物損事故において慰謝料は認められるか
弁護士(ホーム) >
法律事務所 > 弁護士の交通事故相談 > 物損事故において慰謝料は認められるか
2017.12.16mf更新
相談
駐車中の私の車に、カーブを曲がりきれなかった車両が(運転者女性23歳)衝突しました。
物損だけでしたが、修理代は加害者が全額負担と決まりました。事故処理そのものは大方終わったのですが、加害者がなかなか自分の保険会社に連絡をとろうとしなかったり、謝罪をする意思も見せません。そのために私自身が自分で加害者側の保険会社を探したり、連絡をとったりと、動き回ったのです。
加害者は、あらゆ
る面から見ても誠意が全くない、嘘を言っているとしか言い
ようがなく、新車を傷ものにしておきながら、反省もしていないとしか言いようがありません。私はこのままでは我慢がなりませんので、謝罪の意味も含めて、保険会社を探し回ったための電話代、証拠物件取得のため、購入したカメラと現像料、半日以上もの間、自宅に拘束を余儀なくされたため、慰謝料を請求したいと思ってます。請求できますか。
相談者は、市役所に電話を入れ、予約し、法律相談しました。
お答え
弁護士の回答は次の通りでした
慰謝料は精神的打撃に対する損害です。生命侵害に対する慰謝料、身体に対する損傷があった場合の慰謝料は認められます。物損に対する慰謝料は、自動車は代替性のある物件であり、被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害されるような特段の事情が存在しないかぎりは、その損傷のために財産上の損害賠償によつては回復できない精神的苦痛が残存することはないとしています。
物が壊されたことについての慰謝料は、原則として認められていません。物損だけの 交通事故 では、特別の場合だけ慰謝料が認められます。裁判所は、「被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害されるような特段の事情が存在しない限り、その損傷のために財産上の損害賠償によつて回復できない精神的苦痛が存する」とは言えないとしています。
交通事故で車に対する愛着心が害されたとしての慰謝料は、中々、難しいです。従って、あなたの場合、慰謝料請求は無理です。
他方、家に車が飛び込み家が破壊された場合、慰謝料を認めた判例はあります。それは、そこに居住していた人の生活の平穏が壊されたためで、物に対する愛着心が侵害されたからではありません。
判例
- 東京地裁八王子支部昭和50年12月15日判決
早朝就寝中、居住家屋に砂利を満載した大型貨物自動車が飛び込んだ事故につき、家屋修繕費115万1350円、家具等の損傷9万2500円の外、生活の平穏が侵害されたとして、被害者に10万円慰謝料請求権を認めた(交通民8巻6号1761頁)。
- 東京地裁平成元年3月24日判決
ベンツ(500SL)の扉、フェンダー、バンパーが損傷を受けた事故につき、裁判所は、精神的損害賠償を請求できる場合は「目的物が被害者にとって特別の愛着をいだかせるようなものである場合や、加害者が害意を伴うなど相手方に精神的打撃を与えるような仕方でなされた場合など、被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害されるような特段の事情が存することが必要である」と言い、慰謝料を認めませんでした(交通民22巻2号420頁)。
- 大阪地裁平成元年4月14日判決
店舗兼居宅に車両が突入した事故につき、まかり間違えば人命の危険も存したうえ、家庭生活の平穏も侵害されたので、財産的損害賠償の外30万円の慰謝料を認めました(交通民22巻2号476頁)。
- 東京地裁平成6年6月17日判決
自動車は代替性のある物件であり、被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害されるような特段の事情が存在しない限りは、その損傷のために財産上の損害賠償によつては回復できない精神的苦痛が残存することはないとして、慰謝料を認めませんでした(交通民27巻3号793頁)。
- 横浜地裁平成26年2月17日判決
原告は,本件事故によって住居部分と接続する店舗部分が大きく破壊されたこ
とにより,生活の平穏を害され,これによって多大な精神的苦痛を被ったと認められる。また,本件事故の態様等,諸般の事情を考慮すると,原告の上記精神的苦痛を
慰謝するに足りる慰謝料の額としては,120万円が相当と認められる。
港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03-3431-7161