NO.009 大 崩 山( 大崩山:1,643m ) 1993.8.29登山


 袖ダキ展望台から乳房岩方面( 1995.3.5 )
【大崩山について】

【大崩山登山データ】

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大崩山について

大崩山と書いて 「オオクエヤマ」 と読む。
私はこの山の存在を宮崎県に単身赴任するまで知らなかったのであるが、深田クラブが選定した日本二百名山の一つにも数えられており、 九州の多くの山とは趣を異にする、花崗岩の岩峰群が美しい大変魅力的な山である。
登山口は、延岡側上祝子 (カミホウリ) から登るコースの他、 反対側の宇土内谷 (鹿納山の項参照) から登るコース、鉱山で有名な見立から登るコース、 大分県の宇目町から登るコースの 3つがあるが、ここではやはり岩峰群の美しさを堪能できる上祝子から登るコースを紹介したい。

上祝子までは、宮崎市から国道10号線を北上し、延岡で左折して岩戸・延岡線に入り、 そのまま祝子川沿いの道をどこまでも進めば良いのだが、国道10号線から岩戸・延岡線への入り方がやや分かりにくい。
覚えやすいのは、10号線の祝子大橋を渡ってすぐの信号で左折し、狭い道を進んで日豊線のガードをくぐると丁字路 (信号あり) にぶつかるので、 そこを左折して、再び祝子川にかかる祝子橋を渡った所の信号を右折すれば後は一本道である。
なかなか景色の良いドライブコースを進み、やがて祝子川小・中学校が右に見え、左にキャンプ場入口を見送ると、道は右に大きくカーブし、 左手に大崩山の岩峰群が見えてくる。
道はそのまま林道へと入っていくことになり、山の中を大きくカーブを切りながら進むと、やがて道の右側に立派な大崩山登山口の看板が見えてくるので、 道路際の駐車スペースに車を止めればよいであろう。

登山口からは良く踏まれた登山道が続く。最初を除いて、道はさほど傾斜も急ではない。
木で作られたいくつかの橋を渡ると、やがて立派な建物の大崩山荘が見えてくる。大崩山荘前で左に小積ダキへの登山コースが延びているが、 これをやり過ごし、さらに進むと今度は左の河原に下りる湧 (和久) 塚コースと、まっすぐ三里河原へと続くコースに分かれる。
ここは絶対に大崩山の良さを満喫するべく、左の湧塚コースをとって河原に下りる方をお薦めする。
河原に下りると、手前の山の向こうに小積ダキの岩峰が見え、九州の多くの山々とは少し違うという雰囲気を感じることになるだろう。
また、ここでダキという言葉が出てくるが、このダキという語は、この地方の言葉で崖のことを表している。

河原からは、大きな岩を飛び越えながら進み、最後に川にかかった一本の丸太を渡って山に取り付くことになる。
最初のうちはさほど傾斜もなく、所々流水を渡りながらドンドン進むことができるが、やがて谷を詰めていくと、ロープなどを使って斜面をよじ登りながら進むことになり、 傾斜も次第にキツくなってくる。道は展望のきかない、暗い樹林の中を大岩の間を通って進む。
やがて、縦走路から袖ダキ展望台への道が分かれている場所に着くが、ここは遠回りでも左上に進んで袖ダキ展望台へ行かねば、 この山に登った価値はないと言っても過言ではない。
袖ダキ展望台は大きな岩々が谷に突き出た、その名の通り好展望の場所で、足下はスッパリ切れて深い小積谷へと落ち込んでおり、 谷を挟んだ向かい側には大きな小積ダキの一枚岩がデン構えているのが見える。
上を見やれば冒頭の写真の通り、この袖ダキから続く花崗岩の岩峰群が松の緑とマッチして、自然の創り出す美しさを見せてくれている。

縦走路に戻って暫く進むとジュラルミンの梯子があり、そこからは急な斜面を木の根につかまったり、 梯子やロープを使いながらの登りとなり、やがて大きな岩の下に出る。そこから右に進んで岩をよじ登ると岩の上に立つことができる。
ここからは、下方に乳房岩と呼ばれる岩が見える。そして、その手前にある平らで大きな岩の上で昼寝などすれば大変気持ちがよかろうと思われる、 好展望の気分の大変良い場所である。
もっとも、ヘタに寝返りなどうてば、そのまま小積谷へと真っさかさまであるが・・・。

私はここが下湧塚と思っていたが、実は乳房岩が下方にあるので、 ここは下湧塚ではないのではないかとの疑問が、この文を書き直しながらわき始めてきた。
色々なガイドブックをひっくり返したが、皆それぞれ書いてあることが違っており、さらに湧塚に関しては詳細な記述を避けているので、 ハッキリしない部分が多い。従って、私が勝手に思い違いをしているのかもしれない。

