50MHz(6m)・山岳移動運用ヘンテナ作ってみました


これまで50MHz用山岳移動運用のアンテナはダイポールを使っていました。これは設営と撤収が楽だという理由なのですが、山と無線の仲間達と移動運用すると各局それなりに設営撤収の簡素化のために工夫したヘンテナをさりげなく使っていらっしゃいます。ヘンテナのゲインは4dbとも言われますが、これは言い過ぎにしても、少なくともダイポールよりは良いはずです。最近は山岳移動に歩く山も必ずしも関東平野近くの山ばかりではなく、かつリグも5w以下のQRP機。となると各局にならい、やはりダイポールよりはゲインのあるヘンテナのほうが良いかもしれません。

実はこれまでヘンテナは作ったことがあるのですが、設営・撤収時にワイヤーが絡まったり(これは細いステンレスワイヤーを使ったため)、思ったよりSWRが下がらなかったり、と余り良い印象を得ていませんでした。しかしフレンド各局の使われているヘンテナを見ているうちに自分ももう一度作ってみるか、と思い当たりました。

とにかく設営撤収に手間がかからないことを考えて、ずぼらな自分でも簡単に仕舞えるヘンテナにしたい。(ずぼらでなくとも、秋冬など寒い山頂でかじかむ手で撤収するのは辛いものです) 山岳での短時間運用だけですのでしっかりとしたつくりである必要は必ずしもありません。ゆえ、以下を狙いとしました。

製作

部材さえ調達できれば製作は基本的にはアルミパイプの切断を中心とした作業です。


1・上下エレメント

上下とも1mあるエレメントは、中心に5mm径のアルミパイプ40cmを、そしてその左右に4mm径のアルミパイプを差し込みます。中心エレメントとあわせ全長1mにするわけですので左右の4mm径パイプは実行長部分が30cmになります。差し込む際のストッパーとして4mmのアルミパイプの上に5mmアルミパイプを数センチにカットしたものを被せて、かしめて留めます。この差込部分は5cm程度としました。

アルミパイプの切断にはパイプカッターを用います。切断面は切削クズや多少の変形などが生じますのでリーマーで元通りに広げてやります。

35cm(実行長30cm)にカットした4本のアルミパイプの先端に、今度は直径3mm x 25mm長のネジを埋め込みます。当然ネジ頭はペンチで切断。ネジ長さ25mm。15m程度をパイプに入れて上からかしめます。電気的接続が求められる箇所なのでしっかりと複数個所をかしめました。(ネジは真鍮製とステンレス製がありました。錆を気にして自分はステンレス製を使いました。) このネジにステンレスワイヤーを接続して、上から蝶ナットで締める、という訳です。

上下エレメントの釣竿への固定ですが、上エレメントは目玉クリップ(小)を使う(クリップにエレメントをはさみ、目玉の穴に釣竿先端を通す。)のが容易でしょう。上エレメントには自分はたまたまホームセンターで見かけたボールチェーンのカップリング用の金具を使いました。小さくてFBです。下エレメントは目玉クリップ(大)を使います。クリップを釣竿にはさみ目玉の穴にエレメントを通すだけです。

2・左右エレメント

左右のエレメントになるステンレスワイヤーですが、自分は過去の教訓から1.5mm径のステンレスワイヤーにしました。(以前作ったものは1mm径でしたが、これはくせがつきやすく設営・撤収時にからまったりと不愉快で、ヘンテナを余り使わなくなった理由の一つです) 3m長にカットしたワイヤー2本。先端にY字型圧着端子を使います。ここにO字型圧着端子を使ってしまうと、設営・撤収の際にいちいち蝶ナットを一旦外してからはめ直さなくてはいけません。それが4箇所。時間にしては大したことはないでしょうが、やはりこういう箇所が増えてくると自分としては面倒くさくなります。Y字端子だと蝶ナットを緩めて入れる、外すだけですので簡単です。(更に簡単なのはステンレスワイヤーの先端に目玉クリップをつけて、エレメントのパイプに挟む方法でしょう。私の最初のヘンテナもこの方式でした。気分の問題でしょうが自分としてはワイヤーとパイプの電気的接続をしっかりさせるために、今回はネジと圧着端子による接続に拘りました。)

なおワイヤーの上下に圧着端子をつける前に、ワイヤーには圧着スリーブを通しておきます。給電部のミノムシクリップをつける箇所のマーキング用です。SWRが一番下がる箇所でスリーブを圧着することになります。

3・給電部

給電部分にはバランを使います。(「アンテナ製作マニュアル」CQ出版社刊 によるとヘンテナは平衡型アンテナなのでインピーダンス比1:1のバランが必須との事) 私は以前使っていたFCZのバラン(トロイダルコアに自分で巻いたものをプラボックスに入れたもの)がありましたのでそれを使いました。 簡単なのは同軸ケーブルを剥いて作るシュペルトップバランがあります。

左右の給電線は普通のビニール線です。先端にミノムシクリップを半田付けします。


4・組み立て・調整

ここまで作ってしまうともう完成したようなものです。組み立て調整は戸外で行います。エレメントを上下、それぞれ3本のパイプをつなげで目玉クリップを使い釣竿に装着。左右のワイヤーエレメントもY字型圧着端子のおかげで楽に装着できます。調整にはSWR計が必要です。自分はアンテナアナライザー・MFJ259を使いました。共振周波数の調整は給電部を上下することで行います。自分の場合は74cmでもっとも望ましい帯域で共振を得ることが出来ました。ここに印をつけ、あとであらかじめ通していた圧着スリーブをかしめて次回以降の目印とします。49.5MHzから51MHzにかけてSWR1.5以下が実現できました。思ったよりも広帯域のようです。最も使用頻度の高い50.210前後にSWR1.2と、SWR曲線の最低値に落とし込む事が出来ました。 SWR1.1以下には行きませんでしたが、まぁ満足のいく結果です。

5・運用

さてこのアンテナ、デビュー戦は2012年のNYP(ニューイヤーパーティ)となりました。横須賀市の低山で出力2.5W のQRP機での運用です。NYPとあってさすがにこんな場所でもCQを出すと応答があります。神奈川、東京、千葉の各局と遜色なく交信できました。福島県東白川郡の局が57で入感していたので試しに呼んでみましたが一発で59でとってもらいました。ヘンテナ、なかなかの性能のようです。これがいつもの釣竿ダイポールだったらどんなものか?同時比較できないのでなんとも言えませんが、悪くはないのでしょう、きっと。これからいろいろな場所で運用していくにつれ、差を感じることと思います。肝心の設営撤収に関する時間ですが、それぞれ3、4分程度です。やはりダイポールに比べると手間ですが、こんなもんでしょう。

しばらくはこのアンテナで山の上から電波を出してみたいと思っています。

2012年1月記

(加工したアンテナエレメント。左の2本は4mm
パイプに5mmパイプを被せてかしめたもの。左か
ら3本目は釣竿に通すためのボールビーズ用
金具をつけた上エレメント。隣は頭を落としたビス
をかしめたワイヤーとの接続部。)
(給電部。バランにはトロイダルコアを用いた。
(FCZのキットの手持ち品)ダイポールアンテナの
給電部としても流用できるようにY字端子の短い
給電線をつけ、一方でヘンテナ用給電線はターミ
ナルで接続して取り外し可に。)
(ステンレスワイヤーのエレメント。1.5mm径。
1mm径だと癖がつきやすく、からまったりと設営・
撤収に苛立ってしまう。重量差など微々たる物
なのでここは1.5mmに。Y字端子とスリーブを
圧着する。)

(戻る) (ホーム)