離婚契約をして結婚した男性との交際

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2015.12.8mf更新
弁護士河原崎弘
相談
私は、ある男性と婚約していました。ところが、彼は、どうしても彼の子 どもが欲しいというある女性(私の存在を知っていた)に、「あなたが好きだ から、1年だけで良いから内緒で籍を入れて、一緒に暮らして欲しい」と懇願 され、断り切れず、妊娠・入籍・同居となりました。
彼は、親にも内緒なので、 彼女に言われたとおり、自分の戸籍を移し、入籍したそうです。私が入籍の事 実を知ったのは、彼が入籍して、3ヶ月経った頃です。
私は、彼を待つことにし ました。その間、彼とも会っていましたし、彼の「契約結婚」という言葉を信 じて外泊や旅行にも行っていました。
1年経ち、彼らは離婚しました。ところが、彼女 は私に対し、「1000万円慰謝料を払え」と要求しています。私と彼との関係は不倫だと言うのです。こんな理不 尽なことがあるんでしょうか。
彼は、養育費も生活費も彼女にちゃんと払っています。 女性は、婚約者を連れて、弁護士事務所を訪れました。

説明
これは、彼と彼女の結婚が法的に有効な否かにより、結論は異なります。当事者に婚姻意思があったか否かが、問題となります。
1年後に離婚するとの条件が付いた結婚をどう見るかです。
1つは、このような条件は無効であるが、結婚は有効と見るとの考えです。その場合は、彼は、普通の結婚をしたと見ることができます。他方、このような条件が付いた場合、真実の婚姻ではないので、結婚自体が無効であるとの考えもあります。
ビザを得る目的だけの婚姻 とか、子を嫡出子にするためだけの婚姻(下記判決)は無効です。しかし、同棲が伴うと、真実の結婚か否かは、微妙な問題です。 結局、彼と彼女の生活の実態(同居したか、婚姻費用の分担など)を調べて、婚姻意思があったか、結婚が有効か否かが判断されるでしょう。届出により、婚姻が成立する日本では、届出により結婚は有効と見るのが普通でしょう。
有効な結婚が存在したなら、あなたに慰藉料支払義務があり、結婚が無効なら、あなたに慰藉料支払義務はないでしょう。
真実の結婚でも、1年後に離婚する約束に従い、離婚したのであれば、 あなたの存在が離婚の原因でなく、あなたに慰藉料支払義務はないと 判断される可能性もあります。例え慰藉料支払義務が認められても、金額は少ないでしょう。

参考条文
民法
第742条〔婚姻の無効〕 
婚姻は、左の場合に限り、無効とする。
一 人違その他の事由によつて当事者間に婚姻をする意思がないとき。
当事者が婚姻の届出をしないとき。但し、その届出が第七百三十九条第二項〔婚姻の届出の方法〕に掲げる条件を欠くだけであるときは、婚姻は、これがために、その効力を妨げられることがない。

参考判例
  1. 「当事者間に婚姻をする意思がないとき」とは、当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指すものと解すべきであり、したがつてたとえ婚姻の届出自体について当事者間に意思の合致があり、ひいて当事者間に、一応、所論法律上の夫婦という身分関係を設定する意思はあつたと認めうる場合であつても、それが、単に他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないものであつて、前述のように真に夫婦関係の設定を欲する効果意思がなかつた場合には、婚姻はその効力を生じないものと解すべきである。
     これを本件についてみるに、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ)の適法に認定判示するところによれば、本件婚姻の届出に当たり、被上告人と上告人との間には、小夜美に右両名間の嫡出子としての地位を得させるための便法として婚姻の届出についての意思の合致はあつたが、被上告人には、上告人との間に真に前述のような夫婦関係の設定を欲する効果意思はなかつたというのであるから、右婚姻はその効力を生じないとした原審の判断は正当である(最高裁昭44.10.31、判例時報577-67)。
  2. 事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかないで婚姻届を作成提出した場合においても、当時右両名に夫婦としての実質的生活関係が存在しており、後に右他方の配偶者が右届出の事実を知つてこれを追認したときは、右婚姻は追認によりその届出の当初に遡つて有効となると解するのを相当とする。
    けだし、右追認により婚姻届出の意思の欠缺は補完され、また、追認に右の効力を認めることは当事者の意思にそい、実質的生活関係を重視する身分関係の本質に適合するばかりでなく、第三者は、右生活関係の存在と戸籍の記載に照らし、婚姻の有効を前提として行動するのが通常であるので、追認に右の効力を認めることによつて、その利益を害されるおそれが乏しいからである(最高裁昭和47.7.25判決、判例時報677-53)。

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