下湧塚からは、しばらく岩の上を進み、途中から樹林帯の中に入り、やがて中湧塚に出る。
ここも展望が良く、U字型となった岩の向こうには上湧塚の岩峰が見える。
上湧塚へは登山道からはずれて、岩峰をロープで登らねばならないが、やはり最上段にあるだけあって、 これまでの景色の総括といった感じがして大変素晴らしい展望である。
上湧塚からは、スズタケの中の展望があまりきかない登りが続く。
途中、左に小積ダキ・坊主尾根への道を分け、また次にモチダ谷への道を右に分けて進むと、やがて樹林を抜け展望の良い大きな岩がゴロゴロした 石塚という場所に出る。
石塚から大崩山頂上までは 5分程の距離で、灌木帯を抜けていくと、ほぼ平らな縦走路の脇に、頂上標識が見えてくる。
但し、周囲は樹林に囲まれて展望は全くきかない。

下山は、先ほどの小積ダキへの分岐点から下山すれば良い。
途中、針金をつたって足下の切れ落ちた大岩を巻くところもあるが、慎重に進めば問題はない。
また、途中縦走路からはずれて小積ダキの上に行くことができ、そこから谷を挟んで眺める湧塚の岩峰群はなかなか見事である。
しかし、このコースは最後河原に降り立ってから、向こう岸への取り付き口が分かりにくいかもしれない。私が行ったときは、 台風のためか河原が荒れていて、向こう岸への取り付き点が分からずに暫く迷ってしまったが、今は整備されていると思われるし、 またそうでなくとも大崩山荘はすぐ近くであるので心配はいらない。

また、体力に自信があって、もう少しスリルを楽しみたいという方には、遠回りになるが、 モチダ谷への分岐を下るコースをお薦めする。
このコースには、途中昭和 35年に起きた大和航空機の墜落事故現場があり、慰霊碑とともに、周囲には飛行機の残骸が未だに散らばっているのが見られる。
そして、このコースのハイライト部分は沢づたいの下山路で、スズタケに小指の先ほどの小さな赤いテープが巻き付けられているのを見つけながら進んでいくことになるが、 そのテープの間隔が時として長く、また時々沢からはずれて悪路を歩かねばならず、一人でこの道を通る時は大変心細さを伴う。
やがて、沢がカナヤマ谷からの祝子川本流と合流する地点の手前で、沢を離れて右岸に取り付き、スズタケの中を進んで小さな尾根を越え、 祝子川の右岸に下りることになるが、ここでも次にどう進んでいいか途方にくれてしまうかもしれない。
正解は、右岸を乗り越えて祝子川に出たら、そのまま右方向に祝子川に沿って進んでいけば良いのだが、標識やテープが全くといっていい程なく、 本当にこれでいいのやら不安になりながら進むことになる。
しかし、暫く進んでふと気が付くと、少し先で多くの人々が河原で憩っているのが見え、途端に緊張の糸が切れることになる。 ここが三里河原であり、清き流れに心休まるところである。
緊張の糸が切れるためか、河原の向こう岸に見える大崩山荘への取り付き点 (立派な標識がある) を見失わないようにしなければならない。 そのまま河原を進むと深い渕にでて行き止まりである。
大崩山荘への道に入れば、後は長いが良く踏まれた道となり、やがて今朝ほどの三里河原と湧塚コースとの分岐となり大崩山荘の前に出るので、 後は登山口まで一直線である。

このコースは、先にも述べたように体力を要するし、一人では不安になる時があるが、 こういうことがお好きな方は是非お試しあれ。
但し、時間がかかるので日の長い夏場が良く、また冬は雪に埋もれてしまっているかもしれないので要注意である。
時間は、小積ダキコース経由で 6時間強、モチダ谷コース経由で 7、8時間は必要であり、いずれにしてもハードな山である。
しかしそれだけに登りがいのある山といえよう。


大 崩 山 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ 登山日:1993.8.29 天候:晴れ 単独行 日帰り
登山路:大崩山登山口−大崩山荘−三里河原分岐−袖ダキ −下和久塚−中和久塚−上和久塚−もちだ谷分岐−石塚−大崩山−石塚−小積ダキ−坊主岩−下小積谷 −大崩山荘−大崩山登山口
交通往路:宮崎−日向−延岡−上祝子−大崩山登山口(車にて)
交通復路:大崩山登山口−上祝子−延岡−日向−宮崎(車にて)
その他の大崩山登山 (1) 大崩山登山口−大崩山荘−三里河原分岐 −袖ダキ−下和久塚−中和久塚−上和久塚−もちだ谷分岐−石塚−大崩山−石塚−もちだ谷分岐− 大和航空遭難碑−カナヤマ谷出合−三里河原−三里河原分岐−大崩山荘−大崩山登山口(1994.7.10:晴れ)
(2) 大崩山登山口−大崩山荘−三里河原分岐−袖ダキ− 下和久塚−三里河原分岐−大崩山荘−大崩山登山口(1995.3.5:晴れ)
雪のため下和久塚まで。

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