安達太良山( 鉄 山:1,709m ) 2004.10.02 登山


  船明神山からの下りより安達太良山本山 ( 2004.10.02 )

【安達太良山再登山記録】

【安達太良山再登山データ】

フォト

初回登山


安達太良山再登山記録

13年半ぶりの 安達太良山 になる。
2002年の霧ヶ峰を最後に、 2年近く山に登らなかった私であるが (理由は自分でもきちんと分析できていないが、 いずれ山の雑記帳にでも書いてみたい) 今年になって 5月に 十二ヶ岳 7月に 金峰山 と登って徐々に助走をつけ、 10月からはこの 安達太良山 を皮切りに連続して山に登り始めている。
完全復活かどうかはまだハッキリ言える段階にないが、 少なくとも山に登ろうという意欲がまた復活してきたことは確かで、 月 1、2回の登山ペースはキープしていきたい。


今回の山行も、会社の窓から見る空があまりにも青かったことから、山に行きたい、行くべきだという強い思いが湧いてきて実行したものである。 長いブランクで溜まった山への渇望感が、 秋の青い空に刺激を受けたというところであろうか。
選んだ山は安達太良山。 13年前登った時には、沼ノ平の入口でどう進めば分からずかなりの時間をロスし、 尾根にたどり着いた頃には雨が降り始めるという 散々な登山であったので、 いつか再登山したいと思っていた山である。 それでも再登山までに 10年を超えるブランクがあったのは、 他の百名山に登るのに忙しかったことと、 登山スタイルがマイカー中心になったために 車では些か遠すぎるイメージがあったことによる。
今回は、 登りたいという意欲がこの車では遠いというイメージを打ち破ったようで、 早朝4時15分、星空の下、 東北へと出発したのであった。

東名高速道−首都高速−東北自動車道とスムーズに進み、二本松ICで高速を降りてからは岳温泉の標識を頼りに道を進んだ。 快晴の空の下、途中、左手に安達太良山が見え、 頂上の突起も確認できると、 登高意欲がグッと増してきたのであった。

岳温泉からは、前回の安達太良山登山時に延々と下ってきた車道を逆に辿って奥岳温泉へと向かった。10年以上も昔のこととは言え、 この辺に広い草地があったはず といった当時の記憶が蘇ってくる。 そしてまたその通りの光景が実際に現れたものだから、 自分の記憶力に感心しながらのドライブであった。

奥岳温泉手前の広い駐車スペースに車を止めたのが 7時25分、身支度を調えて 7時半に出発した。空は雲一つない快晴。 やや風が強いが寒いというほどではない。
あだたら高原富士急ホテルの前を過ぎ、 林道のような道 (昔は馬車道と言われたらしい) を進む。

暫く進むと、左に五葉松平への分岐が現れたが、前回五葉松平を下ってきたこともあって、今回は勢至平へと続く道をそのまま進むことにした。
しかし、その後も林道歩きが続くので、 まさか山腹にあるくろがね小屋までこのままずっと林道歩きとなるのかもしれない、 失敗したかなと思っていると、 途中からこの林道をショートカットする道 (登山道) が現れ、 ようやく登山らしくなってきたので一安心であった。

このショートカットの登りは結構急で、久々の登山である私にとってはキツく感じられたのであったが、この登りの先に雲一つない青空と 安達太良山が待っていると思うと、 不思議と元気も湧いてきて、 一汗かいた後には足の運びも快調となったのであった。
何回か林道を横切った後は、 またまた林道歩きに戻ってしまったのだが、 その林道を暫く歩くと広々とした草原が目の前に現れて展望が一気に広がった。 まずは正面に箕輪山、 そしてやがて鉄山がその大きな姿を現し、 歩を進めるにつれて展望はさらに広がって、 馬ノ背と呼ばれる鉄山からの稜線、 形の良い岩峰である矢筈ガ森、 そして牛ノ背と呼ばれる稜線を経て安達太良山本山の特徴である乳首のような山頂も見え、 青い空のもと心浮き立つ思いであった。

林道はこのままくろがね小屋の方に続いていたのであるが、途中で峰の辻コースへの分岐が現れたので林道をはずれ、峰の辻へと向かうことにした。
この道はややえぐれた溝のようなところを登っていくようになっていて、 足下には岩があったり、 ぬかるんだところがあったりして歩きにくい。 しかし、登りは緩やかで、 周囲は灌木帯のため視界が良く利き、 高度を上げるにつれて広がる景色が素晴らしいため、 大変楽しい道である。
目の前には矢筈ガ森と言われる黒々とした岩峰が見え、 右手にはどっしりとした鉄山、 左手には乳首のような安達太良山本山、 そして振り返れば町並みを隠す雲海が見え、 素晴らしいことこの上ない。 やはり、登山は晴天時に限る訳で、 このような素晴らしい景色を見ることなく終わった前回の登山だけで 安達太良山はお終いとせず、 本当に良かったとつくづく思ったのであった。

