教会コンサートの夕べ

秋から冬にかけてここデュッセルドルフではアドベントコンサートなどもあり教会での生の演奏会に触れる事が出来ます。2006年の秋・冬はMozartの宗教曲を中心に楽しむ事が出来ました。


オルガンコンサート (2006年9月24日 St. Benedictus教会、Heerdt, Dusseldorf)

散歩がてら何気なく立ち寄ったイタリアンアイスクリームの店に ORGELKONZERT のチラシが貼ってあるのに家内が気づきました。 ORGELKONERT、オルガンコンサートです。時間は翌週の日曜日、場所として書かれている聖ベネディクトス教会とはアイスクリーム屋の裏に立つ大きな教会の事です。さすがドイツ、この手の音楽が土着しているのです。翌週子供たちに声をかけますが彼らは昨年のアドベントコンサートがあまり面白くなかったようで、余り乗り気でない様子、それではと早速家内と出かけます。

定刻に入りましたがお客は10数人と寂しいものです。

教会は比較的新しい建物です。パイプオルガンの響きはやはりずしりと腹に来ます。演奏された曲目はバッハやクープランなど。バッハのプレリュードとフーガはやはり教会で聴くものだと感銘。演目は他に現代音楽をジャズ風にアレンジしたものもあり、これらはいまひとつピンと来ませんでしたが、実際こういう風に生の音楽が教会で手軽に味わえる事は素晴らしいものです。

オルガン演奏 Hans Gunther Both


教会で聴いたMozartその1  レクイエム   (2006年10月7日 Johannis教会、Altstadt、Dusseldorf)

(教会で聴くRequiemはまさに荘厳だった)

膨大なMozartの作品の、本当に有名なわずかな曲しか自分は知りませんが、そんな数少ない曲の中でも「Requiem」は好きな曲の一つで長くカール・ベームがウィーン・フィルを指揮した1971年の録音を愛聴していました。低音の効いたじっくりとしたテンポで重厚に演奏される「Requiem」は聴き始めるといつも時間の経過を忘れるほどにのめりこめる曲です。キリスト教的バックグラウンドに無縁の自分でも、純粋に音楽として、荘厳で重厚。厳かに感じられるのです。我が町Dussldorfのとある教会でそんなRequiemのコンサートがあると聴き早速チケットを買い求めました。

コンサートはある秋の夕べ、市の中心街に近い教会で開かれました。大き目の教会にはすでに観客がたくさん入っており自分は二階に案内されます。

一曲目はバッハのカンタータで、自分はバッハのカンタータを殆ど知らないので残念ですがメリハリのある演奏です。自分としては「Requim」が待ち遠しいです。

小編成のオーケストラで聞く「Requiem」はなかなか透明感とスピードに溢れ素晴らしいものでした。冒頭からして聞き慣れていた様な重厚さ・深刻さが無く、声部を生き生きと浮き彫りにする事に注意を払った演奏のようです。第1曲の入祭唱も良いですがこの曲で特に好きなのは第6曲のレコルダーレで、神に祈るかのように清澄な管と弦の導入部はまるでオルガンの様な透明な響きで思わず涙が出てくるものでした。第9曲のDomine Jesuも素晴らしく大迫力の合唱には鳥肌が立ちます。生の演奏がこれほど素晴らしいとは思ってもいなかったことで、しかも教会の響きは豊かな残響がありすばらしい。

演奏は総じてテンポよく快速で、ベーム盤が60分を超えるのに比べ演奏時間は45分。それでいて荘厳であり感動を呼ぶものでした。教会で聴いたというシチュエーションも手伝ってはいるのでしょう。

すっかり興奮で汗をかいてしまいました。聴いてよかった。満足の演奏会。外に出るともう冷気漂う秋の夜、自転車に乗って家に戻りましたが体にあたるライン川の夜風が演奏会の興奮を心地よく鎮めてくれました。

(フル・オーケストラの重厚なベーム盤とは異なる演奏に接し、早速現代版解釈による名盤との誉れ高いニコラウス・アーノンクール指揮、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスによる演奏盤を購入しました。ベーム盤の様にフル・オーケストラを鳴らせる重厚で大迫力の演奏とは違い、こちらはむしろ透明感とリズムを浮き彫りにした演奏で、現代版Mozart演奏はこういうものなのでしょう。この日の演奏にも通ずるものがあり、ベーム盤とともに愛聴版が一枚増えました。)

演奏曲目

J.S.Bach カンタータ「目覚め、祈り、心を備えよ」BWV70
Mozart レクイエム KV626
,Sebastian Klein指揮 Altsdtadtherbst Orchestra、Chor der Neanderkirsch


