アメリカのハムになろう


1・アメリカのハムへのいざない

(手にしたFCC発行によるアメリカのアマチュア無線免許証。コールサインはKD7RFZ)

7M3LKFとしてアマチュア無線を1994年に開局してからというものその大半の運用を50MHzの国内運用を自宅からとそれに山岳移動で行ってきましたが、短波帯での交信実績に関しては殆ど運用実績は無いままにすごしてきています。短波帯はアンテナが大きくなるという格好な「言い訳」をつけて、それに特に7MHz帯の混雑とその雰囲気に今ひとつ慣れないせいもあり、せっかっくのHF帯無線機も泣いているという状態です。なんとなくコンディションがつかみにくい(単にワッチしていないだけ)、敷居が高そう、というイメージを未だに払拭できないのです・・・。それに21MHzや28MHzでコンディションが良いときはやはり目下の自分のメインバンドの50MHzでチャンスを探したいというものです・・。しかし短波帯で聞こえる信号はフェージングがかかりいかにも何千キロも彼方から飛んできた、ということをまざまざと実感させ、その音は子供のころハムに対して漠然と抱いた海外との交信への憧れ、それに中学生の頃盛んだったBCLをそこはかとなく思い出させます。そういえばその昔、親に無理を言って買ってもらった短波ラジオで一生懸命ダイヤルを回したものです。ラジオオーストラリアとかが聞 こえた時は嬉しかったけ・・。もう25年以上も前の昔話になってしまいましたが。

さてそんな訳で相変わらず短波帯との接点は希薄なままなのですが、ひょんなことからアメリカのコールサインを手に入れたいな、と思うようになりました。最初のきっかけはたまたま手にしたCQ誌の記事(2002年2月・3月号)です。なんとアメリカのアマチュア無線免許が日本で取得できるようです。それも比較的簡単にです。日本のアマチュア無線の免許取得は事前に願書を出し高い受験料を納付して、となにやら手続きが多く金もかかり大変なのですが、方やアメリカの免許は同記事によると割と気楽な感じで受験できるようなことが書いてあります。その時は「へぇー」と思った程度でした。

第二のきっかけは、その頃偶然に28MHzバンドでアメリカの局と交信できた事があげられます。たまたま聞いた28MHz帯でアメリカの局がガンガン入感していたのです。どうやらコンテストのようです。あわよくば、と呼んでみると、なんとピックアップしてもらえたではないですか・・!ベランダの軒下に張ったビニール線のダイポールアンテナでです! それでは、と他に何局か、それに21MHzにバンドを変えて何局か・・コンテストで向こうも弱い信号を拾おうと懸命な事もあるでしょうが、割と簡単に10局以上と交信できてしまったのです。アマチュア無線を開局して以来はじめての北米大陸との交信です・・。

そして三つ目のきっかけは、これまた偶然にですが、同じ区内に住むアマチュア無線ローカル仲間の7K3EUT・塩田氏も、漠然とアメリカのアマチュア無線免許を取ろうという考えを抱いていると知ったからです。ある日の事、50MHzで同氏とラグチュ-しているとそんな話題になり、そして数日後の会社帰りには同氏とジョッキ片手に焼鳥屋にて早速アメリカのハムになるべく結成会となりました。冗談から駒ではありませんが、意外な偶然が重なり合い、最後にダメ押しです。

2・アメリカのライセンス

さて実際に簡単そうとは言っても実際には色々わからない事だらけです。もっともインターネットでARRLやFCCのサイト、それにQRZ.COMなどを見ればおおむね試験のプロセスやライセンスのクラスなどがわかります。

現在のアメリカのハムの資格分けは以下のとおりになっている様子です。

Technician :短波帯は出られない。VHF・UHF以上 免許出力は1.5KW
Technician with Morse:Techniciaに加え、3.5、7、21、28MHzの短波帯で電信のみに出られる。免許出力は1.5KW
General :基本的にはHFも含み全バンド、全モードに出られる。ただし、3.5、7、14、21MHzにおいて一部出られない周波数レンジがある。免許出力は1.5KW
Extra :最上級資格、全バンド、全モードに出られる。免許出力は1.5KW