道はやがて左手の高みへと向かい、岩に付けられた印に導かれて着いたところが峰の辻であった。
登る途中で、 鉄山の下のところが周囲の緑の中で白くなっているのが見えたが、 あれは硫黄の吹き出たものであろうか。
峰の辻は広い台地状になっており、 そこに腰掛けるのに適した岩が間隔を置いて転がっているという 少々不思議な光景となっている。 ここから道は安達太良山本山に直接向かう (一旦下って安達太良山本山へ直登) 道と、 右手から回って馬ノ背に向かう道に分かれるのだが、 直登するコースは少々登りがキツく見えたため、 馬ノ背へ向かうコースをとった。

道は斜面を巻くようにして進み、やがて右上に登っていくのが正解だったのだが、私は左手に踏み跡があるのを見つけたので、 そのまま左手の斜面を登っていったところ、 途中から踏み跡も見えなくなり、 どうやら道をはずれてしまったようであった。
ただ上部には牛ノ背あるいは馬ノ背と思われる稜線と、 いくつかのケルンが見えるので、 戻るのも億劫と思い、 滑りやすいザレたところをソロリソロリと進んで、 どうにか稜線に登り着くことができたのだった。 この稜線からは沼ノ平を見ることができなかったので、 既に牛ノ背に入っていたらしい。

こうなれば、後は道を左に進んで安達太良山本山を目指すだけである。稜線の先には三角錐の形をした高みと、その頂点に立つ標識のようなものが見える。 はやる心を抑えつつ足を進め、 十数人の団体を追い越して、 最後の急な登りを登り切るとやがて乳首のような突起の真下に出たのであった。 そこには記憶通り安達太良山頂と書かれた太い標柱が立っており、 そこから乳首の高みを左から回り込んで登ると (右から回れば鎖場を通って頂上) 岩の間を抜けたところが 13年ぶりの安達太良山本山頂上であった。 頂上は 「八紘一宇」 の碑と祠があるだけという いたってシンプルで、 何となく 13年前の記憶とは違う。 以前はもっと賑々しかったような気がするが、 私の記憶違いであろうか (以前の写真は押し入れ奥にしまい込み、確認が面倒でやっていない)

安達太良山本山頂上は、さすがにひときわ高い場所であるため展望は抜群で、鉄山へと続く尾根道や白い雪を被ったような沼ノ平の一部を見ることができたのだが、 如何せん風が強く、 少し気を抜いたら吹き飛ばされそうな状態であり、 景色を楽しんでいる暇などないのであった。 おまけにすぐに団体の登山者が頂上に押し寄せて来たものだから、 狭い頂上でゆっくりする暇はなく、 すぐに降りることにしたのであった。 お陰で、磐梯山 の姿が見えたはずと後から思ったがもう遅かった次第である。

牛ノ背の稜線を戻り、稜線上にある小山のそばまで来ると、沼ノ平の全貌を見ることができるようになった。二度目ではあるが、その荒涼とした姿に改めてビックリである。
周囲を火山壁に囲まれ、 またその底の部分が広く平らな場所となっており、 巨大なコロシアムのようになっていることだけでも驚きであるのに加え、 周囲も含めて草木1本生えることなく 黒と茶色と白だけで形成されているその自然の造形物の姿は、 自分の常識の範疇をはるかに超えていて 大変なインパクトを与えてくれるのであった。
また、 草木1本生えていないその姿に死の世界を感じさせるものがある一方で、 嫌に明るい感じがするのが大変面白い。 特に、白い部分は火山灰が堆積したものなのか、 ちょっと見には雪のようで美しくもある。 是非とも写真で見て確かめて欲しい。 いや写真ではその迫力は捉えるきれるものではなく、 やはり自分の目で確かめて欲しいものである。

この光景を是非とも写真に撮ろうと登山道からはずれて沼ノ平の上部に近づいたのだが、砂混じりの風が沼ノ平から吹き上がってきて顔をたたきつけ、あまりの痛さ、 風の強さにたじろがされ、 這々の体で登山道までバックしたのであった。 ただ、登山道に戻っても風は冷たく強く、 体温をドンドン奪っていく感じがしたので、 ここはひとまず休憩と、 矢筈ガ森近くの岩場に登って風が避けられる場所を探し 少々早い昼食をとることにした。

