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「原子転換というヒント―21世紀の地球再生革命」久司 道夫(著)、日本CI協会(編集)(三五館 1997年6月)

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■炭素や酸素から鉄や金を作ることができるという原子転換は、資源の偏りに縛られることのない文明の夢を見させる。■

現代の錬金術、原子転換 錬金術師たちは、水銀などから金を作ろうとして失敗しました。しかし、別の元素から金を作る原子転換は実際に可能であり、炭素や酸素というありふれた元素と小さな設備さえあればよいといいます。これが実現されたなら、物質の希少性によって支えられていた物質社会が崩壊し、精神性の高い社会へと移り変わることになると著者はいいます。

本書はマクロビオティックの小冊子シリーズの一冊として原子転換を中心に説明した1994年発行の「Philosofer's stone(賢者の石)」を日本語に翻訳したものに、マクロビオティックを理解するための基本となる「宇宙の秩序」に関する説明を加えて編集されたものです。「宇宙の秩序」には十二の法則(定理)があります(「「宇宙の秩序 十二の法則」で検索すると見つかります)。

元素は不変なものではなく核融合や核分裂によって変化します。本書では、宇宙の秩序に基づくならば原子の転換は自然な状況下でも起きるといいます。フランスの生科学者ルイ・ケルヴランは、フランス政府の命を受けてサハラ砂漠で調査を行い、労働者たちの食物と排泄物に関する詳細な記録をとりました。その結果、摂取する以上のカリウムが排泄され、排泄される以上のナトリウムが摂取されていることをつきとめました。つまり、体内でナトリウムがカリウムに変化しているようなのです。また、ニワトリはカルシウムを大量に摂取しなくてもカルシウムの豊富な卵を産みます。

宇宙の秩序が説明する磁力、地球の歴史、食の基本
宇宙のすべての元素の中で、鉄、コバルト、ニッケルは中心に位置しており、他の元素はこの中心に向かって引かれています。磁気はバランスのとれた状態、平衡状態に向かってすべての変化を引き落としている自然の力の一つなのです。

太陽系も同じような陰陽の法則の中にあります。太陽系の惑星はすべて太陽に向かって動いており、地球は昔木星の位置にあったのが内側に移動しながら生命の存在する星に変わってきたといい、何百万年か後には太陽に近づくために今は放射能を持たない元素も放射能を持って分解し始めます。

動物の体内では、マグネシウムを鉄に変換することで、植物から摂り入れたクロロフィルがヘモグロビンに変わります。このためには体を陽性にする必要があり、運動をする、日光にあたる、塩を取る、過熱するなどの工夫が必要になります。

現実には
本書には、炭素から鉄を作る方法が記載されています。簡単な方法でできそうなのですが、調べてみても実際に成功した事例を見つけることはできません。ただ、巻末に収録されている特別インタビューの相手となった北海道大学の水野忠彦博士による論文「カソード電解によって誘気されたパラジウムの解析元素の同位体異常」は見つかり、原子転換が起きる条件は存在しているようです。また、動物の体内で原子変換が起きるかどうかについては、否定的にみないと現在の学会では、相手にされないようです。

それよりも、上に上げたような理論に触れて、文明を維持しながら環境破壊や支配を脱する可能性について考えてみる機会を得たことが私にとっては収穫でした。この点において、十分読む価値のある本でした。著者はテクノロジーは人間を弱くするものであってはいけない(128ページ)といい、古代社会には霊性と物質はひとつのものであるととらえる総合的・全体的な理解、洞察力による直観的な判断があった(85ページ)といい、物質と非物質が同じであるということをベースにしない思想は成功していない(86ページ)といいいます。私も同意見です。ただ、著者の議論は随分物質主義に傾いていると感じました。

原子転換実験が成功しないとすれば、結局のところ、生物が行っている光合成や蛋白質の合成といった仕組みが最も効率的なのかもしれません。そして、他の動物たちのように、物理的な現実ではなく、知覚する現実に従って生きることが最も理にかなっているのかもしれません。

内容の紹介


物質と非物質は相互転換する
  前章では環境が変わると、物質がどういうふうに変わるか、また物質と非物質は限りなく相互変換するものだということをお話しました。
  現代科学も、古代の学者や賢者たちが何千年も前に出した結論と同じところにたどりつきつつあるように見えます。それは、物質と非物質は同じものだということです。
  非物質というと荒唐無稽に聞こえるかもしれません。今の科学は物質や見えるものを基本においている、見えないものや非物質などあるかどうかわからないという人は今でも多いでしょう。   しかし、たとえば光には質量はないとされているのです。これは非物質といっているのと同じようなものです。また最近話題になっている波動というのも非物質的なものの動きをいっている場合が多いのです。
  これを東洋的にいいかえると無は有であり、有は無であり、また無は有になり、有は無になる――有無相通ずる――ということです。 - 84-85ページ


人類を導くもの
  テクノロジーが主導権をもつのはいけません。では、何が主導権をもつべきでしょう?
  「宇宙の秩序」、つまり理性では「正義」感性では「愛」が人類をリードするといいのです。
  霊的・哲学的・観念的理解がないと、無限のエネルギーや原料も人類を滅ぼすモンスターになってしまうだけです。
  将来、わたしたちは必らずこの問題を解決しなくてはなりません。 - 130ページ

私は、「抽象概念は詐欺師への第一歩」と考えますから、このような考えに賛同しません。むしろ、実際に生きている狩猟採集者たちの暮らしから、資源の分散や協力し合うことの必要性、そして肉体的な経験こそが、人類を導くと考えます。


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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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