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Last updated 2015.4.30mf
弁護士河原崎弘

退職に際し、従業員に企業秘密の守秘義務を課したい

相談:退職社員が会社秘密情報を使っている
当社は、コンピュータのソフトウエアの開発を主要業務としています。
最近、退職した従業員が、他社で、当社のソフトウエアと似たソフトウエアを開発している疑いがあります。
このような場合、何か法的措置はとれますか。

回答:守秘義務に関する契約が必要
顧問弁護士の説明は次の通りでした。
退職した従業員が、他社で従前勤務していた会社のノウハウなどを使って仕事をした場合、これは違法かとの問題はあります。
従業員も自己の能力を生かして働くことは認めるべきです。特に、従業員は、在職中は、会社に対して忠実義務はあるでしょうが、退職後は、そのような義務はないでしょう。忠実義務は従業員としての身分に伴っているからです。
他方、従業員の行為が、不正競争防止法や著作権法など、法規に違反していれば、会社は、元従業員に対して損害賠償請求などができるでしょう。具体的な法律違反がない場合は、難しい問題です。
不正競争防止法は、「営業秘密を保有する事業者からその営業秘密を示された場合において、不正の競業その他の不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為」を不正競争行為として、損害賠償義務を課し、刑罰を科しています(2条1項7号)。
さらに、判例は、会社と従業員の間で、「在職中に知りえた会社の秘密を漏洩してはならない(守秘義務)」との契約、あるいは、就業規則、労働協約にそのような規定があれば、従業員に、債務不履行責任が生ずるとしています。
そこで、会社としては、秘密(企業秘密)をまもるために、就業規則に、そのような規定を入れ、あるいは、秘密に接触する従業員に、 秘密保持誓約書 を書いてもらうか、その旨の契約を締結するとよいでしょう。
誓約書、あるいは契約書は、在職中に書いてもらってください。たまに、退職時に、そのような誓約書を書くことを要求し、書かない場合は退職金の支払を拒否する会社があります。しかし、これは、無理な方法です。退職金支払い請求の訴えを提起されれば、会社は負けます。
誓約書あるいは契約書あるのに従業員が守秘義務に違反した場合、会社は従業員に対し漏洩行為の差止め、損害賠償請求ができます。

なお、営業秘密であるためには、@秘密として管理されていること(「秘」と表示されている資料、パスワードがかかっているデータなど)、A秘密として有用性があること、B公然として知られていないことが必要です。

判例
登録 2004.8.1
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