自分が実際受験で狙うのはまずはGeneralです。やはりもしアメリカで運用する機会があれば日本とPhoneでコンタクトしたいものです。それらが出来るとなるとやはり General 以上が必要です。

3・試験のあり方
アメリカのハムの試験は日本の様に「年○回の試験、高額な受験料を頂きます」、といった国家試験的な「片意地張った」物では全くなく、実際にハムの資格をもっている人達が地元のクラブ単位などでボランティアで随時試験を実施しているというもののようです。(それらテストのボランティアコーディネータをVE、またその組織をVECと呼びます)またその受験料も実際の試験を行うのに費やした費用をカバーすべくポケットマネー的な額で済みます。まったく安価かつ簡単に受験ができる仕組みです。日本でのVECによる試験はさすがにそこまで頻繁に行われてはいないようですがそれでも複数のVECチームが東京、名古屋、沖縄などで2,3ヶ月おきにそれぞれ試験を行っています。更に採点もそのVECがその場で行い、間違っていたら、時間の許す限り何度でも受験できる(もっともその都度受験料がかかり、又テストの問題シートは都度かわりますが)というフレキシブルさ。米国がハム人口の裾野をいかに増やそうか、としているさまが実感できます。尚、テストは日本の様にようにいきなり上位資格を受けられる事はなく、Technicialからひとつひとつ受験・合格する事が必要です。もちろん本人の 準備次第では一日のテストで下から順にすべて受験する事も可能です。

4・米国内でのメールアドレス
その昔は米国内での具体的な運用予定がない限り外国人は米国免許を受験できなかった事もあったそうですが、いまではそんな事は無い様です。基本的にだれでも受験できます。ただし、免許証などがFCCから送られてくる都合上、米国内に郵便物の受け取りが可能なメーリングアドレスを持っている事が必要です。実際アメリカに友人がいる、あるいは会社関係がある、などであればそれらの住所を借りるということも可能でしょう。それらがない場合は、レンタル私書箱の会社などでメールアドレスを借りるという方法もあります。私の場合は仕事上の米国人の知人は多くあれど気安くここまで頼める人もありません。塩田氏がWEBで探しあてたレンタル私書箱にお世話になることにしました。ワシントン州にある会社です。年間20ドル程度の契約料がかかりますが、まぁ趣味のためです。ワシントン州はアメリカでのコールサインエリア上は7エリアにあたります。7エリアのコールサインが順当であれば貰える訳です。本当は同じ西海岸でもカリフォルニアの6エリアが好きなのですが・・。

また実際の試験の前までにFCCに対する登録ナンバーを取得する事が必要です。FRNナンバーとよばれるものです。これはFCCのWEBサイトで簡単に取得できます。

5・アメリカのハムになる
(1)Technician, Technician with Morse, Generalの受験
決起大会を終えて数週間もしないうちに塩田氏からメールがあり、2002年4月13日に東京・巣鴨にて東京VECチーム主催による試験が予定されているとの事です。なんと、1ヶ月もありません。自信はなかったものの、受験料も安く巣鴨での受験、別に落ちても何の実害もありません。そう考えまずは受験決定。ARRLのサイトをじっくりみて、まずはTechnicianとGeneralの問題一覧(Question Pool)をダウンロードします。理屈から言えば、試験問題は全てこの中から確実に出題されるので、全問答えられるように準備しておけば合格確実なはずです・・が。

又塩田氏のここから先のアクションは早く、受験のための手続き、日程、必要情報などを片っ端から連絡してくれました。又、インターネット上で模擬試験が受けられるサイトや受験体験記のサイトなども連絡頂き、とくにQRZ.COMなどにある模擬試験のサイトは大変役立ちました。

