第68回(平成29年)パフォーマンス時間観察


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 ここでは、前回に続いて第68回歌合戦のパフォーマンス時間について、詳しく見てみます。

  1. 全体
  2. 前半と後半
  3. 紅組と白組
  4. 演歌
  5. 思うところ
  6. 前年も出場した歌手の前年との比較

全体

 放送時間は、第62回(平成23年)以降7年連続で、午後7時15分から、途中5分間のニュースを挟んで午後11時45分までという、4時間25分の長丁場。 一方で、出場歌手数は45組と(紅組白組各23組でしたが、椎名林檎トータス松本はコラボだったため、1組としています)、第61回(平成22年)の44組に次ぐ少ない数でした。

過去20年の放送時間と出場歌手数の関係

 次に、出場歌手のそれぞれの登場順でのパフォーマンス時間の合計を見ると、だいたい2時間10分27秒でした。

過去20年の放送時間と全出場歌手のパフォーマンス時間の推移
 放送時間に占めるパフォーマンス時間の割合は約50%と、ここ20年で最も低くなりました。 50%ぎりぎりです。 特別企画として安室奈美恵桑田佳祐の歌唱もあったため、この2曲分を加えると、かろうじて52%となりますが、最も低いことに変わりはありません。

 再度特別出演歌手を除き、出場歌手一歌手あたりのパフォーマンス時間を見ると、平均は約2分55秒くらいで3年ぶりに3分を割りました。 中央値(歌唱時間が長い方から数えて半分くらいの歌手の時間)は2分35秒くらいと、前年より短くなっています。 真ん中の歌唱時間だったのは、前半に登場したベテラン天童よしみです。

過去20年の出場歌手のパフォーマンス時間の平均値と中央値の推移

 続いて、下に今回の出場歌手のパフォーマンス時間の分布を示します。

第68回(平成29年)のパフォーマンス時間の分布
 初出場以来、一度も5分を切ったことがないのみが5分20秒を超え、星野源も約5分、少し空いて4分前後から4分30秒前後まで6組います。 このあたりで平均時間を引き上げている感じで、前半の22組全てを含む32組が3分未満となっています。 その割合は実に71%。 3分を超えたのは13組です。

前半と後半

 前半と後半を比較してみます。

比較項目前半後半
歌手数22組23組
放送時間1時間40分2時間45分
総パフォーマンス時間52分35秒1時間18分52秒
放送時間に占める
総パフォーマンス時間の割合
53%48%
平均パフォーマンス時間2分23秒3分26秒
パフォーマンス時間の中央値2分22秒3分15秒
 放送時間は後半の方が1時間以上長いのに、歌手数はほとんど変わらないため、パフォーマンス時間は前半の方が短めです。 平均パフォーマンス時間は2分23秒くらいですが、前年の椎名林檎のように突出して長かった人がいないため、中央値も同じくらいになっています。
 後半は放送時間の半分もパフォーマンス時間に使われていません。 もちろん、特別出演歌手や出場歌手で歌った「いつでも夢を」は除いてですが、やはりどうなんだろうという気がします。

 次に、前半戦と後半戦でパフォーマンス時間が長かった歌手と短かった歌手の上位5組を見てみます。 まずは前半から。

長い順歌手タイトルパフォーマンス
時間
1 郷ひろみ2億4千万の瞳~GO! GO! バブルリミックス~2:50
2 三代目 J Soul BrothersHAPPY~紅白スペシャルバージョン~2:42
3 天童よしみ道頓堀人情2:35
4 三浦大知三浦大知 紅白スペシャル2:34
5 水森かおり早鞆ノ瀬戸2:33

短い順歌手タイトルパフォーマンス
時間
1 山内惠介愛が信じられないなら~貴公子たちの舞踏会~2:03
2 福田こうへい王将2:06
3 丘みどり佐渡の夕笛2:07
4 E-girlsLove☆Queen2:09
5 Little Glee Monster好きだ。~夢を歌おうver.~2:12

 続いて後半。

長い順歌手タイトルパフォーマンス
時間
1嵐×紅白スペシャルメドレー5:25
2 星野源Family Song4:59
3 福山雅治トモエ学園4:31
4 X JAPANENDLESS RAIN 2017 紅白スペシャル4:29
5 Superfly愛をこめて花束を4:20

短い順歌手タイトルパフォーマンス
時間
1 西野カナパッ2:22
2 乃木坂46インフルエンサー2:29
3 氷川きよしきよしのズンドコ節2:32
4 欅坂46不協和音2:37
5 TOKIOAMBITIOUS JAPAN!2:39

 前半での長い方から数えて5番目が、後半の短い方から数えて5番目より短いという。 それでも、後半でも短い歌手は短くて、トリの一つ前だった氷川きよしが後半で短い方から数えて3番目だったりします。
 前半だと2分30秒くらいだと長い方に入りますが、後半は完全に短い方です。
 歌唱時間の長い上位4組は白組でした。

