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「どんべい物語 ―ヒグマと二人のイノシシ―」畑正憲(著)(角川書店 1976年4月)

■ヒグマの子との格闘・若きムツゴロウ氏の奮闘記■

当時35歳のムツゴロウさんが、東京を離れて無人島でヒグマを飼い始めたときの記録。元々は単行本2冊として発行されています。
テレビで「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」の放映が始まる前の時期であり、まだ先行きの見えない中で始まった動物王国作りの第一歩となる時期の作品です。
先日実家に帰ったときに、高校時代に買って何度か読んでいたこの本を見つけ、またもや一気に読んでしまいました。

体当たりでヒグマの子を育てながら、学者としての目と作家としての目で観察し、適格な言葉で表現された文章は、読みやすくてわかりやすく、動物好きであればどんどん読める本でしょう。
無謀と思われる企てに挑戦して成功させていった人物の物語としても楽しめるかもしれません。
私は、この本に出会ったことで、ムツゴロウ氏の本にのめりこむことになりました。この本と『天然記念物の動物たち』はムツゴロウさんの本の中で特にお勧めの本です。
懐かしいヒゲさんや秋田犬グルも登場します。

犬やネコと比べることで、動物の種類ごとに異なる賢さや強さがあり、それを生かす生き方をしているのだということも見えてきます。もう新刊は出ていないようですが、読まれなくなるのは惜しい本です。

本文の紹介


ナガラ族の遊び

どんべえがナガラ族であるのがはっきりしたのは、スベリ台をうまく利用出来るようになってからである。
ある朝、妻が言った。
「見てよ、そのうち三輪車を上までくわえ上げるから」
「まさか・・・・・・」
「いいえ、絶対です。さっきは半分まで持ち上げたのですから」
どんべえはスベリ台に飽きて、合成樹脂のボンデンでひとりサッカーをやっていた。はじいて壁に当て、はねかえってくるものをまたはじく。力が強いので、壁が壊れやしないかと心配になる。
そのうち、
「ガチャーン」
と大きな音がしてボンデンが三輪車にぶつかる。と、三輪車を思い出したらしく、今度は左手をサドルにかけ、右手でボンデンをはじく。
それにも飽きるとスベリ台である。すべり下りる板の方からよじ登り、腹這いになってドスン。
二回か三回繰り返すと、次には三輪車に目をつけた。

妻が僕をつついて、
「それごらんなさい」
「うん」
「頑張れ、どんべえ」
「それ、力を出せ」

まったくやんちゃ坊主という他はない。頭でぐいぐい押すかと思えば、自分が先に這い上がりながら口でしっかりくわえている。
ドスン、バタン。
失敗する度に、わが家は大変な騒音に悩まされることになった。

結局、成功するまでに約一週間かかった。三輪車を上までくわえ上げた時の誇らしげな顔ったらなかった。上が狭いのでちょっとよろけてはいたが、目や唇に昂然とした覇気があった。僕たちは家族打ち揃ってその偉大なる成功に拍手を送ったのだった。 236-238ページ

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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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