(2)試験勉強 - ペーパーテスト
塩田氏はインターネットの模試を最大活用するようです。数をこなし正解率を上げて行くという方法です。実戦的で非常に有効な方法と思います。Technician、Generalともに35問の出題で26問正解すれば合格です。一方私といえば、どうしてもQuestion Pool全問を一旦なめてからでないとどうも模試サイトに行く気になりません。慎重過ぎとも言えますがそれが情けなくとも自分の性、と諦めます。

Technicial Question Pool、PDFで60ページ、約300問
General Question Pool、PDFで63ページ、約315問

これを全部なめるのはかなり遠大ですが、仕方なくやりはじめます。といっても初めて通してもまったくわからないという問題は余りなく、むしろ日本のアマチュアで培った常識をもって判断していくと解ける問題がかなりあり安心します。ただバンドプランなどは日本と違う物もあり暗記が必要。スペースシャトルとの交信、と言った多分日本には無いような問題もあります。さすがアメリカ。またRF Safetyに関してはかなり分厚くPoolがあり、FCCが高周波放射への安全対策に重要な関心を寄せている事がよくわかります。自分にとっては鬼門であった無線工学は、計算問題などはオームの法則(E=IR)だけを知っていれば済むレベルのやさしい問題ばかりです。ひととおりなめてから待望の模試サイトです。平均して31,32問程度は正解します。

次ぎにGeneralのPoolです。Generalといっても問題はTechnicianとレベル的に大差なく、常識で考えれば分かる問題も数多くあります。バンドプランの問題がかなり増え、ここは厄介です。また工学もTechnicianと大差無く易しい問題ばかりですが、ただ、無線機のブロック・ダイアグラム(各ファンクションの働き)などの問題は、実際にキットで無線機を作った経験はあるものの全く覚えておらず、また理解もしていなかったため、最後までてこずりました。こちらも一通り終えてから模試です。30問は回答できるようになっていました。

どちらも通勤電車の往復40分を使って勉強。約1週間でそれぞれのPoolを一通り読み終えました。間違った問題や分からない問題などにはチェックを入れておきます。また模試で間違った問題は更に蛍光ペンなどでプリントアウトしたPoolにチェックしますので、テスト直前のPoolは随分とカラフルに成ってしまいました。

気になるこれらのテストの英語のレベルですが、私自身は達者ではないものの日常的に仕事で英語に接さざるをえない環境なので特に違和感はありませんでした。それでも分からない単語などもあり、時折辞書が必要です。特に工学関係は想像はつくものの知らない単語が多く、その単語の意味がわかってしまえば問題文もすらすら解けるものもありました。想像で済まさず、横着しないで分からない単語は辞書で調べる方が良いように思います。客観的には中学・高校レベルであれば確実に分かるレベルの英文でしょう。

(3)試験勉強 - 電信
電信の試験は5WPM、1分間5語です。日本的に言えば1分間25字になります。これは日本の3アマと同じテストですが、同じ25字/分でも中身は大きく違います。日本の 25字は短点・長点ともに非常に間延びしたスピードで打たれますが、アメリカの場合は短点・長点の一字一字は45字/分程度の早さで打たれ、そのかわりに一字一字の間のスペースがとても長いものです。又、数字やカンマ、ピリオド、クエスチョンなどの記号も出題されます。実際の試験は打たれる電文を受信し、その内容についての10の質問に答えるというものです。又受信電文をソリッドコピーする、という方法もあるのですが、東京 VECの場合は、基本的には前者で受験させるようにしているようです。

流れてくる電文は通常の交信を摸したもので、相手に送ったRSTレポートは何か、相手のオペレータ名は何か、リグはなんだったか?、出力は何ワット出していたか、といった受信した電文の中身についての質問がされ、それに回答していくというものです。 5WPMの速度、いえ、実質45字/分程度のスピードは、普段電信を運用している局ならあまり苦労は要らないと思います。長めのスペースに慣れる必要はありますが。