 単純にトップバッターから大トリまでのパフォーマンス時間を横方向の棒グラフで表したものを以下に示します。

第68回(平成29年)の歌唱順とパフォーマンス時間
 前半は全曲が2分台なのでまとまっている感じ、後半は2分20秒から5分台とばらつきがありますが、カウントダウンライブ前に登場する福山雅治を除くと、終盤に向かうにつれてパフォーマンス時間が長くなる感じです。 ゲスト歌手扱いの安室奈美恵桑田佳祐も入れてみました。 歌唱時間だけ見ると、後半の中で突出しているということはありません(安室奈美恵の前にガクンと短くなっているのは氷川きよし)。

紅組と白組

 紅組と白組に分けた場合の平均パフォーマンス時間の比較です。

過去2020年の各組の平均パフォーマンス時間
 前回(第67回)は紅組と白組の時間差はほとんどなかったのですが、今回はまた白組が紅組に比べて10秒以上長いという結果が出ました。 それでも、白組もぎりぎり3分といったところで前年から若干短くなり、紅組が15秒くらい短くなったため、全体としてのパフォーマンス時間が短くなっています。
 ここに安室奈美恵桑田佳祐の歌唱時間を加えると、差はさらに広がります。

演歌

 前回は扱いがひどいと感じた演歌でしたが、今回はどうだったでしょうか。 あくまで歌唱時間から見てみます。

前半/後半歌手名タイトル歌唱時間備考
前半 山内惠介 愛が信じられないなら~貴公子たちの舞踏会~ 2:03 1ハーフ
三山ひろし 男の流儀~けん玉世界記録への道~ 2:21 1ハーフ
丘みどり 佐渡の夕笛 2:07 1ハーフ
市川由紀乃 人生一路 2:19 2コーラス
福田こうへい 王将 2:06 2コーラス
天童よしみ 道頓堀人情 2:35 1ハーフ
水森かおり 早鞆ノ瀬戸 2:33 1ハーフ
島津亜矢 The Rose 2:26 2コーラス
後半 坂本冬美 男の火祭り 2:42 1ハーフ
五木ひろし 夜空 2:49 2コーラス
氷川きよし きよしのズンドコ節 2:32 2コーラス
石川さゆり 津軽海峡・冬景色 3:22 2ハーフ(歌詞フル)

島津亜矢が歌ったのは洋楽ですが、一応演歌歌手ということで)
 3分を超えたのは、歌合戦でおなじみの「津軽海峡・冬景色」1曲のみ。 一方、2分未満の曲はなくなりました。 でも、この年発表されて歌合戦で披露された4曲はいずれも1ハーフ。 初出場の丘みどりなんて、イントロの冒頭カット、間奏とアウトロはほぼなしというぶった切り。 「歌は2コーラス」という歌合戦の原則が懐かしい。 その後も1コーラスは無理でも2分くらいは確保する時代があったのですが、あれは20世紀か…
 逆に新曲以外を見ると、3分を超えた紅組トリの石川さゆり以外に、市川由紀乃福田こうへい島津亜矢五木ひろし氷川きよしが2コーラスと、2コーラス歌えた歌手は増えています。 いずれも昭和40年代、昭和30年代という2コーラス歌っても短かった時代の曲だったり、その頃の曲をベースとしているので、2コーラス歌っても歌唱時間は長くありません。 2コーラス歌えた曲としては、島津亜矢の「The Rose」が一番新しいです(1979年発売の曲のカバー)。 でも、洋楽は基本的にフルコーラスで3分台の曲が多いので、やっぱり2コーラスだと短いです。
 歌唱時間という観点では、前回と比べると演歌の新曲に対する扱いにやや改善が見られましたが、相変わらず厳しい歌合戦でした。

思うところ

 このページで抜けている重要な情報として、普段の歌番組で歌うテレビバージョンとどれくらいの差があるのか(もしくはないのか)、ということがあります。 私はNHKの「うたコン」くらいしか見ておらず(時々「ごごウタ」も見ます)、さらにその番組での歌唱時間を測ったりもしていません。 基本的に「うたコン」をはじめとする演歌・歌謡曲系の歌番組では、フルコーラスが3コーラスなら2コーラス、2ハーフなら2コーラスか1ハーフというケースが多いため、「うたコン」では2コーラスだった曲が歌合戦では1ハーフになっているとわかりますし、イントロやアウトロが短いな、ということも何となくわかります。
 ポップス系の曲だと、通常の歌番組で披露するテレビバージョンがすでに1コーラスだけだったり、1ハーフで3分超えていなくて(平井堅の「ノンフィクション」はこのパターンみたいで意外でした)、NHK的には「いや、普通のテレビバージョン歌ってもらってるよ」で歌手側も「いつも通りのテレビバージョンの方が歌いやすいし」というだけなのかもしれません。

