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「アフリカ旅日記 ゴンベの森へ (MF文庫ダ・ヴィンチ)」星野 道夫(著)(メディアファクトリー 2010年8月)

→目次など

■命のファンタジーに導かれた、アラスカの日本人とアフリカのイギリス人■

44歳で亡くなった伝説の写真家によるフォト・エッセイであるこの本は、研究活動よりも、資金集めや広報活動のためにゆっくりアフリカに滞在できなくなっていたグドールと、星野が10日間という短期間ながらゴンベの森で過ごした日々を基にしています。

少年の頃、自分が日々、町の中で暮らしている同じ瞬間に北海道でクマが生きていること、どこかの山を登りながら大きな倒木を乗り越えようとしていることを考えて不思議で仕方がなかった星野は、長じてアラスカに暮らし、ホッキョクグマやカリブーを写す日本人になりました。

ニワトリの体のどこに卵が出て来るような場所があるのかを不思議に思ったイギリス人の少女は、ニワトリ小屋の暗がりに潜んでその瞬間を見届けました。そして長じてアフリカに暮らし、チンパンジーの心を感じる研究者になりました。

星野道夫がアラスカに渡ったのは、インディアンたちの前から消えたヤギュウに溢れる世界に変わって、カリブーに溢れる世界がアラスカにあったからでした。インディアンやエスキモーも近づかない土地で、突然出くわしたカリブーの群れに気づかれることなくやりすごしたことが彼に自信を持たせました。

一方、アフリカのイギリス人、ジェーン・グドールの活動の拠点となったゴンベの森は、グドールの活躍がなければ失われていたであろう森でした。生活のために周囲の森は畑にされ、保護区を解除して欲しいという動きがあったのです。保護されたほんの50平方キロメートルほどの森に150頭ほどのチンパンジーが3つの群れを作って暮らす。そこは、チンパンジーが世代をつなぐには狭すぎるものの、当面の絶滅からは守る場所になりました。

カリブーの群れと出くわした星野のように、グドールにもまた、一頭のライオンと出くわした思い出がありました。

この本は、二人の対話という形ではなく、特段の盛り上がりもないものの、同じように不思議な力に導かれて生きる場所を変えた二人を通じて、人の活動と生き物たちとの関係を思わせる内容になっています。

星野の死後寄稿されたジェーン・グドールによる「ミチオがそこにいるだけで」が巻末に特別収録されています。

内容の紹介


ぼくがジェーン・グドールに会いたかったのは、彼女を通してアフリカという世界を垣間見たかったからだろう。生まれ故郷を離れ、新しい土地へ移り、そこで生き続けてゆくことの意味を、ぼくは少しずつわかりかけていた。アラスカとアフリカという違いこそあれ、ぼくは彼女の著作を読みながら、ある共通する想いを感じていた。 - 15ページ

この二人は、私と違い人類学者的なアナーキストでも、文明否定論者でもなく、ただ、現状を概ね肯定する中でできることをするというスタンスのように感じました。



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「ルビリン」は東山動物園にいたアムールトラの名前です。土手で出会った子猫を迎え入れ、「るびりん」と命名しました。

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