私の場合は電信はあまり得意でなく、かつ50Mhzの電信交信スタイル(RSTレポート交換をBKスタイルで行うもの)にしか慣れていないため、やはり耳慣れをさせる事が必要でした。塩田氏からはWebサイトで5WPMを聞く事の出きるサイトの紹介をしてもらいました。MP3ファイルでの例題ですのでPCにダウンロードして聞きます。この独特のスピード感は聞いたことがないとちょっととっつきにくいかもしれません。文字間のスペースが長いので気負って聞くとつんのめってしまいそうです。後は日本の1アマ電信受験用のカセットテープ(60字/分、70字/分が入っている)を購入し、一日 10分程度紙に書き取りながら受信します。これは速い速度により慣れるためです。聞き流すのではなくやはり書き取ることが重要なようです。普段自分が50MHzで運用している程度の早さなのですが真面目にやってみると脱字も多くがっかりします。まぁ実際の5WPMはこれより遅いし、字間も空いている、と勇気づけながら聞き取りました。

(4)励まし合い
週末のたびに塩田氏と1時間程度近所のハンバーガ屋で会い、お互いの進捗や疑問点などを確認しあいます。ちょっとした「朝練」です。これはなかなか励みにもなり、又疑問点なども分かったり、暗記のコツなどを得たりして、大変有効のように思いました。

(5)2002年4月13日 試験の日
塩田氏と最寄駅で待ち合わせ巣鴨へ行きます。昼飯にラーメンを食べてもまだ試験まで1時間近くあります。試験会場となるJARDのビルの隣にあるファーストフードショップへ行き、最後の詰めです。でも、もういいや、なるようになれ、といった気持ちで雑談が主となります。さて、会場に行きます。受付とともに本日の受験料10ドル(あるいは相当額の円貨=1300円)を払います。受験者はざっと14,15人。VEの方の自己紹介があり、まずはラジカセによる電信のテストです。

電信は10問中7問正解でOKです。採点はその場で3人のVECによりシリーズで行われます。間違っていれば後で時間と受験料の許す限り受験できるのだ、と自分を安心させます。配られた用紙にまずはソリッドコピーでラジカセの内容を書き取って行きます。練習の甲斐あって問題なくコピーできました。次に問題用氏が配られます。電文内容を書き取れば問題用紙にある10問の設問に答えます。


相手のQTHはどこだったか?
相手の名前は?
相手の送ったRSTは?
こちらの送ったRSTは?
こちらのリグは?
こちらの出力は? などなど。

解答用紙に書く答えに誤字・脱字をしてしまうとせっかくきちんとソリッドコピーしていても無駄になるので要注意。ここは、塩田氏とともに無事に合格でした。

そのままTechnicianの問題をもらいます。問題はA,B,C,Dの中から正解を選ぶ四者択一です。回答用紙の該当する箇所を塗りつぶして行く要領です。Poolで覚えていた回答番号と、実際の問題の並びが違っている箇所もあり、回答をA,B,C,Dで覚えていた問題は思いっきり焦ります。幸いそういったアルファベットで覚えていた暗記問題自体は多くありません。見直し1回を行い採点してもらいます。落ちていてもまた受けられるというのは安心です。採点は3人のVEが順番にチェックしていくというもので、正解の箇所に穴のあいたテンプレートを回答用紙の上に置いて間違えをチェックしていくというやり方です。塩田氏とともに無事合格。これでとにかくTechnician with Morseクラスとしてアメリカのコールサインが貰える事が確定しました。ほっとしますがまだまだ志半ばです。

