弁護士河原崎弘相談:不動産事件の弁護士費用(報酬)
約200坪の土地(評価、1億8000万円、時価約2億円)を、一時使用目的で、月50万円で貸していました。相手(借り手の会社)は、そこにプレハブ建物を作って、宿舎に使っていました。
ところが、相手は所在不明になり、第三者が入り込んでいました。 賃料は支払ってくれません。建物には合計2億5000万円の抵当権が設定されています。
この場合、土地明渡しの裁判を依頼すると、弁護士費用(相場)、裁判実費は、どのくらいですか。
回答
以下の手続きと費用が必要です。
弁護士費用は概算です。着手金を少なくして、報酬を多くしてはいかがですか。
不動産事件には、事件屋や、やくざに類する人が絡む場合が多いです。本件もそのようです。手続きは手抜かりのないよう慎重にする必要があります。そのため、仮処分が必要です。建物処分禁止、土地については占有移転禁止の仮処分です。
土地明渡し事件の場合
計算の基となる経済的利益は、借地権価格です。土地の借地権割合は6割として、弁護士の標準着手金、報酬額を 計算してあります。
手続き 内容 目的 実費 弁護士費用 a 建物処分禁止、土地占有移転禁止の仮処分の申立 建物の名義を変えられたり、土地を第三者が占有するのを阻止し、それに違反しても、手続きを維持できる 印紙代は仮処分1件につき2000円 着手金:200万円くらい
弁護士費用計算機 で計算すると標準着手金は429万円b 仮処分の執行申立 建物については処分禁止の登記をし、土地占有移転禁止については、現場に掲示します 20万円くらい
保証金として土地の評価額の15%(2700万円・・・これは返還される)c 訴え提起 建物明渡し、建物収去土地明渡し 印紙代(評価証明の価額による)
評価1億8000万円の土地の場合、訴訟物の価額は4500万円、印紙代は15万5000円
印紙額計算機 参照d 勝訴判決を得た後
建物取壊し命令申立建物取壊しのために必要 e 取壊し、明渡しの執行 作業員 10人〜20 人ほどで建物を取壊作業をする 100万円〜200万円くらい f 成功報酬 報酬:858万円〜1115万円
弁護士費用計算機で計算すると標準報酬着手金は858万円
訴状貼付の印紙額の計算は次の通り建物明渡事件の場合
- 土地の価額が基準となります。土地の価額とは、 現在は、固定資産税の評価額の2分の1です(平成6年4月1日より、当分の間の取扱い)。 そこで、まず、評価証明上の価額を2で割る。
- 次に、本件は、明渡ですので、 さらに2で割ると、訴訟物の価額は4500万円となります。 その場合の貼付印紙額は15万5000円です。
建物明渡事件の場合は、借家権価格が経済的利益になります。
判決
- 東京地方裁判所平成3年4月19日判決
右認定事実に基づき、本件建物の一般な借家権価格について、本件建物が銀座一丁目に所在する二階建建物であることに鑑み、ひとまず借地権割合を更地価格の八割、 借家権価格を借地権価格の三割五分、二階建建物における一階部分の価格比率を三分の二として試算してみると、五億八六六五万円(一万円未満切捨て、以下この算定 計算において同じ。)となる。
しかし、前記認定のとおり、本件建物は対象一二、三年ころに建築されたと推定される木造の建物であり、本件訴訟事件における訴訟物 価格が僅か二八万円余とされており、また《証拠略》によって認められる本件建物を含む建物全体の昭和六二年度の固定資産税評価額は一一二万○五〇〇円にすぎない ことに加え、本件建物は判決当時すでに全体として朽廃の域にあったというのであるから、右のような試算による金額をもって本件建物の借家権価格と評価するのは妥 当とは言えない。
一方本件建物は朽廃状態にあるとはいえ、倒壊寸前というわけでもなく、現に占有者がいて使用収益していた事実も無視することはできない。これら の事情を踏まえて検討すると、右借家権価格は概ね右試算額の二分の一程度の三億円と評価するのが相当である。よって、本件建物の明渡しによって、被告の得る経済 的利益は金三億円と評価できる。
この経済的利益(日本弁護士連合会の酬等基準規程による報酬額を計算すると、着手金及び報酬金がそれぞれ一〇八四万円となる。)をもとに、本件訴訟事件の経緯 特に当初は被告が本人訴訟として訴訟追行していたものを原告がこれを受け継いだものであること、その主張内容から窺われる訴訟の内容・難易の程度、被告の受任期 間、実質的に全面的勝訴というべき訴訟結果のほか、本件建物については、その占有の実態はともかくとして、被告に対し、賃借権を有すると主張して本件建物の一部 取壊し禁止等の仮処分決定を得ている者二名がおり、その仮処分決定が失効したとの主張立証がないことからすると、本件訴訟事件の一審判決によっても、本件建物を 巡る占有権原についての紛争がなお終息しきっていない可能性があるため(《証拠略》によれば、被告は江口四郎の相続人及び社会福祉法人新日本学園に対して、現在 明渡し訴訟を起こしている。)、それが被告が現実に享受する経済的利益の評価に髪響を及ぼさないとまでは断じかたいことその他の事情を勘案すると、その報酬額は 着手金及び報酬金併せて金一六〇〇万円と定めるのが相当である。