暫しの休憩の後、 再び縦走路に戻り今度は馬ノ背と呼ばれる部分を歩く。 向かうは正面に黒い頂を見せる鉄山である。
風に帽子を飛ばされないようにしながら馬ノ背を進み、 やがて鉄山直下の岩場を登り出すと、 岩場が壁になるのであろうか、 今まで強く吹き付けていた風が嘘のように消えてしまった。 こういう経験は八ヶ岳連峰の 権現岳 に登った時にも経験したが、 本当に面白いものである。

急な岩場を登り切るとやがて岩場を縫うようにして進むこととなり、最後に登り着いた高みから縦走路をはずれてやや戻ったところが鉄山頂上であった。
鉄山頂上は標柱もなく、 ただケルンが積まれているだけの寂しい場所であったが、 少し先に進めば展望は抜群で、 眼下にまるで雪が積もったような沼ノ平の荒涼とした姿、 そしてその上方部には言われてみれば成る程 船の形にも見えなくはない船明神山、 そしてその左側、尾根道の先には 安達太良山本山の特徴ある突起を見ることができたのであった。

鉄山からは、頑張って箕輪山に向かうか、このまま下山するか迷ったのであるが、確か船明神山には祠があると何かに書かれていたことを思い出し、その祠を見てから下山しようと決め、 来た道を戻ったのであった。
馬ノ背を快調に進み、 牛ノ背へと尾根の名前が変わるところで道を右に折れた。 これが船明神山へと向かう道で、 一旦下って登り返すことになり、 道筋は丁度 沼ノ平という大きなコロシアムの周囲を回る感じである。 この辺を歩くと、今まで風が強過ぎて分からなかった硫黄の臭いが嗅げるようになり、 沼ノ平は有毒ガス噴出のために通行禁止となっていることを思い出したのであった。

砂礫の道をゆっくり登り、登り切った高みで左への道を分け、そのまま岩と灌木の中を進んでいくと、岩場を登り切ったところに小さな祠が置かれているのを見つけることができた。 これが船明神の祠らしいが、 真新しいその姿に些かがっかりさせられた。 風化され歴史を感じさせる祠を予想していたからである。

さて、祠を見てしまえば後は下山するしかなく、馬ノ背まで戻ることとする。戻る途中、目の前には安達太良山本山から牛ノ背、そして馬ノ背、 そして鉄山へと続く尾根道を一望することができた。 面白いのは、 牛ノ背から安達太良山本峰の間にはまだまばらながらも緑が見られるのに対し、 馬ノ背から鉄山にかけてはほとんど草木が見られないことである。 これは、最新の噴火の中心が 沼ノ平周辺だったことを物語っているということだろうか。

馬ノ背からは今朝本来辿るべきであった道を一気に下った。峰の辻からはくろがね小屋を目指して左へと下る。 このコースからはかなりの人が登ってきていた。 峰の辻コースの方が楽しいのにもったいない。
岩の間をすり抜けるようにして下り着いたところがくろがね小屋で、 そこからは今朝歩いてきた林道の延長となる道を歩くこととなった。 途中、金明水で喉を潤し、 ほぼ平らな林道を快調に飛ばしていくと、 やがて峰の辻コースへの分岐で、 そこからはそのまま今朝登ってきた道を下山したのであった。

あだたら高原富士急ホテルの前に着いてみると、ゴンドラを使って薬師岳まで行くのであろう、秋の山を楽しむ人で一杯であった。
私も秋の一日を大いに楽しむことができ、 大変満足した登山であった。 また、登りも厳しいところはそれほどなく、 久々の登山にはもってこいのコースであった。 満足、満足。


安達太良山再登山データ

上記登山のデータ登山日:2004.10.02 天候:快晴単独行日帰り
登山路:奥岳温泉−五葉松平分岐−勢至平−峰の辻分岐−峰の辻−牛ノ背−安達太良山本山−牛ノ背−馬ノ背−鉄山−馬ノ背−船明神山−馬ノ背−峰の辻−くろがね小屋−峰の辻分岐−五葉松平分岐−奥岳温泉
交通往路:瀬谷−横浜IC−(東名高速道路)−(首都高速)−(東北自動車道路)−二本松IC−岳温泉−奥岳温泉 (車にて)
交通復路:奥岳温泉−岳温泉−(東北自動車道路)−(首都高速)−(東名自動車道路)−横浜IC−瀬谷 (車にて)


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