さてここで緊張の余りトイレとします。塩田氏も廊下に出て一服。日本の試験のように会場を出たら戻れない、という事はありません。

引き続きGeneal級の問題用紙を貰います。試験はVEの方もリラックスして雑談などもあり、日本のテストとは随分と雰囲気が違うものです。数問自身の無いものもありましたが、まぁ大丈夫でしょう。見直して提出。一足先に終えた塩田氏が「合格」と告げられています。自分も緊張。数分後、「合格です」。これで米国国内でHF帯を含む1.5KWの運用が出きるのです。夢のような気もします。塩田氏とがっちり握手。CSCEを発行してもらいます。これは無事試験に合格しました、との3人のVEのサイン入りの証であり、これがあれば365日以内に上位クラスを受けるのにここまでの受験の免除がされます。そのまま巣鴨の駅前のレストランで昼間から大ジョッキを傾けたのは言うまでもありません。その美味かった事!!米国で1.5KWで思いっきり運用をし、続々とパイルをさばく気持ちよい夢が頭をよぎります。なんて、HFの運用の経験など殆ど無いのに、外国のコールサインのプリフィクスなど全く頭に入っていないのに、パイルアップなど受けた経験も無いのに、想像だけはビールの酔いに任せふくらんでいきます・・・。まぁ、これくらいは良しとしましょう・・・。

(6) コールサイン - KD7RFZ がやってきた!
アメリカのコールサインは試験に合格した時点で自動的に発給されます。全く無料です。日本の様に従事者免許を貰い、次ぎに開局用の無線機を買いそれをもって高い金を払い局免許を貰うという、金がかかりかつ曲がりくねったシステムは皆無です。米国がいかにハム人口の拡大に努力しているかわかります。更に自分の申請がいつVECからFCCに受理されたか、コールサインは何が発給されるか、などは広く情報公開されており、QRZ.COMなどで進捗がわかります。又車のナンバープレートと同様に、金を払って自分の好きなコールサインを貰う事も可能です。Vanityです。Vanityを貰うなら何が良いかな、と想像するのは楽しいものです。

コールサインを待ちつづけ日夜WEBを覗きます。2002年5月8日、ついにリストされました。KD7RFZです。なかなかいいコールサイン。満足してとりあえずVanityを貰おうという気持ちは無くなりました。同時申請の塩田氏は隣り合わせのKD7RFYです。コールサイン発給を喜ぶメールが飛び交います。 1週間ほどしてFCCから免許証が送られてきました。

6・Extraへの道
(1)もう一度やりますか
さて残るは最上級、Extra級です。今のGeneral級のままでも多少の制約はありますが全バンドでの運用が可能なのですが、バンド内の運用周波数帯に歯抜けがあるのも事実。塩田さんはこのまま6月に行われるExtraの試験を受けるとの事です。自分もここまできたし、また「受験勉強をして試験を受けて合格する」という達成感を味わったのも滅多に無いことだったのでこのまま続けたいのもやまやまです。しかし6月のテストは名古屋のVECチームの試験!ちょっとした遠征です。次の東京VECチームの試験は多分7月か8月でしょう。しかし7月以降の受験であればなんとQuestion Poolがそこから新しくなり、そのVolumeが約3割アップされると判明。どっちに転んでも大変です。

今ひとつ気乗りがしないまま時のみが過ぎます。塩田氏は着実に次回をピンポイントして勉強されているようです。こちらはもう諦めモードになってしましました。だいたい、コールサインをとっても、実際のアメリカでの運用の予定も何もないのです・・。

6月に入り、塩田氏から吉報が届きました。無事Extraになられたようです。と、同時に次回の東京VECでの試験が7月6日にあると連絡してくれます。渋っていると「落ちても実害はないし、10ドルだし・・・」とはまさに殺し文句を吐かれます・・!しかし今日は6月16日。試験まであと3週間きっています。まぁ、もう一度やりますか・・・。

(塩田氏から借りたWB6NOA著
によるExtra級参考書。Question
Poolの問題が解説付きで載って
おり、これなしでは自分には
エレメント5は理解できなかったと
思います。尚、最新のPoolとは
問題番号が一致しないものもあり
ます。(Photo: by KD7RFY 塩田氏)

(2)試験勉強
Question Poolの問題は30%は増えて120ページ、約800問。そこから50題出題されて37問以上で合格です。改めてPoolをみますがTechnicianやGeneralの時のように一目見てわかる問題は殆どありません。正直、ため息が出ます。

Extraの問題のエレメントは全部で9カテゴリーです。


1. Commission's Rules
2. Operating Procedures
3. Radio Wave Propagation
4. Amateur Radio Practice
5. Electrical Principles
6. Circuit Components
7. Practical Circuits
8. Signals and Emissions
9. Antennas

