背景としているのかを確認することはできません。こういった価値観は、永遠に生きられるかのように人々を欺いて勤勉・勤労・消費へと追いやる現代社会のあり方に疑問を持ったことのない人にとっては、つまらない本かもしれません。でも、あえていいたいのは、今の価値観に普遍性などなく、むしろ江戸の価値観のほうが普遍的な価値観と近かったはずだということです。江戸の世の価値観を伝える読書人向けのお勧めの本『逝きし世の面影』とともに、手軽に読める本として、お勧めです。


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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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