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「笑顔で花を咲かせましょう 歌って踊るオバァたちが紡いだ「命の知恵」」KBG84(小浜島ばあちゃん合唱団) (著)(幻冬舎 2015年12月)

→目次など

■アイドルたちは化粧を欠かさず、男を家に上げないのです。■

沖縄県の八重山地方、石垣島と西表島の間にあり、自治体でいうと、竹富島と同じ竹富町に属しているのが小浜島です。ここで80歳以上の女性たちが作っていた合唱団がKBG84(小浜島ばあちゃん合唱団、平均年齢84歳)と名前を代えてテイチクレコードからメジャーデビューを果たしました。

こうしてみてくると、メディア受けのよい活動を紹介し、元気な高齢者を賛美する本かなと感じてしまいますが、中身はそうではありません。いつまでも女性であることを意識し、礼儀作法を欠かさず、しっかり生きる女性たちの言葉が綴られていました。日本の果てのちっぽけな島でのどかに暮らす人々とか、「オバァ」と呼ばれることを好む気さくな人々であると思い込んでしまっていた自分が恥ずかしくなります。

本書の第四章までは、合唱団の中心メンバーである4人それぞれに取材して、一人につき一章を割り当ててまとめた内容になっています。この部分を読むと、同じ島に暮らしながらも、人によって受け止めかたは違っていますが、そもそも人の精神年齢は肉体の年齢とは違って老いていかないこと、そして、人は、自分の力で生きていくことができる限り、苦労だともつらいとも思わずに生きることができることが伝わってきます。

よいことばかりではありません。90歳を超えて長男も次男も亡くし、長男の家は東京にあるために島で一人暮らしを続ける人もあります。子どもの進学のために、石垣島に越して、行事のときだけ島に来る人もいます。怪我で石垣島で療養中の人もあります。戦争から高度経済成長、進学率の向上などの社会の動きによって皆それぞれに影響を受けています。そのような経験を経た人々の言葉は、時代の流れとは何か、人生観とは何かなどを考える機会にもなるかもしれません。


第三章で花城キミさん(90歳)は次のように語っています。

島で不便だと思ったことはありません。なぜなら、自分の自由にしていられるからです。自由でいられるということは、不便ではないんです。島にいたら自由でいられる。 忙しいのも自分の意思で忙しくするわけですから、それは自由です。不便だと思ったことなんて、ひとつもありません、(115ページ)

不便を受け入れれば自由でいられた。便利になったら不自由になった。人類史を貫く一本の筋が見えてくる言葉です。

島では今でも旧暦で行事を行っており、行事のときには必ず、家で織った布から仕立てた着物を着るそうです。イイダコを獲ることや、藍を獲ることもできて、なんでもかんでも私物化されていくなかでまだ共同体が生き残っていることがわかります。このような観点からも面白い本でした。

皆さんが口々に言うのは、80歳を過ぎてから楽しくなったということ。それまでは仕事に追われて踊りを覚える暇もなかったといいます。動物たちや狩猟採集社会ではできる、日々を楽しくいきるという生き方が、私たちにはできなくなっている理由を考えてみる必要がありそうです。

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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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