相談:建築基準法42条2項道路との境界にポールを設置できるか登録 2009.3.31
軽自動車なら通れる幅約2.5mの道路に沿って、我が家の私有地があります。 3か月ほど前、道路との境界に区域明示のため、上げ下げ自由な金属製のポールを設置しました。ところが、このたび、近隣の居住者が弁護士を依頼し、このポールを撤去するようにとの訴えを提起してきました。
本当に、私有地にあるポールを撤去しなければいけないのでしょうか。
回答:建築基準法42条2項の趣旨
道路として認定される(道路位置の指定)と、第三者であっても(所有権などがなくても)、その道路を通行できます。そして、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有するとするのが、判例です。
建築基準法42条2項の道路(この道路を「2項道路」と呼びます)の場合は、道路の中心線(センターライン)から2m後退した線を道路と敷地の境界とみなします(下記の図で言えば、一番下の線がそうです)。そうすると、ポールを設置した場所は、道路になりますから、常識で考えて、ポールは設置できませんね。
但し、平成12年1月27日最高裁判決は、原告がポールの撤去を求めたが、認めませんでした。原告は、自己の土地を賃貸駐車場として利用しようとしているにすぎないからという理由からです。原告が「日常生活上不可欠の利益を有しているとはいえない」として、妨害排除を認めなかったのです。 通常なら、ポールの撤去を認めるでしょう(●がポールを示す)。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - ↑ - - - 2 . 5 m - - - セ ン タ ー ラ イ ン - - - - - - - - - - - - - - - ↑ ↓ 2 m - - - - - - - ↓ - - - - - - - ● - ● - ● - 境 界 - ● - ● - ● - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 道 路 の 境 界 - - - - - - - あ な た の 敷 地
建築基準法42条2項
この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(前項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。
ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満でがけ地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該がけ地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。注:この章の規定が適用されるに至つた際とは、1950年(昭和25年)11月23日です。
判例
- 最高裁平成9年12月18日判決(出典:判例タイムズ983号63頁)
「建築基 準法42条1項5号の規定による位置の指定を受け現実に開設されてい る道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、 右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるお それがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者 の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷 地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める 権利(人格権的権利)を有する。」旨判示し、一定の要件を満たす場合 には人格権的権利に基づく妨害排除・妨害予防請求が認められることを 明らかにした。- 最高裁平成12年1月27日判決(出典:判例時報1703号131頁)
1 建築基準法42条2項の規定による指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格的権利)を有する。
2 建築基準法42条2項の規定による指定を受け現実に開設されている道路にその敷地所有者が自動車の通行の妨げとなる金属製ポールを設置した場合において、右道路が専ら徒歩又は二輪車による通行に供されてきた未舗装のものであり、右道路に接する土地の所有者は同土地を利用しておらず、賃貸駐車場として利用する目的で右ポールの撤去を求めているにすぎないなど判示の事実関係の下においては、同土地の所有権者は、右道路を自動車で通行することについて日常生活上不可欠の利益を有しているとはいえず、敷地所有者に対して人格権的権利に基づき右ポールの撤去を求めることはできない