 また、昔の歌合戦であれば、イントロが始まる段階では歌手はまだステージの端の方にいて、歌い初めまでに歩いて(イントロが短い曲の場合は走って)定位置に向うことも結構ありました。 一方で、最近の歌合戦はちゃんと歌手が定位置についてからイントロが流れることがほとんどのように思います。 例えば、丘みどりはイントロが短くなっていました(笛の音が鳴って、手で顔を隠すポーズからイントロスタート)。 他の歌番組の映像を見ると、それより早くイントロが始まり、丘みどりはステージ中央まで歩いて行ったところでちょうどポーズをとるようなタイミングで歌っているようなものもあり、同じようにすれば歌唱時間というかイントロの時間は少し長くなっていました。 でもセットと彼女の気合の入った衣装から、司会者やおばあ様と話をしてからイントロと共にステージ中央に歩き始めるのは、タイミング的にギリギリだったので、安全策としてイントロを短くする代わりに、ちゃんとスタンバイしてからイントロ開始としたのかな、なんて勝手に推測しています。

 それでも、前半の出場歌手のパフォーマンス時間は、前半に登場する歌手の数を減らすことで、もう少し長くできないかなとも思います。

前年も出場した歌手の前年との比較

 最後に、惰性となりますが前回(第67回)からの連続出場となった歌手(32組)について、パフォーマンス時間と登場した時間帯(前半/後半)の変化を合わせて示します。 当然ながら曲によって、テレビバージョンのパフォーマンス時間は変わりますので、多少の時間の差は誤差の範囲と考えてください。 登場時間帯の変化が「-」となっている場合は、前回と今回で前半・後半という登場時間帯に移動がなかったことを表しています。 前半や後半の時間帯の中での移動までは調べていません。

前半/後半歌手名タイトルパフォーマンス
時間
前回との差登場時間帯の変化
前半 山内惠介 流転の波止場~究極の貴公子編~ 2:03 +0:05
E-girls Love☆Queen 2:09 +0:04
三山ひろし 男の流儀~けん玉世界記録への道~ 2:21 -0:01
AI×渡辺直美 キラキラ 2:22 -0:08 後半→前半
Sexy Zone ぎゅっと 2:27 +0:10
市川由紀乃 人生一路 2:19 +0:23
福田こうへい 王将 2:06 -0:09
三代目 J Soul Brothers HAPPY~紅白スペシャルバージョン~ 2:42 +0:14
天童よしみ 道頓堀人情 2:35 +0:21
SEKAI NO OWARI RAIN 2:23 -0:14
水森かおり 早鞆ノ瀬戸 2:33 +0:13
島津亜矢 The Rose 2:26 -0:25 後半→前半
郷ひろみ 2億4千万の瞳~GO! GO! バブルリミックス~ 2:50 +0:23
後半 欅坂46 不協和音 2:37 +0:25 前半→後半
関ジャニ∞ なぐりがきBEAT 2:40 +0:15 前半→後半
福山雅治 トモエ学園 4:31 -0:07
坂本冬美 男の火祭り 2:42 -0:41
西野カナ パッ 2:22 +0:12
TOKIO AMBITIOUS JAPAN! 2:39 -0:05
五木ひろし 夜空 2:49 +0:16
乃木坂46 インフルエンサー 2:29 -0:03
松田聖子 新しい明日 3:34 -0:48
椎名林檎トータス松本
目抜き通り 3:15 -2:13 前半→後半
Perfume TOKYO GIRL 2:48 +0:08
X JAPAN ENDLESS RAIN 2017 紅白スペシャル 4:29 +0:25
AKB48 視聴者が選んだ夢の紅白SPメドレー 4:04 -0:23
星野源 Family Song 4:59 +1:15
嵐×紅白スペシャルメドレー 5:25 -0:17
髙橋真梨子 for you... 4:15 +0:24
氷川きよし きよしのズンドコ節 2:32 -0:36
石川さゆり 津軽海峡・冬景色 3:22 -0:26
ゆず 栄光の架橋 3:56 +1:22 前半→後半

AI×渡辺直美および椎名林檎トータス松本は、片方が連続出場ということで、入れてあります)
 前半から後半へ移った歌手は、だいたい目に見えてパフォーマンス時間が長くなっていますが、後半から前半に移った歌手はそうでもないかな、という感じ。
 目立つのが星野源の大躍進。 3回目の出場で、初出場の時の2分ちょっとから約5分と2分近く長くなっています。
 前年との単純な比較だと大幅に短くなっている椎名林檎は、第67回のパフォーマンスがいかに特別だったかということですね。 「目抜き通り」はこれでフルコーラスなので、別の曲をくっつけるとか、歌合戦独自のアレンジするなどしないと、これ以上伸ばせません。