前回同様Poolをなめていきます。エレメントの構成はTechnicianとGeneralと同じですがやはり難しい。殆どの問題が一回目ではクリアできません。とにかく覚えていくしかありません。自分の運用経験のないSSTVやファクシミリ、RTTY、衛星、PSK31などの問題は見当がつきません。またSpread Spectrum、AMTOR、AMTEXといった全く知らない(!)モードもあります。スペアナやオシロの使い方など、実際にやったことが無いのでなかなかピンと来ない問題もあります。それでもエレメント4あたりまでは暗記ですむ問題が主流です。エレメント5はいきなり計算問題が続出します。ここは塩田氏から借りていた解説書を読めばよいのでしょうがなにやら開いたページにルートや三角関数のマークが思いっきり出ており尻込みします。飛ばして先に進みます。エレメント6は電子部品。PNP型、NPN型トランジスタ、EFTなどの回路図記号などは問題ありませんが、ダイオードの問題など、知っていそうで知らないことだらけで焦ります。エレメント7は回路。マルチバイブレータ、オペアンプ、波形など、自分には縁の無い問題ばかり。暗記が必要です。エレメント8と9は比較的とっつきやすいそうなエリアですが結構計算もあり、また暗記するにもまったく問題と答えの関連性がつかめないものもあります。

さてここまで一通り終えた時点で模試に挑みます。気づけば試験まであと5日間切っています。まだエレメント5をやっていませんが焦って追われるように模試です。

35問に届いたり、届かなかったり。いずれにせよ合格ラインの37問には届きません。それはそうです。エレメント5から9問出るのです。ここを外しては他の正解率が余程良くないと37問以上にはいかないでしょう。

エレメント5、諦めて塩田氏から借りた解説書を読み始めます。

Q = R/(2πfl)
ResonantFrequency = 1/(2π畢C)
Time Constant = CxR
同軸の長さ = 波長xVelocity
Half Power Band Width = f/Q
RMS = PEAKVOLRTAGE/2
ELI the ICE Man (リアクタンス回路とキャパシタンス回路でのそれぞれの電流と電圧の位相のずれ)

など、読めばすっきりわかります。なんだ、こんなことだったのか・・・計算式さえ覚えればいいではないか!!もちろん分からないものもありますが、それは「捨て問」とします。それでもこれだけわかれば、エレメント5の8割はカバーできます。模試を再び受けます。39−42点あたりがとれるようになりました。ようやく圏内に入った感じです。もう試験2日前です。

あとは一日2回の模試と、外した問題を蛍光ペンでPoolにチェックしていますので、それを電車の中やトイレの中(!)でも繰り返します。また折角覚えた公式やキーワードなどは別の紙に書き出して、それも都度ぶつぶつしゃべりながら読み出します。外から見ればかなり「アブナイ」人です。でも試験に向けてのテンションは確実に上がっていきます。

(3)2002年7月6日、試験の日
いよいよ当日です。電車の中で最後の目通しをして、縁起担ぎで4月13日と同じく昼飯にラーメンを食べ、試験会場では同じ椅子にすわります。VECチームは前回の顔ぶれと同じです。2回目とありこちらもかなりリラックスします。Extraから受ける人は自分以外に1人だけでした。「絶対受かる・・・。それに落ちても問題ないさ」と思うと気が楽です。

受ける、受けないは別としてはじめに全員に対して電信テストです。CSCEにより電信テストは免除されているので流れてくる電信は上の空、不安な問題などを頭の中で反芻します。ラジカセがとまると、全員に受験するクラスに応じた問題用紙が配られます。Extraの問題用紙はさすがにページ数が多い・・・。

直前まで見直して意味もわからぬまま暗記した問題も出題されていました。しかしエレメント5の「捨て問」からも1題出ています。しかし思ったよりも確信のもてる問題ばかりで安心です。これはやった、と内心満足です。一回見直し提出。採点はその場で行われますので横目でその様子を見ます。テンプレートを解答用紙に載せて、丸印がずれている問題が不正解です。赤鉛筆で7箇所ほどチェックされているようです。43点か、思ったとおり、まずは大丈夫だろう・・・。

