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2013.11.8mf更新
弁護士河原崎弘
破産したと言われ、名誉を毀損された
質問
最近、自己破産をしました。2人の友人に話しました。
そのうちの1人が、私の子供に話し、子供から、「破産したんでしょ」と言われ、ビックリしてしまいました。友人は、私の他の(私が借金を申し込んだ)友人に話したと聞いた事があります。他にもいろんな人に話していると思いますが、名誉毀損にはあたりますか。
回答
まず、破産した事実がないのに、破産したと述べることは、間違いなく、名誉毀損になります。刑事上犯罪になり、罰せられますし、民事上は不法行為になり、損害賠償義務があります。
法律は、虚名も保護していますので、真実、破産したのであっても、それをみだりに指摘することは
違法です。他方、破産法32条1項(旧法143条1項)は、破産手続の開始は公告の対象になっており、その趣旨は破産宣告を広く一般に知らせる
ことにあります。さらに、公共の利害に関する事実で、公益目的で、真実を言うことは違法ではないとされています(刑法230条の2)。従って、正当な理由がある場合は、破産の事実を告げることは合法と言えます。
あなたのケースでは、公益目的があったかが問題です。
友人があなたの子供に言った件は違法です。友人が、あなたの他の(あなたが借金を申し込んだ)友人に話した件は、破産した人に貸すことを止めるように注意するためであり、合法でしょう。
仮に、違法であっても、違法性の程度は低いので、損害賠償額も低いでしょう。
判決
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名古屋簡易裁判所平成17年7月26日判決(出典:判例秘書)
@ 名誉毀損における違法性の有無は,被侵害利益である名誉の種類,内容と加害行為の
目的,態様等を総合考慮して判断すべきである。
A 本件では,前記判示のとおり,原告は破産者であるが,破産という事実は同人のプラ
イバシーないし名誉として保護を受けるものであるところ,破産法の公告の趣旨からすると,
破産者の支払能力等の経済的側面において,その保護につき一定の制約を受けていることは否
定できない。
ところで,書簡(甲1の1)の文面からすると,被告は,訴外A有限会社が破産
に至ったこと,連帯保証人である訴外B及び原告が破産し,その支払能力を欠いたこと,亡C
の死亡と第1順位の相続人が全て相続放棄をしたこと等を説明しているところ,物的担保に係
る仮登記の本件登記への承諾を求める説明として,人的担保である原告の破産という事実は法
律的な前提事実ではないものの,第3順位の相続人が,訴外A有限会社への融資につき物的担
保以外の人的担保はあったのかどうか,またどうなっているのか,どうして親子,兄弟の関係
で解決できなかったのか等の疑問を抱くのは自然なことであり,また予想されるところでもあ
るから,書簡において原告の破産の事実へ言及することは,仮登記の本件登記への承諾を求め
る説明の実質的な前提事実としての必要性を認めることができる。
また書簡送付の範囲は第3
順位の相続人等30人であり,相当性を逸脱していない。なお,送付先には相続人でない者が
1人おり,その必要性はなかったものと解されるが,同人は相続人の同居人であり,誤って送
付されたものと解されるので,この点をもって不相当と解することはできない。
B 以上の点を総合考慮すれば,被告の行為が,原告の名誉を低下させたとは解されるも
のの,慰謝料を認めるに足りる違法性があるとは解することができない。
- 大阪地方裁判所平成2年5月21日判決(出典:判例時報1359号88頁)
破産の誤報によって個人の経済的信用及び名誉が毀損されたことにつき、信用情報会社の220万円損害賠償責任が認められた。
- 大阪地方裁判所昭和60年7月30日判決(出典:判例タイムズ567号208頁)
2 そうとすれば、本件文書に記載されている記事のうち、原告の経営していた訴外株式会社
和田工業所が破産宣告を受けたことは、客観的な真実であるというべきである。
また、前記認定の如く、原告は、その住民登録をしている大阪市西区川口三の一の一には居
住しておらず、弁天コーポの入居者台帳にも、弁天コーボ三〇二号の専有部分に原告は居住し
ていないと記載されており、公簿の上ではその住居が不明であつて、いわゆる法律上住居不定
といわれても止むを得ない状況にあつたものというべきであるから、本件文書に、「法律上住
所不定ど成ります」と記載されている部分も、真実に合 するものというべきである。
そうして、前記認定の事実関係からすれば、被告は、右のような事実関係の下にある原告が
弁天コーポ管理組合の副理事長の職にあるのは適当でないと考え、これを弁天コーポの住民に
広く訴える趣旨の下に、本件文書を配布したものというべきであるから、被告の右行為は、公
の利害に関すること刊あり、かつ、その目的が公益を図るために出たものというべきである。
したがつて、本件文書のうち、原告の経営していた訴外株式会社和田工業所が破産宣告を受け
たとの事実、及び、原告は法律上住所不定になりますとの事実をそれぞれ摘示た部分が仮に原
告の名誉を毀損するものであるとしても、これを記載した本件文書を配布したことにつき、違
法性がなく、原告には、名誉毀損による不法行為責任はないというべきである。
3 さらに、一般に、政治、学術、団体などの公共的問題について、政治家、学者、団体役
員などの言動を論評し、批判することは、それが公的な活動とは無関係な私生活の暴露や人身
攻撃にわたらない限りは、右論評により、被論評者の社会的評価を低下させたとしても、それ
は、論評の自由(言論の自由)として違法性を欠くものというベきところ、前記認定の事実関
係のある本件においては、本件記事のうち、被告が、原告は弁天コーポ管理組合の副理事長と
して適当な人物でないと判断してその趣旨を記載した部分も、公的な立場とは無関係に、原告
の私生活を暴露したり、大身攻撃をするものではなく、弁天コーポ管理組合副理事長という団
体役員としての原告の適格性に関する公共的な事柄の論評であつて、いわゆる論評の自由に属
する事柄であるというべきであるから、違法性がないというべきである。したがつて、本件文
書のうち、右事実を摘示した部分も、これが仮に原告の名誉を毀損するものであるにしても、
本件文書を配布したことにつき、違法性がなく、原告には、名誉毀損による不法行為責任はな
いというべきである。
登録 2008.10.26
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