危険な依頼者/個人の依頼人の場合

弁護士(ホーム)
2014.5.27更新mf
企業が依頼人の場合、通常、依頼人(あるいは担当者)は、弁護士の仕事(法律事務)内容を理解しています。理解していないと、その職には留まれません。
しかし、個人の事件では、あらゆるレベルの依頼人がいます。さらに、個人の依頼人の場合は、弁護士の仕事を知らない人も多いのです。個人の依頼人に対しては、丁寧かつ詳細な説明と、慎重な対処が必要です。
事件を弁護士に依頼し、以後、任せきりにして、何もしない(弁護士に協力しない)依頼者は多いです。 債務整理、自己破産、サラ金、やみ金対策事件などでは、弁護士は、債権者に受任通知を出します。依頼人は、それまで債権者の取立に苦しんでいたのですが、受任通知後、取立は止まり、安心します。
安心した依頼人(債務者)は、弁護士の事件処理に協力をしなくなります。自己破産では、戸籍謄本、預金通帳の写し、生命保険契約書の写し等、裁判所に提出する書類がたくさんあります。しかし、一部を隠したり、提出を渋る依頼者は多いです。
この(債権者の取立がなくなり、債務の支払わなくて済む)状態に、安住している依頼人(債務者)もいます。この状態が1年以上続けている依頼人もいます。
依頼人が協力してくれない場合、弁護士は、最後には、辞任することになります。すぐ、辞任すれば、依頼人は、再び、債権者の取立にさらされ、苦しむことになります。弁護士に依頼した意味がありません。
そこで、弁護士としては、依頼人に、何度も、普通郵便あるいは電話にて連絡し、次には、書留郵便で連絡し、最後に、内容証明郵便 にて連絡することになります。
さすがに、内容証明郵便にて、「書類を○○月○日まで持参して下さい。持参なければ辞任します。その場合、貴殿自ら債権者に対応することになります」と通知すると、多くの依頼人は、書類を持参します。

他の業種と 比較すれば、弁護士の仕事は、 国民うちで税金を負担する階層が依頼人である税理士と異なります。特許などの申請をする階層が依頼人である弁理士とも異なります。
税理士、弁理士の顧客は、比較的レベルが高いでしょう。
弁護士の場合は、あらゆるレベルの人が顧客です。医師と似たような状況です。そこで、異常な依頼人、社会的不適格な依頼人がいることを覚悟し、腹を立てずに冷静に対応することが肝要です。腹を立てると、冷静さを失ない、適格な判断ができなくなるだけでなく、事態を悪化させます。

弁護士は、このような依頼人に対し、高い倫理観を持った対処が要求されます(弁護士倫理)。
まず、誤解を生じないように、「弁護士は依頼人と協力して作業(仕事)をする必要があること」を理解してもらい、 弁護士報酬については、詳細な説明と書面化が必要でしょう。依頼人に対して「弁護士から電話や郵便で問い合わせがあったら、必ず、返事をする」旨、書面で約束してもらうことも必要です。 事件処理の際にも、重要な連絡は全て書留郵便でする必要があるでしょう。

さらに、個人の事件では、ほとんどの依頼者は、 弁護士費用を節約したいのです。そこで、弁護士は、できる限り依頼者ができることは依頼者自身で処理するよう勧めます。例えば、調停 事件は弁護士に依頼せず、自分で処理するよう勧めます。
ただし、異常な依頼人の場合には、辞任の選択肢を選ばざるを得ません。
2005.12.30  
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