無事3人のVEによる採点が終わり「エクストラ、合格です。おめでとうございます。」と呼ばれます。VEの方々が拍手をしてくれ、実感が込み上げます。他の受験者からも「おぉー」と歓声があがりなにやら気恥ずかしいものです。まぁこれでなんとかラスト1週間のツラサが報われました。コールサインを変えるか、聞かれます。今のKD7RFZすら一度も使っていません。一度くらい使ってやりたいものですし気に入っています。そのままとします。

ビルを出ると感動がこみあげてきました。前回と違って独りなのでジョッキで一杯ともいかず、かといって駅の売店で缶ビールで真昼間から祝杯をあげるのもぱっとせず、まっすぐにニヤニヤしながら帰りました。7月13日、WEB上で無事にクラスがGeneralからExtraに変更されているのを確認しました。

7・振り返ってみて
実際試験を終えて振り返ってみると、Techinician with Morse、Generalの試験に約1ヶ月、Extraの試験には3週間の準備期間で臨んだのですが、特にExtraは正直ギリギリでした。もう1週間あると無いでは大違いです。が、あまり準備期間がこれ以上冗長だとだらだらとして、却ってこれくらいが良いかも入れません。

電信は普段バリバリに運用している局であれば全く準備は不要でしょう。もっとも通常の電信交信ではカンマやピリオドなど、あまり打たないと思いますのでその対策くらいが必要かもしれません。ペーパーテストは、正直自分のとった方法 - Question Poolをダウンロードして一通りこなす、というもの、が良いのかどうかはわかりません。塩田氏のようにWEB上での模試を数こなしたほうが実践的で良いかもしれません。というのもどうも数多の問題の中から実際に出題される問題は、どうもある程度決まっている様だからです。WEB模試を10回でも繰り返すとたいがい一巡できそうです。まぁ時間さえあればPoolを読破してから模試をする、というのが完璧なのでしょうが、時間に追われた自分はどちらも不充分でした。(特にExtra)

あと、TechnicianとGeneralは参考書などもARRLのサイトから購入できますが、不要だとおもいます。問題の内容とその答えは殆どの場合参考書が無くても充分理解できます。バンドプランは複雑ですが、これはARRLのサイトからバンドプランをダウンロードしておけば良いでしょう。しかし、Extraは特にエレメント5は参考書が無いとまったくちんぷんかんぷんです。エレメント5の出題は数が多いので避けて通れないように感じました。しかし、理解さえしてしまえば、逆に点の稼げる所となります。

最後に、やはり、同じ目標を持った仲間がいる、という事が自分にとっては最大の励みにも助けになりました。特に自分の場合はこれらの有益なWEBサイトを見つけたり、試験日程を確認したり、レンタル私書箱を探したり、といった事はすべて塩田氏に頼り切ってしまいました。自分一人であったら途中で放棄していたかもしれません。また試験の準備で途中でお互いの進行状況や疑問点などを確認しあうのも結構楽しいものでした。

さぁ、あとは実際の運用なのですが・・・。当面予定はまったくないのです!グァムやサイパンなどに遠征してKD7のコールサインでガンガン運用する、という夢想は楽しいものですが・・・レンタルシャっクなどもあるようですが・・・。家族の手前上そうホイホイと出かけられるか、休みがとれるか、などなど結構免許試験よりも難しい?問題が残っています。それに、まずは短波帯での交信に慣れる事が必至なのです・・・。

せめて一回はこのコールサインを使わなくては!そんな思いを抱いています。試験が終わってからも全く悩み?は続きそうです。

最後にあらためて7K3EUT/KD7RFY・塩田氏にお礼の意を表し、本稿を締めくくります。尚以上は当局が東京VECチームにて受験した2002年4月‐7月時点での状況ですので、実際の受験状況は時事変化している事もあるかと思います。


(終わり)


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