教会で聴いたMozartその2 戴冠式ミサ 2006年11月12日  Maria教会 Lorick, Dusseldorf

先のオルガンコンサートのチラシの裏に書かれていた次の教会コンサートの日です。演目については "Werken von Mozart" (モーツァルトの作品から)としか書かれていませんがコーラスとオーケストラと書かれていますので数あるミサ曲の中から何かをやるのでしょう。会場のマリア教会は我が家から自転車での10分の距離です。先のオルガンコンサートとは違い今度は満員の会場です。

バッハの小曲をやったあと一旦コーラスが退場して、オーボエ奏者が入ってきました。始まったイントロは聴き馴染みのあるオーケストラの合奏です。そう、なんと オーボエ協奏曲(KV314) でした。この曲はフルート協奏曲としても演奏される曲ですが古雅な響きのオーボエでの演奏を聴く方が好みです。自分の手持ちのCDは確かカラヤンとベルリン・フィル、ソリストがローター・コッホだったはずです。(帰宅後調べると1972年の録音版でした)。それほど深入りして聞いていた曲ではなかったものですがやはり生の演奏は素晴らしい。しかもカラヤンのようにフル・オーケストラを迫力一杯に鳴らすのではなく、小編成のオーケストラなので音の粒が手に取るように感じられます。先日のRequiemしかり最近のMozart演奏はこういうのが主体なのでしょう。特に軽快な第3楽章のロンドは思わず身体が動いてしまうような爽快さで聴いていて嬉しくなるものでした。

大拍手の後再びコーラスと歌手4人が舞台に登場です。さぁ次は何だろう。Mozartの合唱つき曲であれば「戴冠式ミサ」でも演ってくれないか、と期待してみます。と、タクトが下りるの同時に始まったのはまさに「戴冠式ミサ」でした。願い的中で驚きを通り越しまさに身体が痺れる思い!先のオーボエ協奏曲とは違いこの曲はよく聴いたものです。オイゲン・ヨッフム指揮バイエルン放送交響楽団によるCDですが一時期非常に熱中していました。荘厳・重厚な「レクイエム」とは違いもっと気軽に聞く事が出来る曲です。

今回も先の「Requiem」小編成のオーケストラで各声部が手に取るようにわかります。生気あふれる躍動の開始から壮麗な祈りで締める第3曲のCredoが戴冠式ミサの中ではもっとも好きな曲ですが、これまたテンポよく見事なコーラスを楽しめました。

演奏曲目も知らないで行ったのに予期せずに大好きな曲を聞く事が出来てとてもうれしい。こんなふうに地元の教会で、無料で生の音楽が聴く事が出来るなんて本当に素晴らしい話です。(一応出口には教会関係者がボランティアでの募金を募っており、籠にお金を入れる仕組みです。いずれにせよ演奏会の代金としては安いものです)
 
演奏曲目
Mozart オーボエ協奏曲 KV314
Mozart 戴冠式ミサ KV317
Annette Boege指揮 Kirchenchor und Orchestra


教会で聴いたMozart その3 大ミサ 2006年11月26日 St.Antonius教会 Oberkassel, Dusseldorf

先の戴冠式ミサの夕べから2週間後、今度は自分の住む街Oberkasselの聖アントニウス教会で 大ミサ の演奏会です。レクイエム、戴冠式、そしてこの 大ミサ と聴けばMozartの有名な宗教曲の3作をカバーした事になります。大ミサはカラヤン、ベルリン・フィル演奏によるCDを持っておりこれもよく聴いている曲です。

会場の聖アントニウス教会はオーバーカッセルはバルバロッサプラッツにある教会で、毎日の買物に出る通りです。オルガン演奏による賛美歌を聴くのが楽しみで日曜日のミサに何度が顔を出した事があり馴染みの教会ではありますが今日は中に絨毯が敷かれいつもとは違う雰囲気です。

今回もレクイエムと同様、有料コンサートです。高いチケット(18ユーロ)を支払ってオーケストラから6列目の席に座ります。今回はレクイエムの時よりはややオーケストラは厚めです。冒頭のKyrieは深く重厚で、わくわくするような明るさの第3曲のLaudamus teは生気溢れる演奏、また二人のソプラノが切々と絡み合う第5曲のDomineは神聖で聞き応えもありました。

その気になれば素晴らしい音楽を教会で気軽に味わうことができる。著名なアーティストによるものでもない、音楽が特別なもの・身構えて聞くものではなく生活の一部として溶け込んでいる、そんな音楽に対する懐の深さを感じることができた秋でした。ことに自分の好きなMozartの宗教曲・声楽曲を三つ一気に味わえたのは望外の喜びでした。

Mozart 大ミサKV427
Guido Harzen指揮 Junge Philharmonic Dusseldorf、Junger KonzertChor Dusseldorf e.V.


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