山岳移動用無線機に軽いハンドマイクを

軽量のハンドマイク作製


愛着深いミズホのPICO6はその筐体に小さな押しボタンがついている。PTTだ。144/430MHzのハンディ機と同様な感じで筐体を握ってオペレートする事が可能なのだがそれをするにはPICOはやや大きすぎる。そこで外部マイクが必要となるのだが、ミズホの純正マイクは重量が結構ある。正確に言えばマイク単体はさほどではないのだが付属するカールコードが重いのだ。カールコードのゴムの重量は結構無視出来ない。同様にFT690mkIIも付属のマイクは結構重量がある。シャックやモービル運用で使うならそんな事は気にならないが、ザックにしのばせて山行の伴侶とさせるには装備は1グラムでも軽い方がいいに違いない。しばらくはマイク背面の取り付け用金具などをはずしてみたが所詮気休め程度の重量の改善に過ぎなかった。

PICOの取説にはDC-DCコンバータの作り方同様にハンドマイクの作り方も載っている。自作を奨励する、まさにアマチュアスピリッツの鑑だ。私も頑張らなければ。エレクトレット・コンデンサ・マイク(ECM)を使った簡単そうなマイクだ。

(完成した軽量ハンドマイク)

ECMは動作させるのに1.5から6v程度の電源を必要とする。PICOのマイク端子にはもちろん充分な電源が来ているから後はマイク端子とECMの接続だけだ。ECMは極性があるので注意が必要。パターンがECM本体につながっている方がグランド(-)、パターンの孤立している方がプラス(+)だ、との事である。

製作自身はわけなく出来る。一番ややこしいのはリグとの接続部、3.5mmステレオ端子の配線か。信号線とPTTとグランド。ミズホの取説を見ながら注意深く作る。

ケースにはタカチのSW-40を使用。30x20x40mmという小さなプラスティックのケースだ。小さすぎて握りづらいかもしれないが小ささ=軽さである・・。PTT用の押しボタンは押した感覚のすぐれたもの、自分のフィーリングにあったものを選びたい。パーツ屋の棚から気に入ったものを選ぶ。私は外付けのリニアアンプやプリアンプを将来的に強制スタンバイ動作させる事が出来るように2回路の押しボタンを選んだ。2回路ものの選択肢は少なかった。

マイクのコードはシールド線を使うべきだが強制スタンバイ制御用の線も必要だったのでとりあえず手持ちの細いリード線を5本(3本はピコ用、2本はスタンバイ用)束ねてよじってマイク線とした。

手持ちの本によればECMはそのインピーダンスの高さにより自分の周りで発射する電波も拾ってしまい”回り込み”を起こす事があるという。非常に高感度なのだ。その対策として回り込み防止用のコンデンサ(0.01から0.001μF)をECMと並列に入れればよいとの事。高周波成分をコンデンサを通してグランドに逃がしてやろう、という訳だ。さっそくハンダ付けしてみた。

(マイクの内部。ECM、押しボタンと
コンデンサ。部品点数は3点)

小一時間もあればすべて完成。ECMモジュールをプラスチックのケースに入れエポキシ接着剤で固めてしまう。乾けば試験運転。音が出ない場合はまず端子部の配線ミスだろう。私の場合はすんなり動作した。

肝心のSSBの変調音は”良い音”とのレポート、ホッとする。メリハリのある音とのことだ。回り込みもおきていないようだった。重さは数十グラムといったところで純正マイクとは大違いだ。このマイクなら全然苦にならない。目的の軽量化が達成出来たのが嬉しい。少し残念なのはケースが小さすぎて握りにくい、というところ。もう一回り大きなケースのほうがFBだったかもしれない。

これに気をよくしてFT690mkII用、HT750用も作ってみた。いずれも接続方法が違うだけなのでそこに気を付けさえすれば良かった。信号ピン配置は各無線機の取説を参照にする。特にセット重量の重いFT690mkIIはこのマイクに変えるだけでかなりの軽量化が図れた気がした。

総費用500円以下の安くて、かつ軽いマイク。改めて自作というほどのものではないにしろ自分が手をかけたものが実用になるのはやはり嬉しい。これらが完成してからは純正マイク達には第一線からは引退していただく事となった。ご苦労様でした・・。

(参考資料 : ミズホPICO6の取扱説明書、”FCZの寺子屋シリーズ、自作電子回路テキスト、CQ出版社”)

(終り)


Copyright : 7M3LKF, 1997/11/1